すきゃーり!!
時は少し遡る
ホワイトアフリカ、1つの大きなビルの中に自らの分身を隠した少女は、携帯ゲームで暇を潰しながら時を過ごしていた。
「あー落ち着く、やはり動物達とのほのぼのライフこそ心の清涼剤よな、あ、ブーケちゃんこんにちは〜」
新聞によりアナトリアの傭兵の活躍を追っていた彼女は、弾道ミサイル基地襲撃の話を見つけるとすぐに行動に移った。
保存食品を買い漁り、機体に積み込む。そして夜の内に基地から出ると、大西洋を通ってこの地に来たのだ。
ゲーム内で大まかに任務の場所が示されていたこともあり、すぐに決戦の場所を見つけることができた。
そのまま隠れ場所となる所を探すと、ミッション領域外ではあるが1つの大きなビルを見つけた。
ブレードで崩しながら入ってみると、丁度機体がすっぽりと入ったので、そこでゆっくりとアマジーグの到達を待っているのである。
「水大量に買っといてよかったぁ。最悪ミイラになってたなこりゃ」
今日のランチは缶詰に入った魚介と乾パン、それに乾燥野菜のチップスである。
そいつをむしゃむしゃと頬張った後は、トイレを済ましゆるりと状況の変化を待つ
ほんとありがとうGレコ、そうだよね、長距離行軍とかありえるんだから機体内にトイレは必要だよね。
ちなみにこの座席にはマッサージチェアとしての機能もある、これも神様に頼んだものだ。長い間座ってると、血流の流れが悪くなる。それを解決する為につけてもらったのだ。
あぁ……身体が休まる……。やっぱシミュレーターでも身体って結構疲れるのね。
そんな風に心身の疲れを癒していると、レーダーに反応が現れた。
「……んあ?」
ゲームから目を離す、この反応は……間違いない、ネクストのものだ。
「クレピュスキュール、機体照合お願い」
ゲームやら何やらを固定し、私のやる気スイッチを押す。場所は肩甲骨のあたりだ。
『機体照合完了、ネクストAC〝ワルキューレ〟です』
パァっと顔に笑顔の花が咲く
「たっくもぉ人を待たせすぎだよレイヴ〜ン。いや、この場合はアマジーグに怒った方が良いのかしら?」
そんなこんなを考えつつ、こっちも戦闘準備を済ませる。
AMSを接続してぇ、武装を選択する。
「OIGAMI展開、狙撃視点で撃つ」
『了解、視点変更』
クレピュスキュールの声と同時に、視界に映る様子が大きく変わる。V系の主観モードみたいな感じだ。カメラをさらにズーム、よしきた。流石BFF製だけあって、カメラ性能は高い。作戦地点がよぉく見える。
「Hey、クレ。弾道計算よろしく」
『了解』
流石に風速等を計算して砲撃することは自分じゃできないので、全てクレピュスキュールに任せる。
『弾道計算完了、予測着弾地点と被害範囲を表示します』
拡張現実により着弾地点が画面に………デカ!?予測被害範囲デカ!!?
「有澤はバカかよ!!!?」
これどう考えても戦艦クラスの艦砲砲撃とかそんなレベルである。あれか、俺が爆発範囲のグラとかに文句あったからそこらへんリアルにとか無茶苦茶なこと言ったからか、なぁんだこれ、何売ってんだあの会社は、何撃ってんだあの社長は。失望しました、有澤重工に投資します。
素晴らしいね有澤。やはりネクストたるもの一に火力二に火力、三四が火力で五が見た目である。カノサワは見た目で選びました。
てかあれだな、やはり有澤にはこのままスクスクとグレネードを作っていて貰わねばなるまい。その為にはGAの勝利が必要だ。よしきた方針決定。有澤さんとこにはネクストに搭載するドーラ砲みたいなの作って貰わなきゃ。
さてさて、ではアマジーグを待つ……
ん?
「お、白栗来た。ハードモードか。」
ホワイト・グリントが介入して来た。本来なら遅刻してくるのだが、どうやら間に合ったらしい。
じゃ、まぁ、盛大な花火を見せましょうか
ちょうど、アマジーグも来た
「ステンバーイ……ステンバーイ……」
大きく息を吸い、目標に集中する
トレーラーが止まる、バルバロイの起動は……まだだな。
ゆっくりと照準を合わせる。爆発地点のど真ん中に目標をセット。
「フォイア……!」
OIGAMIが作動する、撃鉄が雷管を叩く、砲弾が……
衝撃。機体内にいた自分にすら身体が叩きつけられたように感じる凄まじい衝撃波が周囲に伝わる。
クレピュスキュールを隠していたビルがバラバラに吹っ飛ぶ、周囲の砂が空に舞い、クレーター状の跡ができる。
反射的に両腕を挙げる。叫び声を上げる。心の叫びだ、ウォークライだ。こんなに心が揺れたのは生まれて初めてである。
「ファッ○ンアマジィィィィィグッッ!!!!!!!HAHAHAHAHAHAHA!!!!!!!!」
最高にテンションがハイった。理性がブッとぶ。心の中の男の子がブレイクダンスしながら空を飛ぶ。
OIGAMIを格納、右手に最強の剣、左手に最強の銃、心は熱く、頭の中は活火山。
脳内麻薬に溺れながらブースターを起動させる。OK、ぶち殺す、ぶち殺す、ぶち殺す、突っ込んでぶち殺す、至極単純明快快刀乱麻、恐悦至極な全人類鏖である。
「クレピュスキュール!!BGM!!最高にノッてる奴を!!!」
『了解』
突如、爆音でノイズの混じったギター音が響く
「MECHANIZED MEMORIESか!!パーフェクトだクレピュスキュール!!!」
最高だ、心からそう思う。そうだ、このイカれた世界を滅茶苦茶にしてやるんだ!!!
あぁ!私は恐ろしい!!
脳内を狂ったように音楽が跳ねる。『scary!』だ、私は『scary!』んだ!こ『scary!』を!!
OBを展開する、無線の周波数を世界中に聞こえるように設定する!あぁ!!心が!!!笑みが!!!!止まりやしないんだ!!!!!
クソ傭兵共ガァッッ!!!
「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!!!」
ぶっ殺してやルッッッ!!!
こうして、狂気の少女は戦場にエントリーした。彼に元々狂っていたのか、それともこの世界が彼を変えたのか。それは今はわからない。
ただ、この狂気は間違いなく彼女の心の叫びである。もはや彼女は、平穏の人間ではいられなくなってしまったのだ。
QBを噴かす
「クソ!なぜ当たらんのだ!?」
QBを噴かす
焦ったようにアマジーグはライフルを撃つ。しかし目の前の所属不明のACは、一瞬たりともロックを定める時間を与えない。
QBを噴かす
白い重量四脚は一撃たりとも攻撃を行わない。ただただ余裕そうに、いや、ホワイトアフリカの英雄を煽るように回避し続ける。
「このッ!!どんなジェネレーターをつかってるんだッ!?」
アマジーグが血走った目で言葉を吐く。この最悪の闘争の中で、彼の精神は限界に至っていた。もはや、生きて帰れたとしても廃人であることは確定だろう。
「ハハハッ!!その必死な声さーいっこう!!」
狂笑が響く。少女は天才だった。これくらいの機動では、精神に一切の負荷はかからなかった。
そして少女はチーターだった。万が一の時の為に、彼はちゃぁんと神様にお願いしておいた。
私の機体のエネルギー関係はレギュ1.15仕様でお願いします。と
というわけでEN無限である、更にKPの回復速度は1.2位なのですぐに回復する。敵は全部最新レギュで固定なのでこのチートは凄まじいアドバンテージになるだろう。
あぁ悲しいなぁ、悲しいなぁ!圧倒的な力の前に蹂躙される英雄の姿というのは!!
「通せレイヴン!なぜ邪魔をする!!」
「状況はよくわからんが、こちらにとって有利ではあるんでねッ!」
なお、横ではワルキューレとホワイト・グリントがダンスってる。がんばえ〜、れいうんがんばえ〜。
ま、でもそろそろ地獄に叩き落としてあげなきゃ可哀想である。ごめんねアマジーグ!その生き方大好きだよアマジーグ!!だからこそイジメちゃったんだよアマジーグ!!!ちかたないね!!!!
クレピュスキュールが跳躍する。連続QBによる不規則かつ高速な挙動でもって狼の喉元に接近する。
「なっ………!」
「おやすみ……」
優しく呟く。
次の瞬間、突き出された紫光の月が、布を切り裂くかの如くバルバロイのコアを貫く
「…………………………!!!」
断末魔も許さない。一瞬の、慈悲深いトドメである。
「さようならイレギュラー、器じゃなかったのよ、貴方は」
プレイアブルキャラクターだったら希望はあった。んでもってクレイドル落とした後に企業のトップリンクス四人と元オペレーターを沈める位の実力あったらなんとかなっていた。残念で仕方がない
レーザーブレードを抜く。主の蒸発した機体が、力なく落ちていく。
「アマジーグ!……ここまでか、離脱する!!」
ジョシュア・オブライエンの声。ホワイト・グリントはOBを起動し、白い閃光となって作戦地域から離脱した。
ワルキューレは追撃しない。いや、彼は私を見ている。
大地に降り立った私は、天を仰ぎながら降り注ぐ音の豪雨の中で快感に浸っている。
Minute of the end,and dose it still hurt.
in a rainy day, let's fight for counter.
On the silent way, when do you get a calling?
look into the void. It's scary.
そう、私こそが恐怖なのだ。私は全てを知っている。そして私の事を誰も知らない。
「救援に感謝する……。そして、お前は何者だ?」
ワルキューレがマシンガンをこちらに向けてくる。
私はヘッドパーツのみを軽く鴉の方を見ると、また空を眺めた。
あぁ、美しい空だ。昼と夜が入れ替わるちょうど境目。魔と逢う時。黄昏、トワイライト、そして……
「クレピュスキュールよ。アナトリアの傭兵」
誰そ彼と聞かれたのだ、応じねばなるまい。
「何が目的でここに来た?何故私を助けた?」
そりゃ気になるよねー、気になっちゃうよねー、まぁ、教える気はナッシングですが。
「私は旅人、風の吹くまま気の向くままに動くのさ」
先ほどとはテンション打って変わってCV能登である。
なお、んな落ち着いたテンションとは裏腹にBGMはファッキンファッキンしている。リメンバーに変えようかしら、いや、もう離脱するか
「さて、また縁があったら逢おうじゃないか」
「…………」
クレピュスキュールがブースターを噴かす。ワルキューレはマシンガンを下げ、黙ってこちらを見送る
「さようなら、だ。」
その言葉と同時にOBが起動。白栗コアの特徴である白い羽根が広がり、次の瞬間には全てを置き去りにして飛び去っていった。
「あれは……いったい……?」
呆然とフィオナが呟く
「さぁな。まぁ、いくらか写真は撮った。あとの事は、企業に任せればいいだろう」
そう言って男はコックピットの中で目を瞑る。
ありゃ、ヤバイ。機動力が桁違いすぎる。少なくとも今の自分じゃどうにもできない。
そしてあの行動も、口調も、どう考えても狂人のそれだ。レイヴンやリンクスなんてそんな奴らの掃き溜めだと思っていたが、あそこまで極まったのはなかなかいない。そんな奴だ、いつ敵対するかわからない。もしかして、味方として戦っていたら突然こちらを撃ってくるかもしれない。
「離脱する。フィオナ、予定通りのポイントに迎えを置いておいてくれ」
「わかりました。……兎も角、貴方が無事で良かったです」
そうだ、とりあえず今回は生きて帰ってこれたのだ。それなら、いくらでも対策はできる。
男は、クレピュスキュールに背を向けて進み始めた。なんとなく、あの少女とは近い内にまた会う事になるだろうなという漠然とした予感があった。
クレピュスキュールのアセンブルについては次回書きます
また、彼女のチートの1つに「機能ごとに都合のいいレギュレーションを適応する」というものがあります。
そんくらいやんなきゃアナトリアの傭兵や首輪付きとかに勝てる気しないもん