ヤムチャの修行が始まり約1週間がたった。アブサロムは気弾を修得し、〈死者の手〉を完成させ、今は威力を高め、即座に発動するということを主に視点を置いている。
アナゴは、新技の前段階で必要になる〈気〉を読むことを修得しようといている。
そして、今は実践的な修行として、アナゴとアブサロムが組み手と称した模擬戦をしている。
「いくぞ、アブサロムぅ。」
アナゴはそのように言うと同時に高速で移動し、アブサロムの視界から消える。
「おのれ、どこへいった。」
「アブサロム、目で追おうとするな。気で感じるんだ。」
「そうか。」
消えたアナゴをキョロキョロ見回し探すアブサロムをヤムチャが諌める。まだアブサロムは気で探ることには慣れてはいなかった。ただし、気の修得はヤムチャでもかなりの期間を要したことを考えると、二人の身につけるスピードはかなり早いと言えるほどであった。
「感じたぞ。ここだ。」
「よくわかったな。」
振り向き様に右ストレートを放ったアブサロムだが、その手をアナゴも悠々と受け止めた。アナゴはそのままアブサロムの腕を掴み投げる。
「くっ」
アブサロムは空中で態勢を整え、着地と同時に〈スケスケの実〉の能力で姿を消す。
「姿を消したかぁ。だが気は消しきれていない、まだあまいぞぉ、アブサロムぅぅ。」
アナゴは走りだし、何もない空間を殴ったかに見えた。しかし、アナゴのパンチは何かを捉えており、打撃音と共にアブサロムが姿を現しぶっ飛んだ。
「ガルルルル、さすがアナゴだ。じゃあオイラも新技を見せてやろう。」
アブサロムがそう宣言すると、両手をアナゴに向ける。
「死者の手、連弾、ハアアァッ。」
アブサロムの手から黄色い光弾が何発も発射され、アナゴに雨のように降り注ぐ。
光弾が降り注げば降り注ぐほどに砂煙が大きく舞い上がる。
「やったか。」
アブサロムは力の限り気弾を放ち満足げにそう言ったが、まさか連続エネルギー弾が〈死亡フラグ〉であるということは、アブサロムは知るよしもなかった。
「あ~あ。アブサロムやっちまったか、言っておけばよかったな。」
ヤムチャが言わなかったことを後悔した時には勝負は決まっていた。
砂煙が収まると、ほぼ無傷のアナゴがたっており、アブサロムが驚き戸惑っている時に
「チェックメイトだぁ。」
と背後をとられ勝負は決した。
――――
「いい勝負だったぞ、二人とも、ただアブサロムには言っておかなくてはならないことがあってな。連続エネルギー弾、つまりお前の死者の手連弾だが、自分より格上の者に使うと死亡フラグになるといった不吉な定説があるんだ。俺の住んでた世界の俺の仲間の某王子が、勝負を決めるために連弾エネルギー弾を放つと、ダメージを与えるどころか、無傷で逆に倒されるというのがお決まりだったんだ。だから、アブサロムは死者の手は連弾にするより、一発の威力を高めるほうがいいぞ。量より質だ。」
ヤムチャは謝りながらそう言うと、アブサロムは気にするなと返しうまくまとまることになった。
「じゃあ今日はここまでにしよう。明日はアナゴに新技を試してもらうつもりだからゆっくり休むように。」
「ヤムチャ、無理だと思うぞ。」
「私自身も無理だということは心得ているんだぁ。」
『………』
アブサロム、アナゴの予感はまさに適中しており、アナゴはベローナの元に帰ったあとにたまった仕事をこなすことになり、ゆっくり休むことなど夢のまた夢であった。
――――
「よし今日は新技を覚えてもらうんだが、やつれているが大丈夫かアナゴ。」
「だぁいじょぅぶだぁ。」
「オイラには大丈夫なようには思えんな。ペローナ恐ろしいやつだ。」
「ああ、可愛い顔して恐ろしい。アブサロムの部下でよかったぜ。とまあ無駄話はここまでにしよう。」
ヤムチャ、アブサロムはアナゴを哀れに思ったが、どうすることもできないので話を進めることにした。
「新技なんだが、〈瞬間移動〉をアナゴには修得してもらう。」
『!!!』
まさかヤムチャが〈瞬間移動〉というとは、まったく予想だにしないことだった。
「さすがに瞬間移動は物理的にも不可能だろう。」
〈気〉のすごさを身を持って知ったアブサロムであっても不可能ではないのかとヤムチャに聞く。
「いやそうでもないんだ。俺の親友が使っていた技で、アナゴと同じ姿をしたやつが三回見ただけで覚えたし、アナゴはそいつのDNAをもっていると言っていい。なんたって俺のカメハメ涙を一回見ただけで出せたんだからな。そういうことでお前ならできると思うんだ。」
「本当に僕にできるのかい?」
「ああ、できるはずだ。セル化するんだアナゴ。」
ヤムチャに言われアナゴは半信半疑ながらセル化する。
「なんかぁ、できる気がするぞぉ。」
「その気概だ。じゃあまずは〈気〉を探るんだ。お前ならかなり広い範囲の気を感知することができると思う。まあ最初はデカイ気を探ってみろ。」
「わかったぁ。」
アナゴは一言答えると、精神を集中する。
その場に物音一つしない沈黙が訪れる。
しばらくすると、
「あったぞぉ。かなり強い気だぁ。ヤムチャと同じか、それより少し弱いかぐらいだぁ。」
「まあ俺と同等はないだろ。俺はこの世界では一番強いんだからな。まあいい。では感知できたら、人差し指と中指を眉間につけ、その感知した〈気〉に向かって移動することを意識しろ。」
「わかったぁ。」
「ああ、言っておくが、[シュン]行けそうだと思っても行くなよ。今日は感覚だけ掴めればそれでいいからな。」
「ヤ、ヤムチャよ…アナゴが消えたぞ。」
「マジかよ。こりゃあ大変なことになった。俺はアナゴを迎えに行くってくる。アブサロムはここで待機していてくれ。」
ヤムチャはそう言うとすかさず空を飛んでいった。
「そ、空を飛んだ。あれも気の力なのか。なんでもありだな…。」
アブサロムの嘆きは誰も聞く者はいなかった。
――――
「おお、なんかできた感じがするぞぉ。ここは……。」
『……。』
自分の状況を確認しようと辺りを見回す、するとその場にいた多くの人と目があった。回りが静寂に包まれる。
『うわー―。いきなりなにもないところに、怪物があらわれたぞー。』
どうやらアナゴが急に現れたことと、その姿により多くの人はパニックに襲われたようだ。
もう怪物扱いには慣れたアナゴは状況を確認する。どうやら瞬間移動に成功し、大きな〈気〉の所に移動できたということと、移動した先が船、しかも悪いことに海軍の船の上だということがわかった。
「うるせえな。静かにしろ。たしぎ何があった。」
「スモーカーさん。私にもなにがなにやら。」
「ああ?」
船の中から葉巻をくわえ、背に大きな十手を携えた、ガタイのかなり良い、スモーカーと呼ばれた男が現れた。
男が現れた瞬間に船上にはりつめた緊張感が満ちてくる。圧倒的な威圧感を持った男の登場に、本能か、野生の勘であるのかは分からないが、アナゴの頭の中には危険を告げる警報がしきりになり響いていた。
悟空の瞬間移動は気を持つ相手を想像して行うものですが、アナゴの瞬間移動は、純粋悪の魔人ブウが使った感知した気のもとにとぶというほうにさせてもらいました。こちらのほうがこれからの物語で使い勝手がよいので。あしからず。