「あっち~~!!」
ヤムチャは瞬時に海軍の男の懐に潜り込むと腹に一撃を入れようと拳を突き出した。しかし、ヤムチャの拳が海軍の男にヒットすることはなかった。ヤムチャはうなりをあげて海軍の男に振り抜いた拳を当たる前に引っ込めたからだ。あまりの熱さに危険を感じ。
「くらえ!」
海軍の男は懐に潜り込んだヤムチャの素早さに驚きながらもすぐに反撃に転じ、マグマと化した腕がヤムチャを襲う。
「当たればヤバイが十分避けられるレベルだな。」
ヤムチャは海軍の男の怒濤の攻撃をすらすらとかわしていく。
「へったいしたことないな。」
ヤムチャは今まで自分より圧倒的にレベルが上の敵とばかり相手をしており、いつも相手の攻撃を避けることすらできなかった。しかし今回は違う、強敵のはずの海軍の男の攻撃を簡単に避けられているのだ。ということで調子に乗り出していた。
それが悲劇を呼び寄せることになるとは思いもせずに。
「おのれ、大噴火!!」
男の腕が膨張すると同時に、マグマの拳がヤムチャに向かっていく。
ヤムチャは拳が届かないギリギリの所で避けていた為に突如襲い掛かるマグマの拳に対処しきれない。
「くっ、はあっ」
ヤムチャは避けることを諦め気弾で相殺をねらう。
放たれた巨大なマグマの拳とヤムチャの気弾がぶつかり合い、大きさの違いから相殺は出来ないが破壊することはかろうじて成功する。破片はヤムチャを襲い至るところに火傷を負うことにはなったが。
「まさかあんな遠距離攻撃があるとは。しかも体までマグマ化するなら殴ることすらできないな。どうするかな。」
ヤムチャは海軍の男から距離をとり、今までの戦いに頭を巡らせると良い考えが浮かぶ。
「いい方法があったぜ。」
ヤムチャは得意の狼牙風々拳の構えをとる。
そして、その場で狼牙風々拳を繰り出す。
「はい、はい、おー。」
ヤムチャの拳が空を切る度に、拳の衝撃波が海軍の男に降りかかる。
かなりの数の衝撃波がヤムチャの拳から放たれる。
「やったか?」
巻き上がる土煙が晴れると、無傷の男がたっていた。
「わしにそんな小手先の攻撃なぞ効かんわ。」
「おいおい、あの煙のおっさんと同じじゃねえか。」
ヤムチャは顔をしかめるが、その顔には何故か楽しそうな笑みもうっすらと浮かんでいる。
武道家の本能として自分の力と近い強者との戦いを楽しんでいたのだ。
「まあしょうがねえな。本当は自分の拳でダメージを与えてやりたかったんだが。」
ヤムチャはそう呟くと、手のひらを男に向ける。
「はあっ。」
ヤムチャが先ほどより大きな気弾を放つ。
「一度見た技など効かんわ。大噴火!」
ヤムチャの気弾と男の大噴火がぶつかり爆発が巻き起こる。
ぶつかり合った場所を中心に爆風が巻き起こりなにもかも吹き飛ばす。
爆風が止み、視界が晴れる。
「ふう。時間稼ぎにはなったな。」
「時間稼ぎだと。」
ヤムチャの手のひらの上にサッカーボール大の気弾が浮いていた。
「食らえ、操気弾。」
ヤムチャが気弾を投げる。
「ふん、この程度。」
男は苦もなくかわす。
「たいしたことないのお。今度はこちらからいくぞ。」
男が地面を蹴った時であった。
「かかった。」「なに!!」
地中から突如現れた気弾が男の腹をとらえ、男の体を宙に舞わせた。
「へっ。ざまあみろ。」
ヤムチャはガッツポーズで喜びを表している。
「マズイ。」
その戦いを少し離れた所で見ていたアナゴは離れていたからこそ、見えていたことがあった。
ヤムチャの気弾が男をとらえていたことは確かであったが、当たる直前に男は自分からジャンプし、ダメージを極力小さくしたのだった。
宙を舞った男は宙返りをし、地面に着地したと同時に地面を蹴りヤムチャに急接近した。
「なに!」
ヤムチャは構えをとることすらできていなかった。
「冥狗」
「グハッ。」
男の掌呈が腹にめり込み、体内に到達する。
「往生せいや。」
男は口元に歪んだ笑みを浮かべいい放つ。
体内にあるマグマの拳が膨張し、生き物のように体内を駆け巡り体内を焼き尽くす。
「ーーーー」
その痛みは想像を絶するものであり、言葉すら発することは出来ない。体はこのまま痛みを享受することは危険と判断し、意識をたとうとするが、
(このまま意識がなくなればアイツまで殺されてしまう)という強い思いからかろうじて意識は手放さなかった。
男が腕を引き抜くが一滴の血液さえも出ることはなかった。
ヤムチャは何が起こったか頭で処理しきれていなかった。
目の前に立ちはだかったアナゴが、スローモーションでも見ているかのようにゆっくり倒れていくのを呆然と見ていた時は。
「おい、なんでなんだよ。なんで俺なんかを庇ったんだよ。」
ヤムチャの悲痛な嘆きが場にこだまする。
「…ヤムチャを…死なせる訳には…いかないからなあ。」
「だからってお前。お前が死んだら俺は皆になんて言えばいいんだよ。」
ヤムチャは涙を流しながらアナゴに訴えかける。
「ヤムチャ…悪いが…私を起こしてくれ…ないか。このままじゃ…力が入らない。」
「なにを言って、そうか。待ってろすぐに。」
ヤムチャはアナゴの頼みに最初は難色を示したが、何かに気づくとすぐにアナゴの体を起こした。
「ありがとう。ハアアァァアッ。」
アナゴは力一杯叫ぶと、腹に空いた穴が緑色の体液を撒き散らしながら再生した。
「なに!!」
その様を唖然とした表情で男は見ていた。
「ふう、体内の焼き尽くされた部分も再生できたぞぉ。ヤムチャが受けていたら絶対に死んでいたがあ、私なら大丈夫だからできたことなんだぁ。まあ体が勝手に動いていたってこともあるんだが。」
「ああ助かったぜ。ありがとな。」
ヤムチャは安心した顔で感謝を述べた。
「安心するのは早いぞぉ。まだ命の危機にはかわりないんだからなあ。そこで、ここから逃げる為にあれを撃って、少しでいいから時間を稼いでくれえ。」
「分かった。」
既に阿吽の呼吸であった。
「おんどれらはなにもんじゃ。」
我に返った男は問いかける。
「だから、お前が名乗れよ。」ヤムチャは余裕を取り戻しており、飄々と言い返す。
「ワシはサカズキじゃ。おんどれらをあの世に送る男じゃ。」
「俺はヤムチャだ。今回はお前から華麗に死体を奪って逃げ去る男だ。」
ヤムチャは楽しそうにいい放つ。
「させるか。」
「か~め~は~め~波ー。」
ヤムチャは合わせた両手をつきだすと、合わさった手のひらをから、青白い閃光と共に、レーザーもしくはビームのような光がサカズキに向かって空を裂きながら突き進む。
「ぬああぁぁあ。」
サカズキはマグマと化した両手で受け止めているが、マグマを撒き散らしながら後退させられる。
「アナゴ、今だ。気が残り少ない俺じゃもう限界だー。」
「十分だぁ。」
アナゴはヤムチャの肩を掴むと瞬間移動を敢行する。
サカズキが閃光が消えたことにより、前を向くと既にアナゴとヤムチャの姿はそこにはなかった。
――――
ということがあった。
サカズキという男の底知れぬ力だけでなく、あの異常なまでの正義への追求は恐ろしさしか感じられなかった。もう絶対に会いたくはない相手だ。