「起きろ、唇。」
端的に命令する声が聞こえ、心地よい眠りからアナゴは引き摺り起こされた。「まだ暗いじゃないか。ってここはいつも暗いんだったかぁ。おはようクマシー。今はいったい何時なんだぁ。」
まだ眠たそうに目を擦りながらアナゴはおこしにきたクマシーに尋ねる。
「今、5時。」
「5時…。まだあと一時間は寝られるだろぉ。じゃあ、お休みクマシー。」
「」
「ぶるぁぁぁ!!」
――――
「何も殴らなくてもいいだろぉ。冗談が通じないなあ。」
頭のたんこぶを撫でながらアナゴはクマシーに文句をたれる。アナゴはゲッコーモリアに認められたとはいえ、まだ一般ゾンビと同じ地位なので、他のゾンビと共に働くことになっていた。そして、アナゴの指導係ということでクマシーが当てられたのだった。
ということで、スリラーバーク一日目が朝5時から始まるのであった。
「クマシー、今から何するんだぁ?」
「ごみ捨て、そのあとペローナ様の食事作り。」
「家でしていたことと同じだなぁ。」
アナゴは仕事の内容を聞き、自分の恐妻の顔が思い起こされたという。
しばらくクマシーのあとについて歩いて行く。クマシーは常に無口というか、話すのが苦手のようなので話を交わすことはなかった。まあ、これはペローナの言い付けであることはアナゴは知るよしもなかった。
そのクマシーが突如口を開く。
「これ。」
「おいおい。メチャクチャ量が多いじゃないか?」
アナゴの目の前には山のように積まれた大量のゴミがある。
「ペローナ様の物がほとんど。」
「はあしょうがないなぁ。こりゃあこの時間からするしかないなあ。」
ゴミが多すぎるためセル化して働く。
「まさか、ゴミ運びに能力を使うことになるとはなあ。」
黙々とクマシーと働きゴミ置き場に全て運ぶのに約2時間かかった。
ゴミ置き場からの帰り道、アナゴは誰かに声をかけられた。
「おい、新入り。これも捨てておいてくれ。」
「うんあなたは?」
アナゴが振り向くとゴミ袋を持ったズングリムックリの男がいる。アナゴはこの男の名前を思い出す。
「確か、ドクトルホグバック。マッドサイエンティストだったかぁ。」
「フォースフォスフォスフォス。頼んだぞ。」
「これはぁ?」
「シンドリーちゃんが割った皿だ。」
「そうか…。」
アナゴは、妻に仕事を押し付けられていた自分を見ているようで、ホグバックに対し同士を見つけた気分になっていた。
「クマシー先に帰っていてくれぇ。ペローナ様には遅れるといっておいてくれぇ。」
とだけいいアナゴはゴミ捨て場に向かった。
「少し時間をくったなぁ。」
戻ってくるとどこからか呼ぶ声が聞こえる。
「唇~。唇はどこいった。」
「私は唇ではないぞ。ったくペローナ様か。」
ブツブツて愚痴を言いながらペローナの元に向かう。
「あー。唇、どこに行っていた。」
「ペローナ様、私はアナゴと言います。」
「名前なんてどうでもいい。どこに行っていた。」
女王様気質のペローナは全くアナゴの話を聞いていない。それにクマシーから話を聞いていないらしい。アナゴはクマシーに視線を向ける。クマシーはオドオドしながらペローナに何かを言おうとするが
「喋るな。」
とだけ言われている。アナゴはペローナの性格を悟り謝りに謝って場を乗りきった。全く日本での生活と変わりはなかった。
「お前たちはこの樽を海に流してこい。」
アナゴは食事をとり、ひかげぼっこをしていると命じられる。(また仕事かあ。)
と心の中でため息をつくが、ペローナに逆らってもまったくいいことはないために渋渋働くことになる。
「こりゃあ、私が開けた樽と同じじゃあないかあ。」
「おっ、唇はこの樽を開けたのか。じゃあここに招かれたんだな。この樽を開けたものはここに誘導されるようになっていたんだ。」
「そうだったのかあ。」
もうアナゴは周りのゾンビと打ち解けていた。見た目的にも化け物であるので全く違和感もない。アナゴはなかなかゴミュニケーション能力が高かった。
――――
「やっと終わったぞぉ。ここは労働基準法とかどうなっているんだぁ。かれこれ12時間ほど働いたぞぉ。」
アナゴの激動のスリラーバーク一日目が終わったと思われたが、それは甘かった。
「唇~。唇~。」
「おいおいどうなってるんだぁ。どうにかしてくれよぉ。」
「ここか唇。今から海賊が上陸するから捕まえてこい。」
「はい…。」
まだアナゴの1日は終わらなかった。次回アナゴ無双再び。