「其れでは織斑一夏さん、貴女にはこのIS学園の防衛を頼みます」
翌朝私は千冬お姉ちゃんと楯無と共に校長室に行き、IS学園の校長 轡木十蔵さんが私に向けそんな事を言った。
「貴女には先ず緊急時の指揮権の行使を認めます、この指揮権は織斑先生よりも権限は上です、貴女の経験上此れが妥当だと判断しました、ですが教師や生徒は此れに反対だと思います、貴女は知らないと思いますが貴女は死んでも尚世間から出来損ないと言われています」
「正しく死者に鞭を振るうとはこの事ですね、其れでどの様にすれば?」
「実力で全生徒全教師が見守る中で叩き潰して下さい、貴女に挑む教師は織斑先生を崇拝する人間の屑共です、生徒達には少しばかり刺激が強いですが殺しても良いです、所詮IS委員会が送ってきた狗共ですから」
「つまりIS委員会そして生徒に対しての見せしめですか?性格の悪い」
「そうなりますね、そして二つ目は『殺人の容認』です」
「ふむ…」
轡木十蔵の言葉に織斑一夏は興味深そうに聞く、此処と武者の世界の倫理観は非常に違っている、此処の世界は第二次世界大戦が終わり高度経済成長等の都市…国単位での成長を遂げた、高度経済成長により成長を遂げた日本は先の大日本帝國とは比べられない程に豊かになっていた、食事然り職業然り娯楽然りその様な成長を遂げていった。
平和な世界になっているお陰か本来在る筈の本能を自然と抑え込まれていった。
対する武者の世界は織斑一夏が居た世界は所謂戦乱の最中、戦後復興の混乱期である、人間が平然と死に暴力が嵐の様に吹き荒れる世界だ。
そんな世界で生きていた彼女にしてみたら、こんなぬるま湯に浸かっている世界の中で『殺人の容認』と言う法治国家では口が裂けても行ってはならないタブーを言った轡木十蔵に興味を示した、この轡木十蔵と言う老人…一見ただの優しい笑顔を振りまく老人だが、其れは唯の『擬態』数多の死線を潜り抜けてきた一夏の目にはこの世界には似合わない歴戦の老兵に見えた。
「その殺人の容認は言葉通りに取って良いのですか?」
「勿論、幾ら手練れの貴女でも生け捕りは難しいでしょう」
「やれと言われたら出来ます、自害さえしなければ」
「其れは無いでしょう、其処までの忠誠心等が無い彼等彼女等が自害などは出来るとは思えません」
確かに忠誠が無い様な人間がその組織の為に命を立てるのか?
「其れもそうですね、其れで轡木十蔵校長先生…私がこのIS学園の防衛を任されたのは分かりますが、私は教師に擬態すれば良いのですか?」
「いえ、貴女には教師でも生徒でも無い警備員として此処に雇わせて貰います」
警備員…成る程確かに織斑一夏の立場上其れが一番良い、下手に教師や生徒に擬態するよりは遥かに良い。
「警備員ですか、もしや教師や生徒に擬態しろと言われるかと思い緊張しましたよ」
「ははは、其れは済みません一夏さん…ですが流石の私でも其処まで馬鹿な事はしませんよ……私の感ですが貴女は擬態等の工作行為は苦手だと思いましてね」
「むぅ…」
図星だった、自分の師匠 柳生十兵衛の様な隠密は彼女はとても苦手だった、自身は真打劔冑 骨喰藤四郎を纏っての正面突破が彼女が常にする戦術だった。
彼女の中では隠密は忍びや其れに通じる隠密特化の劔冑がすれば良いと考えているからだ。
「ははは、そうむくれないで下さい」
「むくれてないです」
「ならそうしておきましょう……さて織斑一夏さん、早速貴女に仕事をして貰います」
その一言で先まで緩かった一夏の雰囲気が一変する
可憐な美少女から歴戦の武者に早変わりしたのだ
「其れで轡木十蔵校長先生仕事とは?」
「其れに関しては楯無さん説明を」
今迄何気ない様にとんでもなく物騒な話をする二人にドン引きしていた織斑千冬と更識楯無だが、楯無は自分の名を呼ばれ一夏に対して仕事内容を話す。
「……先ず二日後にこのIS学園 1-1クラスに二人転入生が来るわ」
「其れの何処に問題が?」
首を傾げる一夏を流し楯無は続ける
「1人目はドイツ国内最強のIS特殊部隊『シュヴァルツェ・ハーゼ隊』隊長のラウラ・ボーデヴィッヒよ」
「……最強の部隊を率いる隊長を部隊から外して此処に寄越すだなんて余程ドイツは無能なんですね」
「今の時代どの国の上層部は無能よ…この子はまだ良いのよ、問題はフランスから来る二人目の転入生よ」
そう良い一夏に一枚の写真を見せる
その写真に写っているのは金髪に紫の瞳を持つ、中性的な顔立ちの一見すると美少年が写っていた。
「この女の子がどうかしたのですか?」
「………一応男装のつもりよ」
見た瞬間に女と見分けた一夏に一応男装と答える楯無
「…………此れがですか」
「……」
余りにもズサンな変装に唖然とし楯無に問うが楯無は肯定とばかりに頷く
「……其れでこのヤル気の無い男装女子さんは何をするつもりですか?」
「織斑春彦君のIS 白式のデーターの強奪よ」
まさか実の兄が狙われるとは…実の所いつか狙われると思っていたがそれ以上に
「白式?」
楯無が言っていた白式について考える…はて?そんなもの装着していたのか?
「白式…あの刃が無い出来損ないの日本刀の様な物が主力武装のISですか」
頑張って自分の記憶から引っ張りだし何とか思い出す
何故か千冬がしょげているが無視する
「えぇ…その男装女子『シャルロット・デュノア』はこの世界の三大IS企業『デュノア社』の社長の娘なのよ…其れで私達はスパイを送って来るデュノア社に対しそして共謀しているフランス政府に対し報復処置をします、デュノア社とフランス政府はIS学園の土地はあらゆる国家機関に属さず、いかなる国家や組織であろうと学園の関係者に対して一切の干渉が許されないという国際規約があるにも関わらず其れを無視してのスパイの派遣……一夏ちゃん、貴女には『デュノア社の全研究員とデュノア社の社長』の抹殺を頼むわ」
千冬お姉ちゃんが何かを言おうとするが言う前に静止させる、たった一人でやる任務にしては無謀だが……
「諒解しました」
もう此処に所属した以上は無謀や無茶な依頼でもこなすしか無い