比企谷 八幡にとってDMMORPG『ユグドラシル』は何気なく始めたものだった。
何時の間にかゲームの世界観にのめり込み、何時の間にか課金もするようになっていた。
そのおかげで、あの『アインズ・ウール・ゴウン』と同等に戦えるほどのギルドとなり、また自身もモンスター種の一つ『暗黒狼人』の中で上位種に入る『暗黒魔導騎士』となって、ユグドラシルを駆けていった。
だが無情にも『ユグドラシル』はサービス終了となり、八幡はユグドラシルの終了を待っていたが、終了時刻を迎えても強制ログアウトは起こらず、自身もゲームの中に自分の作ったキャラクターとなってしまった。
彼は自身のキャラクターで暗黒魔導騎士『オクタ』でNPCたちと共に異世界へとやってきてしまった。
そして――
『オクタ様、バンザイ! 至高の御身にして強大な力を持つ、我らが主人にバンザイ!』
自身が創りだしたNPCたちに至高の主として讃えられていた。
(あぁ、ここだ)
比企谷八幡は心地よさを感じていた。
NPCたちの讃える声にではない、自分の居場所を見つけられた喜びだ。
(あいつらや小町とは違う……。 ここにいるこいつらは俺を求めてくれている、こいつらは過去の遺物なんかじゃない、俺の作った想いの結晶が――――今ここにある!)
八幡は、自分はここにいていいのだという喜びに満ちた。
(でも、こいつら俺に対して忠誠高くない!? 目がマジだよ!? 忠誠を誓ってくれるのはありがたいけど、失敗したらどうしよう俺!?)
……しかし、中身はどうしようもなく怯え切っていた。
* * * * *
そして、この異世界にやってきたのは八幡だけではなかった。
一つは『アインズ・ウール・ゴウン』――しかし、八幡たちとは全く異なる大陸と地名であったため、そう簡単に出会うことはなかった。
もう一つは――。
「……ゆきのん、わたしたちこれからどうなるのかな」
「分からないわ。ただ私たちはもう元の世界には戻ることが難しいということね……とりあえずは情報ね」
「はぁ? なんであんたが仕切っているんだし」
「まぁまぁ、優美子」
「いやー、大丈夫っしょ! 葉山君もいるし、ユグドラシル時代じゃ俺らだってレベル50でチーム組んでたんだし!」
「さっすが! 葉山先輩とついでの戸部先輩! 頼りにしてますっ!」
「ぐ腐腐腐っ、ここの世界はどんなのが見れるのかなぁ」
人間種としてユグドラシルプレイヤーとしてチームを組んでいた葉山達と、一色と雪ノ下、由比ヶ浜たちだ。
そして彼らは知らない、異世界の残酷さを。
それをこれから見ることとなる――弱きものが虐げられ、強き者しか生きていけない弱肉強食の世界を。
「おい! なにやってんだとどめをさせ!」
「っ、む、むりだべ、こんなの……っ!」
「あんたらさ、どんだけお嬢様、お坊ちゃんなんだよ……邪魔だサッサと消えろ」
「っ」
「ま、待ってくれ!」
「ねぇ、こいつらも殺せないってどういうことなの? 殺さなきゃ、自分たちもやられるんだよ!?」
「っひぃ」
現代では全くない残酷さと冷酷さに、彼らは生きていけるのだろうか……。
八幡たちが冒険者として旅を続けていく中で、偶然大陸を渡ることとなる。
そして、ある出会いをした、それは。
「お、オクタくん、なのか!?」 「も、モモンガさん!?」
死の支配者:オーバーロードであり、ギルド対戦でよきライバルとして戦いを繰り広げた人物――モモンガ。
そしてオクタこと八幡にとっては仮想世界やリアルにおいても尊敬すべき人物であった。
「お久しぶりね、変態ヒドインのアルべド――相変わらず腐った女の臭いで良かったわ」
「久しぶりね、ゴキブリ触覚のセレナ――主に対して失礼ないことばかりして嫌われなくってよかったわぁ」
またNPCたちの出会いもあった。
こちらは互いの髪を引っ張りあい、にらみ合いながら喋っていた。
そんなNPCたちを見て、思わずため息をついた二人であった。
己のやり方を否定され、他人を信用しないがゆえの行動をとり続けた少年。
その日狼人という異業な姿になり異世界に飛ばされた少年は、獣人となり、否、暗黒魔導騎士となった。