嘘短編 暗黒魔導騎士   作:春雷海

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嘘短編 暗黒魔導騎士 3

 

ガシャ……ガシャ……

 

金属が擦れ合う音。

 

背後から近づいてくるその音に冒険者という立場からかけ離れた存在――ワーカーたちは一様に振り返る。

視線の先には暗闇しかない――だが徐々にそして確実に、音は近付いて来て、影が見えるようになってきた。

 

今までいくつかの修羅場を乗り越えてきた彼ら、しかしこれほどの悪寒を感じた事があるだろうか――本能的な恐怖と緊張が湧き上がってくる。

地獄からの使者の如く、一歩一歩ゆっくりと近づいてくる。

 

そして遂にその全容が露になった――全身を黒紫色の鎧で纏う狼の騎士だった。

 

「……愚か者どもが」

 

人語を話せることで交渉はできると思った冒険者一味のリーダーは口を開こうとした瞬間。

 

「我が創ったギルドに無断で踏み込んできたクズどもめ――死を持って償え」

 

狼の騎士――オクタは怒りを込めながらも冷酷に言い放つと、その手に持っていた魔剣を掲げる。

するとその刀身に強力な魔力が練り籠められていくのを感じた――しかもそれは恐ろしく速い!

 

リーダーが全員に逃げるよう言う前に。

 

「失せろ、ダークカノン」

 

魔剣の切っ先から放たれた漆黒と紫の魔力の奔流によって、リーダーたちは意識を失った――二度と目覚める筈のない闇の中へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒッキー? ヒッキーだよね!?」

 

「……」

 

嘗て現実世界の『本物』になりえたかもしれない少女――由比ヶ浜 結衣と冒険者ギルドで偶然の再会。

 

しかし、オクタ――いや人化スキルアイテムにて、現実世界と同じ『比企谷八幡』の姿似を借りて冒険者として働いている『ロンリー』。

彼は何も答えずに黒マントとオリハルコンのプレートを翻しながら、歩き始めた。

 

「ま、待ってよ、ヒッ――!」

 

由比ヶ浜はロンリーに再度話しかけようと歩み寄ろうとしたが、足を引っかけられ無様に転んでしまった。

一体何なのかと由比ヶ浜は視線を向けると侮蔑な目で睨みつけている同僚であるはずの冒険者たちだった。

 

「シルバー如きがなにオリハルコンクラスのロンリーさんに烏滸がましく話しかけているんだよ」

 

「しかもお前あれだろ? モンスター退治で怯えて逃げたチームだろ、覚悟もなんもない」

 

「一部じゃ、怯えて引きこもってんだろ。 そいつらを引っ張って仕事しろよ」

 

 

「……」

 

ロンリーは救おうか迷ったが、それはすぐに考え直して辞めた。

由比ヶ浜をここで助けるメリットがない――それに彼女たちの噂をここのギルドの受付嬢や冒険者たちからも聞いている。

 

曰く、モンスター退治をまともにできないメンバーが多い。

曰く、口喧嘩ばかりして仲間との協和が取れず、他の冒険者たちの足を引っ張っている。

曰く、三人だけ真面に働いていて、彼女だけは好感が持てる――だが未熟すぎる。

 

等々あまり良い噂が聞こえなかった。

別に助けてもいいのだが、それでは彼女たちの立場が余計に悪くなる可能性が高い。

 

それにここで冒険者をやっているということは、リアルでいう社会人的立場のようなものだ。

ロンリーは同僚であるものの、彼女たちの上司でもなければギルドメンバーでもない。

 

自分が起こした責任は自分で拭うべき――そう自分で解釈した後、ロンリーは由比ヶ浜を一瞥した後、冒険者ギルドから出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……一つ訪ねたい」

 

「む? 何ですか?」

 

ロンリーはギルドの依頼で森林にいた。

 

森林に住み込んでいる魔獣を倒すという依頼で。そこには確かに魔獣はいた……いたのだが。

 

「お前の種族と云うか種類って――スコティッシュフォールドって言わないか?」

 

その姿はロンリーが知るところ、スコッテイッシュフォールドという生き物に酷似していた。垂れ耳で円らな瞳、スマートながらも毛皮でモコモコな肉体。

 

しかし人を凌ぐほどの巨体差は持ってはいないだろう。

 

「にゃぅ? そうなんですか? というか私の種族知っているのですかにゃう?」

 

「うん……知っているというか何というか」

 

まさかリアルでは人気ナンバー1の飼い猫だとは言えない……ロンリーもカマクラという飼い猫よりも、そっちのほうが良かったというのは秘密だ。

 

しかし、それよりも。

 

(魔獣と云うから期待をしていたのに……スコッテイッシュフォールドって、猫って、何なんだよこの世界の基準はよ)

 

魔獣と云うので期待をしていたのだが、まさかの猫と云うオチにロンリーはいじけてしまい、武器であるロングソードで土を弄りながらため息をついた。

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