嘘短編 暗黒魔導騎士   作:春雷海

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基本的にpixivで先行公開しているので、先読みしたい方はそちらをご覧ください。
こちらでは遅めに投稿致しますので。


嘘短編 暗黒魔導騎士7

「亜人種の村?」

 

「はい。オクタ様の【ペンドラゴン】の領地増加と強化計画の為に、殲滅してはと進言をいたします」

 

玉座の間にて、セレナの進言を聞いたオクタは顎を指に乗せて考えに入る。

 

ギルドの【ペンドラゴン】が転移した場所は見渡す限りの丘陵。

以前にギルドへ不法侵入をした冒険者擬きたちを惨たらしく殺害後、豊富な自然を利用し更にはエイナとマイナが持つ魔法を発動することで、隠ぺいすることが出来ている。

 

だが、ユグドラシル時代と比べるとその領地や資源が雲梯の差がある。

あちらの世界ではギルドに出るだけで豊富なアイテムや資材が落ちていたために、拾えば拾う程アイテムが増えていった。この世界に移転してからは、それと比べ大した効果もないハズレアイテムばかりだ。

 

更にはペンドラゴン周辺で育成していた素材系アイテムもすべてなくなったために、現在は資材不足が課題となっている。

 

また強化に関してもそうだ。

POPするモンスターのみではレベルや配置的にも警護に当たるのは難しい。魔導守護騎士には直属の部下も存在しているが、彼らを総動員しても足りない部分もある……。

 

(セレナの進言にはご尤もだが、亜人種の村の連中を殲滅ね……)

 

正直あまり気が進む案件ではない。何も関係ない亜人種とはいえ、しかも己がギルドの為にその村を襲っては殲滅するなど、普通の人間では全く考えられない程の非道である。

 

……しかしオクタは即座に比企谷八幡という人間としての意識部分を掻き消した。嘗て人間の頃に考えていたことなど、この世界では必要ない。

 

 

今ここにいるのは暗黒魔導騎士・オクタ。比企谷八幡では断じてない。

 

 

(もうこの世界は、あそこと違うってのに、俺はどうしてこう考えちまうんだ)

 

オクタは自分の頭を軽く叩き、即座に顔を上げてセレナに一言。

 

「ガイアを呼べ、亜人種の村の殲滅をあいつに託す。そしてあいつに指令を与えた次第――俺は一度冒険者ギルドに戻って王国や他国の動きを確認してくる……なぁにまつりが開催する前日には戻ってくるさ」

 

 

* * * * *

 

 

「ひ、比企谷! 比企谷なんだろう!」

 

「……」

 

冒険者ギルドで王国や他国の情報収集するもこれといった内容は全くなく、ついでの仕事の有無を確認、オクタことロンリーはしがみつかれていた。

 

嘗てあちらの世界で少しばかりの交流があった葉山隼人に。

 

しがみついている葉山は希望を見出したかの如く、若干痩せこけた表情でロンリーに饒舌に話しかける……対するロンリーが無表情なのにかかわらず。

 

やれみんなが大変である。やれ雪ノ下や一色は何処かへ行ってしまい、別れてしまった。

やれ海老名が殺された――これについては別に驚くことでもない、ロンリーが嗾けたことなので。

 

だが、そんな話題よりも気になることが一つ――臭い。葉山の身体から異臭を漂い、正直傍にいるのも苦痛なほど。周囲を見ると、冒険者たちもそれを嗅ぎ取ったのか迷惑そうな表情を浮かべており、鼻を摘まんでいる。

 

……どうやらあちらと比べて、ここでは厄介者扱いされているらしい。

 

そんな彼と話すこともなければ、関わりを持つことでこちらに不利益のみしか齎さないのであれば――――ロンリーにとっては不必要な存在だ。関わるべき相手ではないと判断して、腕に力を込める。

 

「なっ、なあ! 何か言ってくれっ、君もこの世界にやってきたなら、俺と一緒に!」

 

媚びるような笑みを浮かべて顔を近寄らせる葉山に気色悪さを覚えたロンリーは一言。

 

「邪魔だ」

 

懐かしさも再会の喜びを全く感じないロンリーは寧ろウザったく感じて、葉山を押し剥がし、力強く押す。

葉山は押されたことで尻もちついただけでなく上手く受け身すら取れなかったのか、身体全体で床を転がった。

 

無様としか言いようがない姿であるが、興味もなんともないロンリーはすぐに顔を背け、そのままギルドから出ようと足を進める。

 

「まっ、待ってくれ、比企谷ッ! 俺を、俺を置いていか――!」

 

そんなロンリーに縋り求めるように腕を伸ばし、慌てて身体を起き上がらせて駆け寄ろうとするも――その身体は強制的に抑えられてしまった。

 

「お前何やってんだっ!? あの人はお前じゃ話しかけることも烏滸がましい、オリハルコンクラスだぞっ!」

 

「ってかおまえ、くせぇ! 何したらこんな臭いになりやがるんだっ!」

 

「っはなせ、放してくれぇ! 比企谷ぁ、頼む助けてくれぇぇっ! 俺が、俺が悪かったからっ、地獄(ここ)から、俺をッ俺たちを出してくれぇぇえええ! 俺にも、お前と同じ力をぉおおっ!」

 

葉山隼人は叫んだ――助けてほしい、もう辛い事や苦しいことをしたくない。そして何より、簡単に人の命が消えるこの世界から逃げたいっ、それが出来なければ力をッ! 

 

 

幾数人の冒険者にその身を抑えられ痛みに耐えながら葉山は泣き叫んで、ロンリーに腕を伸ばす。

 

 

だがそんな葉山の叫びにロンリーは反応することなく、小さく何かを告げるように口を動かしていた。

 

それを葉山はこう聞こえたように感じた――「ざまあみろ」と。

 

「うああああぁぁあああああああっ、比企谷ぁあああああああ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、葉山が聞こえた言葉など全くもっと勘違い。

 

ロンリー……いやギルド【ペンドラゴン】をもつオクタが告げた言葉は、亜人種の村に向けての圧倒的武力を見せつけるためのものだった。

 

「全守護騎士たちよ、直属部下たちを半数を亜人種の村へ、モンスターたちやアリスに魔法武器を装備させろ――折角だっ、派手にやるぞっ」

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