豊臣秀吉 「日本史上最も優れた天下人」   作:藤種沟

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秋、涼しくなってきました。

家の中より外の方が涼しいんですよ。でも今日は日曜日。外に出たくない………。

そんな悩ましい季節。


賤ヶ岳の戦い

「信長様………」

 

俺は感傷に浸っていた。

 

俺は京の大徳寺という寺で信長様の葬儀を執り行っていた。

 

本能寺で燃えた信長様の遺体に代わって木像を使用し、それを豪華な棺に入れ、ねんごろに弔った。

 

「信長様………信長様の夢、この猿めが成し遂げて見せまする。」

 

俺はそう棺に語りかけたものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし………、

 

「皮肉なもんじゃなぁ………。」

 

俺はそう呟いた。

 

「なぜでございますか。」

 

官兵衛が聞いてきた。

 

「だって信長様の意志を継ごうとしている者が、まさか信長様の御子と戦わなくてはならなくなったんだからな。」

 

そう。心配していたとおり、織田家は二つに割れてしまった。

 

ひとつは越前北ノ庄城を本拠にする柴田勝家の勢力。

柴田勝家と戦うのは全く問題ない。元々柴田勝家の事は嫌いだったしな………。

上杉攻めの時もいろいろあったし………。(詳しくは第十話参照)

 

柴田勝家の方には伊勢半国を有する滝川一益、そして美濃岐阜城を本拠とする信長様の三男、信孝が組している。

 

一方、我々羽柴家の味方をしてくれる勢力は丹羽長秀殿、池田恒興殿、そして毛利攻めの時、信長様に先立って俺のところに援軍に来てそれ以来俺と共に行動している堀秀政殿、さらに元々明智光秀の家来だったが俺のもとに寝返り、俺と共に行動している筒井順慶殿、細川藤孝殿、中川清秀殿、高山右近殿、そして信長様の次男で弟の信孝に対抗意識を持っている信雄殿などである。

この同盟軍は計十四カ国の領地を持ち、たかだか計五カ国しかない柴田勝家の同盟軍は我々に太刀打ちできない。

 

今から、柴田勝家のいる北陸が雪で閉ざされているうちに滝川一益と織田信孝を潰そうと我々は考えているのだ。

 

そして………

 

「吉継。」

 

「何でしょう秀吉様。」

 

大谷吉継。彼は俺が長浜城の城主だった時に小姓にした若武者だ。長浜で家来にした若武者のなかでも頭がキレる方だ。

 

「この間柴田勝家にやった長浜の地は長く羽柴のものだった。それに今長浜を守っている柴田勝豊という男、最近勝家に不信感を抱いている。少し脅せば投降するだろう。」

 

「分かりました、早速柴田勝豊を投降させてみせましょう。」

 

しばらくして吉継から柴田勝豊投降の報せが届いた。

 

「よし、次は美濃だ!織田信孝を倒すぞ!」

 

と勇んで吹雪の中を進み、岐阜城に攻めかかったが信孝は織田家の当主、三法師様を差し出して講和をすると言ってきた。

おそらく柴田勝家が北陸の雪が解けて動けるようになるまでとりあえず我慢しようとしているのだろう。

これでは信孝を攻められない。

 

そこで俺は方向を変え、伊勢の滝川一益を攻めた。

しかしなんとか本拠の桑名城にまで追いつめたが最後まで滝川一益を倒せなかった。

さらに柴田勝家が滝川一益を救うべく雪解けを待たずに動き出した。

 

「これは滝川一益どころではないな。」

 

俺は織田信雄殿に滝川一益を牽制させたうえで全軍を長浜に引き上げた。

 

勝家と決着をつける日がやってきた。

 

俺はそう考えた。

 

そこで長浜城の城主をしていた時に家来にして今や立派な若武者に成長した者達を呼んだ。

 

ぞろぞろ………

 

「皆集まったか?」

 

「はっ集まりましてございます。」

 

答えたのは三杯の茶をたててくれた石田三成(幼名佐吉)だった。(三杯の茶の話は第九話参照)

 

「うむ。では皆の者、よく聞け。」

 

俺はゆっくりと話し始めた。

 

「おぬし達はこれからの羽柴家を支える重要な侍だ。此度の戦は俺が天下統一に近づく重要な戦。諸将の働き、期待しているぞ。」

 

「おう!!」

 

若武者達の荒々しい声が響く。

 

「三成!」

 

「はっ。」

 

「おぬしは柴田軍の偵察をせい。」

 

「御意。」

 

「清正!(加藤清正。通称虎之助)正則!(福島正則。通称市松)」

 

「はっ。」

 

「おぬしらは槍で柴田軍を圧倒せい。」

 

「おう!」

 

「他の者もその働きを大いに期待している。頑張ってくれ。」

 

「おう!」

 

羽柴家にも良い武将が育った。

石田三成、大谷吉継、加藤清正、福島正則………。

 

その昔人材が乏しくて泣いていたのが嘘みたいだ。

 

ただ加藤清正や福島正則などの武断派は石田三成や小西行長、黒田官兵衛などの頭脳派とあまり馴染めぬらしい。

特に石田三成は歳が近いためよく喧嘩する。

仲がいいのか(喧嘩するほどなんとかって言うけど………)悪いのか………。

 

まぁ武断派と頭脳派の調整は小一郎や蜂須賀小六がやってくれるからいいけどな………。

 

 

 

 

 

 

 

しばらくしてから俺は美濃に行った。

 

柴田勝家が近江まで来たのに呼応してまた織田信孝が挙兵したのだ。

 

柴田勝家は小一郎に任せ、俺は美濃、大垣城に入った。

 

しかしその途端、柴田軍の佐久間盛政が小一郎らの陣を攻撃し、大岩山砦を攻撃。砦の中川清秀は討死し、砦は陥落した。

 

「ぬぅ。なんとかせにゃ………。」

 

俺は一息ついてから言った。

 

「三成、これより近江に引き上げる。おぬしは先に行って道中で食糧や物資が調達できるようにし、道中の集落に食糧と松明を用意させよ。そちらの方が物資を運びながら行くより圧倒的に速い。」

 

「御意。」

 

「よし引き上げだ!全速力で駆け抜けよ!」

 

俺は本能寺の変の時、急いで畿内に引き返し、明智光秀を討った時を思い出した。あの時も全速力で駆け抜けたんだよな………。

 

「ワアアアア!」

 

我が軍は雄叫びを挙げながら駆けた。

 

柴田勝家さえ倒せば織田信孝も滝川一益と一気に倒せるはずだ。

 

しかし急がねば小一郎がやられてしまう。

羽柴の主力はこちらなのだから。

 

「ワアアアア!」

 

そうこうしているうち小一郎の陣が見えた。

 

そして佐久間盛政の軍に攻めかかった。

 

この時、秀吉は大垣から主戦場賤ヶ岳をのぞむ木之本までの約五十二キロを五時間で駆け抜けたという。

 

さらにこの時、柴田軍の武将、前田利家、金森長近、不破勝光が戦線から離脱。佐久間盛政の軍は敗れ、勝家も敗走。

 

俺はこれを追撃し、勝家の本拠、北ノ庄城を落とした。

 

勝家、そして勝家に嫁いだお市の方は自害。

 

 

 

 

 

 

 

「終わった………。」

 

なんだか全身から力が抜けていくような気がした。

 

その後、織田信孝を自害に追い込み、滝川一益を降伏させた。

 

もはや旧織田家の家臣で俺に対抗できる人間は居なくなった。

 

「信長様、信長様の夢はこの私が継ぎまする。」

 

俺は改めて思った。

 

もはや天下統一ができるのはこの俺しかいないのだ。

 

俺は今、全国の侍で一番天下統一に近いのだ。

 

俺は改めてこれを実感した。

 

いざそうなると実感しにくいがそれが現実なのだ。

 

 

 

 

秀吉は天下統一への階段をまた一段登った。

 

 

 

 




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