豊臣秀吉 「日本史上最も優れた天下人」   作:藤種沟

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休業期間も終わり、張り切ってまた頑張りたいと思います。
これからもよろしくお願いします。(^○^)


藤吉郎の苦悩

さて信長様と京に入った足利義昭殿は「征夷大将軍」に任命され、室町幕府第15代将軍となった。

 

将軍をつくった武将として信長様は日本一の名誉、権力を手に入れた。

 

さらに信長様は

 

「これからはちゃんとした御所(将軍や天皇などの居所)が必要だ。」

 

といって尾張、美濃、近江、伊勢(今の三重県)、三河、畿内、若狭(今の福井県西部)、丹後(今の京都府北部)、丹波(今の京都府、一部は兵庫県)、播磨(今の兵庫県南西部)の大名、武将を上洛させ、御所を造らせた。後の二条御所である。

 

信長様は、早くもそれだけ多くの人夫を集められるだけの権力を手に入れたのだ。

 

もう信長様に敵う奴はいない………

 

俺は信長様のあまりにも速い勢力拡大が嬉しかった。戦の無い世が、近づくのだから。

 

 

 

 

 

 

ある時、俺はある話を耳にした。

 

 

信長公、摂津(今の大阪府、一部兵庫県)尼崎焼き打ち

 

 

それは突然の出来事だった。

尼崎という町は町人の自治の町で、どこの大名の支配下というわけでもないが、信長様に逆らったもんだから焼き打ちにされたらしい。

 

信長様は怒ると何をするかわからない。家来を殴るなんて日常茶飯事で、俺も小者時代に、よく信長様に殴られたものだ。

 

信長様は行動が速いだけに恐ろしい。

 

最近はそんな信長様に足利義昭殿も不満のようだ。

 

確かに今は信長様に敵う奴はいない。

しかしいつ信長様に対する不満が爆発するか………。

 

そんな心配をよそに信長様は快進撃を続ける。信長様は、上洛の命令に逆らった朝倉義景を討つ為、越前に攻め入った。次々と朝倉勢を倒していき、朝倉も、信長に一方的にやられる…………

 

 

 

 

 

 

 

はずであった。

 

鼻歌まじりで進軍する信長様のもとに信じられない情報が飛び込んできたのである。

 

 

近江の浅井長政、裏切り

織田軍を奇襲

 

誰も信じられなかった。

ただえさえ朝倉と戦っているのにその上浅井に攻められたら挟み討ちされちまう。そもそも我々織田家が織田家の本拠、尾張、美濃、そして京の都からも離れた越前で戦ができるのは浅井の応援があってこそだ。

その浅井に裏切られたのだから信長様も勝てる訳がない。

 

そもそも浅井長政といえば信長様の妹、市様の婿で、信長様の義理の弟にあたる。

信長様の上洛の際も協力し、信長様に厚い信頼を寄せられていた男だ。

 

「わしは信じぬ‼︎」

信長様は最初は信じなかった。しかし、たくさんの物見がやってきては浅井長政の裏切りを報じていた。

 

そして、これを受け取って、信長様は浅井の裏切りを確信したのだ。

 

 

 

「信長様‼︎浅井に嫁いだ市様より、このようなものが届きました‼︎」

 

それは、両方の口を縛った袋に小豆が入っていたものであった。

 

「……なんじゃこれは……」

 

俺もその袋の意味が分からなかったが、隣にいた軍師、竹中半兵衛が俺の耳元で囁いた。

 

「あれは袋の鼠、という意味でござる。」

 

「⁉︎」

 

「あの小豆は鼠を表しているのでござる。袋の鼠、いわゆる浅井と朝倉の挟み撃ちにあうぞ、という市様の報告では……」

 

それを聞いた俺はすぐに信長様にそう伝えた。

 

「……」

 

信長様の目が、悲しげに光る。

 

「生涯で二度も弟に裏切られるとは……」

 

「え?」

 

「やむをえん!撤退じゃ!」

 

信長様はこうなると行動が速い。

 

唖然とする俺を尻目に、物資も何もかもおいて一人で京に撤退してしまった。

 

「……」

 

しばらく俺はそこに立ち尽くしていたが、はと我に返り、皆に信長様の撤退を告げた。

 

問題は残された家来達だ。なるだけ被害を少なくして、自分たちも撤退せねばならない。何より一人で飛び出してった信長様に早く追いつかないと信長様を護衛する人間がいない。

 

しかし、今から全軍撤退となると、殿(敵の追撃を防ぐ部隊)を置かなければならない。

誰がそんな危険な役目をやるものか!

 

織田家の家来は皆そう思った。

 

誰もやりたくないのは当然だ。殿を務めるとなれば、敵の追撃をもろに受けることになる。自分の軍は下手すりゃ壊滅、もっと悪けりゃ自分が死んじまう。

 

長い沈黙………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私がやります!」

 

俺は覚悟を決めて名乗りを挙げた。

そんな俺を、ある同僚は哀れみの目で見つめ、また、ある同僚は尊敬の目で見つめていた。

 

俺は半兵衛を連れて自分の陣に戻り、弟の秀長、蜂須賀小六に事の次第を伝えた。

 

「浅井が攻めてくる………」

 

「何?!それはまことか兄者?!」

 

いつもは冷静な秀長も今回ばかりは息が荒い。

 

「しかし何故………?」

 

「………」

 

そんなこと考える暇もなかった。

何故浅井長政は信長様を裏切ったのか?

浅井長政は信長様の義理の弟。不足があるはずはない。

 

「それはおそらく………」

 

いつもは物静かな竹中半兵衛が口を開いた。

 

「朝倉との同盟があるからでしょう。」

 

「………!!!」

 

そうか、浅井と朝倉は昔から同盟を結んでいる。

浅井と朝倉はこの戦国乱世を助けあって生き抜いてきたのだ。

だから浅井と織田が同盟を結ぶ時に、

 

「織田家は朝倉家を勝手に攻めない」

 

という条件をつけたのだ。

しかし信長様は勝手に朝倉を攻めたもんだから浅井は怒って攻めてきたのだ。

 

俺は急に信長様が恐ろしくなった。

義理の弟との約束を忘れ、怒った弟に攻められたら家来を置いてさっさと自分だけ退却する………。

 

俺の憤りを感じ取ったのか半兵衛は

 

「たとえ負け戦でも大将が生きていれば巻き返せる………

そう考えたのでしょう。

だから信長様はたった一人で退却したのです。」

 

と慰めをいった。

 

「そんなことは分かっとるわ!………分かっとる………」

 

 

 

「まあ、元気を出してください、いつもの殿らしくありませんぞ。

とにかく今はどうやって敵を食い止めるか、でござる!

さ、殿、我々は何をすればいいんですか?」

 

蜂須賀小六が元気にいった。

こいつもこいつなりに俺を元気づけようとしているのだ。

 

「とりあえず我が軍は金ヶ崎の城に入る。」

 

俺は元気よくいったつもりだがやはりどことなく力のない声でいった。

 

俺は胸の内の不安と怒りの入り混じったようななんとも言えない気持ちを抑えながら、軍の士気を上げる為、笑顔を装いながら金ヶ崎の城に入った。

 




次話をお楽しみに〜(☆:☆)
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