豊臣秀吉 「日本史上最も優れた天下人」   作:藤種沟

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最近暑くなってきましたね、
熱中症には気をつけましょう。


浅井、朝倉との戦い

さて俺は金ヶ崎の城に入った訳だが殿(しんがり)っていうのは楽じゃない。

 

残っている織田軍と援軍にきてくれた徳川家康殿の軍(信長様と徳川家康殿は同盟を結んでいる。)が退却し終わるまで敵の軍を食い止めなければならない。

 

もちろん敵はここでいっきに織田軍を殲滅させたいのだろうから必死で追撃してくるだろう。

それを我が木下軍だけで食い止めなければならない。

 

いわゆる捨て駒だ。

 

下手すりゃ大将である俺も死んじまう。

 

ま、今さら何を言っても遅いがな………

 

 

 

「さて、半兵衛、どうやって敵を食い止めるかな。」

 

俺は木下軍きっての知将、竹中半兵衛と、策を練っていた。

 

「う〜む………」

 

半兵衛も悩んでいる。

この竹中半兵衛という男は、信長様も落とすのに手こずった稲葉山城を、たった十二人で陥落させた人物だ。その時は奪った城を斎藤家に返したと聞いている。そうして隠居していたところを、俺が声をかけて登用した人物だ。

 

今回もきっと、素晴らしい策を練ってくれるに違いない。

 

「まず松明をありったけ用意してください。

そしてたくさんの旗も立てましょう。こちらの軍が多いと見せかけるのです。」

 

「なるほど………」

 

確かにこちらの軍が多いと勘違いされれば敵も迂闊には攻めてこないだろう。

半兵衛との作戦会議が終わり、俺は城を見て回った。

やはり兵の元気がない。

当たり前といえば当たり前のことだ。

たった七百の兵で浅井、朝倉連合軍を食い止めるのだから。

 

くどいかもしれないが、下手すりゃ死ぬのだ。

俺はそんな皆に声をかけた。

 

「皆元気がないな〜………」

 

兵達が顔をあげた。

 

「大丈夫だ、浅井朝倉など烏合の衆だ。我ら木下軍にかかればすぐ逃げだすさ。俺を信じてくれ。」

 

こんなの嘘だ。

大丈夫だという保証はないし、浅井朝倉連合軍はれっきとした精鋭だ。いやむしろ我が木下軍の方が烏合の衆だ。現に戦を恐れて、退却する他の織田軍にまじって逃げ出す奴もいた。

 

とても信じられるものではなかった。

 

しかし、この戦ただえさえ不利な戦なのだ。

兵の士気が勝敗を分ける。

 

こうでも言わないと士気は下がる一方だ。

 

「大丈夫だ、あと少ししたら俺らも退却だ!」

 

ざわめきの中から

 

「本当か?!」

 

「家に帰れる!」

 

という声が聞こえてきた。

人間辛いことがあった時、それの終わりが見えるとホッとするものだ。

 

 

もう織田軍も徳川軍も退却し終わっただろうか。

 

我々も敵に気づかれないうちに退却しなければ。

 

幸い、敵は予想以上に織田軍が速く退却してしまったから追撃の準備に手間がかかって攻めてこない。

松明や旗の効果もあろう。

 

我々の仕事は織田軍が皆退却するまで敵を食い止めるのであって何日もずっと城に立て籠もることではない。

 

 

 

 

 

「さあ、我らも全速力で駆けるぞ!」

 

いよいよ木下軍の退却だ。

敵もそろそろ追撃してくるだろう。

しかし我が木下軍もできるだけ被害を抑えて退却したいところだ。

(ま、そう簡単にはいかないかな………)

 

「ヤァ!!」

 

俺の掛け声で一斉に木下軍は金ヶ崎の城を出た。

案の定、やっと準備できた敵軍が木下軍を攻撃してきた。

後ろからやってくる敵を鉄砲で撃ち、また走る………

これの繰り返しでなんとか俺は逃げ切った。

 

だが、他の木下軍の連中はもはや散り散りになり、

気づけば俺は一人で山を走っていた。

 

 

 

なんとか生き延びた俺。

幸い、小一郎や半兵衛、小六などは無事だった。

しかし、木下軍の人数は明らかに減っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後、瞬く間に軍を立て直した信長様は

 

「長政!よくもわしを裏切りおったな!今すぐおぬしの討つ!

首を洗って待っておれ!」

 

と言って浅井長政の居城小谷城を攻撃した。

 

「先に約束破ったのはあんただろーが。」

 

という声は信長様には全く聞こえない。

 

我々木下軍もこれに参加し、村などを焼き払った。

 

これに対し、朝倉も同盟相手を助ける為に出陣。

 

こちらには徳川殿の援軍も到着。

 

姉川という川を挟んで織田徳川連合軍と浅井朝倉連合軍がにらみあうことになった。世に言う姉川の戦いである。

 

数では織田軍が有利だったが、浅井軍は強かった。総大将の長政が槍を振るって戦い、浅井軍の武将磯野員昌は十三段ある織田軍の陣を突進してきて、織田軍の陣十一段目まで突破してきた。

 

信長様のいる本陣はかろうじて守ったが、簡単に十一段目まで突破されるなんて………。

 

「織田軍はなんと弱いのだろう。」

 

と俺は思った。

 

織田軍は俺のような農民の子まで家来にする。俺のようにどこからきたのかわからないような奴も織田家にはたくさんいる。

俺もそうだし、滝川一益殿、明智光秀殿なども出自のよく分からない人物だ。

もっと言えば織田家の筆頭家老の柴田勝家殿も、もともと信長様が殺した信長様の弟、信行の家来だ。

 

だから、織田家の家来達には団結力がまるでない。皆それぞれの個性が強すぎるのだ。

ま、その分それぞれが競い合って成長するから一概にそれが悪いとは言えないがな………。

 

 

 

それに比べて徳川軍は強い。同じ三河で生まれ、同じ三河で育った三河武士たちの団結力は素晴らしい。あっというまに朝倉軍を蹴散らしてしまった。

そして、朝倉を蹴散らした後、徳川軍は浅井軍に猛攻を加えた。

 

そうなると数の少ない浅井軍はくずれ、続々と小谷城へ退却した。

 

すかさず織田軍は浅井軍を追撃。城下に火を放った。

 

しかし小谷城は高い山の上にあり、一気に攻めるのは難しいので、横山城という城に一旦引き揚げ、横山城から小谷城を監視することにした。

 

そしてその横山城をこの俺、木下藤吉郎秀吉が守ることになった。

 

 

 

 

 

 

朝倉も浅井もまだ滅びた訳ではない。

 

さらに京の足利義昭殿も最近は信長様に不満があるそうで不穏な動きが多い。

 

 

織田家最大の危機が今訪れようとしていた。

 




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