豊臣秀吉 「日本史上最も優れた天下人」   作:藤種沟

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夏休みがはじまって小説を書く時間が増え、投稿ペースが少し速くなるかもしれません。(でもあくまで不定期なのであまり信用しないでください☆)


包囲網崩壊

比叡山を焼き打ちの翌年、信長様は一旦本願寺と和睦し、浅井のいる北近江に進撃した。

俺も浅井の家来の城を攻めとった。信長様によくやった、と褒められた。しかし、俺の心は複雑であった。

 

この時、地元の寺が農民達と共に山に立て篭っていたので信長様に命じられそこの一揆勢も多数切り捨てた。

 

信長様は浅井との戦いに備え、虎御前山というところに城を築くよう命じた。

 

これに対し浅井は朝倉に援軍を求めたが、朝倉は山に登ったまま出てこない。

浅井の苦労もむなしく城は完成した。

 

そしてそこの城を俺に任せ、信長様は横山城に引き上げた。

 

浅井や朝倉が攻めてくることもあったが別にどうってこともなく、撃退した。

 

 

 

 

 

近江で浅井を圧倒している間にとんでもない情報が飛び込んできた。

 

甲斐(今の山梨)の虎と呼ばれている大大名武田信玄が織田家の同盟相手、徳川家康殿の領地に侵攻してきたというのだ。

 

読者の中にも武田信玄のことも知っている方も多いと思う。

 

実の父親を追放し甲斐を乗っ取り、信濃(今の長野県)を侵略、元々同盟相手だった今川家を攻め滅ぼし今や甲斐の虎と呼ばれるに至った男である。

おまけに彼の率いる騎馬隊はめっぽう強く戦国最強と呼ばれるほどだ。

 

その武田信玄が足利義昭の呼びかけに応じ信長様を倒し、上洛する為、甲斐を出てまず徳川家康殿の領地に侵攻してきたのである。

 

姉川の戦いでは大活躍した徳川軍だったが、やはり戦国最強と謳われる武田騎馬隊にはかなわず家康殿は命からがら本拠の浜松城に逃げ込み、信玄はそのまま上洛し、いずれ信長様と戦うことになるだろう。

 

信長包囲網の恐ろしいところはここである。

 

どこかを攻めればどこか違うところが攻めてくる。今回で言えば浅井を攻めたら武田が来るのだ。織田の兵力を分散させ、精神的にも弱らせる。

 

これが信長包囲網の真骨頂であり、これの中心である足利義昭の恐ろしさである。

 

 

 

 

 

 

武田の上洛は大いに反織田勢を元気づけた。

 

「もう信長も終わりじゃ。」

 

そんなふうに信長包囲網の仕掛け人、足利義昭は思っただろう。

 

ついに足利義昭は自ら挙兵し、反織田勢は信長様を一気に潰す………

 

 

 

 

 

 

かと思われた。

 

しかしこの時、さらに衝撃的な報らせが我々のもとに届いた。

 

徳川軍を倒しそのまま西へ向かうと思われていた武田軍は急遽甲斐へ引き返したというのだ。

 

「一体どうしたというのか………」

 

俺をはじめ、織田家の人間は驚き、また、ホッと安心もしていた。

 

まぁ一番驚き、戸惑っているのは足利義昭はじめ信長包囲網に加担している大名達だろう。

 

浅井、朝倉は最近負け続きで衰退の一途を辿っている。

 

三好三人衆も今や特にどうってことない。

 

足利義昭は挙兵したもののそれは武田が織田を攻めて初めて成功するものだった。

 

反織田勢が信長様に勝つには戦国最強の騎馬隊を率いる武田信玄が上洛し、信長様と戦うしかなかったのだ。

 

それなのに武田信玄はせっかく徳川家康殿を倒したというのに甲斐に引き返してしまったのだ。

 

さらに徳川殿から報らせがあった。

 

それによるとなんと武田信玄は徳川家康殿を倒してからすぐ死んでしまったというのだ。

 

甲斐の虎と呼ばれていた男にしてはあまりにもあっけない最期だった。

 

 

 

 

信長様はこの報を聞いてすぐ足利義昭の立て籠もる城を攻め、足利義昭を京都から追放してしまった。

 

 

俺は足利義昭を河内の若江城まで送り届けるよう命令され、義昭を送り届けた。

 

日頃綺麗な輿車に乗って出かける婦人達も今回は徒歩で歩き、義昭本人も鎧の袖を涙で濡らし、悔しがっていた。

 

「これが栄華を極めたものの最後か………」

 

俺は一人つぶやいた。

 

足利義昭は室町幕府の復興を望んでいた。

 

室町幕府………

 

創始者の足利尊氏は鎌倉幕府を滅ぼし、後醍醐天皇を退け幕府を開いた。

第三代将軍足利義満は南北朝の対立を収め、花の御所と呼ばれる豪華な御所や黄金に輝く金閣寺などを創建し、明(中国)と貿易し巨万の富を築いた。

しかし第八代将軍足利義政の時、跡継ぎ争いが起き、京の町は炎に包まれた(応仁の乱)。

それからというもの室町幕府の権威は地に堕ち、ついに第十三代将軍足利義輝は家来に暗殺されてしまうほど権力がなくなってしまった。

足利義昭はかつての栄華を極めた室町幕府を取り戻す!

と信長様と京に入った時はたいそう張り切っていたそうな。

 

しかし信長様は室町幕府の復興を許さなかった。

 

かつて信長様は足利義昭に「五カ条の条件」なるものを突きつけた。

 

・義昭が文章を出す時は信長に内容を伝え、信長の添え書きをそえる。

・これまでに出した義昭の命令はすべて破棄する。

・義昭に忠義を尽くした者に与える領地は信長の領地から分け与える。

・政治は信長に任せられたのだから義昭の意見をうかがわず、信長の考えで進める。

・朝廷とのやりとりは油断なくつとめる。

というものだ。

 

信長様にとって足利義昭は自分が天下を取る道具でしかなかった。

 

将軍足利義昭をつくったのは信長だ。

→信長に逆らう奴は全国の武士のトップ、足利義昭に逆らうのと同じである。

→将軍に逆らうのが嫌だったら信長に従え。

 

こういう事である。

 

足利義昭はこんな状態が嫌で信長包囲網を築き、抵抗したが、かつての室町幕府の復興は叶わなかった。

 

「栄えたものはいずれ滅びる………」

 

道中、色々な人々が義昭の行列を指差し、「貧乏将軍」と嘲笑った。

 

信長様もいずれこうなるのか………

 

いやいや縁起の悪いことを考えてしまった。

 

今、義昭がいなくなって信長包囲網は崩壊してしまったのだ。

 

もっと明るいことを考えねば。

 

………

 

しかし義昭の泣き声と義昭を罵倒する声を聞いているうち、俺は権力というものの虚しさを考えずにはいられなかった。

 

 

次の信長様の標的は三好三人衆の中の一人、岩成友通であった。

 

岩成友通は足利義昭の命令で淀城というところに立て籠もっていた。

 

敵の力を削ぐ為、岩成と共に城に籠っていた番頭大炊頭、諏訪飛騨守を寝返らせることにした。

 

信長様は家来を集め、

 

「誰か二人を説得させられる者はおらぬか?」

 

と聞いてきた。

 

俺はすぐ手を挙げ

 

「恐れながらそれがしが………」

 

言い終わらぬ内に

 

「うむ、猿‼︎やれ‼︎」

 

と叫び、俺が二人を説得することになった。

 

そして淀城に赴き、説得した。

 

二人は足利義昭が京を追放されたことを知っていたので、ここぞとばかりに織田軍に寝返った。

 

やはり上(足利義昭)がやられると下はこういう風にバラバラになるのか。

 

義昭はそうなってしまったが信長様にはそうはなって欲しくはなかった。

農民の子である俺を一介の侍に育ててくれたのはまぎれもない信長様だ。短気で怒ると怖いがやはり俺の恩人だ。

 

人からは理解されにくく、それゆえうつけと呼ばれ、信長包囲網を敷かれてほぼ全国の大名から標的にされてもなお、孤独に戦っている。

 

信長様自身は他人から理解されないが、本来なら鬱陶しがられる俺のでしゃばりを理解してくれる。

俺は、そんな信長様の役に立ちたかった。

 

そして、いつか信長様の本音を、聞いてみたくなった。

 

 

 

次の標的は朝倉義景だ。

 

信長様が攻めてくると聞いて朝倉勢の中には信長様に降参してくる奴も少なからずいた。

 

「朝倉は動揺して退散するだろう。」

 

信長様の予測どおり朝倉勢は敗走。

急ぎ追撃し戦となった。

朝倉勢も必死に防いだが防ぎきれず、朝倉の本拠、一乗谷を捨て逃げ延びた。

 

朝倉義景は最後、一族の裏切りによって切腹。

 

大名としての朝倉家は滅亡した。

 

 

 

信長包囲網の弱点はここであった。

 

信長包囲網は全国の大名に一斉に信長様の討伐を命じられる一方、あまりにも範囲が広い為、各大名の連絡ができないのだ。

 

だから武田信玄の死も伝わるのが遅く、義昭追放の報があっても連携ができず、各個撃破されてしまうのだ。

 

 

 

 

次の標的は浅井長政。

 

彼は信長様の危機をつくった張本人であり、信長様の妹君、お市の方の夫つまり信長様の義弟にあたる。

 

俺は浅井の監視をしていたので今回の浅井攻めには気合いが入っている。

さらに信長様は浅井を滅ぼしたあかつきには浅井の旧領をすべて俺に与えると俺に言ってくれたのだ!(しかも城つき[小谷城])

 

さあ、我が軍も出陣するかな。

 

「皆の者!出陣だ!」

 

俺は込みあげてくる興奮を抑えながら浅井の本拠、小谷城へ向かった。

 

 




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