デジモンアドベンチャー BLAST   作:アドゥラ

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今回、完璧超人化してきたカノンの最大の弱点が明かされます。


42.カノンの弱点

 元の場所に戻り、ヒカリちゃんが目を覚ました。

 

「ヒカリ、大丈夫か?」

「よかった無事みたいだな」

「お兄ちゃん? テイルモン……二人ともどうしたの?」

「覚えていないのか?」

「何の話?」

「いや、覚えていないならいいんだ」

 

 どうやら憑依されている間のことは覚えていられないらしい。

 僕の方は憑依と言うより接続だし記憶が残っているけど……つながるものの精神構造の違いかな?

 とにかくこれで一つ謎が片付いたのは言うまでもない。えらばれし子供たちの選ばれたわけや、どうして戦うのかが分かっただけでも収穫だろう。

 

「ヤマト、これでわかっただろ」

「ああ……」

「やっぱり、この世界の歪みを正せるのは俺たちしかいないんだ」

「……すまん」

「お兄、ちゃん」

 

 太一さんは手をヤマトさんに差し出すが、ヤマトさんはその手を取ることはなかった。

 

「俺、やっぱり間違っているのかな」

「いいや……悪いのは全部俺だ」

「ヤマト……」

「俺さ、偉そうなことは言えないけど……正しいとか間違っているとか関係ないと思うんだ。ただ俺には俺の道があり、お前にはお前の道があるんだよ。自分の道がどんな道なのか俺にはわからない。お前と戦えば自分の道がわかると思ったんだが……すまなかった。

 謝れば許してもらえるとは思わないけど、俺は自分の道をさがしたい。いや、探さなくちゃいけないんだ!

 だから、俺はガブモンと二人だけで行動する。悪いな、みんな」

「考え直してください。だってヤマトさんの紋章は……」

「友情、でも考えてみたら友情って嘘くさい言葉だよな」

 

 自分の内面でありながら、他者との関わり合いの特質でもある。人によって受け止め方が色々あるだけに、僕たちが何を言っても意味はないのかもしれない。

 

「いや、俺が本当の友情を知らないだけかもしれない」

「ねえ何も一人で行かなくても――二手に分かれて行動するのもいいんじゃないのかしら」

「一人で行かせてくれ……悪いな、空」

「ううん。でも、ヤマトなら大丈夫よ、信じてる」

「お兄ちゃん、僕はどうしたら……」

「タケル君は私たちと一緒よ。ヤマトは一人で考えたいことがあるの。だから、行かせてあげましょう」

「……うん」

「ありがとう。それに、タケル……お前なら大丈夫だ」

 

 それだけ言うと、ヤマトさんは歩き出してしまった。ここで一度道は(たが)える。しかし、もう不協和音は聞こえない。これも必要なことであり、前に進んだという証でもあるのだ。

 

「さあ、俺たちも進もうぜ。デジタルワールドの歪みを正さなくちゃ」

 

 太一さんがそう言って、前に進んでいくが……僕とミミさんの足が止まる。理由は異なるが、僕らも先へは進めない。

 

「ごめん空さん、わたし、行かない」

「ミミちゃん?」

「わたし、もうデジモンたちが傷ついたり死んだりするのを見たくない」

「カノン……お前までなんで」

「あー、やっぱり進化できないってのもアレですし、それに…………デジヴァイスも直さないと。このまま前に進んだら、それもできないと思うんです」

 

 進化するのにデジヴァイスは必要ないのかもしれない。しかし、だからと言って壊れたままにもしておけないだろう。僕の体のことも気にかかるし……このまま進んだら、取り返しのつかないことになるかもしれない。

 パンプモンたちも僕らについてくるのか、一緒に立ち止まっていた。

 

「……だったら僕も残るよ」

「丈さん……」

「ミミ君たちだけだと心配だし、カノン君の傷口が開いたりしたら手当てする人がいないとね。説得できたら、すぐに追いかける……カノン君の方がどうなるかはわからないけど、なんとかしてみせるよ」

「ああ……頼んだぞ丈」

 

 そうして、丈さんも残る。

 三つに分かれてしまった僕たちではあるが、目的地は同じだ。世界の歪みを正すことは変わらない。このまま進み続ければいずれ同じ場所へたどり着くだろう。

 

 ◇◇◇◇◇

 

とりあえず、食糧を調達して一旦休憩することに。左手も問題なく動くようになったし、不便さもなくなった。飛行帽はとりあえず修復したけど、被る気にはならなかったので鞄の中に入れている。父さん、母さんたちから渡されたものが色々と入っていたが、もうずいぶんと軽くなった。ほとんど食糧だったしね。

 ちなみに、風邪薬はヒカリちゃんのこともあるから太一さんに預けた。一応、少しだけ自分の風邪がぶり返したときにとってあるけど……たぶん使わないだろう。

 しかし……先ほどからミミさんが何も言わない。いつも元気なだけに調子が狂うが……

 

「……ごめんない、二人とも私のわがままで残ってもらって。カノン君だって本当は自分たちだけですぐにでもデジヴァイスを直す方法を探したいんでしょ」

「いえ、ここしばらく無茶ばかりでしたし……それに壊れた理由、本当はなんとなくわかっているんです。だからミミさんが気に病む必要ないんですよ」

「そうだよミミ君。それに、君のいう事ももっともだ。争いは争いしか生まない」

 

 そう、争いは争い生み、呼び込む。おそらくドルモンが進化できなくなった理由と同じだ。果物にかぶりついているドルモンのインターフェースに触れて、現在のDNAを読み取る……僕の懸念が正しいのならば、たぶん暗黒のDNAが以前よりも強まっているはずだ。

 案の定、竜と獣よりは少ないものの……かなり増大していた。というか大分狂ってしまっている。こうしている今も各データが増減していて不安定である。

 たぶん、ヴェノムヴァンデモンとメタルシードラモンの二体を相手にしたのが増大した理由だろう。そこにドラモンキラーのデータを加えたために竜データが一時的に減少した結果、現在の状態になったのだろう。

 

「ドルモン、ごめんな無茶させ過ぎて」

「ううん。おれは大丈夫……そっか、おれのせいなのか」

「いや、僕も前に出過ぎたかな」

 

 ただ、あの時はああしないと被害がひどかっただろうし……自分の使える札を切った結果ではあるものの、結構キツイなぁ……

 と、会話が途切れてしまったわけだが……丈さんはまだ何か言いたそうだけど、言わないのだろうか?

 

「……」

「丈? 何か言いたいことがあるなら言えばいいのに」

「いや……言わない方がいいときもあるよ」

「そうかな? ……そうだね、丈の言う通りだ」

「言わぬが花。まあ、何事もほどほどが一番ですね」

「君がいう事じゃないだろ、無茶常習犯」

「ごもっともで」

「腕は大丈夫なのかい?」

「病は気から。痛み自体はありましたし、体がびっくりしていただけかもしれませんね」

 

 あの時の映像で、再びショックを受けて動くようになったってところかもしれない。

 まあ詳しく調べるのは無理そうだけど――と、のどかな空気だなと思っていたのもつかの間。この中で誰が一番のトラブルメーカーなのかは知らないが、上空に暗黒の力を感じてしまった。

 

「なんだ!?」

「なにあの黒い穴――いえ、隕石?」

「こっちに向かって堕ちてくるぞ!?」

 

 嫌な気を孕んでいる――思わず左肩を抑えるが、同時にこの場所に直接的な被害が出る軌道でもないことは分かった。不思議と頭は冴えわたっている。

 今は様子見をするしかないか。大きな揺れが起きるものの、破片もなにも飛んでこない。

 

「見にいってみる?」

「なんだかすごく疲れる予感がするんですけど……どうしましょうか。あと、お前らひっつくな」

 

 パンプモンとゴツモンが驚いたのか抱き着いてくるんだけど……痛いからヤメロ。

 

「ごめんよ、すごく大きな音だったから」

「ハァ……デジタマもあるんだから気を付けてくれよ」

「ねえ、それ私が預かっていようか?」

「じゃあお願いします」

 

 ミミさんにデジタマを預けておく。ミミさんは時折首をかしげているが……やがて何か思い至ったのか一つ頷いていた。

 

「ミミさん?」

「これ、パタモンのデジタマにそっくりね」

「そういえばそうだね……デジタマの柄かぁ、そういえばたくさんの種類があったな」

「へぇ……」

 

 はじまりの町、だっけか。デジタマがある場所。そこならこのデジタマを預けても大丈夫かも。ただ、何かが引っかかっているんだが……知っているようで知らないような、何か言い知れぬ不安感。

 とにかく、何もしないというわけにもいかないので隕石の落下した場所へ行くことに。

 煙が上がっているので落下ポイントはすぐに見つかったのだが……

 

「崖の上かぁ……」

「でもどこから落ちてきたのかしら」

「地球ではないと思いますよ、なんか空間が妙に歪んだような気もしますし、暗黒の力みたいなのも感じます」

「まだ、感じるのかい?」

「いえ……反応が愉快というか、奇妙というか、関わりたくないというか…………なんだろう、このどっと疲れそうな感じ」

 

 はっきりととらえられないので言い方もおかしくなっているが、本当にそう感じるのだ。なぜかは分からないが。

 

「クンクン――なんかにおうぞ」

「ホントだ、血のにおいみたいな何かを感じる」

 

 ゴマモンとドルモンが嗅覚に何かを感じたらしく、その方向へ走り出した。すぐさま僕らもついていくが……感覚的に、隕石から感じたモノとは別の何からしい。

 においの元へたどり着くと、誰かが枝に埋もれて倒れていた。怪我をしているようでうめき声も聞こえる。

 

「大丈夫――うわ!?」

 

 パルモンが枝をどけると、そこから緑色の鬼の姿が現れた。血を流してぐったり倒れているが……たしか、オーガモンだっけか? 太一さんたちが一時帰還したときに戦ったデジモン。あの時はノイズだったが、今度のは本物みたいだな。

 

「オーガモン、死んでいるのかしら?」

「いやうめき声も聞こえるし……まだ動いているよ」

 

 枝を外したからか、体が動き出している。

 みんなの反応を見るに、どうやらファイル島で戦ったという個体みたいだ。

 

「ファイル島の時みたいに襲われたら……放っておく方がいい」

 

 丈さんがそう言うが、ミミさんが駆け出してオーガモンの傷を見ている。まあ、ミミさんの性格なら相手がだれであろうと心配するんだろう。だからこそ、デジモンたちにも好かれているのだから。

 

「ひどい傷……パルモンは薬草、ゴマモンは水を持ってきて!」

「わかったわ!」

「お、おう!」

「他のみんなも二人を手伝ってあげて」

 

 デジモンたちは薬草と水を探しに行き、後に残ったのは僕たち。

 

「二人は……」

「分かってる。これでも医者の息子だからね。傷の手当は任せてよ」

「それじゃあ僕はデータの乱れを修復できないか試してみます」

 

 デジモンの怪我とはつまり、データの乱れや欠損でもある。ただ、現実世界で僕らが怪我するのとほぼ同じような状態にしか見えない――いや実際にそうなのだろう。分子や原子の一つ一つまでデジタルデータで構成されているのがデジタルワールドだと、僕は考えている。

 たしかに物理法則を無視したようなことも可能だが、物理法則が無いわけではないのだ。

 オーガモンの怪我を僕の魔法で治すのは厳しいが、みんなが持ってきてくれた薬草と水などでとりあえず処置はできた。包帯とかもいろいろあったし、丈さんも手際が良いからオーガモンの折れた腕をしっかりと固定していたし。

 

「これでよし」

「……なんでもお前ら、ファイル島で俺はお前たちを殺そうとしたのに…………殺されても仕方がないってのに、助けたりしたんだ」

「ハァ、また? 殺すとか殺されるとか……もっと気の利いたセリフ言えないの?」

「あ、あり? あり……」

「ふふ、無理していってくれなくていいわ。それじゃ、またね」

 

 ミミさんがそう言って、僕らは去ろうとするが――うぐぐとオーガモンがうなり、言葉を発した。

 

「ありがとう、よ」

「ううん。どういたしまして」

 

 ミミさんが笑顔でそう言うと、オーガモンの瞳に光る物があった。鬼の目にも涙、か。

 

「オーガモンが泣いている……」

「鬼の目にも涙とはこのことか」

「それこそ言わぬが花なんじゃ」

「こ、これは目にゴミが入っただけだ!」

 

 ……まあ、そういう事にしておこうか。と、そんなところで終っていれば良かったんだろうけど……背筋に嫌な汗が流れる。

 あーそーぼ、と聞き覚えのある声が響いてきた。

 

「なぞなぞしてあーそぼ」

「なんだよなぞなぞって!」

「ボクに足りないモノって何?」

「は?」

 

 ゴマモンが何言っているんだコイツは、みたいな顔をしたらいきなりハンマーから光弾を乱射してきやがった。すぐにゴマモンが避難してくるが……やっぱりこらえ性が無い。

 

「そんなんだから友達がいないんだぞ!」

「うるさい! 答えられないなら殺しちゃうぞ!」

 

 しかし厄介なことになった、デジモンたちも戦おうとしているが――ミミさんが後ずさっている。無理もない。今の彼女は戦うことに関しては疑問を抱いている、いや嫌悪していると言った方がいいかもしれないな。

 となると実質ゴマモンが頼りなんだが……

 

「アーマー進化なら使えるし、行くぞドルモン!」

「うん!」

「ゴマモン、頼んだ!」

「任せてよ丈!」

 

 丈さんのデジヴァイスと、僕のデジメンタルが輝きだす。

 

「イッカクモン!」

「フレイウィザーモン!」

「究極体でも体格は小さい、組み付けフレイウィザーモン!」

 

 フレイウィザーモンが近づいていき、巨大なマッチ棒でピノッキモンのハンマーを抑え込む。その間にイッカクモンがズドモンに進化し、ハンマーを振り下ろす。

 

「ハンマースパーク!」

「ああもう、邪魔だよ! グリットハンマー!!」

 

 フレイウィザーモンが何とか抑え込んでいたものの、地力が違うためかすぐさま押し切られてしまった。ズドモンのハンマーも吹き飛ばされ、光弾が何発も命中してしまい――ズドモンが退化してゴマモンに戻ってしまう。

 フレイウィザーモンは何とか光弾を弾くことが出来ていたため、退化はしていないが……

 

「お前、地力が上がっていないか?」

「ああ……力自体は以前よりも増している」

 

 もしかして、暗黒DNAのおかげか? フレイウィザーモンの構成DNAは確かに暗黒が多いけど……と、そんな考察をしていると上の方から何とも奇妙な声が聞こえてきた。

 アァーアアアァーとターザンのような変な声……なんでかはわからないが関わり合いたくない。

 

「とうッ!」

 

 顔を向けてみると、枝の上に銀色のサルが立っていた。究極体、らしいが……名前を見たくない。何故だ、何故こんなにもこいつの情報を読み取りたくないんだ。

 

「スーパースターの登場よ! 拍手はどうしたのかしら?」

 

 そんな野太い声で女口調はやめてくれ……背筋が、背筋がぞわぞわする。

 

「久しぶりねぇ、えらばれし子供たち。元気だったかしら」

「お前はまさか……エテモン!」

 

 ……メタルエテモン、ああ見てしまった…………オカマ嫌ぁあああああ!!

 絶叫しそうになる自分を抑えるが、体の鳥肌は収まらない。なんでこの世で最も苦手な存在がここで現れるのか……ひどく疲れる予感が現実になるのを感じつつ、僕はどうやってこの場から逃げ出そうか考える自分に気が付いた。

 

 

 

 この運命、逃げ出しちゃだめですかね?

 

 




カノン、実はオカマが大の苦手。
話に聞くだけだたり、テレビで見るだけならいいのだが実際に遭遇すると逃げ出そうとします。

ちなみに、完全に女にか見えないのなら平気。
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