メテオリウム─翠晶眼の傭兵─   作:影迷彩

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 前回の投稿から一ヶ月以上、やっと書き上げることができました。

 予想では、あと一話か二話……とても遅くなりそうで心配です。
 加えて、リアルで入学した私、しばらくその辺りに気を取られて、更に書くのが遅くなりそうです……

 そんなこんなで、では新キャラのサブタイトル名にもなった人物、その暴れ具合をどうぞ!!


──吹き荒れる暴れ疾風──

 明朝、最初に発砲したのはマツヤ一派であった。

 

 「同志達よ、殲滅開始!」

 

 "カフェ・バドビーンズ"を包囲するマツヤ一派、その中心にいるのは威圧的な風貌で杖をつく老人。

 この老人こそ、この陣営のボスであるマツヤ・モルガンだ。

 

 「「「「「「サーッ!!」」」」」

 

 マツヤが杖を地に強く叩いたと同時に、マツヤ一派が一斉にライフルやガトリング砲等の銃器を展開し、"カフェ・バドビーンズ"の外壁へ次々に銃弾を撃ち込む。

 

 「なすすべなく散らせ、ワシに楯突く敵対勢力をな!!」

 

 マツヤ派の攻撃は止まず、木造建築の壁が苛烈にどんどん削られていく。

 

 「ダメです、効果が感じられません!」

 

 "カフェ・バドビーンズ"の外壁が崩れ、その裏に敷かれた鉄板が露となる。

先程までの銃撃は、全てこの鉄板によって防がれていたのだ。

 

 「チっ、メテオリウム製の弾丸さえあれば──グッ!」

 

 "カフェ・バドビーンズ"内からも次々に銃弾が放たれる。 

 だが多少マツヤ一派をよろめかせる程度しか当たらず、マツヤ一派の攻撃を弱体化させるまでには至っていない。

 

 (敵対戦力が、数少ない武装で粘りおって──粘りおって(・・・・・)!?)

 

 マツヤが"カフェ・バドビーンズ"の思惑に気がついたと同時に、最前列でアサルトライフルを放っていたライダースーツの女性が、搭乗しているオートバイを翻しマフラーを吹かした。

 

 「ボス! エニマリーのバンビーが敵前逃亡します」

 

 「あれは敵前逃亡でない! A隊はワシに続け!」

 

 ライダースーツのエニマリーが己の真横を通り過ぎた後、マツヤは杖をあげ先導した。

 

 「敵前逃亡を行ったのは貴様ら敵対者、ワシは虫けらの逃亡も殲滅する! 見逃したせいで、あの時ワシらは市街地でのゲリラ戰に追い込まれ、その時に我が軍の被った被害は──」

 

 

 

 「クソッタレだ、マツヤのジジィめ……!!」

 

 抗争近くにあるマツヤ一派のアジト内、ココは悪態をつきながら室内をウロウロしていた。

 

 「あのガキ、あの女、あのオンボロ喫茶……あとついでにロブ、どうしたお前!?」

 

ココはベッドを見上げる。 ベッドの上には、包帯を巻いたロブが横たわっていた。

 

 「詳しく聞かねぇが、あん時にロブが変っつーか妙なことしたからこうだ! ついでに俺も外された! どうししちまったお前!?」

 

 ココは地団駄を踏んで、何かに当たり散らそうと腕を振り回す。 その片腕は、昨日に破損した部分をジャンクで修復していた。

 

 「まぁ面倒だし聞かねぇが……だけどよ、片腕だって取り付けたのによ! クソジジィめ!」

 

 「そんなひょろっちぃ義腕でかいな」

 

 ココは地団駄を止め振り返った。

 そこにいたのは整えたスーツを着こなす痩身の青年。 

 

 「お前さんが戦線から外されたんは、そこに寝っ転がっとるロブっちゅうもんのせいだけやない。 お前さんの腕のせいも入っとる」

 

 知的な顔立ちの青年は、眼鏡の奥の義眼を光らせながら、ココの義腕に向けて言い放つ。

 

 「老人衆と女子供に腕壊されたんやってな。 そんで撤退に追い込まれたっちゅうお前さん、そんまんまじゃ俺も外しとうなる」

 

 「てめぇ!……つーか、てめぇは確か……」

 

 「ハリー・K・ネルロガンズ。 ロブさんを切り刻んだ、あの阿呆女共の一味が一人や」

 

 「シュルルゥー……」

 

 青年──ハリーの腕に翠眼の蛇が絡み、彼の眼鏡を噛んでズレを調整する。

 

 「狂った疾風とかいうヤロウか! テメェ何の用件で──」

 

 「そんなに困っとるなら、俺がお前さんに武器売るで」

 

 怒りだすココに臆することなく、ハリーは平常に用件を出した。

 

 「テメェ、何言って──」

 

 「だから、俺がお前さんに、特別価格で武器を売るっちゅう話をしに来たんや。 俺は武器屋やからな」

 

 ハリーは巨漢のココに怯むどころか薄ら笑いすら浮かべながら、指で丸の形を作った。

 

 「特別価格や、今しか手に入らん。 しかも、マツヤの旦那さんすら用意しきれとらん、あのMt・Wですぜ──」

 

 

 

 かつて大きな都市であった"統制外第23区域"、その名残である入り組んだ道路を、ミニクーパーで走るサバイバたち。

 

 「サバイバさん……」

 

 「なんだぜ、アッキー」

 

 サバイバはサイドミラーにも目を向けず、次に曲がるべき道にミニクーパーを走らせる。

 

 「これで……本当に良かったのでしょうか」

 

 「依頼人が出した依頼だ、それをキッチリ遂行するってのがエニマリーだぜ」

 

 カヨウは膝に乗せたアラビカの頭を撫でる。

 ぐっすりと眠り、怖いものから離れたように閉じた瞳は穏やかであった。

 

 ──この権利書を持って、最寄りの治安維持局に届けてください──

 

 昨晩、ケニ―はサバイバ達に封筒を手渡して依頼の変更を申込んだ。

 

 ──それと……アラビカもよろしく頼むわ……娘だけは、巻きこみたくないの──

 

 遠くで鳴り響く銃声を背に、カヨウは沈んだ表情で手を握り締める。

 

 「……あの、ケニ―さん達は──」

 

 「気にすんな、それより任務だ。 任務遂行第一が、エニマリーの絶対条件だろ」

 

 「だからといって! ケニ―さん達を置いて──」

 

 「アケヨ、黙れ、子供、起きる」

 

 声を荒げ出したカヨウの隣で、ロ―が普段と変わらないぶっきらぼうな態度で彼女を制した。

 

 「──すみません、思わずカッとなってしまって……」

 

 カヨウはあたふたと赤くした顔を、膝の上で抱き抱えるアラビカに向けた。

 

 「まぁまぁ。 金が入りゃ一件落着、さっさと終わらせて我が家(アームドレイヴン)に帰ろうぜ!」

 

 サバイバはいつもと同じ軽い口調で、車内の空気をなだめた。

 だがカヨウは気づいた、サバイバの手が微かに震えているのを。

 

 (サバイバ、アンタは何を思ってる? この子供に我が子、ケニ―さんに自分を重ねてるのか?)

 

 ローは口を閉じたカヨウの下、ぐっすりと眠り続けるアラビカと、彼女を起こさないように注意を払って運転するサバイバを交互に見つめる。

 

 (アケヨ、依頼人は時に命をかけて頼むこともある。 ローガン達エニマリーは、そんな人たちの意思をくんで任務遂行するんだ)

 

 「アケヨ、依頼人、命払う、ローガン達、任務遂行」

 

 ローガンの思考に流れる単語が、機械的な口調に変換されカヨウに語りかける。

 

 「──そうなんですね、ローガンさん、ハイ……分かろうとは思おうとしてますが」

 

 機械的に無愛想なローに、カヨウは目線を赤くした顔を向ける。

 

 (フンッ、分かるまでがんばりな、でなけりゃ貴方はすぐに崩れる)

 

 「分かれ、がんばれ、でなけりゃ、貴方、崩れる」

 

 「あっ、ハイ! 励ましありがとうございます!」

 

 「は!? 励まし、ち、違う! バカ言うな、バカアケヨ!」

 

 「は、ハイ!」

 

 サイドミラーに顔を動かすロー。  

 

 「たくっ、ローガン、別に──!?」

 

 サイドミラーから見え、そして上空から降りる気配に反応し、ローは眼を翠色に灯す。

 

 

 「(ヒューーーーー)!!」

 

 「強襲(アサルト)、避けて!」

 

 

 素早く避けるミニクーパー。

 ミニクーパーのいた位置には、一人の少女が舞い降りていた。

 異様なのはその両腕であり、肘から手首にかけて翠色の湾曲した刃が生えていた。

 

「キャッ!!」

 

「フニャッ!?」

 

アラビカを抱いたままカヨウは短い悲鳴をあげる。

 同時に、眠っていたアラビカも目を覚ます。

 

 「ちっ、早速来やがったか!」

 

 サバイバはハンドルを回しながら悪態をつく。

 

 「ゲイル・ザ・ランペイジ・クレイジー!?」

 

 「あぁ、その一番弾、疾風(ジーフェン)だ!!」

 

 ローの問いに答えながら、サバイバはサイドミラーを覗く。

 サイドミラーに写っている少女ジーフェンは、両足に備え付けられているローラースケートで方向転換し、顔をミニクーパーに定めていた。

 戦意に歪んだ笑顔に、その眼は翠色であった。

 

 「逃げないでよ! 無視しないでよ! ねぇねぇねぇ!!」

 

 口の端を大きく歪ませて笑いながら、ジーフェンはミニクーパーへと走り出す。

 

 「お姉ちゃん、あの女の子、怖い!」

 

 泣き出すアラビカを、カヨウは守るように強く抱き締めた。

 

 「サバイバ、GO!」

 

 「あぁ、分かってるぜ!!」

 

 サバイバはアクセルを踏み、ミニクーパーの速度を上げた。

 

 「だがよぉ、ロー……あのガキが襲ってきたっつーことは、もう一人来るぜ!!」

 

 サバイバが睨み付ける前方から、盛大なエンジンとバイクが道を遮った。

 搭乗しているのは、ライダースーツでも分かる程にスタイルの良い女性であり、拳銃一挺の銃口をミニクーパーに定めている。  

 

 「サバイバさん、前方に!!」

 

 「おぅらぁぁっ!!」

 

 アクセルを踏み込んだサバイバは、銃弾を発射されるよりも速くバイクに突進した。

 グシャッっという鈍い音と共に、バイクとライダースーツの女性がミニクーパーに激突し、ミニクーパーの後方へと投げ飛ばされた。

 

 「──って、えっ、サバイバさん!?」

 

 カヨウはサバイバの行動に驚き、後方へと身を動かした。

 ミニクーパーの後方では、転倒したバイクの横で、ライダスーツの女性が痙攣しながら倒れている。 その身は拳銃を握る手と片足、首があらぬ方向に曲がっていた。

 その光景を見てしまったカヨウは口を抑え、なんとか吐き気をこらえる。

 

 「ウッ──あ、あの人、死にそうです!?」

 

 「ハッ、知るかよ! それに……あのくらいじゃ死なねぇだろうよ」

 

 「え、どういう―――!?」

 

 カヨウは驚愕した、視線の先、ライダースーツの女性が痙攣しながら立ち上がったからだ。

 ネジ曲がった片腕はジジジッと奇妙な音を立てて本来の向きへと曲がり、同じように片足と首の曲がり方も鈍い音を立てて元に戻る。

 

 「チッ、やっぱ死にやがらねぇか!」

 

 ライダースーツの女性はヘルメットを震わせ―――まるで笑ってるかのようにミニクーパーのリアバンパへと銃弾を撃ち込む。

 

 「サバイバ、アイツら―――」

 

 「あぁそうだ……チッ、ジーフェンとウェンディを吹っ切るぞ!」

 

 ミニクーパーのアクセルを踏み込み、サバイバ達は二人の刺客から逃亡する。

 

 「(ヒューーーーー)!!」

 

 刺客の一人であるライダースーツの女性――ウェンディの横を、ジーフェンがローラースケートで通りすぎる。

 その後を追うべく、ウェンディは転倒しているバイクを蹴りあげて起こす。

 

 「待ちなクランチェイン、今度こそアタシがアンアンと泣かせるよ……哈哈哈哈哈哈(hahahahahaha)!!」

 

 

 

 「な、何なのですかアレらは!!」

 

 「何なのアレ、お姉ちゃんたち!?」

 

 身を震わせ狼狽えるカヨウと、衝撃で跳ね起きたアラビカは恐怖の声をあげる。

 

 「翠晶眼、LbCM」

 

 反対に、ローとサバイバは慌てることなく各々が戦闘準備を始める。

 

 「アッタリ~、ついでに言えば追跡と突撃に特化した野郎共だぜ、クソッタレ!!」

 

 猛速で角をカーブするミニクーパー。 車体が後ろに大きく揺れ、建物の壁にぶつかる寸前で真っ直ぐに向き直る。 

 

「ロー、しばらく任せたぜ!」

 

「了解、サバイバ!」

 

ミニクーパーのハンドルが戻る直前、ローがドアを開き、屋根の上へ己の身を跳び移らせた。

 

 「ローガンさん!?」

 

 「ロー姉ちゃん……?」

 

 「子供、任せた」

 

 屋根の上へ乗り移った瞬間に、ローは足裏のアンカーを展開し屋根上に掴むように固定。

 ローブをはためかせ、背部にある三本目の腕──サブアームに接続された展開式多機能狙撃銃"Coil up snake"のフレキシブルシールドや主砲を展開、両手にMt・Hg"ベレッタM92"を構え姿勢を低くし、そして両の眼を翠色に灯す。

 

 「Lock on (獲物、探知)

 

 スピードを増したミニクーパーを追うように、ローの眼は翠色の軌道線を描く。

 ズドン!ズドン!と、三つの砲身から銃弾が放たれ、カーブを曲がろうとするジーフェンに直撃しようとする。

 

 「(ヒューーーーーッ)Cho(クソッ)!!」

 

 年端もいかぬ身体を9×19㎜及び7×62㎜のメテオリウム製銃弾が貫く直前、ジーフェンは両腕の翠色の刃を盾にして防御態勢をとる。

 メテオリウム製銃弾はジーフェンの刃によって妨げられ、彼女を後退させるだけで傷は与えられなかった。

 

 「イッターい、ね! ねぇねぇ! 切り刻む!!」

 

 翠色の刃の生えている箇所とは反対に備え付けたインラインスケートを地に這わせ、威嚇だった猫のような態勢からジーフェンはダッシュをしかけた。

 

 「Try girl(やってみなよ) If close(近づけるなら)!!」 

 

 ローの掛け声と共に、ミニクーパーの速度が上がる。

 ローは三挺の銃で乱射しつつ、ジーフェンに全てのメテオリウム製銃弾を的確に当てようとする。

 ジーフェンはそれらのメテオリウム製銃弾を、翠色の刃やローラーの結晶部分に当てて防御する。

 

 「「チッ、面倒だ!!」ね!!」

 

 ジーフェンは傷つかない。 だがメテオリウム製銃弾の衝撃に圧され、思うように速度をあげて走れない。

 

 「和呵呵、遅いね~行くのがね、ジー」

 

 ウェンディはMt・GB"Impale fangs Snake"を一挺構え、ミニクーパーを狙って発砲する。

 

 「ヘッ、人員ギュウギュウで重たいと思ってんじゃねぇぞ、アバズレトリガーハッピー!!」

 

 だが、当たる寸前でミニクーパーはメテオリウム製銃弾をギリギリ避け、かすり傷を刻むこともなく走行速度を落とさない。

 

 「哈哈哈(hahaha)、やっぱ運び屋オバサンの運転だねぇありゃ──イタッ」

 

 「あのガキが邪魔!! ていうか背中のアレ! LbCMとか笑っちゃうね!! 翠晶眼(エメリスタリー)で、LbCMとか? (ヒューーーーー)!!」

 

 ローラースケートで走行するジーフェンはメテオリウム製銃弾を避けつつ笑い回る。 ウェンディは彼女に呆れ嘲るように笑いながら、メテオリウム製銃弾を数発浴びる。

 メテオリウム製銃弾を浴びる都度に、ウェンディの身体はジジジッという鈍い音と共に弾傷を修復する。

 

 (やっぱ数秒でナノマシン修復を行うか……チッ、仕方ない、あの形態を──)

 

 「サバイバさん、前方!」

 

 思考するローが後ろに振り向いた方向、つまりミニクーパーの前方の通りがマツヤ一派によって封鎖されていた。 マツヤ一派の面々は軍用オートバイから転び降り、旧式の対ライフル用防弾シールドを縦横に並べ、隙間から各々の装備した銃器を構える。

 

 「サバイバさん!! ローガンさん!!」 

 

 「キャァァァァァッ!!」

 

 「サバイバ、GO」

 

 「ロー、全員吹っ飛ばしやがれ!!」

 

 ミニクーパーは速度を一切落とさず前へと突っ込むように走る。

 その屋根の上で、ローはより姿勢を低くし、二挺の"ベレッタM92"を前方に構え、それに合わせ前後垂直に構えた"Coil up snake"の後部からグレネードランチャーを展開し、前部の銃身を切り替える。

 

 「Lock on (獲物共、探知)

 

 ローの翠色の眼と"Coil up snake"のセンサーは即座に全ての対象を定め、構えた銃器を一斉に発砲した。

 ズドン!ズドン!とミニクーパーの急所に向かう銃弾を9×19㎜メテオリウム製銃弾で全て撃ち落とし、縦横に並べられた対ライフル用防弾シールドをグレネードランチャーのドガンッ!という爆風で弾き飛ばす。

 

 「「「「「ラジャぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」」」」」

 

 マツヤ一派の悲鳴の反対、後方から追ってくる二人の女に口径を切り替えたメテオリウム製銃弾の一撃を見舞おうとした。

 

 「イっちゃいな、飛んじゃいな、アタシの疾風(ジーフェン)

 

 「(ヒューーーーー)!!」

 

 メテオリウム製銃弾が放たれると同時に、ウェンディはジーフェンの足首を掴んで、ミニクーパーへと力強く投げた。

 ズドォン!!とローが放った銃弾が、ジーフェンの刃によって軌道を逸らされ、ウィンディの胴体を貫いた。

 

 「Cho(クソッ)、クソガキ……」

 

 呻くウェンディを気にかけず、ジーフェンはミニクーパーの上を飛び落ちる。

 全身を回転させ、翠色の刃でローとミニクーパーを切り刻もうと奇声を吠える。

 

 「ウェン姉の言う通りだ、クソガキ!!」

 

 「邪魔、落ちろ、ガキ!!」

 

 ローはフレキシブルシールドを稼働させ、ジーフェンの翠色の刃を防ぐ。 

 

 「(ヒューーーーー)!!」

 

 「ガルルゥゥゥゥゥッ!!」

 

 拮抗するローとジーフェン。 だがその衝撃でローのアンカーが外れ、ジーフェンと共にミニクーパーから身を投げ出された。

 

 「ロー!?」

 

 「ロー姉ちゃん!?」

 

 「ローガンさん!?」

 

 「ジ~」

 

 道路へと転がり落ちる寸前、ジーフェンは腕と足に備え付けたローラースケートで姿勢を直し着地、ミニクーパーへと再度追跡を開始した。

 

 「チッ──!!」

 

 ローは腰に装備されたアンカーをミニクーパーに向け射出、フレキシブルシールドをボードにして道を滑らす。

 

 「逃がしゃしないよ!!」

 

 ズドンッ! ズドンッ!

 

 だが射出されたアンカーは、二個の弾丸によって阻まれた。 アンカーはミニクーパーに辿り着くことなく、ローはフレキシブルシールドを収納し道を転がった。

 

 「待て──」

 

 「待ちなぁ嬢ちゃん、アンタの相手はアタシさ」

 

 前転し体勢を建て直したローの前に、ウェンディがオートバイから転び降りて道を阻む。 その身体は、ジジジッと気持ちの悪くなる音をたてながら、撃ち抜かれた胴体の空洞を塞いでいた。

 

 (急所を外されたか──チッ)

 

 ローは"ベレッタM92"二挺を前方に構え、胴体の再生を完了したウェンディと相対する。

 

 「──邪魔、そこどけ、蜂の巣に、するぞ」

 

 「いいねぇそれ。 貫かれるって想像するだけでゾクゾクしちゃう♪」

 

 ウェンディも"Impale fangs Snake"二挺を剣のように持ち変え、目の前のローを虐めるように舐めて見る。

 

 「だけど、嬢ちゃんのようにねぇ、年下が相手だと、どっちかっていえば責めてあげるってのがいいわねぇ~」

 

 「言ってろ、その口、銃口で貫く」

 

 「哈哈哈(hahahaha)、いいねぇその口調も。 そのままアタシの身体を、メチャクチャにヤりなさいな!!」

 

 ズドンっ! ズドンっと、銃声がどんどんと鳴り響く。

 

 

 「サバイバさん! ローガンさんが!」

 

 「あぁ、あっさりと落ちちまいやがったな」

 

 そういいながらサバイバは、ミニクーパーのアクセルを踏み速度をあげる。

 

 「えっサバイバさん!? ローガンさんが──」

 

 「分かってるって! アイツなら、変異能をフルに使わねぇ限り戻ってくるさ」 

 

 サバイバの表情はとても真剣で緊迫感に溢れていた。 

 バックミラーに映るその表情を見たカヨウは、それ以上サバイバに詰めることを止めた。

 

 「俺らはまず、あのガキから逃げて町を出なきゃ行けねぇ!!」

 

 サバイバはサイドミラーに目を向ける。

 そこに映るのは、ローラーから火花を散らしながら高速移動を行うジーフェンであった。

 

 「(ヒューーーーー)!!」

 

 「チッ、面倒なガキだなホント!! アッキー、援護頼む!!」

 

 アラビカを抱きしめて庇いながら、カヨウは"コルトガバメント"を構えようとする。

 

 「──って、まだいやがるか!!」

 

 「えっ──」

 

 カヨウは前方に顔を向けた。 町を出る通路を封鎖し、マツヤを後方とした兵士の面々が銃器を構えていた。

 

 「目標補足、撃てぇい!!」

 

 並べられた兵士の銃器から、銃弾がミニクーパーめがけて放たれる──

 

 

 

 「よしっ、敵はどんどん減ってきたぞ!!」

 

 "カフェ・バドビーンズ"の外装はズタボロとなっており、金属製の内壁も倒れる寸前であった。

 だがケニーと老人たちの必死な持久戦により、徐々に補給や傷の為に撤退を余儀なくされていった。

 

 「店はまだ保つ、耐えてください!!」

 

ケニーは構えた"S&W・M686"に銃弾を装填しながら、店内で呻く老人達を鼓舞する。

 

 「そうじゃな……ここでくたばってたまるかのう!!」

 

 「えぇ、ここでくたばらないで……アラビカが帰ってくるまで、私たちがここを死守するのよ!」

 

 ケニー達の闘志が燃え尽きず、むしろより熱くなった時──

 

 「ん、ココ、お前どうした、その腕!?」

 

 ケニーは金属壁の隙間から外の様子を覗いた。

 外には、昨日"カフェ・バドビーンズ"内で暴行を働いたココが、異様な大きさの義腕を備えて現れた。

 

 「ハッハ……とんでもなく頭がイテぇ……制御が働かねぇ……」

 

 プシューッという蒸気音と共に、鈍い金属音をたててココの義腕が上がる。

 

 「アレは……まさか──」

 

 義腕の表面が反射し、翠色のラインを照らす。

 

 「──Mt・W!!」

 

 「ハリーっつぅイケメンのおかげ、そしてロブのポケットマネーから装備した、このイカした拳でロブの無念を晴らす!!」

 

 義腕が降り下ろされ、アンカージャッキが展開する。

 拳は変形し、六つの砲身を備えた機関砲となる。

 

 「皆!!! 伏せ──」

 

 「"Heart・is・hightensiooooooooon(心臓が高鳴るぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇ)"!!!」

 

 義腕の名称を叫びながら、ココは義腕からメテオリウム製銃弾を連射した。

 金属壁を容易く崩し、店内のテーブルやイス等の置物を吹き飛ばし、"カフェ・バドビーンズ"は脆く崩れ倒れる。

 

 

 「……人様の財布を、勝手に開けるなや」

 

 その光景を見ながら、ハリーは独り突っ込みを入れた。

 

 

 

 「ゲボッ!!」

 

 ローは倒れた。 服やローブはボロボロに引き裂かれ、至るところから翠色の血を流していた。

 背中の"Coil up snake"は近接戦の邪魔になるとして外しており、"ベレッタM92"二挺は激しい銃撃戦の最中に手から弾かれていた。

 

 「あらら嬢ちゃん、アンタ処女かしら? だったら、そこまで激しく血を流すのは初めてかしら~?」

 

 ウィンディは足を振り上げながら挑発した。 その足の踵に備えつけた隠し銃からは硝煙が立ち込めていた。

 

 「グッ……ガッ……」

 

 ローはウェンディに苦戦していた。

 身体能力であれば、翠晶眼のローが上である。

 だが、155㎝のローと173㎝のウェンディの体格差、そしてナノマシンによる変則的な動きと再生力を持つウェンディ相手には、如何に銃弾を撃ち込もうが避けられ治ってしまう。

 

 「あぁゾクゾクしたわ……アンタに何度、身体をグチャグチャにされたかしらねぇ~」

 

 反対に曲がった腕をジジジッという気持ちの悪い音と共に治し、ウェンディは持っている"Impale fangs Snake"を、意気消沈するローに向けた。

 

 「ガッ……」

 

 「残念ねぇ嬢ちゃん、アンタの処女血をもっと流させ犯したかったけど……アタシ、アンタに飽きちゃった♪」

 

 「ガ……」

 

 「ま、嬢ちゃんみたいにチビで無口でぶっきらぼう、そのうえLbCMなんか装備しちゃってる翠晶眼(エメリスタリー)なんか、変だし微妙だし気持ち悪いわ」

 

 「ガ──」

 

 「じゃぁね、相手にならない役立たずちゃん♪」

 

 ──無役

 

 (ローガン──!!!)

 

 一瞬で"Impale fangs Snake"に接近し、片手の爪(・・・・)でその銃身を逸らすロー。

 

 「あら──」

 

 嘲笑うウェンディの顔面を、もう片方の爪で引き裂くロー。

 

 「アッハァ~」

 

 ローは足で地面を蹴って後退する。 その足は趾行のような形態となっている。

 着地した時、ローは両手を地につけ四足歩行となる。

 

 「ガル──」

 

 背に接続されたサブアームが"Coil up snake"を拾い上げた。 ブラブラと揺らすそれは、まるで尻尾のような動きであった。

 

 「──ガルルゥゥゥゥゥッゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

 牙を生やした口から唸り声をあげ、翠色の眼を爛々と光らせ、四足歩行で眼の前の獲物(ウェンディ)を定めるローの姿は、紛れもなく"猟犬(ハウンド)"であった──




 如何だったでしょうか?
 
 ウェンディの持ってた"Impale fangs Snake"。 GunBladeの括りである二挺、見た目のイメージはカイザブレイガン、もしくはRWBYに出てくる中華男性の持つ、カマキリっぽい見た目の銃が何となく一番近いです。 次点では、屍十二の逆手持ちガンブレードかな。

 ジーフェンは両腕の湾曲した刃、鎌に近いそれとローラーシューズによる一撃離脱が得意。 サイドスワイプとディーノを合わせたようなそれは、書いてて表現が難しく、それでいて結構楽しかったです(笑)

 あと、二人とも某俺ちゃんな黄色いフキダシの全身タイツを元イメージにして書きました。 自分なりに書いた結果、デップーとは違うかもしれないキャラ像になりましたが、キチガイ感じを元ネタと同じく感じれば作者として嬉です。

 ちなみに今、次の舞台の話を先に書こうか検討中。 久しぶりのキャラや、新たな武器のお披露目回ということもあって、正直そちらを早く書きたいです……今回の話も、執筆中はテンションは高鳴りながら書き上げましたが。

 そういうわけで、次もまた投稿が空くか、もしくはいきなり次の舞台が投稿されるかもしれません。
 では、次もまた銃弾吹き荒れるヒャッハーな雰囲気を楽しみにしてください!
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