メテオリウム─翠晶眼の傭兵─   作:影迷彩

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 今回は前半の約3分の1以下、30分アニメの内の序盤10分程度です。

 歌い手を出すということで、作詞をしたりなどして力尽きてしまいました……
 まだ全然序盤ですので、早めに続きを上げたいところです。

 作者が力尽きて倒れながら、最新話でございます。どうぞ。


──第八話 歌姫、奏でているのは偶像か──
──地表の歌姫──


 珍しく青みがかった曇り空。

 そんな天候の下をアームドレイヴンは飛行する。時刻は朝であり、メンバーは全員起きて朝食を食べている。

 

 「ふんふんふふーん……たっしか、この辺りなんだよな……」

 

 アームドレイヴン内、ラジオから音楽を流している操縦席にて、サバイバは口笛を吹きながらレーダーとメーターを確認する。

 

 [見えるか、ロー?]

 

 アナウンス越しにサバイバはローに尋ねる。

 

 「NO……ん?」

 

 ローは開いたハッチから地表を観察する。その眼は翠色に灯っており、入り込む風に吹き荒れながら上空メートル下の地表の砂風の中を走るバイクを捉えた。

 

 [レーダー探知! SOS信号受信! ローが捉えている物と同じだろうぜ!]

 

 サバイバがアナウンスを鳴らしハッチを閉める。アームドレイヴンは傾き、右に旋回する。

 

 「ヒューッ! サバイバぁ、周辺には何かいるかぁい?」

 

 待機室では、カーチスとグレイ、カヨウがいた。カーチスは椅子に寝転がり、朝食のサンドイッチを食いながらタブレットを操作する。

 

 [周辺には……っておい! アンダーワームの大群じゃねぇか!! このSOSはそれだ! そいつらから逃げてんだ!!]

 

 サバイバはアームドレイヴンの高度を下げ、地表で吹き荒れる砂風の中を走るバイク、その上を飛行する。

 

 「ロー、数はどんぐらーいよ?」

 

 カーチスは緊迫感もなく欠伸をする。その横ではグレイが微笑みながら朝食を片づけている。

 

 「あの、地表は大丈夫なのでしょうか……」

 

 「んー、大丈夫じゃないんじゃね? アンダーワームに喰われて終わりだろうさぁ! ハーハッハ!!」

 

 片付けを手伝っているカヨウの問いに、カーチスは口角を上げて笑いながら答える。

 

 「そんな!?」

 

 「アケヨちゃんはよく心配性だねぇ~。さてさて、誰を行かそうか」

 

 「ローガン、出撃」

 

 ローが待合室に入る。カーチスは寝転がりながら、ローに驚きの目を向けた。

 

 [アッキーが不安がってるぜ。今すぐワーム群を撃ち消しちまえ!!]

 

 ローは椅子の下から棚を引き出し、中に納めていた銃器を装備する。

 

 [高度を下げようか? なんなら重火器全て使っていいぜ]

 

 「いらない、ローガンだけ、あと十分」

 

 ローはロングバレルに砲身を替えたライフルを二挺構え、同じロングバレルライフルとショットガンをそれぞれ二挺ずつ腰に懸架する。

 

 「ロー先輩!」

 

 カヨウに呼ばれ、ローは振り替える。まだ幼さの残る少女の顔は、今日も猟犬のごとき鋭い眼であった。

 

 「えと……お気をつけで、ご健闘を!」

 

 「……了解」

 

 ローはカヨウを一瞥し、待合室を出て、ハッチに移動する。

 

 

 「ローガンか、やっぱり」

 

 ハッチに行くにはロッカールームを一旦通らなければいけない。普段ロッカールームはツキカゲが寝床として占拠しており、今も室内の両端に吊るしたハンモックで彼は寝ていた。

 

 「……負けない」

 

 ローとツキカゲの眼が合う。お互いに同じ色彩のない瞳だ。

 違うのは表情であり、ツキカゲは寝ているときの垂れた眼、ローは対抗心によってキツい眼になっていた。

 眼を合わせたのは一瞬であり、ローは早足でロッカールームを抜けた。

 

 「……なんだ今の?」

 

 「ニャア?」

 

 ツキカゲはルームメイトであるWAAC・Nと共に首をかしげた。睨まれる理由に思い当たる節がないか考えながら、ツキカゲは不機嫌に再び眠りについた。

 

 ローはアームドレイヴンから降下する。

 降下中、coil up snakeのシールドを展開した。

 シールドは変形機構により丸みをおびて翼のように広がり、ローを繋げて滑空する。

 

 「57」

 

 ローはワームを数え、両脇に構えたロングバレルライフルの銃口を地表に向けた。

 ロングバレルライフルに取り付けられたセンサーはcoil up snakeとケーブルで繋がっており、サブアームを通じてローの神経と接続されている。

 ゴーグルの奥でローは眼を閉じた。意識にはロングバレルライフルのセンサー越しに地表が映し出されている。

地表の映像と共に、ローはワーム一匹一匹の様子を感覚で捉える。一匹ごとの動き、神経の位置、それらを統括する結晶心臓の位置を。アンダーワームの体長は7m。全身は刺々しい皮膚で覆われており、並みの銃弾では傷つかないものだ。身体自体が筋肉そのものであり、身体を伸縮させて高速でバイクを追っている。

 ローが先頭のアンダーワームに対して引き金を引き、ロングバレルライフルから銃弾が発射される。排出された薬莢が上空へと飛んでいく。

 

 「1、2、3、4……」

 

 銃弾は地表へと向かう。風向きや着弾地点なども計算された銃弾はアンダーワームの皮膚の隙間をくぐって結晶心臓に命中する。

 アンダーワームの群れの先頭が動かなくなり、停止した音につられて残りの群れが一瞬止まる。その隙をついてロングバレルライフルを連射する。アンダーワームが一匹と動けなくなる。

 

 「19、20、21、22……」

 

 一部の群れは身体の前面にある眼点を翠色に発光させてバイクを確認、仲間を踏み倒してバイクを追う。

 

 「31……チッ」

 

 弾倉の切れたロングバレルライフルを腰に懸架し、ローは素早く別のライフルを脇に挟んで構えた。

 右手のライフルはバイクを追う群れに向けられ、左手のライフルは右往左往する群れに向けられる。

 右手のライフルを向けた時、ローは驚いた。バイクがターンし、自分に向かうアンダーワームの群れの真ん中に突っ込もうとしているからだ。

 

 「何!? 倒す気!?」

 

 ふと、滑空しているローの耳に、風音や地表のアンダーワームの移動音以外にメロディのある音が聞こえた。

 

 [ロー、車の発する信号IDを割り出せたぜっ……え、おい! マジかよ!? 今群れに突っ込んだ奴は]

 

 サバイバの通信をローは聞いていなかった。その耳には、軽快なギターが合わさる透き通った声の歌が流れていた。

 

 あなたという光が射しこむ

 砂と閃光とノイズをかき越えて

 私は深い心の奥に溺れていて

 あなたという光が私を引き上げる

 

 (この歌!……ていうか、何でこの人達攻撃しないの!?)

 

 アンダーワームの群れの中を、バイクは回転しながら踊る。バイクには男女二人が乗っていた。サングラスの男がギター型のハンドルでバイクを操縦し、後部座席では白いワンピースの女性が背筋を立てて歌っていた。

 

 「46! 47! 48!」

 

 ローはバイクに誤射しないよう気をつけながら宙からの狙撃を続ける。巨大なアンダーワームの群れの隙間をバイクが通りすぎる為、とても当てにくかった。

 

 「54ー!! 55ォ!! 56ゥ!!」

 

 バイクを操縦する男も群れの討たれた数を数えていた。後部座席で歌う女性に合わせて男はギターをかき鳴らす。

 

 まばゆいあなたは暗い私を照らし 

 光となって私に道を指した

 私はあなたと歩く

 暗く染まった私をあなたは手を繋ぐ

 

 女性が歌い終わった時、バイクに向かって一匹のアンダーワームが口を大きく開いて襲いかかった。

 

 「しまっ」

 

 ローは銃口を素早くアンダーワームの眼点に向けた。

 

 「57ィィィ!!」

 

 バイクから小銃が展開し、アンダーワームの口内に銃弾を撃ち続けた。

 倒れたアンダーワームの前でバイクはブレーキをかけて立ち止まった。

 

 「何数えてたの、リプル?」

 

 「お前の歌を聴いたものの数さ! あ、58!」

 

 バイクの前に、パラシュートでローが着地した。ローに男性は親指を向けた。

 

 「コイツらの整理、応援サンキューな!」

 

 ローは疲労も苛立ちも消してバイクに乗っている男女を確認する。

 

 「……名前?」

 

 手を差し出し、ローは二人に名前を尋ねた。

 

 「名前かい」

 

 「名前だって、リプルさん!」

 

 「名前だな! スナイパー、アンタはラジオを聞くかい?」

 

 「よく聞く」

 

 ローはラジオを聞いて暇を過ごすのが日課だ。そんなローだからこそ、二人が奏でた歌に聞き覚えがあった。

 ローが二人の名前を言い当てる前に、上空からアームドレイヴンがジャイロで砂風をあげながら降り立つ。

 アームドレイヴンのハッチからカーチスが現れる。

 

 「ローちゃん、武装の片付けねぇ!」

 

 カーチスが親指をアームドレイヴンの待合室に向けた。ローは一度バイクの男女をまばたきして見つめ、アームドレイヴンに戻る。

 

 「お疲れ様だな、ロー!」

 

 「疲れ」

 

 ローはハッチからアームドレイヴンに入り、ロッカールームにてサバイバと無表情でハイタッチし、彼女を通りすぎた。

 

 「ロー先輩!」

 

 「っ!?」

 

 ローはカヨウに対し鋭い瞳を丸く見開いた。

 

 「えと……お疲れ様でした! 快勝ですねっ……素晴らしいです、ロー先輩!」

 

 外で動かないアンダーワームに身を縮こませ怯えながらも、カヨウはローに尊敬で眩しい眼差しを向けた。

 

 「お、おう……お疲れだ」

 

 カヨウに軽く手を振って、ローは足早で待合室に入った。

 

 

 WAAC・Nはハッチに戻ったローを扉の陰から眺めた。

 

  (くぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!)

 

 ローは心中で吠え、立ちながら腕を組んで身悶えしている。

 

 (褒められたぁぁぁぁぁぁ!? 私、褒められた!?)

 

 顔は赤く染まり、熱気で今にも爆発しそうであった。

 

 お疲れ様でした 快勝ですねっ 素晴らしいです ロー先輩!

 

 (可愛いなぁアケヨ!! そうだスゴいんだぞローガンは! アケヨォォォォォォォォ!!)

 

 

 ローの足取りがやけに軽かったのをサバイバは見逃さなかった。

 

 「ありゃあ中々入れ込んじゃってるな、おいローよ……」

 

 「あの、サバイバさん……私を外に出した理由は、これで終わりでしょうか?」

 

 「あぁ……いや、ちょっとばかし待て、あの二人だ……っ!」

 

 外ではバイクの男女には既にカーチスが対応していた。

 

 「我々はしがない旅団“クランチェイン”でございます」

 

 「しがねえ旅団があんなハッピーショットな武装を積んだガールを落とすか!? 見たこと聞いたことねぇぜ」

 

 「リプル、私たちが知らなかっただけかも?」

 

 「そうかもなあ、セイレン!!」

 

 セイレンと呼ばれた女性は白いメッシュの入った金の長髪、ざっくらと伸ばした前髪であり目にはゴーグルを着用していた。

 男はリプルと呼ばれ、端々がギザギザとした衣装に身を包んでおり、サングラスを着用していた。

 「あぁそうだ、俺はリプル。バックギタリストだ。コイツはよぉ」

 

 「存じておりますので、挨拶はいりませんな」

 

 カーチスは怪しい笑みを二人に向けた。その目は暗黒のように暗く、笑みの裏の表情を伺わせない。

 

 「セイレンです、いい朝をおはようカーチスさん」

 

 押し黙ったリプルとは反対に、セイレンはゴーグルを着用している顔を下げた。

 

 「おはようございます、“歌姫(アイドル)”さん」 

 

 カーチスは恭しくお辞儀返した。

 

 「セイレンさんの歌は聞いております、こうして本人に出会えるとは。感激で胸が詰まります。ウチの旅団にもあなた様のファンはいてねぇ」

 

 「ヒアハーッ!! おっちゃん、調子がいいなぁ!!」

 

 リプルは上機嫌にカーチスへ詰め寄った。

 

 「いえいえ、あなた方を知ってるだけですよ」

 

 カーチスはリプルと目を合わせた。

 

 「あの!」

 

 カーチスは後ろを振り返った。アームドレイヴンからカヨウが出てきていた。

 

 ──「有名じゃないか……あの娘がセイレン……アッキー、ちょっとあの娘からよ」

 

 「サインください! “荒野の歌姫”セイレンさん!!」

 

 カヨウはサバイバから頼まれた任務を遂げるべく、頭を45度下げた。

 カーチスは呆れた目つきでカヨウを笑い、リプルは面食らってサングラスをかけ直す。

 

 「うーん、いいですよ!」

 

 セイレンは反応し、カヨウに耳を傾ける。それ以外の部位、顔や身体はカヨウを向いていなかった。

 

 「へいへーい! ほら、紙とペンだ」

 

 リプルは懐から色紙とペンを出し、それらをセイレンの頭の腕に摘まみ上げた。

 セイレンは上を向かず、片手を上げて振り回し、色紙とペンを掴んだ。

 

 「うんうーん、今日は上手く書けそう」

 

 「へぇ、歌姫さん、あなたはもしかして」

 

 突如、地表に風が舞った。

 小さな風であったが、吹き上がった風はセイレンの持つ色紙を宙へと飛ばした。

 

 「はうあっ!?」

 

 バイクから身を乗り出したセイレンは転んで倒れそうになり、リプルに抱かれて支えられた。

 

 「サイン! サイン!」

 

 サインはカヨウの足元に落ち、彼女に拾われた。

 カヨウはセイレンと顔が合った。

 

 「書かないと、観客に!」

 

 「大丈夫だって、俺が拾うからさ」

 

 「あの、こちら……」

 

 カヨウはセイレンの目の前に色紙を差し出した。

 

 「サイン! 私のサイン!」

 

 セイレンは目の前の色紙に気づかず腕を振り回す。

 

 「落ち着けって、ほら大丈夫だからさ。観客が拾ったから大丈夫だぜ」

 

 「……どこ?」

 

 「あ、あの……目の前に」

 

 セイレンはカヨウのいる地点の反対方向を向いていた。

 

 「あ、あぁ後ろね! ありがとう!」

 

 セイレンは腕を真横に振り、カヨウの差し出したサインを探し当てる。

 

 「あった、あった! 今続きを書くね!」

 

 「あぁちっと待ってくれねぇかな。セイレンは字を書くのが下手でさ」

 

 セイレンが腕と顔を振り回し続けたせいで、リプルのサングラスは弾き飛ばされていた。

 リプルの眼の色彩には色がなかった。

 

 「あるいは……時間あるんなら帰っていいぜ」

 

 色彩のない瞳がどんな表情をしていたか、リプルが長身であるのと日の光のせいでカヨウからは見えなかった。

 

 「アケヨちゃん、無駄話はこのぐらいで戻るぞぉ」

 

 カーチスはカヨウを引き連れようと手をアームドレイヴンへと向けた。

 

 「アンダーワームも起き上がる。さっさと行こうぜ……その前に、次の公演が何処か気になりますがねぇ」

 

 「あぁ、次は」

 

 「“アムドゥスキアス”だよー!」

 

 セイレンが色紙を宙にあげた。リプルはそれを掴んで取り、カヨウに手渡した。

 

 「地表の歌姫、セイレンからだ。大切にしろよなー」

 

 「えぇ、分かっておりますとも」

 

 戸惑うカヨウの代わりに、カーチスが礼をし頭を下げる。

 その目は、何かを測るようにリプルとセイレンを見ていた。

 

 「では、今度は私のライブで会えればね♪」

 

 セイレンは最後までカヨウの方を向かず、リプルの操縦するバイクで去っていった。

 

 

 "第3都市交易下3番街自治法下区域、ジー・アムドゥスキアス"、アームドレイヴンを着陸させた滑走路にて。

 

 「つーことで、サインを描いてもらったわ!」

 

 滑走路の近くの野原にて、サバイバはカヨウとローに色紙を見せつけた。

 

 「何、コレ?」

 

 ローはピザを一切れ口にしながらサインの描かれた切れ端を太陽にすかす。今日はいつもと比べて比較的天気が明るいため、グレイが3人に外食用のチーズピザを1枚渡したのだ。

 

 (これが、ピザ……!)

 

 カヨウは初めて見る丸状のパンを興味津々に眺め、サバイバとローの食べ方を真似ようとした。

 

 「あ、垂れ下がりました! 具材が落ちます!?」

 

 「端まで持って食べな、あとは素早く噛みちぎる!!」

 

 サバイバの口からはトロトロと柔らかいチーズが手に持ったピザから引きちぎれずくっついたままだ。

 

 「ハムッ……ムグムグ……柔らかくて、熱いです!!」

 

 「焼きたてだしな、食べ頃だぜ!!」

 

 (可愛いかい!!)

 

 ローはカヨウの横顔を眺める。初めて感じるチーズピザのパン生地と柔らかさとチーズの熱さを好奇心旺盛な笑顔で食べるカヨウは、小動物めいて可愛らしかった。

 サバイバはそんなローの目線に気づいていた。頬を紅くしてカヨウを見つめるローの様子を、サバイバはコーヒー豆争乱以降で頻繁に目にしていた。

 

 「あの、そういえば先程の人達はどういった一行でしょうか?」

 

 「あぁ、このサインの人な!」

 

 サバイバはカヨウにサインを見せつける。それは文字というには非常に乱雑であり、カヨウには混み合った線にしか見えなかった。

 

 「“セイレン”。俺が今朝もラジオで聞いた、地表トップで人気の歌い手だ」

 

 サバイバは腰に付けたラジオの電源を点けた。ラジオからは音楽が流れる。

 

 「所属も故郷も住居もなし、あちらこちらを旅しては歌う放浪者。行く先々で多くのファンを獲得し、 放送局に収録されるCDはお土産としてヒットしている」

 

 ラジオから流れる歌は軽快でエレクトロニカなメロディ、それでいて耳に透き通って流れ込むような繊細で美しい歌声であった。

 

 「とても人気があるんですね」

 

 「そうだな。音だけでキレイっつーか、感じたことを素直に表現してるっていうか……優しい歌声だ」

 

 サバイバはピザの端を食し終わり、トロトロだったチーズの余韻を口に含むかのように自分の唇を舐める。

 

 「皆が共に感じるものを歌う……人種や種族が混同して暮らすこの地表には似合った歌だと思うぜ」

 

 「はい、いい人の歌う唄なんですね」

 

 ラジオから流れる歌声に、カヨウは目を閉じて静聴する。

 

 あなたという光が射しこむ

 砂と閃光とノイズをかき越えて

 私は深い心の奥に溺れていて

 あなたという光が私を引き上げる

 

 まばゆいあなたは暗い私を照らし 

 光となって私に道を指した

 私はあなたと歩く

 暗く染まった私をあなたは手を繋ぐ

  

 「ツキカゲさん……」

 

 頭に浮かんだのは、地表で初めて出会った男。

 ポツリと、とても小さな声でカヨウは彼の名を呟いた。

 

 「ん、何か言ったか?」

 

 「い、いえ!!」

 

 カヨウは顔を赤くして首を横に振る。

 

 「んーさてはぁ……」

 

 サバイバはカヨウを茶化すのを止めた。ローが非常に不機嫌そうな顔をしていたからだ。

 

 (ヤベ、怒らせた)

 

 「ロー、いや俺が悪いって……ロー?」

 

 「あ、うん」

 

 ローはピザを食べるのを再開した。

 サバイバは気づいた。ローが不機嫌なのは、カヨウの呟きを聞いたからだと。

 

 「……面倒になったな、ウチの傭兵団」

 

 

 一方、アームドレイヴンのロッカールームでも、ツキカゲがラジオを聞いていた。

 

 「……」

 

 「シャーッ!」

 

 「ツキカゲぇ、任務が来たぜぇ。しかも大物からだ!」

 

 WACK・Nに威嚇されながらカーチスが入室する。

 

 「……内容は?」

 

 「“妨害”だ」

 

 カーチスは口の端まで口角をあげ、不気味な笑みを一層恐ろしくさせる。

 

 「“サイレント”、ライブの中止だぜぇ……!!」




 いかがだったでしょうか?
 
 作詞に使った参考曲は、
 ・ブンブンサテライツ
 ・ONE OK ROCK
 ・海辺のカフカ
 です。これらの曲を聞いてみて、大体の歌詞を頭で掴んで書いてみました。メロディなぞない、詩のようなものですが。

 また、最初のアンダーワーム戦。元にしたアクションは「楽園追放」のアーハン無双シーン。あれを見た当時から、こういったアクションを書いてみたいと思っていました。

 さすがにムカデは被るので、次に思いついたのがグラボイズというクリーチャー。もしくは王蟲。ある程度地表にも似合うキャラデザなので、そんなイメージでアンダーワームを書いてみました。

 戦闘シーン。歌謡シーン。食事シーン。色々と書き詰めて今回はここで倒れてしまいました。倒れたまま書き続け、次回を早く投稿しておきたいです。

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