Fate/guilty crown   作:モブキャラzx

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沈む日常/look back

 

 「ようするに、好きな子の為に頑張りたいって事だろ? 」

 

 「ちょ、別に好きとかそうゆうのじゃ無くて……」

 

 西日が照りつける部室の前、僕は衛宮君を

 

 『ごめん今日はちょっと用事が……』

 

 と上手く回避しようとしたが

 

 『? そうか、そんならしょうがな……ッ!?』

 

 『どうしたの衛宮君……ッ!』

 

 彼が注視する方向を仰ぎ見て、僕は自分の浅慮さを思い知った。

 そこにあったのは、楪いのりが居たと言う痕跡。彼女が流した血痕の後だ……。

 

 そこから、僕が言い訳する度に矛盾が生じていき。

 ようは、芋づる式に全部バレてしまったのだ。

 この部室に誰が居たのか。

 何が在ったのか。

 そして、僕がこれから何をしようと走っていたか。

 結局、昼からあった右折曲折を何とか説明しきるのにそこそこの時間がかかってしまった。

 

 そう、本来ならそこで話は終わり『じゃ、また今度!』と別れるつもりだったなのだが……。

 

 「よし、行くんなら日が出ている内の方がいいな。行くぞ桜満」

 

 「うん。……え、衛宮君も行くの!? 」

 

 正直に言うと嬉しいが、生死が関わるかも知れない現状に、普通の学校生活を送る彼を巻き込むのは気が引ける。

 

 「隣のクラスとは言え、同学年の知り合い一人が危ない橋を渡ろうとてるんだ。手助けくらい普通だろ」

 

 普通。

 まぁ、人助けの鬼等と揶揄された彼には普通の事なのだろう。

 

 「まあ、一人より二人、毒を食うなら皿までって言うしな」

 

 彼は気づいているのだろうか、あまりにも容易く自分の命を危険に晒していることに。

 もし、本当に善意のみで言っているのだとすれば、それは人好しなんてレベルじゃない。

 

「ふゅーねる、だっけ。道案内をよろしく頼む」

 

「+%t+g%28^j-」

 

 両腕の中に納まっているふゅーねるも人員が増えて喜んでいる、ように見える。

 もっともロボなので、実際には違うかもしれないが。

 ……確かに細かい事を気にしていたら始まらない。今は彼の好意に甘んじよう。

とにかく一歩踏み出すことが肝心だ。

 

 「よし行こう衛宮君!」

 

 「おい、道はそっちじゃ無いぞ」

 

 「………………。ふゅーねる、もう一度地図を出してくれない?」

 

 「%’#(”’#=%」

 

 やれやれ、といった具合にふゅーねるは丸っこい頭を振る

 曖昧な記憶で衝動的に動くのは良くないね。

 今日はあと幾つ教訓を知るのだろうか。

 道を踏み外す前に止めてくれた彼に感謝し、ふゅーねるが出す地図を眺めるのであった。

 

***

 

 「へえ、学校の下に、こんな水路が広がってたんだな」

 

 「本当に広すぎる……。あ、前の水路は左だったぽい」

 

 「……天然、いや、人口の迷宮だな……」

 

 あの後、僕らはふゅーねるが示すルートに従い下水道を通って目的地へと向かっている。

 水路を行く。真っ暗で臭くて何があるか分からない恐怖の感情もあるが、まるでスパイ映画の様な展開だと心が弾んだ事も確かだ。

 だが、辿るべきルートを間違う事が片手の数を超える頃には、弾む心よりウンザリした気持ちの方が強くなっていたけど。

 

 水流の音と自分達の足音だけが木霊する空間。何処までも続く同じ風景。

 これといった目印もなく、灯りはふゅーねるが照らす小さなライトのみ。距離感も少しづつズレていき、呼吸すら息苦しくなったように感じる。

 だから、彼に話題を振ったのはこの凝り固まった空気を少しでも入れ替える為でもあった。

 

 「衛宮君。今頃だけど、本当に良かったの?」

 

 「? 何の事だ。言っておくが、付いて来ちゃった事なら謝らないぞ」

 

 目的地を知っていたなら絶対に一人で行かせなかった、と衛宮君は言う。

 彼がそう言うのも無理はない。

 なぜなら僕達が今向かう場所は<六本木フォート>と呼ばれている既に廃墟と化した過去の町。

 大昔は人も集まり都会の一柱として機能していたが、ロストクリスマス事件の余波を受け、今では一休汚染地域の名目の元、表向きは立ち入り禁止となっている。

 だが、浮浪者なのか元々裏の世界の住人なのかは知らないが、ここで生活している人間も大勢いると聞く。一説によると、APウイルスに対するワクチンを拒む人間が辿りつく場所とか何とか。

 APウイルスが空気感染を起こす事は周知の事実だ。毒の泉に自ら体を浸す者など普通は居ない。

 まあ僕たちはGHQから支給されるワクチンを接種しているので恐らく問題は無い。

 

 「いや、それもあるけど……衛宮君のご家族って厳しいんでしょ? もし怪我でもしたら……」

 

 だが、それでも何らかの例外が起こるとも限らない。

 例えば、ウイルスによる危険性がなくても、自分達がこれから出会うのはテロリストの一味だ。

 ふゅーねるを渡し、いのりさんの事を話してサヨナラ出来ればで良い。だが、最悪捕まって口封じのために殺されるかもしれない。

 それは、きっと君の家族も悲しませてしまう。

 そういった危険性と心配の意味を込めた僕の質問に、彼は表情を変えなかった。

 

 「ああ…………そうだな。素性がバレて迷惑を駆けるのもアレだな」

 

 携帯と財布は何処かに隠しておくべきか。と言って少し思案した後、

 

 「俺のことは良いよ。何時もの事だしな。……それよりも、桜満は大丈夫なのか、お前の親ってGHQで務めてるんだろ?」

 

 そう言って、世間話の要領で僕に話しかける。

 自分の事より家族の事を案じる彼は、やはりお人好しの次元を超えている気がする。

 

 「あ、うん。……多分大丈夫じゃないかな。ハル……ウチの親は基本家に居ないから」

 

 一応自分の母親に当たる桜満春夏(おうまはるか)は、少なくとも今週いっぱいは仕事で帰ってこれない。

 

 「へえ、お前ん所も色々大変そうだな」

 

 そこからの会話は取り留めも無い雑談だった。

 衛宮君のクラスの名物担任の話とか、

 内の部活がどういった活動をしているとか、

 弓道部の部長と副生徒会長の口論に巻き込まれた生徒会長の話とか、

 後は、家での家事は自分が行っている。と言うちょっとした共通点で盛り上がりもした。

 

 衛宮君と話すのは、他の人と雑談するより比較的に楽に感じられた。

 変に威圧せず、自分を語り過ぎず、話し相手の事を考えて会話をしているからだろうか。

 感覚的には谷尋と話して居る時に近かった。

 

 この時、僕は気づかなかった。

 彼の正体。

 彼の普通。

 彼の後悔。

 

 そして、彼の『理想』を。

 

***

 

 しかし、人生は何が起きるか分からないもんだ。

 彼―――衛宮士郎は前を歩く桜満集を見ながら、心の中で呟く。

 

 排水溝の迷宮を抜けた先は地図に指示された通り六本木フォート近くのマンホールに繋がっていた。

 更にそこから歩き続け10分もしない内に、第一級汚染区域の看板と、人の侵入を拒む為の網フェンスを見つける。もっとも、そのフェンスも少し歩けば人どころか車すら入れそうな穴を見つけたので、侵入を拒むと言う役割は成して居なかったが。

 

「目的地はあと3キロ先みたい」

 

 集が辺りをキョロキョロと警戒しながら教えてくれた。

 今の警戒し丸出しの姿と、部室を出る時の勇ましい姿のギャップの違いで風邪を引いてしまいそうだ。

 実際、今日の昼休みに隣のクラスの女子から、『集は、少し人見知りする所があって他人とは極力関わらない様にしてるけど……とっても優しくて、傷付きやすい性格だから』だから接し方に気を付けて欲しい、と暗に頼まれていた。

 

 確かに人見知りは強いらしい。 

 事実、さっきから「呼び捨てで構わない」と言っても「いきなり、そう言うのは……ちょっと」と言って距離を置こうとしている。

 だが、ただ人と距離を置いている。とは違う気もする。

 なんと言えば良いのだろう。

 人と関わるのが嫌いだから、とも違う 

 自分に自信が無いのを隠す為、とも違う。

 どちらかと言うと、何かを隠すために、宝箱の中身を見せない為に、知られない様に距離を推し計る。

 

 どの道、彼がなぜ人と距離をとるたがるのか、それを問い詰める事は出来ない。

 自分だって人においそれと言えないことは多々にあるからだ。

 

 例えば、今自分が使っている『魔術』と呼ばれるの事もその一つ。

 

――――投影開始

 

 自身の中にある『魔術回路』に魔力を通し、目に『強化』の魔術を使う。

これは、家電に電気を流すための電気コードのような代物で、電気が魔力、家電が魔術に該当する。

 眼球その物のステータスを強化する事により、視力を上げ、集が見ている視界の更に奥を視認する。

 衛宮士郎が日常に対しひた隠しにする非日常の側面。

 『魔術師』としての衛宮士郎。

 

 幼い頃、魔術師であった養父に必死に教えを請い、身に着けた技術。

 今日まで必死に魔術の鍛錬を繰り返し、最近になり『まあ、一応魔術師っぽいような気もする。多分』と言われるようになった。

 その前は『魔術師の様なナニカ』だったので、それなりに成長はしているらしい。

 自身が魔術師として未熟と言うのは嫌と言うほど自覚はしている。

 実際、自分がまともに使える魔術は、今使っている基礎中の基礎の『強化』の魔術程度、他の魔術はほぼ使えないに等しい。

 

 ……まあ今はこんなのでも使える事に感謝だな。

 

 そう考えながら、道の先、瓦礫と瓦礫の間、ビルの陰等、慎重にチェックする。

 水路で想像以上に時間を食ってしまった。

 街灯の殆どは壊されているか故障している為、頼れる光源は月の光と星の瞬きだけだ。

 

 「今夜は随分と星が綺麗な気がするな」

 

 なんの気も無しに呟く。

 集も言われて気が付いたのか夜空を見上げた。

 思わず手が伸びてしまうほど明るい黒。

 眺め、息を吐き、集は肩の力を抜く。

 

 「……そうだね。都会の光が無いと、こんな景色もあるんだね」

 

 その星空に彼は何を見たのだろう。

 強張っていた表情が柔らかくなった様子から、緊張の糸は程よく緩んだようだ。

 糸は強く張れ張るほど脆く切れやすくなってしまう。

 何があっても護るつもりだが、最悪の可能性を考えれば、逃げられる程度の判断力は持続して貰わないと困る。

 

「ああ、来なきゃ見られなかった」

 

 そういった無粋な考えは抑え、素直な感想を口に出す。

 本来なら、俺はここに居ない。家の言いつけ通り真っ直ぐと帰宅していた筈だ。

 だが、自分から危険に首を突っ込む集を放っておけなかった。

 いや違う、見捨てたくなかったんだ。

 困っている彼を見捨てる、という行為は俺の胸に燻り続けるモノを否定する行為だ。

 

 それ以上に、惚れた女の子の力になりたい、と頑張る彼のいじらしさが、俺をここへ連れて来た。

 

 「やれば出来るかもしれない。でもやらないと絶対に出来ない……だね」

 

  隣で、集が思い出すように声を出す。

 

 「やらないと出来ない……か。良い言葉だな。誰かの名言か?」

 

 「……うん。いのりさんが僕に言ってくれた言葉なんだ」

 

 集は泣きそうな顔で、でも視線は強く、前を向く。

 

 「そっか……。じゃぁ早く急がないとな」

 

 「うんっ。早く彼女の事を伝えないと!」

 

 もう心配はいらない。

 集は一人でもココへ来て、自身が出来る最善を尽くせてただろう。

 やっぱり、俺の気負い過ぎだったか。

 

 数日前、魔術の手解きを受けている時に、偶然聞こえた電話の内容。

 そこで辛うじて聞き取れた単語は『テロ』『紹介』そして『六本木』。

 勿論、聞き間違いの可能性だって十分あるし、六本木と言ってもソコソコに広いので、今いる場所で必ず何かが起きるとも限らない。

 ただ、十分な配慮と警戒の上で動くべきだと考え周囲を見回す。

  

 見る限り人の気配が無く、音もせいぜい自分達が鳴らす靴の音程度。

 極まれにある街灯の下にも影は無く、至って安全だ。

 そう、次の一歩を踏むまで、自分達は安全な日常の中に身を置くことが許されていた。

 

 「――――ッ!!!」

 

 瞬間、世界が歪んだ。

 踏み出した右足はそのまま止まり、全身の産毛が逆立つ。

 青く輝く夜空はそのままに、禍々しく重苦しい空気が充満する。

 歪んだと感じたのはソレのプレッシャーでそう見えたと錯覚しただけだ。

 再び魔力を眼球に『強化』の魔術を叩きこみ、警戒レベルを極限まで上げる

 

 居る、何処かにこの状況尾をを生み出している存在が……!

 本能が揺さぶられ、鳥肌も通り越し青ざめる。

 

 そして、遂に元凶を見つけた。

 

 先程は何も無かった街灯の下に、人型の暗い影が生まれていた。

 

 紅く細長い槍を持つ人型の影は、視線に気づいたのかニィっと口を歪める。

 そのまま、俺達を見たまま獲物を追う猛獣の様に腰を屈めた。

 

 そして消えた。

 

 次に聞こえたのは爆発音に近い音と嵐の様な風切り音。

 

 「ッ!…………集ッ!!」

 

 ヤバイと本能がアラート音をガンガン鳴らすのと

 

 「……え?」

 

 目の先に居た集を突き飛ばすのは同時だった。

 グボッと音と一緒に、衝撃が走る。

 次に、今までの人生で一度も食らった事が無いような痛みが、脊髄を通り脳の中心で痛いと掻き鳴らす。

 

 痛みの発生した場所は眼下の元に明らかになった。

 胸に刺さる紅い槍。血を固めて作ったと言われても信じられるような、真紅の槍。

 それが心臓を貫き、そのまま先程集が立っていた場所まで伸びていた。

 

 突き飛ばされた集はコチラを見上げる様にして固まっている。

 助かって良かった。

 急速に遠くなる意識の中、安堵する。

 だが、まだだ。

 今すぐこの場を離れなければコイツは集を殺すだろう。

 いや、必ず殺す。

 街灯の下で歪めた目は、俺達を獲物として定めていた。

 

 「ッガ……グ、……にッげ…ぉ…………!」 

 

 逃げろ。

 振り向かずに、死に物狂いで走り続けてくれ。

 

 「あ、あぁ……うあァアアアア!! 」

 

 既に血が大量に失われ、喉も満足に動きは無しなかったが、集はコチラの意図を何とか組んでくれたらしい。

 生きてくれ。

 そう背中に声なき応援を送る。

 

 心臓を穿つ槍を握る。

 更に『強化』の魔術を無理矢理使い、両手の強度、握力を向上させる。

 

 少ない寿命が更にガリガリと音を鳴らして消えていくが、既に風前の塵のような物だったから今更少なくてっも気にはしない。

 一秒でも多く、一コンマでも長くコイツをこの場に引き止められればそれで良い。

 だが、明らかに人を超えた化物に対し、強化の魔術など児戯にも等しかったらしく、あっさりと紅い槍は両手の中から滑り抜けた。

 

 足に力が入らない。

 赤い命の水が胸から零れていき、小さな水溜りを作っている。

 そこへ、俺は力なく倒れ付す事しか出来ない。

 

 悔しい。

 何もできずに、理由も分からず殺されるのが。

 護ると決めたのに、それすら出来ない自分の力不足が。

 

 そして、消えていく景色の中、最期に見たモノは赤い煌めくような閃光だった。

 

 




紅い槍使い……一体何ニキなんだ……。

今頃ですが、集や士郎は出来る限り本篇の彼らに近づけようとしているので、考え方や台詞に違和感があったらご指摘お願いします。
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