おまけに長すぎて前後編に分かれました。後半はまだ執筆中です。
早く九校戦に入りたいという作者、でも雅季にとっては趣味の演出魔法も大事というジレンマ。
頑張って勢いで何とか押し通します(汗)
七月三十一日、午前九時。
魔法科第一高校も普通の生徒は夏休みに入っているが、休日でも高校には生徒の姿が多く見られる。
休日通学している生徒の理由は、大きく分けて二つ。
部活動の練習か、もしくはいよいよ出発が明日に迫った九校戦の最終チェックであるか。
司波達也を含めたエンジニア達は機材の確認や選手のCADの最終調整に忙しくしており、司波深雪など選手達もミーティングや軽く流す程度の練習を行っている。
来週に控えた本番を前に、九校戦の関係者は一人を除いた全員が高校に集っていた。
九校戦のためにスピード・シューティング部から借りている練習場で、森崎駿もまた他の選手と共にスピード・シューティングの練習を行っている最中だった。
森崎の魔法発動速度は同級生を上回り、上級生に匹敵している。
飛び出したクレーは、すぐさま森崎の魔法によって空中で砕け散った。
「――ふぅ」
上々な結果で一セットを終えて、森崎は肩の力を抜いて特化型CADを構えた腕を下ろした。
この後は他の選手が入れ替わりで練習を行う間は休憩となり、休憩後にもう一セットを行う。
それでスピード・シューティングの最後の練習は終わりだ。その後は夕方までモノリス・コードの練習に入る。
二種目を担当する選手は、練習においても魔法力(持久力的な意味の方)の配分も考慮しなくてはならない。
踵を返してシューティングレンジから離れた森崎は、ふと練習場に掛けられた時計を見て、ポツリと呟く。
「九時半か」
開演まで、あと三十分。
森崎は珍しく、九校戦の関係者でただ一人だけこの場にいない人物のことを頭に思い浮かべた。
富士の裾野で行われる九校戦は、交通が不便ながら十日間でおよそ十万人の観客が集まる。
対して東京の有明で行われるサマーフェスは、二日目の時点で一般参加者が延べ二十六万人に上っていると昨夜のニュースでは報道していた。
初日で十二万人、二日目で十四万人。
最終日である今日はおよそ十五万人の観客動員数が見込まれているとも。
それだけの大観衆の前に立つ、その緊張感はどれほどのものだろうか。
森崎は想像しようとして、止めた。
どうせあいつのことだ、緊張するどころか楽しんでいるだろう。
そう思うと、ほんの僅かな心配すらアホらしくなった。本人は心配したという事実自体を頑なに否定するだろうが。
森崎はその人物のことを思考の外に置いて、練習に集中することにした。
十万人の観客に比べれば、と無意識に考えたことで、不思議とリラックスしていることに自分自身で気付かないまま。
新宿、池袋といった首都圏再開発計画に漏れず、有明もまた再開発された都市だ。
二十一世紀の初頭には日本最大のコンベンションセンターを抱えていたこの都市は、その長所を最大に活かした都市へと生まれ変わった。
埋立地の大部分を会場エリアにした、日本最大にして世界有数のコンベンションシティ、有明へと。
その有明には現在、各所に設けられた会場エリアへの入り口を始まりに万を超える人数が行列を作っている。
午前の炎天下の中、思い思いに暑さを何とか凌ぎながら開演の時間を待つ。
会場内のスタッフたちもまた、始まりを前に緊張感を顕わにしながら手や足を動かす。
そして、午前十時――。
「有明や、夢見祭りに、訪れや、
スタッフの控え室にいる、ある演出魔法師の少年が楽しげにそう詠うと同時に、会場エリアへの入り口が一斉に開かれ、
「さあ、お祭りの始まりさ」
サマーフェスの最終日が始まった――。
サマーエンターテインメントフェスティバル。
「全員が主役」、「サマーフェス・ドリーム」というテーマの下にクリエイティブ社が送る一大イベントであり、様々なエンターテインメントが集った夏の祭典だ。
有明の巨大な会場全てを使った広大なエリアには、多種多様なエンターテインメントが繰り広げられる。
たとえば目玉の一つとして、民間放送各局が放映している人気バラエティ番組で行われるゲームやアトラクションを実際に体験できるエリアがある。
そのエリアでも毎年全国放送されるほど特に人気を博しているのが、様々な障害物が行く手を阻む巨大アスレチックを制限時間内に突破するというアトラクションだ。
一般人だけでなく芸能人やスポーツ選手、更には魔法師など様々な職業の人々が参加するこのアトラクションは、サマーフェスが終わるその時まで参加者が絶えることはない。
他にも人気格闘ゲームや、いわゆる「落ちゲー」など対戦型バーチャルゲームのゲーム大会。
実際のライヴステージで歌える飛び入り参加大歓迎のカラオケステージ。そこから少し離れたところでは絶叫、替え歌、更には一緒に来た彼女への告白と何でもありのリサイタル。
スポーツエリアでは野球、サッカー、レッグボールなどで元プロ選手たちと共に練習や試合ができるなど、「全員が主役」というテーマを可能な限り実現するため、一般客が実際に参加して楽しめるイベントを中心としている。
その他にもトークショーやイベントショー、コンサートやライヴが各ステージで行われ、タイムスケジュールの最後は巨大なメインステージで超大物ミュージシャンや国民的アイドルたちがラストを飾る。
また幾つかのイベントには演出魔法師による演出が加わり、会場を大いに盛り上げる。
いつからかインターネットで参加者が毎年「自分があと十人は欲しい」という決まり文句をぼやくことが恒例になるほどの巨大な祭典だ。
そして「サマーフェス・ドリーム」。
サマーフェスの特徴として、各分野のスカウトや関係者がそれぞれのエリアを視察しており、『原石』を常に探している。
カラオケ大会で見事な歌唱力を披露した少女が、スカウトの目に留まり歌手デビューする。
フットサルの試合に参加して活躍した少年が、プロサッカーチームに勧誘されてジュニアクラブ入りする。
常に開放されているフリーステージでゲリラライヴを敢行した無名バンドが、それを機にメジャーデビューを果たす。
魔法力測定体験コーナーで同世代より高い魔法力を示した少年少女が、魔法師の道を歩み始める。
全てが実際にあったことであり、今日も、そしてこれからも起こり得る話だ。
「喜びと楽しみがあってこそ、人は夢と希望を持てる」とは、クリエイティブ社の現
「世の中を楽しませる、誰も彼も楽しませる、それがクリエイティブ・エンターテインメント社の存在意義であり使命であると、私は考えます」
「『楽しみ尽きて哀しみ来たる』と言いますが、ならば次の楽しみを我々が用意しましょう」
「人に喜びや楽しみを提供できるのは、機械や技術ではなく人そのもの。そして喜びや楽しみがあればこそ、人は夢と希望を持って生きていけるのです」
「社員の皆さん、我々が作り出すのは製品ではありません、笑顔です。我々が世に送り出すのは商品ではありません、希望です。私は、この素晴らしき会社の代表になれたことを、心から誇りに思います」
かの
毎年行っているサマーフェスの大規模化と濃密化、そして演出魔法の積極的採用もその一環だ。
かつて若者層を次々と取り込んでいった「萌え文化」は、百年の歴史を刻んだ今なお健在であり、サマーフェスにも同人サークルによる同人活動エリアがある。
ちなみに、かつては五十万人を超える一般参加者を集めたこの文化系統の巨大イベントも、少子化による人口減少と大戦による若者の意識変革の影響を免れえず、特に大戦時以降は凋落する一方だった。
それでも文化は生き残り、やがて安定した時代が訪れると同時に復興していった。
現在も毎年夏と冬にコンベンションセンターで祭典が行われているが、その規模はやはりというか百年前と比べると縮小している。特に夏の方はサマーフェスと合併し、フェスの一部となっている。
百年前のような観客数を動員するのは、時代的にも人口的にも今暫くは無理であろう。
閑話休題。
「萌え文化」が今なお続いているように、同人エリアの隣にはこちらも続いている“ある文化”のエリアがある。
名目上はアニメーション制作会社やゲーム制作会社、大学系サークルや研究会など企業と一般の複合ブース郡。
だが、このエリアの全てブースに共通しているのは展示品や販売商品が、大艦巨砲の宇宙戦艦、人型にも変形可能な可変戦闘機、そして二足歩行の巨大ロボットなどに関連したグッズであることだ。
アニメーション制作会社やゲーム会社、プラモデル会社、そして一高のロボット研究部のような有志達が紡いできた、地上と宇宙を舞台にしたロマン。ついでに言えばドリルや自爆といった謎の魅力溢れるロマン。
ここはコアなファンが集う「燃え文化」エリア。
かの守矢の現人神も幻想郷に来る前は毎年このエリアに足を運んでいたという神威あらたかな(?)エリアだ。
完全な余談だが、一高のロボ研には「萌え派」と「燃え派」の合作にして傑作の3H(人型家事手伝いロボット)がある。
外見は高校生と同世代の少女型メイドロボ。
両腕はアタッチメント式で人型アームかドリルの選択が可能。人型アームはロケットパンチとして、ドリルに至っては高速回転させながら射出できる。なおドリルは安全性を考慮せざるを得なかったので不本意ながらプラスチック製。
そして標準装備として自分が壊れる程度の威力しかない自爆スイッチ。というか魔法科高校とはいえ爆発物は法律違反なのでその程度の威力しか出せない。それでも自爆スイッチは譲れなかったらしい。
……ロボ研もそうだが、この国のロボットは何処へ向かおうとしているのだろうか。
閑話休題。
午後二時から始まるこのエリアのアニメーション制作会社とゲーム会社が共同主催するメインイベントに、結代雅季は演出魔法師として参加する。
雅季の役割は最も重要なものであり、むしろ雅季次第でイベントの成否が決まる。
最初に先方から概要を聞かされた時、雅季は責任の重大さを感じる……以前に、相手側の望む演出内容と、そして何とも言えない『奇縁』に内心で噴き出していた。
時刻は午後二時、その十分前。
陸上競技が可能なぐらい広大な
オーバルの片円は天幕とテントが幾つも並んだ関係者用スペースになっており、それ以外が周囲に小型フェンスが設けられたギャラリーとなっている。
フェンス前に集った観客数は数千人、いや一万人はいるだろう。
誰もが顔を上げて、会場スペースの中央に佇んでいる巨大な影を見上げている。
大勢の視線を集めているソレは、右手に近未来型の形をした灰色のライフル、左手に刀身の無い白い柄を持ち、そして背中には折り畳み式キャノンを背負った、人気ロボットアニメシリーズに出てくる人気ロボットだ。
等身大サイズの高さ十八メートル、標準的なビルで言えば五階建ての高さと同等であるそれは、まさに巨大ロボだ。
これだけならば、ここまで人を集めたりはしなかっただろう。
等身大サイズを売りにした巨大ロボの模型はだいぶ前から幾種類も存在しているし、目新しいものでもない。
では何故ここまで人が集まっているのか。
それは、この巨大ロボが従来のものとは一線を画す演出を行うため。
実際にやるとなれば膨大な時間と費用が必要になり、更に実用性という観点で比較すれば割に合わないため、未だ実用化の計画すらない
午後二時のイベント開始まで秒読み段階にまで入った頃、雅季は関係者用テントの中で最も巨大ロボに近いところに立ち、巨大ロボを見上げていた。
口元に浮かぶのは笑み。
緊張感は無い。あるのは観客席にいる少年達や、この時だけ童心に立ち返っている大人達と同じ思い。
むしろこの演出のメインを受け持つ雅季より、後ろや近くにいるスタッフ達のほうが緊張している。
いくら練習やリハーサルでも何ら問題は無かったとはいえ、本番を前にしては手に汗を握るのが常人だ。
その点で言えば雅季の純粋に楽しんでいる様は、傍から見れば剛胆に思うか、或いは些か浮世離れしているように思うか。
そして、デジタル電波時計が午後二時を示した瞬間、ディレクターが周囲に向かって大きく頷いた。
「まさか諏訪子様と似たようなことをやることになるとは。“祭り”は“神遊び”とはいえ、奇縁だね、本当」
巨大ロボを見上げながら小さく呟いた雅季の声は、イベントの始まりを告げる会場放送と、それによって生じた大歓声にかき消された。
等身大サイズの巨大ロボだが、実のところ中身は頭部を除いた半分以上、特に上半身のマニピュレーター部分はハリボテだ。
これは内部に機械など入れた場合、かえって複雑な構造体になってしまい魔法が効き難くなるという専門家の意見を製作側が取り入れたためだ。
下半身部はバランスを保つため脚部に
雅季が今持っているCADは自前の物ではなく、この日の為に支給された携帯端末形態の汎用型CAD。中にインストールされている魔法は全てこのイベント用のもの。
これはイベント関係者達が魔法科大学に話を付けたからで、雅季は関係者達と大学側を交えて演出に使用する魔法の選択とCADの調整を行っている。
雅季はそっとCADのパネル部に指を添える。
『上空に問題なし、行けます!』
耳にした無線イヤホンに報告が入り、同時に会場ではあの巨大ロボのパイロット役を演じた人気声優が有名なセリフを言い放ち、巨大ロボのカメラアイに光が灯る。
それを合図に、雅季はCADに
巨大ロボの右腕という情報体を右肩から右肘の関節部、右肘の関節部から右手先までと二つに分け、それぞれの空間座標と速度の情報を改変する。
練習で速度と停止位置を何度も検討、調整した結果、驚くほどスムーズに腕が上空に向けられる。
巨大ロボが、従来の油圧式やモーター駆動とはまるで違う、まさにアニメーションと同じような速さでビームライフルを空に向けた。
今まで見たことのない突然の動作と光景に、観客席から歓声寸前のどよめきがあがる。
だがまだ早い。雅季を含めた関係者達がニヤリと笑う。本番はこの後なのだ。
最初の打ち合わせで満場一致で決まった、一番初めのモーション。
それは「まずは一発かまして観客の度肝を抜く!」こと。
雅季はすぐにCADから起動式を読み取る。
可視光線の光波を操作し、色を付けた光子を銃口に収束させる
収束させた光子の始点をビームライフルの銃口、終点を上空百メートルに、移動系魔法を設定。
起動式の読み取り、完了。
「撃ちます!」
「よし撃て!」
ディレクターが子供のように興奮した声で許可を下し、雅季は魔法式を展開した。
銃口より少し太い、青い光が、ビームライフルの銃口から空に向かって放たれる。
それは、紛れもなくアニメと同じ色、同じ太さのビームだった。
――オオォォオオ!!
どよめきは、驚愕の大歓声に変わり、自然と拍手が生まれていた。
結代雅季が担当する演出魔法は「人気巨大ロボを、可能な限りアニメーションやゲームのように動かすこと」だ。
特撮やアニメ、ゲームなどを媒体に、前世紀から続いてきた一つの夢。
3Hのような人型二足歩行ロボットは既に普及しているが、大型サイズの歩行ロボットは未だ技術的に困難だ。
東欧で開発された直立戦車は、ただ無限軌道の上に短い脚部と砲台を乗せただけのようなものに過ぎず、そもそもあれは実際に人の命を奪っている、夢の無いただの兵器だ。
兵器としてではなく、ただ単純に見てみたいというファン達の純粋な思い。
ただそれだけの為に、アニメーション制作会社とゲーム会社は企画を立案し、舞台を用意し、等身大サイズの模型を作り上げた。
機械的、電子的に困難ならば、魔法的にせめて見た目だけでもそれらしく動かせないだろうか、そんな望みを持って。
そしてこの時この場、ファン達と企画に携わった関係者達の目の前で、雅季は見事にそれに応えていた。
魔法で足を動かし、全高十八メートルの巨大ロボを歩かせる。
バランスの関係上、一歩ずつ踏み締めるような歩行だが、巨体故にそれがかえって「歩行」という行為を誇示しているように見えて迫力を増しており、観客達からは歩く度に歓声が上がる。
そして、雅季は携帯端末形態の汎用型CADを右手で操作しながら、左手でポケットからもう一つの汎用型CADを取り出した。
複数CADの同時操作。
本来は
右手のCADで、巨大ロボが右手に持つ柄に光を集める。
赤みを帯びた光が柄から伸び、十メートル程度の長さを持った棒状で一旦固定される。
「ビームサーベルだ!」
観客から興奮した声があがる。
右手のCADでビームサーベルを展開する魔法式を維持しながら、雅季は左手のCADで巨大ロボの腕を動かす。
巨大ロボが、ビームサーベルを横に薙いだ。
再び上がる大歓声の中、巨大ロボはビームサーベルを何度も振るう。
『上空、問題ありません。いつでもどうぞ』
「了解。ビームライフル撃ちます」
無線に答えた雅季はビームサーベルを終了させ、再び巨大ロボにビームライフルを構えさせて、上空にビームを放った。
アニメの世界を現実に持ってきたこのイベントは午後二時からスタートし、途中で声優やアニメ制作監督のインタビューなども含めて午後三時には終わる。
かの天才アインシュタイン博士が提唱した相対性理論ではないが、楽しい時間はすぐに過ぎ去っていくものだ。
もう間もなく一時間となり、このイベントは終了する。
「ラストモーション入るぞ、各チーム準備は?」
『上空、問題ありません』
『会場内放送、準備オーケーです』
各スタッフから報告を受けたディレクターは雅季に向かって頷く。
雅季はそれを確認すると、視線を巨大ロボに移してCADを操作した。
巨大ロボが片膝を突くと、背中に折り畳まれたキャノンがゆっくりと展開される。
背中から伸びた砲身は右肩越しに前方へ向けられ、機体そのものが砲台とした体勢となる。
そして、巨大ロボの上半身が仰け反り、砲口は上空へと向けられた。
『ご来場のお客様に、ご連絡致します。只今より、エコーエリアにて、巨大ロボよりプラズマキャノンが撃たれます。電波障害および衝撃波に、ご注意下さい』
サマーフェス会場全体に放送が流れる。
勿論、プラズマキャノンもどきなので電波障害も衝撃波も発生しない。クリエイティブ社も絡んだ遊びの演出だ。
同時に会場内の観客の視線の多くが、エコーエリアの上空に、これから雅季が行う演出魔法に向けて集まった。
巨大ロボの体勢を整え、予定通りの場内放送が流れた後、雅季は最後の締め括りに取り掛かった。
左手に持ったCADで、プラズマキャノンの砲身に帯電している電子を発光させる。
青白い電光が、さながらエネルギーチャージを演出する。
プラズマキャノンを模擬するのは光子の魔法。そこはビームと同じだ。
違うのは、
右手に持ったCADが、プラズマキャノンの砲口に光を集める。
青白い可視光線に変換された光波が、光子として砲口に収束されていく。
砲身に電光を発生させながら砲口に光が集まっていく。それはアニメやゲーム以外では見ることの出来なかった、現実では見られなかった夢幻の光景。
そして――。
「撃ちます!」
「行け!」
多くの衆目を集める中、巨大な光の奔流が空に向かって放たれた。
ビームライフルの五倍はあるだろう光の帯の輝き。
巨大ロボの最大火力に相応しい光景に、
――ワアァァアア!!
観客席も、関係者達も、喜びと興奮は最高潮に達していた。
「やったな! 大成功だ!」
「お疲れ様です!」
「君のおかげだよ、結代君!」
「最高の思い出が出来たよ、ありがとう!」
天幕やテントにいるスタッフ達は成功の喜びを顕わに、雅季の背中を叩いたり握手したりしながら雅季を褒め称える。
「俺の方こそ楽しかったですよ。またやりたいですね」
「次か。よし、今度は敵陣営のロボットを出そうか」
「いいですね。バリアとかしましょうよ」
「いやいや、次は
イベントの興奮をそのままに話が盛り上がる中、
「結代君、クリエイティブ社の迎えが来ているよ!」
「わかりました、すぐ行きます」
雅季は
「それじゃ、次があるので先に失礼します」
「ああ。このイベントの成功は、全て君のおかげだ。本当にありがとう」
「こちらこそ。夜の打ち上げでまた会いましょう」
ディレクターと強い握手を交わして、雅季は天幕を出ると迎えに来ていたクリエイティブ社の会場内専用移動車に乗り込んだ。
結代雅季には、一ヶ月前に決まったメインイベントの演出がまだ残っている――。
将来あるかもしれない会話。
ピクシー「貴方に仕えたい。貴方の為ならば――このドリルで敵中を突き抜けて自爆することも厭いません」
達也「いや、それはしなくていい」
ちなみに作者はガ○ダム派よりアーマード・○ア派です。フロム主義です。
次のバリアはきっとコジマ粒子、オービットはソルディオスです。
大丈夫、こっちのトーラスも優秀なのでたぶん開発してくれます(笑)