魔法科高校の幻想紡義 -旧-   作:空之風

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難産でしたが、何とか出来ました。
今回は吉田幹比古と九島烈の登場です。



第25話 パーティー

 

競技の開会式が八月三日であるにも関わらず、八月一日に魔法大学附属高校の全九校が揃ったのは、この日の夕方に立食パーティーが行われる為だ。

 

多少の欠席者は出るものの、毎年三百人から四百人に及ぶ全九校の選手、スタッフがホテル最上階のパーティーホールに集う。

 

パーティーとはいえ彼ら彼女らは高校生、つまり未成年であり、お酒は出ない。

 

そのことに内心で不満を持っている不良高校生が少なくとも一名、一高にはいた。

 

「お酒は二十歳からってさ、つまり二十年間を無味に過ごせっていう無情な決まりだよな」

 

訂正、内心だけでなく外部へも不満を漏らしていた。

 

「……一応、言っておくけど、未成年の飲酒は法律違反だぞ」

 

何となく無駄だと察しながらも忠告したのは司波達也だ。

 

「では今呑まずしていつ呑むのか?」

 

「五年後だろ」

 

このグウの音も出ない正論は森崎駿。

 

二人の反論に対して「やれやれ」と言わんばかりに肩を落とす不良高校生、結代雅季。

 

ちなみに達也の隣にいる深雪は、まさに「何とも言えない」状態で三人のやり取りを見つめているだけだった。

 

予定通りに始まった建前は懇親会、実質はプレ開会式である立食パーティー。

 

その会場の一角に司波達也、司波深雪、結代雅季、森崎駿の四人が集まっていた。

 

「全く、お酒は心の潤滑油、酒宴は親交を深める儀式。結代家(ウチ)では宴会(えんかい)のことを縁会(えんかい)もしくは縁開(えんかい)とも書くぐらい、合縁奇縁を結ぶ場だと考えているのに。何のためのパーティーだか」

 

雅季は憮然と不満というか愚痴を漏らすと、手に持っているグラスに入ったソフトドリンクを飲む。

 

「結代家が宴会好きなのは身をもって知っているけど、ここであまり公言するなよ。下手すると出場停止になる」

 

呆れと諦めを含んだ視線で森崎が雅季を睨むと、雅季は「わかった」と渋々と不満を抑える。

 

「お飲み物は如何ですか?」

 

「赤ワインを」

 

「わかってないだろ!」

 

尋ねてきたコンパニオンに即答した人物と、それにツッコミを入れた人物が誰なのか、もはや語るまでもないだろう。

 

ちなみに司波兄妹ではないのであしからず。

 

「当パーティーではアルコール類は一切禁止されております。というか、公式の場で飲んだらダメでしょ」

 

前半は形式的な、後半は親しげ且つ呆れた口調でそう答えたのは、四人の見知った人物。

 

「エリカ」

 

「関係者って、こういうことだったのね」

 

「フフン、ビックリした?」

 

悪戯が成功したかのように笑っている千葉エリカだ。

 

「……まあ、確かに驚いたけど」

 

エリカの問いに、達也は複雑な表情を浮かべて言葉を濁す。

 

場所が場所だけに、この場に関係者として入り込めたことに本当ならもっと驚けたのだろうが……。

 

「間が悪かったわね、エリカ」

 

「やっぱり、そうよね」

 

深雪の言う通り、最初のインパクトが薄れてしまったため、驚きも半減だった。

 

そして、三人の視線は自然とインパクトを薄めた元凶へと集まる。

 

雅季と森崎の二人へと。

 

「ちょっと待て、僕は違うだろ!」

 

「何言っているのよ、アンタも同罪よ」

 

森崎の抗議は、エリカに切って捨てられた。

 

 

 

 

 

 

同罪扱いされた森崎が事故のとき以上に落ち込んだり、エリカが幼馴染を連れてくるため突然踵を返して軽やかに立ち去ったりとした一幕の後、

 

「深雪、ここにいたの。それに結代君と森崎君も」

 

「達也さんもご一緒だったんですね」

 

エリカと入れ替わるかたちでやって来たのは雫とほのかだ。

 

「他のみんなは?」

 

「あそこよ」

 

深雪が尋ねると、ほのかが会場の一角を指差す。

 

そこには一高の男子生徒達、そして一年女子生徒達が集まっており、深雪が振り向くと慌てて目を逸らした。

 

「深雪の傍に寄りたくても、達也さんがいるから近づけないんじゃないかな」

 

雫の推測に、達也は呆れた声を上げる。

 

「何だそりゃ。俺は番犬か?」

 

「みんなきっと、達也さんにどう接していいのか戸惑っているんですよ」

 

ほのかのフォローを聞いて、不屈(というより慣れ)の精神で立ち直った森崎は「そうかもな」と心の中で呟く。

 

自分もそこにいる非常識に出会っていなければ、プライドが邪魔をして司波達也を認められず、もしかしたらあの中にいたのかもしれない。

 

それを考えると自分でも変わったな、と森崎は思う。

 

森崎の父親はそれを「いい変化だ」と満足げに頷いていたが、それがどう良い変化なのか森崎には今もわからない。

 

そこで森崎はふと気付いた。

 

(ん、待てよ? この状況……)

 

「バカバカしい。同じ一高生で、しかも今はチームメイトなのにね」

 

森崎の思考を遮ったのは、この場にいなかったという意味での新しい声だ。

 

「千代田先輩」

 

達也が新たに輪に加わってきた人物の名を呼ぶ。

 

一高の二年生、千代田花音(ちよだかのん)だ。そのすぐ隣には彼女の婚約者である五十里啓(いそりけい)の姿もある。

 

「分かっていてもままならないのが人の心だよ、花音」

 

「それで許されるのは場合によりけりよ、啓」

 

「どちらも正論ですね。しかし、今はもっと簡単な解決方法があります」

 

ともすれば主張の言い合いにまで発展しかねない両者の会話に、当事者である達也が口を挟む。

 

そして、深雪達の方へ振り返る。

 

「深雪、皆の所へ行っておいで。チームワークは大切だからね」

 

「ですがお兄様」

 

「後で俺の部屋においで。俺のルームメイトは機材だから」

 

不服そうな深雪。ほのかと雫も顔を見合わせる。

 

そして、不承不承といった様子で深雪が肯定の言葉を返そうとして、

 

「確かに、チームワークは大切だよなー」

 

いつの間にか達也の背後に回っていた雅季が、逃がすかと言わんばかりに達也の肩に手を回した。

 

「というわけで、達也も行くぞ」

 

「……いや、俺が行ったら本末転倒だろ」

 

突然の誘いに、達也は困惑しながら言葉を返す。

 

達也は自分が『異端』であることを自覚している。

 

故に、あのように避けられるのは仕方がないとも。

 

だが、その程度の自称他称の『異端』など、今なお幻想を紡ぐ『結代』の前では極めて些細なことに過ぎない。

 

「大丈夫、大丈夫。戸惑いだろうが嫉妬だろうが忌避だろうが、まとめて吹き飛ばす“魔法”みたいな話題に心当たりがあってね」

 

ニヤリと口元を釣り上げる雅季。

 

「結代を見くびってもらっちゃ困るな」

 

達也は益々困惑し、深雪を含めた他の者は目を丸くして、達也と雅季を交互に見遣る。

 

そんな中で森崎だけは「やっぱり」と小声で呟く。

 

近い距離にいながら、縁遠い間柄の者達がいる。

 

そのような状況下で、縁を結ぶ系譜の直系にして、何より『結代』である雅季が動かないわけがないのだ。

 

結代家が結ぶ縁は、何も男女間の恋愛成就だけではない。

 

たとえば歴史上でも、後に政治的才覚の無さから悲劇の武将として知られる人物が、配下の郎党達と共に淡路島の大八洲結代大社で主従の変わらぬ縁を祈願したという逸話は有名だ。

 

恋慕、友情、忠義。人と人の縁は、その数も種類も人の数だけあり、それらを等しく結ぶのが結代家だ。

 

雅季に連行されるかたちで、達也は一高の輪へと足を踏み入れる。

 

達也と、達也を連れてきた雅季に注がれる、無数の戸惑いと一部からの忌諱や敵意といった負の視線。

 

二人のすぐ後ろには、心配そうに見守る深雪、ほのか、雫の三人。

 

その隣には興味津々な様子の花音と五十里、そして何故か達也に同情の眼差しを向けている森崎も一緒だ。

 

自然と一高選手団の大半の視線が達也と雅季に集まり、囁き以上の会話が無くなる中、

 

「さてと、達也よ――」

 

雅季は悪童のようなイイ笑顔で、

 

「たまにはお前と司波さんの“プライベート”な話でも聞かせてもらおうか?」

 

“魔法”の話題、別称“爆弾”を投下した。

 

 

 

――その瞬間、忌諱と敵意は激しい動揺に打って変わり、戸惑いは圧倒的な好奇心にかき消された。

 

 

 

「プッ――!」

 

「……成程」

 

思わず噴き出したのは花音で、小声で納得したのは雫。

 

ついでに五十里は苦笑、ほのかは他の生徒と同様に好奇心に目を輝かせ、森崎は同情を更に深くするなど各々の反応を見せる。

 

そして、話題のネタにされた達也と深雪はというと、

 

「……」

 

「……」

 

両者とも、開いた口が塞がらなかった。

 

「あ、それ聞きたい! ねえ司波くん、家での深雪ってどんな感じなの?」

 

達也が絶句している最中、早速乗っかってきたのは明智英美だ。

 

それを皮切りに同級生、上級生問わず質問を浴びせてくる。

 

「やっぱり家でもお淑やかな物腰なのかな」

 

「司波さんの趣味とか知りたいよねー」

 

「そういや司波、中条から聞いたんだけどFLTのモニター務めてるんだって? あのCAD調整テクを見て思ったんだけど、お前自身も何か開発とかに絡んでたりするのか?」

 

大半は深雪に関するものだが、中には達也への質問もある。

 

その達也に敵意を向けていた一年男子生徒達も、別の意味で強い視線を達也に向けながら耳を傾けている。

 

彼らも気付いたのだ。

 

司波深雪と非常に親しい身内、それは深雪の情報収集源としてこの上ない逸材だと。

 

「さあ、キリキリ吐け。吐いたら楽になるぞ」

 

「……俺はどこの犯罪者ですか」

 

風紀委員会の先輩である辰巳鋼太郎(たつみこうたろう)の、面白がりながらもまるで容疑者に対するような物言いに、達也はそう返すのがやっとだった。

 

 

 

 

 

 

吉田幹比古を連れて戻ってきたエリカは、予想外の光景に目を丸くした。

 

先程まで孤立していた達也が、一高の輪の中に入っているのだ。驚くなというのは無理がある。

 

尤も、こうやって第三者視点で見ていると、談笑というより何故か達也が質問責めにあっており、達也はその対応に四苦八苦しているようにも見える。

 

というよりそのままの状況だ。

 

ちなみに深雪は生徒会役員として他校との挨拶に駆り出されているのであの場にはいない。

 

「あれ、どんな状況だと思う?」

 

「今さっきここに来たばかりの僕にわかるわけないだろ」

 

エリカの問いに幹比古はぶっきらぼうに答えるも、どこか安堵しているようだ。

 

幹比古の今の格好は白いシャツに黒いベスト、一言で言えばウェイターの格好をしている。

 

幹比古は、初対面の相手に今の自分の格好を見られたくないのだ。

 

「お、エリカ。戻ってきたのか」

 

だが、その望みは儚く消え去った。

 

知己の縁を感じることでエリカが戻ってきたことを察した雅季が、輪から抜け出し、エリカと幹比古の下へと歩み寄ってきた。

 

「あ、雅季。あれってどういう状況?」

 

「達也なら妹効果(ドーピング)のおかげで人気急上昇の真っ最中」

 

「……わかったような、わからないような。とりあえず深雪関連でああなったと」

 

「その通り」

 

九割以上は雅季のせいなのだが、張本人はいけしゃあしゃあと言い放つ。

 

「それで、そちらさんが例のミキ君?」

 

「幹比古、僕の名前は吉田幹比古だ。ミキっていうのはエリカが勝手に呼んでいるだけだ」

 

雅季が幹比古に視線を変えて尋ねると、幹比古は不満そうに答える。

 

それを聞いた雅季は顔を俯かせて「吉田幹比古……」と小声で呟き、すぐに顔を上げると再び幹比古に尋ねた。

 

「じゃあヨッシーとミッキー、どっちがいい?」

 

「何の話!?」

 

「呼び方。ミキが嫌だって言うからちょっと考えたんだけど」

 

「どっちもダメに決まっているだろ!」

 

「やっぱり知的財産の問題かー」

 

「それ以前の問題だよ! 普通に幹比古って呼んでくれよ!」

 

どこかで見たことがあるような反応を示す幹比古。

 

もしこの場に同級生の某人物がいれば、幹比古と篤い友情を交わしたことだろう。

 

ちなみにその人物はすぐ近くにいるが、今は他の一高男子生徒と共に情報収集に励んでいる。

 

ついでにエリカはというと、お腹を抱えて必死で笑いを堪えている。

 

「じゃあ幹比古で。俺は結代雅季、雅季でいいよ。よろしく」

 

何事もありませんでした、と言わんばかりに自己紹介をする雅季に、幹比古は奇妙な疲れを感じながら「よろしく」と答えた。

 

一方で、雅季は幹比古から間接的な縁の繋がりを感じていた。

 

間接的な縁、これは共通の人物が知り合いであること示す縁である、のだが。

 

(何というか、縁が弱いな。これは一高の生徒じゃなくて、外部の人間に共通の知人がいるってことかな)

 

とはいえ、特に驚くことでもない。

 

雅季も言わずもがな、結代家の交友関係は広い。その中には吉田家も含まれている。

 

吉田家は神祇の術式を伝える古式魔法の名家であり、結代家とも少しばかり付き合いを持っている。

 

それに結代東宮大社の今代の結代、結代百秋(ゆうしろおあき)は吉田家の現当主と幾度か顔を合わせている。

 

「達也はあんな状態だし、僕は仕事に戻るぞ」

 

「あれ、戻っちゃうの、ミッキー?」

 

「僕の名前は幹比古だ!」

 

幹比古とエリカのやり取りを見ながら、「共通の知人って、親父かな?」と雅季は思った。

 

実際にはそれ以上の合縁奇縁があるのだが、この時点では雅季は“思い出すこと”はできなかった。

 

 

 

 

 

 

来賓の挨拶が始まったことで、達也はようやく質問責めから解放された。

 

「お疲れ、達也」

 

輪から一人離れて一息吐いていたところに、両手にジュースの入ったグラスを持った雅季がやって来て、片方を達也に渡した。

 

「……恨むぞ、雅季」

 

達也は恨み言を放ちながらもグラスを受け取る。

 

深雪の好きな食べ物や興味のあることなど根掘り葉掘り聞かれて、更にその中には何故か自分に対する質問もあり、対応に苦労したものだ。

 

尤も――、

 

「でも距離は縮まっただろ?」

 

雅季の狙い通り、それらの問いに律儀に答えていくあたりの達也の人柄は、他者にも伺い知れたことだろう。

 

事実、一年男子はまだぎこちないものの、達也に対する「険」は確実に薄れていた。

 

達也自身も「深雪の話題のおかげで」と誤解はしているものの、自身に向けられる視線の質が変化したことは自覚していた為、何も言わずにジュースを口に含んだ。

 

二人の小声の会話はそこで途切れる。

 

来賓の挨拶中に堂々と会話する程、達也も雅季も礼儀知らずではなかった。

 

……どっちも非常識とは評されているが。

 

来賓の挨拶は続き、何人か終えたところで進行役の司会者が次の来賓の名を呼ぶ。

 

十師族の長老、「九島烈(くどうれつ)」の名を。

 

その瞬間、会場内の空気が一層引き締まったかのように感じられた。

 

(九島烈って、あの時の翁か)

 

雅季は以前、九島烈と一言だけ会話を交わしたことがある。

 

あれは、だいぶ前のこと。

 

「君が結代雅季くんかな?」

 

結代東宮大社の廊下で鉢合わせた際、好々爺を演じてその実、値踏みをするような目をひた隠しながら問い掛けてきた老人。

 

その人物こそが九島烈だ。

 

あの時、九島から感じたものはどちらかというと「悪縁」に近いものがあった。それだけで何をしに結代家を訪ねてきたかは瞭然だった。

 

実際、九島は結代百秋に対して結代家の魔法師コミュニティー入りを要請しに来たのだから。

 

後で聞いてみたところ、向こうはかなりの好条件を示してきたらしい。

 

当然ながら結代家は断ったが。

 

 

 

その九島烈が、壇上へ姿を現し――。

 

 

 

(――へぇ)

 

現れた瞬間のどよめきの中、雅季の九島に対する印象は良い方向へと傾いた。

 

壇上の中央へと歩いていくのは、派手なパーティードレスを纏った金髪の若い女性。

 

九島烈は、その彼女の影に隠れるように歩いていた。

 

登壇する瞬間に会場を覆った小さな魔法は精神干渉系魔法。

 

おそらく会場の大半は、現れた女性へと意識が向いており、九島には気づいていない。

 

派手なものを用意して肝心なものから注意を逸らす、それは手品の基本だ。

 

自然と雅季は口元を緩ませる。

 

これもまた、見事な演出魔法に違いはなかった。

 

ふと九島の目が雅季と、その横にも向けられる。

 

隣を一瞥すると、どうやら達也も気がついているようだ。

 

(手品の演出魔法も、ありだな)

 

雅季がそんな感想を抱く中、女性が横に避けて九島自身にライトが照らされる。

 

再び発生したどよめきは、そこでようやく九島がいることに気付いた者達、この『手品』に気付いていなかった者達のものだ。

 

「まずは、悪ふざけに付き合わせたことを謝罪する」

 

九十歳を過ぎたにしてはエネルギッシュに満ちた九島の声で、自然とざわついていた会場が静かになる。

 

「今のはちょっとした余興だ。魔法というより手品の類だ。だが、手品のタネに気付いた者は、私の見たところ六人だけだった。つまり――」

 

面白い魔法を“魅せて”もらったことに内心で拍手を浴びせながら雅季は耳を傾け、

 

「もし私が君たちの鏖殺を目論むテロリストで、来賓に紛れて毒ガスなり爆弾なりを仕掛けたとしても、それを阻むべく行動できたのは六人だけだ、ということだ」

 

一気に興醒めした。

 

(……なんだ、結局行き着くのは“そこ”か)

 

内心の拍手は、溜め息へと変わった。

 

国を守る、その重要性は十分に理解している。

 

自分達の生活を維持することが出来るのも、そもそも日本人が日本人でいられるのも、自らの国があってこそのものだからだ。

 

結代家もこの国で暮らしている以上、その恩恵を受けていることは否めない。

 

故に否定はしない。理解もしている。結代家も縁を結ぶことで人知れず間接的には協力もしている。

 

だが、『結代雅季』個人の思いとして、「本気の暴力」というのは好きになれない。

 

相手を殺す為の魔法、本気の暴力。

 

雅季はそれを楽しそうとは思わないし、きっと大体の人間もそうだろう。

 

それでも人々は魔法という「力」に、破壊力と殺しの効率性を、「本気の暴力」を求める。

何故ならそれが国を守る為に必要な“常識”だから。

 

 

 

――それは、外の世界の人々が“精神的な豊かさ”とは未だ縁遠いということの顕れ。

 

 

 

やっぱり自分は、幻想郷の結代だ。

 

本気の暴力を振るうより、その「本気の暴力」を「弾幕」に変えた幻想郷で、弾幕を作って遊んでいる方が遥かに合っている。

 

九島の挨拶が終わり、会場内の拍手に習って()()()()()()()、雅季はそう思った。

 

 

 

 

 

 

戸惑いながらも満場の拍手を送られた九島烈は、降壇する前に再び会場内を見渡す。

 

そこで、並び立ちながら異なった反応を見せている二人を見つけた。

 

先程の魔法に気付いた、六人のうちの二人。

 

興味を持った目でこちらを見つめている司波達也と、興味を失った目でこちらを見ている結代雅季。

 

壇上を後にした九島の中で、あの対照的な反応をしていた二人の姿が強く印象に残っていた。

 

 

 




原作と違い、達也は孤立しませんでした。
孤立と、質問攻め。
どっちが良かったかについてはわかりませんが(笑)

ようやく吉田幹比古の登場です。
幹比古と森崎は仲良くなるかもしれません。主に被害者の会みたいなもので(笑)
そんなのがあれば達也も入会しそうです。
幹比古にはちょっとした「縁」があります。
どんな縁なのかは、また本編にて。
また彼にはそのうち現代から見た妖怪解釈とか、色々語ってもらう予定(仮)です。

幻想郷はスペルカードルールの浸透によって「本気の暴力」は無くなりつつあります。
霊夢も退治とか言いながら懲らしめるだけですし。
例外は「力が正義」という世紀末的無法地帯、地底ぐらいだぜヒャッハー!
元々幻想郷は「心の豊かさ」を重視しているので、雅季からすれば現代は心の余裕の無い世界だと感じてしまうことでしょう。

次回から競技に入ります。




没ネタ。
「やあ、ぼく幹比古(ミッキー)! よろしくね!」
没になった理由:著作権(嘘)

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