魔法科高校の幻想紡義 -旧-   作:空之風

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予定を変更しまして、幻想葉月編の最終話になります。

変更理由については次話のお知らせにて。


第58話 純情腐情

外の世界。より正確には、結代東宮大社。

 

その日の早朝、結代雅季は数週間ぶりに魔法科第一高校の制服に身を包んだ。

 

先日にクリーニングの宅配サービスで届いた制服には汚れ一つ見当たらず、見た目は新品同様にも思える。

 

今日は一つの節目。昨日から分かたれ、離れていき、そして新しく紡がれる日々。

 

そう、今日は始業式。夏休みは昨日で終わり、今日から新学期が始まるのだ。

 

制服を身に纏ってから欠伸混じりに台所へ向かえば、キッチンテーブルには既に両親である百秋と梓織の姿があった。

 

「おはよー」

 

「おう、おはよう」

 

「おはよう、雅季」

 

「きちんと起きられたか」

 

「貴方は始業式ではいつも寝坊していたものね」

 

「よく覚えているなぁ、梓織」

 

「ふふ、当然でしょ」

 

朝から相変わらず仲睦ましい両親、雅季にとってそれは物心ついた時から見慣れたものだ。

 

 

 

いつも通りに家族三人揃って朝食を済ませた後、支度を終えた雅季は学校へ向かおうと玄関へ赴く。

 

鞄を手に、靴を履き、そうして見送りに来た梓織の方へと向き直る。

 

「それじゃ――」

 

行ってきます、という言葉は、ほんの少しだけ先延ばしされた。

 

「ん?」

 

雅季の隣、ただ壁があるだけの何も無い空間に縁を感じて、雅季はそちらへ振り返った。

 

ちょうど雅季が振り返った時、壁に一本の線が走り、左右に裂けた。

 

実のところ、左右に裂けたのは壁ではなく空間。

 

雅季にとっては見慣れたもの、『妖怪の賢者』八雲紫のスキマだ。

 

「こんばんは、お二人共」

 

スキマから現れた紫の開口一番は、時計の短針が一周遅れな挨拶だった。

 

まあ、妖怪と人間は基本的に生活時間帯が正反対なので間違ってはいないのかもしれない……たぶん。

 

「あれ、紫さん」

 

雅季は意外感を顕わにして紫を見遣る。

 

「あら、おはようございます。八雲さん」

 

梓織は雅季ほど紫と接点があるわけではないが、それでも紫が東宮(ここ)を訪れるのは実に久しぶりであり、珍しいという思いは雅季と共通していた。

 

「どうしたんですか? こんな朝早くに珍しい」

 

「大した用事ではないわ」

 

訝しげな視線を向けてくる雅季に紫は扇子を広げて口元を隠し、言葉を発した。

 

「強いて言えば、ただの“世間話”ってところね」

 

胡散臭さが三割増しになったのは言うまでも無い。

 

 

 

 

 

時間にして一分弱、自称“世間話”を終えた紫は「ではご機嫌よう」と口走りながらさっさと退散した。

 

そうして紫が去った後、

 

「あー……」

 

どことなく困った様子で、雅季は視線を漂わせた。

 

確かに、話の内容は何かしらの用件があったとかそういったものではなく、本当にただの世間話のようなものだった。

 

尤も、それこそ第三者が聞けば、の話だが。

 

(……絶対に楽しんでいるよ、アレ)

 

紫に遊ばれていることを感じつつ、雅季は頭を掻いた。

 

そして困ったことに、雅季は遊ばれていると感じつつも、それでもあの賢者の思惑通りに動きたいと思っていた。

 

動かざるを得ないのではなく、自らの意思で動きたい、と。

 

(だけど、今日は……)

 

だが、それを行動に移すとなれば一つの問題が浮上する。

 

学校をどうするのか、ということに。

 

尤も、雅季の中では既に答えは決まっていた。

 

故に、雅季はバツが悪そうに梓織の方へと向き直った。

 

「えっと――」

 

「雅季」

 

雅季が何をしようとしているのか。

 

雅季が今まさに()()っているのか、それ等をわかった上で梓織は優しい声で言った。

 

「連絡はしておくから、“行ってらっしゃい”」

 

「う……」

 

何となく母親にもバレていることは薄々と感づいていたが、真正面から言われるとやはり恥ずかしさが募る。

 

それでも雅季の選択を、学校を休むことを許してくれた母親が最後のひと押しだった。

 

「うん、母さん、“行ってきます”」

 

照れを隠すように雅季は素早く靴を脱ぐと、急いで家の中へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

魔法科第一高校、一年A組。

 

もうすぐ夏休み明け最初の授業が始まるということもあり、ほぼ全てのクラスメイトが教室内に集まっている。

 

そう、“ほぼ”全て。クラスメイト全員ではなかった。

 

「そう言えば、結代君がまた来ていないね」

 

光井ほのかは司波深雪、北山雫とお喋りをしている最中、ふと未だ空席のままである友人の机が目に留まり、そんな呟きを溢した。

 

「もうすぐ授業が始まるけど」

 

「今日は休み、かしら?」

 

雫と深雪も不思議そうに雅季の席を見ていると、誰かに気付いたほのかが声をあげた。

 

「あ、森崎君」

 

ちょうど教室へ入ってきたのは他称(ここが重要である)、雅季の親友扱いされている森崎駿だ。

 

遅刻寸前の登校、というわけではなく、初日からコンバット・シューティング部の朝練を行っていたのだ。

 

呼ばれた事に気付いた森崎は、深雪達の所へと歩み寄る。

 

「どうした?」

 

「結代君はどうしたのかなって思って……聞いてみた、んだけど……」

 

ほのかの言葉は後半になるにつれて小さくなっていった。

 

森崎が露骨に顔を顰めていったのと比例するように。

 

「……何で、皆してあいつの事は僕に聞いて来るんだ」

 

「あ、あははは」

 

まるでこの世の理不尽を呪うような声を発する森崎に、尋ねた張本人であるほのかは誤魔化すように乾いた笑いを溢し、深雪と雫は森崎から視線を逸らす。

 

森崎は大きく息を吐き出すと、先程の問いに対する答えを告げた。

 

「……あいつなら今日、一身上の都合で休みだ」

 

(((あ、でも知っているんだ)))

 

深雪、ほのか、雫の三人は同じ事を思ったが、それを口に出すような真似はしなかった。

 

心優しい少女達である。

 

「また神社のお仕事?」

 

自然さを振舞って雫が尋ねる。

 

ここらへんのポーカーフェイスは雫ならではだろう。

 

「あまり詳しくはないけど、結代神社では何も無かった日だと思う。あいつもメールでただ休むとしか連絡してこなかったからな」

 

「何か用事でも出来たのかしら」

 

「わかりませんけど、確定したことがあります」

 

深雪の疑問に乗っかる形で森崎が言った。ちなみに深雪が相手だと敬語になるのも変わらずだ。

 

深雪、ほのか、雫の視線が集まる中、森崎は確信の篭った声で三人に告げた。

 

「今日は平和だってことです」

 

盛大なフラグが建てられたことを四人が知るのは、もう少し先の話である。

 

 

 

 

 

 

 

幻想郷、結代神社。

 

「紫もたまにはいいことするじゃない」

 

結代神社の境内から、天之杜玉姫は楽しそうに東の方角の空を見上げていた。

 

そんな玉姫を見て、同じ境内で掃除をしている荒倉紅華は首を傾げた。

 

「今日はえらく上機嫌ですね、玉姫様」

 

「ちょっとした縁が結ばれたからね」

 

「それはめでたいですね」

 

「まあ、実を結ぶのはもっと先になりそうだけど」

 

「あれ、めでたくない?」

 

「朱い糸は急には結ばれないものよ。何事も一歩ずつってこと」

 

紅華とのやり取りの間も、玉姫は変わらず東の空を見続けている。

 

そんな玉姫を紅華は暫く不思議そうに見ていたが、玉姫の見ている方角から思い当たる節があったのか、口元に手を当てて声を上げた。

 

「……あ、もしかして」

 

紅華の推測を裏付けるように、玉姫は紅華の方へ一度視線を向けて、再び東を見た。

 

幻想郷の最東端にある、博麗神社を。

 

「うちの信仰のためにも、そして貴方自身のためにも、精一杯頑張りなさいな、雅季」

 

 

 

 

 

同じ頃、博麗神社――。

 

既に日も昇っているにも関わらず、霊夢は未だ布団の中で横になっていた。

 

冬ならば朝の布団が恋しいのは誰しもが思うことだが、盆を過ぎたとはいえ今は夏。朝とて普通に暑い。布団は恋人ではなく敵な時期である。

 

霊夢が横になっているのはまだ眠いっていたいから等という怠惰な理由ではなく、

 

「うーん……こりゃ風邪ね」

 

怠そうに霊夢が口にしたとおり、体調不良によるものだ。

 

霊夢も人間だ、病に罹ることもある。

 

特にこの幻想郷では、疫病を齎す祟り神や何者かの呪い等で体調を崩すこともしばしば見受けられる。

 

尤も、呪いについては外の世界でも見られるようにはなったが。

 

そして今回の霊夢の体調不良は……特に呪いでも祟りでも何でもなく、季節の変わり目によって生じた正真正銘ただの風邪である。

 

症状はそこまで酷くはない。身体の怠さは感じるが食欲もある。

 

尤も、食欲があろうと食事は自分で用意しなければ出てこないという憂鬱感はあるが。

 

「誰か来ればこき使ってやるのに……こういう時に限ってあんまり来ないのよね」

 

はぁ、と小さく溜め息を吐く。

 

尤も、それは霊夢の主観によるものだ。

 

第三者からすれば誰かがやって来ることの方がきっと多いと思うだろう。

 

以前にも似たような状況では魔理沙がやって来た。ならば今回は――。

 

「よっと」

 

霊夢は怠そうに、その中に若干の辛さも含めて、布団から上半身を起こす。

 

ちょうどその時だった。障子の向こう、縁側の廊下に誰かの気配を感じたのは。

 

「ん?」

 

霊夢は振り返る。

 

障子に浮かぶシルエットが、向こう側に誰かがいることを教えてくれている。

 

「誰?」

 

霊夢の誰何に答えるように、間を置かずに障子が開かれた。

 

「よう、霊夢。風邪引いたんだって」

 

開かれた障子から現れたのは、霊夢にとってもよく見知った少年の姿だった。

 

「何だ、あんたか。というか誰から聞いたのよ?」

 

「隙間の噂になっていたよ」

 

(あいつ)め」

 

犯人を知り、霊夢は嫌な顔を浮かべる。

 

おそらくスキマから覗いていたのだろう、いつも通り、勝手に。

 

だが霊夢の興味は幻想郷一ダメな妖怪から、すぐに彼の持つ手籠に移った。

 

視線に気付いたのか、お米や野菜など食材の詰まった手籠を霊夢に軽く掲げて見せる。

 

「ご飯は食べた?」

 

「まだ」

 

小さく首を横に振る霊夢を見るや、勝手知った様子で台所へと向かう。

 

「お粥でいいかな?」

 

「いいけど……作ってくれるの?」

 

「今日は一日暇だし、それに――」

 

台所に手籠を置いてから、怪訝そうに此方を見つめてくる霊夢へと振り返って、

 

「放っておくのは、良縁じゃないから」

 

少年、結代雅季は努めて平常通りに答えた。

 

「ふーん」

 

雅季の返答は疑問に対する答えになっていなかったが、霊夢は納得することにした。

 

縁が絡めば大概何かしらの行動を起こす雅季のことだ。

 

今回も、その良縁とやらが関係しているのだろう。

 

霊夢の勘はそう告げていた。

 

「ま、作ってくれるならありがたく貰うわよ。ついでに言えば鮭粥ね」

 

「はいはい。というか思ったより元気そうだな」

 

ちゃっかりとリクエストを付けてくる霊夢に、雅季は自然と笑みを浮かべる。

 

雅季は持参した手籠からお米と鮭を取り出す。こんなこともあろうかと鮭まで持ってきている雅季であった。

 

「でも、あんた」

 

その時、ふと気付いたように霊夢は雅季の背中に向かって問いを投げかける。

 

「今日は(あっち)じゃないの?」

 

『結び離れ分つ結う代』という立場上、雅季が外の世界でも生活を持っていることを霊夢は知っている。

 

そして、つい先日に「もうすぐ夏休みも終わるなー」と博麗神社でぼやいていたことも。

 

それを聞いた霊夢は「夏が休みだって? 全然休んでないじゃない、こんな暑いのに」と返した記憶もあるので間違いない。

 

その後、一緒に遊びに来ていた荒倉紅華が「外の世界の話ですよ」とフォローしていたことも。

 

霊夢からすれば何の思惑も無いただの疑問だったのだが、

 

「……」

 

聞いた途端、雅季は動きを一瞬止めた。

 

少しばかり間を空けた後、霊夢に背中を向けながら雅季は答えた。

 

「……まあ、一身上の都合ってことで」

 

背中を向ける雅季が、その時どんな表情を浮かべていたのか、霊夢には知る由も無かった。

 

 

 

 

 

冥界、白玉楼にて。

 

「あら、こんばんは、紫」

 

「こんばんは、幽々子、新しいお茶が手に入ったわよ」

 

ちなみに時刻は昼前である。

 

白玉楼の主である華胥な亡霊、西行寺幽々子。

 

幽々子と紫は古くからの友人であり、こうしてお茶を共にすることも割とあったりする。

 

白玉楼の茶の間で、魂魄妖夢が紫の持ってきたお茶と茶請けを用意している一時の間、つまりはお茶の間に、

 

「紫、新しいお茶はどこのお茶かしら?」

 

「神茶よ」

 

幽々子と紫は茶の話をしていた。

 

「天然物ね」

 

「いいえ人工物」

 

「あら、あっちの神社のお茶?」

 

「ええ、そっちの神社のお茶。でもサテライトアイスティーではないわ」

 

「つまり朱い香りがするのね」

 

「そうよ。とても朱くて緋くて赫い香りが。でも紅茶ではないわ」

 

「お茶は渋い方がいいわ」

 

「残念、甘いお茶よ。でも渋くもあるわ」

 

ちなみに隣の部屋でお湯を沸かしている妖夢にも二人の会話は聞こえていたが、やっぱり会話について行けなかった。

 

まあ、いつものことだが。

 

「甘くて渋いお茶、ね」

 

一方で、幽々子は紫との会話を当然のように理解していた。

 

故に、幽々子は少しばかり揶揄い混じりの口調で紫に尋ねる。

 

「何か手を加えたのかしら?」

 

「ちょっとした世間話をしただけよ。何処どこで誰々が病に臥せているとか」

 

「それは甘くもなるし、渋くもなるわ。だけど一方に香りが偏ることも無い」

 

「長続きする香りですもの」

 

「暢気な香りね」

 

「ええ、どちらも。気付かぬ暢気に、待つ暢気」

 

「それと見る暢気」

 

「見て楽しむ暢気よ」

 

幻想と共に在る二人の少女は笑い合った。

 

縁を司る天之杜玉姫は当然の如く気付いている。

 

普段から身近にいる結代梓織や荒倉紅華も気付いている。

 

八雲紫と西行寺幽々子のように物事の本質を見抜く者は気付いている。

 

他にも察しの良い者達は大体気付いていることだろう。

 

あれだけ想いを寄せていれば、気付かない訳が無い。

 

「思ふらむ人にあらなくに、ねもころに心尽くして、恋ふる我かも」

 

「今頃の暢気に弾幕を撃った詠ね。何処の暢気かは言わないけれど」

 

幽々子が詠った短歌に、紫も全く同感だと言わんばかりに頷く。

 

『思ふらむ、人にあらなくに、ねもころに、心尽くして、恋ふる我かも』

 

自分を思ってくれない人に、繰り返し尽くすぐらい片思いしている心情を詠い上げたものだ。

 

 

 

つまりは、そういうこと。

 

要するに、結代雅季は博麗霊夢にベタ惚れのダダ甘である、ということだ。

 

 

 

まさに幽々子が詠った通り、今頃は風邪を引いた霊夢の世話を甲斐甲斐しく焼いていることだろう、学校を休んで。

 

雅季は何だかんだ言って霊夢には甘い。それこそ大甘だ。

 

何せ九校戦の時でも、霊夢が一高に賭けたことも雅季が実力を見せる要因の一つになった程だ。

 

また雅季が弾幕勝負で霊夢に対して勝率が低いのも離れが効かないという問題以前に、空を飛んで弾幕を掻い潜る霊夢に見惚れているからだと紫は考えている。

 

実際、妙に動きが止まったり鈍くなったりする時があるし。

 

尤も、肝心な霊夢の方は雅季の想いに気付いていない。それこそ全くと言っていいほどに。

 

縁を結ぶことに掛けては右に出る者はいない結代家、その嫡男でありしかも『今代の結代』である雅季でも、あの霊夢が相手では苦戦を避けられないらしい。

 

何せ相手が未だそういったことには無頓着であり、自覚すらしていないのだ。

 

自分が慕情の対象になるという自覚すら無い相手では、朱い糸を結ぶ取っ掛りさえ見つけられないだろう。

 

だから雅季は暢気に、或いは健気に、霊夢が自覚するのを待っているのだ。

 

霊夢が自分もまた、一人の女性であるということを。

 

 

 

そして、そんな二人の恋愛事情を面白可笑しく見物する幻想少女が、八雲紫と西行寺幽々子の二名である。

 

色恋沙汰に敏感なのは人間も妖怪も亡霊も一緒なのだろうか。

 

「妖夢、青いお茶はまだー?」

 

「もう少しでお湯が湧きますので……って、青くないですよ、このお茶っ葉」

 

「あら、貴方も充分に青いでしょうに、妖夢」

 

「いや、確かに私は未熟ですけど……それって何か関係あるのですが、紫様?」

 

「勿論、関係ないわ」

 

紫や幽々子など察しの良い者達は気付いているが、逆に言えば察しの悪い者達は雅季の秘めた想いに気付いていない。

 

たとえば、自他共に認める未熟者の魂魄妖夢とか。

 

「お待たせしました」

 

急須と茶請けの落雁をお盆に載せた妖夢がやって来て、紫と幽々子の前に湯呑と落雁をそれぞれ置いていく。

 

湯呑に急須でお茶を淹れている最中、妖夢は先ほどからずっと気になっていたことを二人に尋ねた。

 

「ところで、いったい何の話をしていたのですか?」

 

「糸で雲が捕まえられるかどうかの話よ」

 

「へ? 今のってそんな話だったんですか?」

 

「相変わらず青いわねぇ、妖夢。この紅茶と同じぐらいに」

 

「それ緑茶です、幽々子様……」

 

今までの会話のいったい何処に糸と雲が出てきたのか。

 

それと、どうしてそこで自分の未熟さに話が繋がるのか。

 

納得のいかない顔を浮かべる妖夢に、今度は紫が問い掛ける。

 

「ところで妖夢。貴方は雲を糸で捕まえられると思うかしら?」

 

「いや、無理なんじゃないですか? あ、でも前に河童が霞を捕らえる網を開発したとか新聞に載っていた気もするので、河童だったら出来る……かもしれません」

 

「河童以外には出来ないと?」

 

「えっと、たぶんそうです」

 

「祟られても知らないわよ」

 

「何でですか!?」

 

妖夢の抗議を受け流して紫と幽々子はお茶を飲む。

 

相変わらず波長が合わないというか理解するのが難しい主とその友人に、妖夢は何度目になるかわからない溜め息を吐いた。

 

 

 

 

 

昼時も過ぎて、秋頃ならば釣瓶落としに日が暮れていくだろう時間帯。

 

それでも夏を過ぎて間もない今日は未だ落ちる気配を見せず、だが暑さは幾分か和らいでいる。

 

ひぐらしが鳴いているのが何よりの証拠だろう。

 

井戸から桶に水を汲み取って来た雅季は、桶を持って博麗神社の縁側を歩きつつ、夏の終わりに鳴くひぐらしに風情を感じていた。

 

「夕影に、来鳴くひぐらしここだくも、日ごとに聞けど飽かぬ声かも」

 

万葉集で詠われた歌を口にしながら、雅季は半開きになっている障子を開けて部屋の中へと入る。

 

開かれた障子から時たま吹き抜ける風が風鈴を鳴らし、部屋を涼しめる。

 

その中で布団に横たわる霊夢は、気持ち良さそうにすやすやと眠っていた。

 

雅季は畳を濡らさないように台の上に桶を置くと、袴の懐からCADを取り出すと、振動系魔法を駆使して桶の水を程良く冷やす。

 

冷水の中に手拭いを浸して絞り、綺麗に折り畳む。

 

そうして冷えた手拭いを、雅季は優しく霊夢の額に載せた。

 

雅季は暫くの間、穏やかに眠る霊夢の寝顔を見つめていたが、やがて霊夢を起こさないようにそっと立ち上がると台所へ向かい、食器を洗い始めた。

 

 

 

使った食器を片付けた雅季は、箒を持って境内に出る。

 

傾き始めた日に、白い雲と青い空。

 

それ等を仰ぎ見ながら、

 

「どうしようもないなぁ、本当に」

 

雅季は心情を小さく溢した。

 

本当にどうしようもない。

 

それ程までに、結代雅季は博麗霊夢に惹かれていた。

 

結界を維持し、幻想郷のバランスを保つ博麗の巫女で。

 

だけど自由で、気ままで、暢気で、とらえどころが無くて、あるがままで。

 

神様だろうと妖怪だろうと人間だろうと、種族を問わず多くの者を惹きつけて。

 

意図せずとも結代以上に(いと)を結んで。

 

そんな霊夢だから、今代の結代の朱い縁すら惹きつけて。

 

なのに、肝心の霊夢はその気が全く無いという無自覚さ。

 

「行く水に、数かくよりも儚きは、思はぬ人を思ふなりけり……何か自分で言って凹んできたかも」

 

雅季は苦い笑みと共に肩を落とす。

 

流れる水に文字を書くよりも、想いが届かない人を想う方が儚い、正しくその通りだと思う。

 

だけど――。

 

「……でもまあ、今はこれでいっか」

 

ここは西方にあるネバーランドではなく、東方にある幻想郷。

 

人間である限り、いつかは大人になる。

 

雅季自身も、気がつけばもう高校生だ。

 

そして霊夢もまた、少女から女性へと変わっていく。

 

今はその気が無くとも、いつかは自覚する時が来ることだろう。

 

「鳴かぬなら、鳴くまで待とう、時鳥(ほととぎす)

 

縁起を担いで嘗ての天下人を喩えた句を詠い、雅季は博麗神社の方へと向き直って不敵に笑った。

 

「その時は絶対に振り向かせてやるからな。覚悟しろよ、霊夢」

 

誰に聞かせるまでもなく、雅季は宣言した。

 

本気で惚れている、初恋の相手へ。

 

「でも取り敢えずは、と」

 

そうして雅季は、いつも霊夢がやっているように博麗神社の境内を箒で掃除し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

縁を大切にする少年が、初恋の少女の看病をしている。

 

一方、その頃……。

 

「断固、取り締まるべきです!!」

 

森崎駿は吼えていた。

 

 

 

森崎駿は勘違いをしていた。

 

元凶がいない今日は、平和であるに違いないと。

 

だがそれは、大いなる過ちであった。

 

 

 

既に奴の影響は学校中に及んでいたのだ。

 

そして、それが別の汚染と接触し、劇薬じみた化学反応を起こした結果。

 

 

 

悪夢が、この世に生まれ落ちた。

 

 

 

 

 

第一高校、大会議室。

 

放課後、急遽貸し切られたこの大会議室には少なくない人数の生徒達が集っていた。

 

集まった生徒達、その中でも一部の者達は非常に険しい顔をしている。

 

『校内風紀緊急対策会議』と銘打たれたこの会議に出席している面子は生徒会、風紀委員会、更に部活連幹部と、まさに一高の幹部達だ。

 

その中で風紀委員会の一年生という組織的には下っ端である森崎が、非常に強い口調で例の件について取り締まりを主張した。

 

普段の森崎ならば先輩方を差し置いてここまで強く出ることはなかっただろう。(ちなみに九校戦以降から異論あり)

 

だが今の森崎にはそんな気遣いも気後れもする余裕が無いほど危機感に煽られており、また上級生達もそんな森崎に対して非難の目を送る者はいなかった。

 

何故なら、森崎自身も“被害者”であるとこの場にいる誰もが知っているために。

 

それも、複数人いる被害者の中、ある意味で最も被害を受けていると言っても過言ではない。

 

森崎の強硬意見に、風紀委員長の渡辺摩利も明確に賛同の意を示す。

 

「私も賛成だ。風紀委員会として、そして一個人として、これを見逃すことは出来ない」

 

摩利の瞳にあるのは強い意志。

 

この件に関しては一切妥協しないと、強い視線が雄弁に物語っている。

 

風紀委員でそれと同じものを宿しているのは森崎と、意外にも司波達也だった。

 

「匿名希望のため名前は言えませんが、情報提供者がいました。今ならば地下に潜られる前に一斉摘発が可能です」

 

森崎のように苛烈ではないが冷酷を思わせる冷たい目で周りを見回すと、目が合った何人かが身体を震わせる。

 

ちなみに匿名希望の情報提供者はというと、

 

「どうしたの? 達也君に呼ばれてから何か様子が変だけど」

 

「エリカちゃん、信じて! 私はただ美術部の友達がそういうのに詳しいっていうだけで、決して私の趣味じゃないの、本当に!」

 

「いや、そもそも何の話か知らないし……何したのよ、達也君」

 

達也の硬柔合わせた交渉(?)により知っている情報を洗いざらい吐き出した後、必死になって友人に弁明していたとか。

 

深雪のためにも、テーブルの上に置かれた“アレ”は確実に全て処分しなければならないと、達也は本気で考えていた。

 

その深雪はというと、生徒会メンバーの集まっている一角でずっと下を向き、顔を俯かせている。

 

それでも、黒髪に隠れた白い肌が真っ赤に染まっていることに、この会議室にいる全員が気付いていた。

 

時折、チラッとテーブルの上に置かれた“ソレ”を見ては再び顔を俯かせる、先ほどからその繰り返しだ。

 

深雪が公の場で恥ずかしい思いをしている。

 

それが達也をより一層危険な思想へと走らせている。

 

……ちなみに恥ずかしいという思いは間違っていないが、恥ずかしがっている内容については見解の相違があることに達也は気が付いていない。

 

そんな深雪の二つ隣、生徒会メンバーの中央に座っている七草真由美は、部活連会頭である十文字克人に向かって摩利と同様に取り締まりの支持を表明した。

 

「十文字会頭。今回の件に関しては、生徒会も風紀委員会と同意見です」

 

「ふむ……念のため確認しておくが、それは生徒会と風紀委員会の総意、ということで良いか?」

 

「ええ、その通りよ」

 

「こちらも全員の意見が一致している」

 

克人の問いに、真由美と摩利はすかさず頷く。

 

他の生徒会役員と風紀委員からも異論は出なかった。

 

……実際は意見を共にしているというより、触らぬ神に祟り無し、といった方が正しいが。

 

たとえば生徒会。

 

副会長の服部刑部は最初こそ例の物に怒りを覚えたが、真由美のそれ以上の冷たい怒りを前に今では上官を前にした一兵卒のようになっている。

 

会計の市原鈴音は真由美への協力を惜しまなかったが、それは真由美を自由にさせることで自分は第三者に徹するためである。

 

書記の中条あずさに至っては今なお身を縮こまらせて震えていたりする。

 

風紀委員会も被害者である摩利、達也、森崎を抜かせば似たり寄ったりだ。

 

部活連は幸いなことに“今回”は被害を受けていないが、もしかしたら悪夢が表に出ていないだけかもしれない。

 

森崎という被害者、いや犠牲者が出てしまった以上、最早無いとは絶対に言い切れない。

 

「生徒会、風紀委員会が意見を同じとするならば、部活連も協力しよう」

 

克人としては反対する理由など無く、両組織への協力を承諾する。

 

というか、この状況で反対など出来ないだろう常識的に考えて。

 

七草真由美、渡辺摩利、司波達也、森崎駿。

 

一高の三巨頭のうち二人、更に九校戦で名を馳せた新進気鋭の一年生二人に怒りと敵意を抱かせ、今回の会議を開催させた原因。

 

それは、この会議室の中央テーブルの上に置かれた数冊の本。

 

一般的な書籍と比べれば随分と薄いその本は、今や一部にとって文化的な夏の風物詩となった、所謂「同人誌」である。

 

事の発端は、夏休み明け初日に密かに出回った、数種類の同人誌だ。

 

別にそれ自体は大した問題ではない。

 

たとえ内容が大人向けであろうと、それだけではここまで大事にはならない。

 

事実、放課後前に同人誌が出回っているという噂を各人が聞いた時も、大した反応は示さなかった。

 

達也は完全に無関心であったし、森崎は魔法科高校にそんなもの持ち込むなと呆れるぐらい。

 

真由美と摩利、そして深雪も噂を聞いたときは『冷たい呆れ』という反応を示しただけだった。

 

ただ一応、風紀委員会として放っておくわけにはいかないということで、表立って見えたものについては回収するという程度の対応であった。

 

そして、回収されたものを確認して……一気に大問題に発展した。

 

内容が大人向けであった、それは噂通りであったし予想されていたことだ。

 

だが、その内容というのが……。

 

小柄で生徒会長という特徴を持つ女性が色んな目にあうもの、とか。

 

麗人な風紀委員長と強気な少女の少し以上に深すぎる友情もの、とか。

 

見た目は平凡な兄と可憐な妹との禁断の関係を描いたもの、とか。

 

明らかに実在の人物を、それも身近にいる人物をモデルにしたとしか思えない登場人物。

 

この時点で真由美、摩利は激怒し、深雪は真っ赤に染まり、深雪が恥を掻かされたと感じた達也も怒りを覚えるという有様。

 

そして――。

 

豪胆で知られる風紀委員の辰巳鋼太郎が、恐る恐るといった評価に似合わぬ動きで同人誌の一冊に手を伸ばし、表紙だけを見て顔を顰め、吐き捨てるように言った。

 

「腐ってやがる……」

 

更に一同を愕然と戦慄に突き落とし、森崎を激昂させたもの。

 

それは、神社に務める少年と、そんな彼を護衛する少年の、熱く濃厚な関係を描いたものだった。

 

部活連の協力が得られたことに真由美と摩利は目配せをして頷き合うと、全員に向かって言った。

 

「皆、“徹底的に”やるわよ」

 

「風紀委員の名に掛けて、第一高校の風紀を乱す者達を“絶対に”一網打尽にするぞ」

 

言葉の一部に過激な発言が含まれているのを聞いて、更に達也と森崎が大きく頷いたのを見て、誰しもが思った。

 

(あ、これ作った連中、終わったな……)

 

と――。

 

 

 

 

 

幅広い活動を行うことで知られる美術部、その中に更に非公認のサークルがある。

 

現代視聴覚研究会、通称「現視研」と呼ばれるサークルだ。

 

一応、基幹メンバーが美術部所属であるため所属で言えば美術部内のサークルではあるが、現視研はその内容と活動上、美術部以外にも多くの会員を持つのが大きな特徴だ。

 

その為、実質的にサークルの部室となっている第二美術準備室には美術部関係者以外にも多くの生徒が出入りしている。

 

二学期初日である今日に至っては会員総出で非公式な活動(彼等曰く「布教活動」)を行っていたこともあり、部室には多くの会員が集まっていた。

 

「大変だ!!」

 

本日の活動を終えて意気揚々と撤収の準備を始めた矢先、会員の一人が転がるように部室へと駆け込んできた。

 

「風紀委員だ! そ、それに部活連と生徒会まで――」

 

だが必死の忠告も空しく、最後まで言い切る前に多数の非会員が部室へと踏み込んだ。

 

「風紀委員会だ!」

 

「現代視聴覚研究会からモラルに反した書籍が出回っているとの通報を受けました。風紀委員会及び生徒会、部活連の権限により部室の捜索と事情聴取をさせてもらいます」

 

森崎と達也を先陣とした風紀委員会、生徒会、部活連の合同捜査隊だ。

 

達也の宣告に部室内が凍りついた瞬間、

 

「確保!!」

 

絶妙のタイミングで摩利が号令を発し、捜査隊が一斉に動き出した。

 

そして生まれたのは案の定の大喧騒だった。

 

「弾圧だ!」

 

「表現の自由を守れ!」

 

「それは公序良俗を守ってから言いなさい!!」

 

会員達からの非難は真由美が正論で封殺。

 

「やばい、逃げるぞ!」

 

「逃がすと思うか?」

 

混乱を掻い潜って部室の外へと逃げ出した者達の前に、猛禽類を思わせる笑みを浮かべた摩利の他、辰巳や沢木碧といった風紀委員会の実力者達が立ちはだかる。

 

「俺達の夏の努力を! 結晶を、集大成を奪われるな!」

 

「くそ、窓から外に投げ出せ!」

 

真夏の四徹という過酷を乗り越えてまで書き上げた『努力の結晶』を奪われてたまるかと、数人の会員が同人誌を窓の外へと投げ出す。

 

「一冊でも多く、残すんだ! そして伝えるんだ――後世へ!!」

 

「そんなもの伝えるな!」

 

だが投げ出された同人誌は、服部の魔法によってまるで逆再生されたかのように全てが部室内へと舞い戻る。

 

部室内に同人誌が舞う中、

 

(――あれか)

 

達也は部室の一角を目指して駆け出す。

 

(右奥にある書類棚の下の段。あそこが現視研の保管棚)

 

『匿名の情報提供者』から得た情報だった。

 

そして、保管棚の中に仕舞われているものは、文字通り全ての元凶だ。

 

達也が向かっている先に気付いた会員の一人が慌てて声を上げた。

 

「あいつを止めろ! 原本を守れ!!」

 

保管棚にあるのは現視研が今まで描いてきた同人誌、その原本だ。

 

ならば、今回の騒動の切っ掛けになった同人誌の原本もそこに保管されているはずだ。

 

会員の上げた声に呼応して、近くにいた会員が達也に殺到する。

 

だが元より訓練等により高い身体能力を持つ達也だ、その動きに追従出来る会員はいない。

 

達也に襲いかかった会員達は何れも避けられるか、或いは軽く転倒させられる。

 

それでも諦めずに達也へと立ち向かう会員達。

 

「現代視聴覚研究会の誇りに賭けて、絶対に原本は渡さん!」

 

「嫌な誇りだな、おい」

 

決死の覚悟を示す会員達に、部活連の桐原武明はボヤきつつも達也と会員達の間に割り込んだ。

 

「行け、司波兄」

 

「お任せします」

 

桐原に背中を任せて、達也は前に向かって走り出す。

 

そして、

 

「原本とは現視研の積み上げてきた歴史だ、俺達の歴史を奪われるわけにはいかない! そこの風紀委員、原本を奪いたければ俺を倒してみろ!!」

 

「では遠慮なく」

 

「ぐわぁああー」

 

「会長ぉー!?」

 

保管棚の前に立ち塞がっていた現視研会長をあっさりと投げ飛ばして、達也は遂に本棚の前に到達した。

 

「原本を確保」

 

瞬く間に壊滅状態に陥っていく現視研を前にして、現視研の中でも特別視されている“ある一派”を纏める女子生徒は大いに狼狽えていた。

 

「そんな、風紀委員だけじゃなくて生徒会と部活連もまとめて攻めて来るなんて……攻め?」

 

何かに気付いた女子生徒は表情を変える。

 

そして、誰かを探すように周囲を見回し、目的の人物を見つけた。

 

見られている事に気付いた森崎が、女子生徒と目を合わせる。

 

「そう、そうだったのね!」

 

女子生徒の目が妖しく輝き、口元が歪む。

 

それを見て、森崎は激しい悪寒に襲われた。

 

(拙い!!)

 

危機感に駆られる森崎は、咄嗟に目の前にあったテーブルから同人誌を一冊手に取り、

 

「森崎君、あなた攻める方も――」

 

「言わせるかぁー!!」

 

女子生徒の顔を目掛けて投げつけた。

 

「出来た――むぐっ!?」

 

投げ付けられた同人誌が、現代視聴覚研究会やおいチームリーダーの口を強制的に塞ぐ。

 

悪魔の言葉は発せられる前に封印されたのだった。

 

ちなみに森崎が投げ付けた同人誌は、その女子生徒が作った神職の少年と護衛の少年が登場人物な本であったが、幸いにも誰も気付かなかった。

 

 

 

そうして、悪は滅びた。

 

だが、完全に滅びたわけではない。

 

 

 

全てが終わった後、生徒会室で真由美と摩利は疲れた顔を隠そうともせず、椅子に持たれ掛かっていた。

 

「現視研には厳重注意をしたけれど……」

 

「それで懲りるようなら、そもそもこんな真似はしていないだろうな」

 

二人は揃って深い溜め息を吐いた。

 

「次は冬かしら……」

 

「今はその話はもう止めよう」

 

「そうね」

 

 

 

平和(パックス)』が、「次の戦争のための準備期間」と直訳されるように。

 

人の世がある限り、再び悪は復活することだろう――。

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、その日の夕食時――。

 

「はい霊夢、あーん」

 

「するか!」

 

「ちぇ」

 

 




純情:甘酸っぱい青春。
腐情:腐った青春。

次話にてお知らせがあります。

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