希望少女の非ざる世界   作:youho

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第九話 三つ目の街

 

 

「ねえ、一つ訊いていいかな?」

 軽い感じで魔女を倒してから、戦闘をしたとは思わせない普通の態度でふと気になったことをスターに質問してみる。

「この見滝原ってさ、波地見より魔女の出現率高くない?」

 魔法少女になってから数日。どこであれ自分から捜すことはしてないのに、波地見では魔女を感知することすらないのに、見滝原ではこれでもう三度目。

『たまたまじゃないか? たまたま、ここにそういった感情が溢れているだけだ』

 恨みとか憎悪とかだっけ? 人の感情なんて不確かなものだから、その理屈は納得できる。目には見えなくても、目には見えないからこそ納得できる。

「それにしたって、多すぎない? だってここには二人の魔法少女がいる上に、森沢さんも時々活動してる。なのに消極的なうちにも魔女がやってくるってどういうこと?」

 それも偶然だって言われてしまえばそれまでだけど、偶然じゃないなにかがあってもいいと思う。

『もしかしたら、逆なのかもしれないよ?』

「逆?」

『ここが多いんじゃなくて、君のいるところが少ないんじゃないかい?』

「ああ、そういう」

 それも一理あるかな。うちはまだ派地見と見滝原しか見てない。だから、決めつけるのは早計だということかな。

「んじゃ、試しにどっか行ってみようかな」

『今からかい?』

「明日!」

 実のところ、今は放課後。そろそろ日が沈みきる時間だというのに、これ以上寄り道はしたくない。

「明日は休みだから、適当な時間に行こうかな」

 

 

 

 

 

「はい、風見野です」

 一日はこれからという午後一時。予定通り風見野にやってきた。

「どこいこう?」

『適当に歩けばいいんじゃないか? 目的は魔女だけだろう?』

 そうだったかな。そもそもこの街の地理なんて把握していないから、どこに行こうなんて決められるわけもないんだけど。

「そうだね。元々、適当に歩くのが目的だったんだし」

 適当に歩いて魔女に遭遇するか確かめる。それが今回の目的だったかな。

 ただ魔女に会うだけなら魔法で捜せばいいけど、それじゃ意味がない。今回の目的は見滝原みたいにただ歩いても遭遇するのか、波地見みたいに感じることすらないのか。そういう魔女の出現量を確かめるために来ている。

「この地域にも魔法少女はいるのかな?」

『どの地域にも担当の魔法少女はいるはずだよ。僕はインキュベーターのネットワークを断ってるから、確実な情報はないけれど』

 そんなものあったんだ。最初から期待してなかったし必要ないからいいけど。

「どうしよっかなぁ」

『なにがだい?』

「その魔法少女に会うかどうか」

 うちの能力は他の魔法少女を助けることが出来る。直接ソウルジェムを浄化したり、余っているグリーフシードをあげたり、苦戦しているところを助けたり。

 機会があればそういうことをしたいと思っているけれど、無闇に姿を現したくもない。万が一正体がばれるのはやだし、陰のヒーローでありたいから。

 なぜって、面白いから。

『ここの魔法少女をみたいなら、陰から様子を見るだけでいいじゃないか。君にはそれができるだろう?』

「確かにできるけど、一回ぐらい普通の魔法少女と話したいって思うんだよ」

 世間から隔離された少女が普通の生活を送りたいと思うのと同じで、うちだって同業者と魔法少女談義に花を咲かせたいと思う。森沢さんは普通じゃないから含まない。それをいったら、うちだって普通の魔法少女とは離れているのはわかってるけど。

『矛盾した欲だね』

「理屈では矛盾してるけど、その中で納得する答えをみつけだせるのが人間なんだよ」

 人の感覚は常に難しいもの。条件と見合った物が見つかってもいざ目の前に出されると納得いかないことがあれば、条件と全く違うものを出されても納得できることがある。

『人間は面倒だね』

「人間が面倒じゃなくて、人間の感情が面倒なんだよ。つまり人間と同等の感情を持っているスターも面倒だよ」

『一緒にされてしまったよ』

「一緒じゃないかな」

 普通のインキュベーターを知らないからなんとも言えないけど、スターの感情は人間となんら変わりないと思うかな。例えるなら、あまり感情を出さずに客観的に物事を見ることができるクールな男子みたいな。

「まあでも、スターは面倒な行動をしないだけまだマシだよ。人間にはわかってて面倒な行動をするのがいるからね」

 言いながら前にあるコンビニを指さす。

「なにか感じないかな?」

『……魔力が動いているね』

「その通り」

 はたから見れば自動ドアが開いただけ。でもわかる人にはわかる。恐らく認識阻害魔法を使ってるかな。

「魔法で万引きとは、やっぱやることかな」

 それくらいできるとは考えてはいたけど、まさか遭遇するとは思わなかったよ。知ってしまったからには行動しようかな

 まず視覚に干渉する魔法を打ち消す眼鏡をかけて、次に能力で犯人がコンビニを出た辺りまで時間を戻してから、ストップウォッチを創りだしてカチッと時間を止める。

 ふむふむ。これはまた可愛らしい赤毛の女の子かな。そんな子が万引きなんて、いけない子だね。しかもかごごととは。

 これをそのままお店に返すべきなんだろうけど、そうするとこの子が困っちゃうから、複製しようかな。

 まず商品をかごごと透明な箱で覆って、その隣におんなじ透明な箱を創って、転移。そして複製。

 問題はないと思うけど、一応この子には複製のほうを持たせて、本物はお店へと返す。これで解決。あとはストップウォッチを押して時を動かしておしまい。

 時が動き出すと、女の子は軽やかな動きで跳んでいった。手慣れてる感あるから、常習犯なのかな。

『どうするんだい?』

「軽くお説教かな」

 うちは非干渉(透明+透過+断音)の衣を身に纏って、彼女を追いかける。

 魔法少女でもやっていいことと悪いことがある。あと話したいかな。

 

 

 

 

「よし、今日は大量だな」

 彼女は今、とあるホテルの一室で、頷きながら戦利品を漁ってる。全くうちに気がつかないなぁ。

「――ホテルに住んでるんだ」

 どうせこっちに気がつかないから、不思議な雰囲気をたくさん醸し出しながら話しかけてあげた。

 目深にかぶった帽子に、口元を隠すマフラー。白いワンピースに金色のマント。違和感バリバリのうちの姿は、不思議というよりは不審者にしか見えないかな。

「誰だあんた?」

 瞬間的に変身して、驚くこともなく冷静に槍をつきつけてきましたよこの人。いくらうちも魔法少女だからって、いくら服装がおかしいからって、ちょっとぐらい驚いたリアクションがあってほしかったな。

「通りすがりの魔法少女」

 変声機能を持たせたマフラーを通して答える。とはいってもおかしなそれじゃなくて、ちゃんとした女の子の声だけど。

「ちょっといけない魔法少女がいたから、咎めてあげようかと」

「これのことを言ってんのか。魔法少女なんて危ない仕事やってるんだから、これは報酬。これくらい当然だろ」

「うちも盗むなとは言わないよ。ただ、少し自重したほうがいいかな?」

「あんたみたいなわけわかんない奴にとやかく言われる筋合いはない。さっさと消えな。今あたしはいらついてるんだ」

 突きつけていた槍を、いつでも動けるように持ち変える。

 話を聞かないだろうとは思っていたけど、本当に聞く気がないみたいだね。まあこんなわけわかんない奴に言われて素直に聞く人もいないかな。

「無理しないほうがいいよ」

 あんなこと言ってるけど、この子は本気で戦う気はないはず。だってソウルジェムの濁りが強いから。

「魔力の心配をしてるなら、心配しなくていい」

「それは簡単に勝てるっていう自信から来てるのかな。それは油断というものだよ。グリーフシードもないんだから、やめたほうがいいって」

 過去を見るコンタクトと、心の声を聞くイヤリングを装備して、得た事実を指摘してあげる。

 グリーフシードが無い状態で倒した魔女がグリーフシードを持ってなかったようだね。それはまあ、大変な状況かな。うちにはわからないけど。

「っ!?……ち、聞くだけ聞いといてやるから、もうどっか行ってくれ。あたしはこれ食べたらグリーフシード探さないといけないんだから」

「あげようか?」

「……どういうつもりだ?」

 善意で言ってあげたのに、凄い警戒と疑問の目を向けられた。そんなにおかしいことなのかな。

「なにもないよ。ただ余ってるから」

 余ってるというよりは、持て余してる。三つだけだけど。

「そういうのはとっといたほうがいいんじゃねえの。そんな風に優しくしてると、いつか後悔するぞ」

 その時、一瞬どこか彼女の雰囲気が変わった。

 流石、一度後悔した人の言葉は違うね。それは思っても言わないけど。

「平気だよ。あたしには必要ないから」

 言って、二つ投げる。一個あれば複製できるから問題ない。うちは使わないけど。

 彼女は怪訝な顔をしながらも受け取ってくれた。貰えるなら貰っとくといった様子かな。

「詳しいことは秘密。んじゃ、うちはここらで退散するよ」

 大きなマントを創り出して、それで自分を包む。

「魔女にならないようにね」

 彼女がその事実をしっているかはわからないけど、去り際にそう言っておいた。

 いつまでもつのかな、彼女は。

 

 

 

「――ここはどこかな」

 あの万引き魔法少女のとこから去って、改めて魔女の捜索を再開した。

 適当に歩いたって見つからず、でも魔法で探すことはせず、結局変に奥まった所まで来てしまった。

「教会……かな?」

 目の前の大きい建物を見上げる。見るのは初めてだけど、これが教会なのかな。しかも、記憶に新しい。

(あの魔法少女の家が使ってた所かな)

 さっきのやりとりの中で、勝手ながら過去を見させて貰っていたからわかる。ここはあの子の父親の教会。

 普通の中で生まれ、異端の中で廃れ、魔法の中で繁栄した教会。

 やろうと思えば、あの子の家族を取り戻すことはできる。過去を顕現すればいいだけだから。そうすれば、ここはまた栄えるはず。彼女の願いは『みんなが父親の話をきいてくれるようになること』それだけだから。

 でもそんなことはしない。もしそれをやったって、たぶん同じ結末をむかえるだけ。やるんだったら、誰かがなにかを変えないといけない。他人が善意でやるべきことじゃない。

「誰かが、助けてくれるといいね」

 誰に言うでもなく、うちは小さく呟く。そして、姿見を創って自分の家にあるものと接続して、それを通ることによって家に帰った。

 

 

 

「……いねえな。誰かいた気がしたんだが、気のせいか?」

 

「いや、中にいるな。見てみるか」

 

「…………」

 

「おいあんた、祈ったって無意味だぞ。ここに神なんていないんだから」

 

「祈っているわけではありませんわ」

 

「自分自身に問いかけていますの」

 

「わたくしは、どうすればよろしいのか」

 




はい、妖歩です。映画みました。
あれは面白かった。何度でも見たい。来週も見に行こうかな。
二次だけでもハッピーエンドにしたいとか考えましたが、これはそういうわけではないんですよね、実は。
まあ、終えられるのかわかりませんが。

それでは
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