「うはぁ……。めんどいけどやるしかないかぁ」
大きな熊を目の当たりにして、うちは大げさに項垂れた。
《別に戦う必要はないと思うけど? 君だったら、超能力で魔女を生まれる前に戻せるじゃないか》
それはうちも考えてた。でも、それじゃあせっかく戦えるようになったのに、なにも面白くない。もし手に入れたちからが超能力だけだったらそうやっていたと思うけど、魔法も手に入れたとあれば、実際に楽しみたいのが中二病。てか子供。
「戦ってみたいの。傷や魔力や疲労だって戻せるんだし、もし駄目そうだったら言う通りあいつを戻すことにするよ」
うちは戦うために能力を解除した。こうしないと、近づいただけで消えちゃうからね。
《本当、君は凄い願いをしたね。君は今までに無い魔法少女になるかもしれない》
「へぇ、それは楽しみだね」
うちはインキュベーターさんの言葉を軽くスルーして、構え――どういう風に?
(ここは素手で戦うべきなのかな。いやでも、それは流石にきつくないかな。もしこれが回復不能戦だったら、うちは勝てる自信が無い)
雑魚敵は最初の牙付きの蝶(牙蝶としよう)と爆兵だけだけど、なにせ数が多い。いちいち倒してたら確実に時間がかかる。
レーザーは出せなくてもいいから、うちはダメ元で武器を出そうと試みる。まずはベタに剣でも。
「――って、どわぁ!」
考え込んでたら、いつの間にか牙蝶が目の前に迫ってた。うちは剣を出そうとしていたせいで、反射的にそれを斬るように腕を振った。
「あっ、出た!」
剣の生成は成功したようで、迫っていた牙蝶はばっさりと斬られた。
《へえ。君の装備は剣なのか。もっと特殊な物かと思ってたよ》
《うちも。なんかベタすぎて萎える。しかも想像通りのなんの変哲も無い剣だし。だったら、ガ○ブレードとかが良かったよ》
あれなら見た目はかっこいいし、ただ斬るだけの剣じゃないし。あれはどちらかというと刀だけどそれは置いといて。――と愚痴を思ってる最中も、とりあえず雑魚敵を斬りまくる。こいつら、斬っても斬っても奥の方で増えてるなぁ。
「まっ、いいか。まずはこいつら相手に準備運動しようかな」
うちはもう一つ剣を生成して二刀流になる。右手を順手に、左手を逆手に持ってクロスさせるように構える。
「
うちは気分に身を任せて、手当たり次第に敵を斬っていく。全体強化を発動して、武器も手に入れたうちに敵は無い!
「アハハ! アハハハハハ! 楽しい! 楽しすぎるよ! うちはこんなことできるようになったんだ! 戦いがこんなに楽しいなんて! 最高にハイってやつだね! こんなに気持ちは初めて! もう何も怖くない!」
夢でしかできなかったバトルがこんな現実でできるようになって、テンションが上がらないわけがない! しかも自分は雑魚敵をいとも簡単に蹴散らすことの出来る強キャラ設定。さらに異空間のおかげで滅茶苦茶に斬撃波を飛ばしても大丈夫だから安心。
「どんどんいくよ!」
うちは大きく跳躍して、腕に装備するようなガトリング砲を生成。眼下に広がる雑魚敵受かって乱射する。適当に銀色の弾丸を発射したところでガトリング砲を消し、今度は黒い杖を生成。空気すら飲み込むような暗黒のレーザーを広範囲に射出する。しかし事前に危機を察知していたのか、高所に移動していた牙蝶たちにはあたらなかった。しかも意思があるかはわからないけど、うちを囲むように大量の牙蝶が飛んでいる。それならと周りに高威力爆弾を生成して、自分はマントに身を包んで自爆を防ぐ。
「ほんとう、雑魚敵は雑魚だね」
マントを元に戻して、地面に降り立つ。今ので結構スッキリしたので、今はクールキャラに変更。
さっきのに全員集結していたのか、牙蝶が一体も見当たらない。爆兵も一体しか見当たらない。……とってもでかいやつが。合体でもしたのかな。まあ、そっちのほうが雑魚蹴散らすより面白いからいいか。こいつが強ければの話だけど。
でかい図体でぽーんと飛び込んできた巨爆兵を、とりあえずでかい盾をを出して止める。遅い上に攻撃方法は変わらないみたいで、爆発せずに盾を押すだけでなにもしてこない。なので盾から無数の棘を生やしてみた。しかし消えないようなので、耐久力は上がっているのかな。それだったら、グローブを装着して盾を消去。邪魔な物がなくなって飛び込んできた巨爆兵に合わせるように空間を殴り、魔力で作り出した強力な衝撃波をぶつけ、消滅した。
「さて、残るは熊だけだね」
うちは熊の真正面に立つ。目測だけど、体長は四~五メートルぐらい。攻撃方法も移動速度もわからない以上、無闇に突っ込むべきではない……とは考えない。それでペースをに握られたら厄介だから、やられる前にやる!
まずは念のため衝撃を軽減する薄いベールを作り、全身を包みこむ。次は鎖鎌を生成して両手で掴む。そして思い切り振って熊の体に巻き付け、思い切り引っ張りながら左右に作り出した大砲で極太の紅いレーザーをぶつけ――られなかった。
「ぶはっ! ちょっ、なにあれ!?」
流石ぬいぐるみと言うべきなのかな。頭と胴体が分離して、その状態で逆立ちをすることによって、胴体を狙った砲撃は頭のあった部分を通り抜けた。そんなのありなの!? 首浮いてるんですけど! しかもそのままの勢いでかかと落としってギャーーーーー!
「罠カード発動!
熊の足が来るであろう位置と後頭部近くに、適度な大きさの特殊な模様の入った筒を生成。さらに自分の後ろと熊を挟んだ位置に、向かい合うように簡素なピンク色のドアを生成する。筒へと突っ込まれた足はもう一つの筒から出てきて、熊は綺麗に自分の後頭部を蹴とばして遠くの壁へと吹っ飛ばした。そしてうちはそのまま落ちてくる熊の胴体を避けるために、後ろのドアを開いてもう一つのドアから出る。
「首を切るのが妥当な手段だと思ったけど、分離しちゃったしなぁ。それじゃあ、とりあえず爆破してみよう」
熊の胴体の周囲に爆弾を生成して爆破。内側から爆発させたかったけど、物体を無視して生成するのは流石に無理みたい。
「さて、あとは頭だけかな」
跡形も無く消し去ったのを確認してから、うちは熊が頭をふっ飛ばした方向を見る。そこに頭はあったけど、なんか違った。
「……ライオン?」
頭……というか顔を中心として、たてがみのように周囲を綿が覆っている。しかも電動鋸のように凄い高速で回ってるし。最初の熊はなんか可愛らしいと思ってたけど、今は完全に恐怖の対象になってる。
「回転って面倒だなぁ」
大体こういう場合は布を巻き込んだり中心を攻撃したりするのがベタだけど、おそらく布は意味がない。布でなくとも鎖とかだって、届く前にはじかれるか切られるかして終わっちゃうだろうし。それなら、中心を破壊するしかないかな。
「でも、そう簡単にはいかないかな」
試しに顔の前に巨大な槍を生成して、思い切り刺してみた。――はい、九十度傾いて避けられましたね。しかもどっからか綿が出現して掴まれましたね。投げ返そうとしたので消滅。
今ので警戒を高めたのか、綿をどんどん増やしていって、鋸ではなく巨大なボールになった。あれも触れたら削れるとかそんなモノなんだろうなぁ。
しかも影に違和感を感じて見上げれば、天井を白い綿が覆っていた。なんか雲みたい。そっから降ってきたのは、雨じゃなくて白い針だけど。
「……そういえば」
うちはただ防ぐだけじゃいつか崩れると思ったので、乱反射性能を持たせた透明の布で全身を覆う。ただ反射するよりは消費魔力が少ないし、下手に防御するよりは持続性もある。
「初ボスの割には、やけに強くないかな?」
他を知らないのでなんとも言えないけど、こいつは結構強いと思う。綿の無限増殖なんてきつくない? おそらく本体はあの頭なんだろうけど、綿に覆われて壊すの難しそうだし。高威力の雨降ってるし。
「はぁ~、なんかやる気なくなってきたなぁ」
最初の雑魚敵は凄い楽しんでたけど、ボスがこんなチートだと逆に萎えてきた。もうちょっとプレイヤーが楽しめる設定にしてほしいよ。うちは戦闘を楽しみたいのに、これじゃあさらなるチートを使って瞬殺するぐらいしか選択肢ないじゃん。でも能力は使いたくない。
「んじゃ、チート使って終わりにしようかな」
あの白ボールはこちらに来る気配がないから、その間に黒い網を生成。まず地面に置いてから超増殖して壁全体を覆い、網目を埋めるように増殖して布へ変化。それを一気に圧縮して白ボールと綿雲を布の中に閉じ込め、さらに中の空間を弄って強制的に圧縮する。ちなみに、うちは巻き込まれないように透過魔法を使った。
「きゅっとして、どかーん」
掌ぐらいの小ささまで圧縮した布の固まりを握りつぶして、終了。すると、空間全体が歪んで、気づけばうちは外にいた。
「おっ、元に戻ったかな」
元々迷っていたからここが元の場所なのかはわからないけど、とりあえずあの空間から出られたのは確かかな。
《お疲れ様》
うちが辺りを見回していると、インキュベーターさんが肩に乗ってきた。意外と重くない。地球外生物だから、元々の素材が違うのかな。
「そっちこそ大変だったでしょ」
《いやいや、僕の苦労なんて大したことないよ。……君の苦労に比べれば》
「なに言ってるのかな。苦労なんてないよ。超能力魔法少女になって、結構楽しませて貰ったからね」
どうもこのインキュベーターさんは物事を深く受け止める傾向でもあるのかな? でも、うちが楽しんでたのは見ててわかると思うけどなぁ。最後は呆気なく終わらしちゃったけど。
《そう言って貰えると楽だよ。でもね、魔法少女というのは、そんな気楽なものじゃないんだ。だって――》
「待って!」
話が深刻そうな方向に行きかけたので、うちはすぐにそれを遮る。
「その話は、家に帰ってからでいいかな!?」
このまま話されると、長くなる可能性大だね。今はもう日が沈みかけてるから、家に帰るのが第一だよ。
《あ……ああ。大丈夫だよ》
「よし。んじゃ、魔法で家に帰ろうかな!」
こんなよくわかんない場所から馬鹿正直に帰ってたら、いつ帰れるかわかったものじゃない。でも、魔法を使えばすぐに帰れるはず。
てことで、うちは認識阻害魔法を発動してから、遠くを見渡せる位置まで浮遊する。…………高い。二次元ではこういうキャラいたけど、実際にやってみると結構怖いなぁ。でもそんなこと言ってたらこの先やっていけない(と思う)から、なるべく気にしないようにしないと。
「え~っと、大通りがあっちだから……」
うちは望遠魔法も発動して、予想される方向に進みながら周りを確認する。
「お~~、あっちだあっち」
なんとなく方向がわかってきたので、高速飛行を始めて…………到着。
「ただいまー!」
魔法を解除して、うちは家のドアを開けた。
はい、妖歩です。とりあえずここまで。
主人公チート過ぎる。戦闘描写難しい。
いろいろと気になることはあるでしょうが、それらは次回説明します。
全部説明するとも限らないけど。
それでは