その裏で暗躍を目論む男がひとりーー
やはり我の青春ラブコ……げふんげふん。
青春とはモチである。
もっと言及すれば、まだモチですらない。半殺し程度の
あんこではなく、きな粉の方だ。
ところで古事によれば、信州では牡丹餅を半殺し、モチを皆殺しと云うらしい。ならば蒸かし立てのおこわや赤飯は何と呼称するのだろう。
それはさて置き、赤飯である。
たとえモチになれなくても、あんこやきな粉をまぶして貰えなくとも、うるち米の様に普段食卓に上がることは無くとも、祝言や寿ぎなど
その存在感は他を圧倒し、目出度さで云えば右に出るものは無い。辛うじて紅白饅頭が左に並ぼうかと云う程度である。
唯一無二の祝いの
結論として、
「ーーで、どうしてこうなった、材木座」
「何が赤飯だ。めでたいのは貴様の頭だ、聞いてるのか材木座っ」
げふんっ、中々辛辣な物言いではないか平塚女史。
だが、その程度の洞察力では
授業の予定の関係で既にこの作文の課題を提出済みの我が半身、比企谷八幡。奴は作文の不出来を指摘され、目出度く奉仕部への仕官を果たした。
そして今、奴はかの才女雪ノ下雪乃殿と席を連ねておる。それに加えて近頃では由比ヶ浜結衣と云う花魁も、そのたわわな女の武器をたゆんたゆんさせて八幡に接近しておるのだ。
この花魁、我等の怨敵であるリア充、葉山隼人の一味である。このままでは八幡は魂を削られて、二度と転生の叶わぬ存在、即ち「
付き従う者の窮地を救うのは主の務め。なればこそ、
己を知り、敵を知れば百戦危うからず。
ならば
ここまでの
「ーーという訳で、次の授業までに書き直してこい。わかったら帰っていいぞ」
……。
……。
……え。
「し、しばし待たれよ」
「なんだ材木座、まだ説教が足りなかったか」
「そうではない、のだが……」
「なら帰れ。あとその時代劇みたいなふざけた口調をやめろ。不愉快だ」
あ、あり?
わ、
そんでそんで、八幡や女子たちと楽しく部活動するんじゃないの?
出来ないの?
ねえ、なんで?
* * *
夕日が眩しい。
特に今の
今頃我が半身、八幡は女子二人に囲まれて、戸惑いつつも鼻の下を伸ばしておるというのに。
着々と
何故に
容姿? 体型? やはり
月に一度は必ず秋葉原に赴いてメイドカフェに長時間入り浸ったり、コスプレの試着をする名も知らぬ女子が試着室から出てくるのを待ってみたり、その帰りは決まって紙袋を四つほど提げてくるから?
否っ。
平塚女史は別に
むふん、さもありなん。
やはり八幡と
すまぬ八幡。
如何に八幡が窮地に立たされていようとも、
ならばせめて、
たまたま我が
八幡よっ。我が傑作で存分にその傷つき疲弊した魂を癒やすが良い。
待っていろよ、八幡。
帰城しだい密林にてプリンターのインクを発注し、来週には貴様に眼福を与えて進ぜようぞ。
「ふはははは、
叫んだ瞬間、後頭部を張られた。
振り返るとそこには行かず後家、もとい平塚女史の姿があった。
「気持ち悪いことを大声で叫ぶんじゃない、材木座」
い、いつの間に背後を!?
流石は平塚女史。
若くして……いや決して若くはないが、何にせよ国語教諭を名乗るのは伊達では無いということか。
「あー、言い忘れたが」
夕日を浴びた平塚女史は、その無駄に豊かな胸を張って言い放った。
「材木座、キミは奉仕部には入れないぞ。比企谷と同じことをしてもな」
ーーげふん。
愚考を切り裂くが如く、完全下校時刻を告げる鐘が無情に響いた。
やはり
お読み頂きまして、ありがとうございました。
あはれ材木座ーー