雪乃「えー、それでは漫才を始めたいと思います……由比ヶ浜さんはまだかしら」
結衣「のっしのっし」
雪乃「ゆっくり歩いて来るのは百歩譲って構わないのですけれど、口で効果音を言うのは何故でしょうかね」
結衣「やっはろっ」
雪乃「何故意味不明の挨拶をしながら胸を張ったのか理解に苦しむのですけれど。私に対する嫌味なのでしょうか」
結衣「みなさん、結衣の胸元、ざっくり開いてますよ」
雪乃「第3ボタンまで開けてたらそうなるという話ですけれども。もう一度言いますけれど、当てつけなのでしょうか」
結衣「最近どうだね、ゆきのん」
雪乃「主語が無い質問には答えようが無いのでスルーしますけれどね」
結衣「へっ」
雪乃「どうやら日本語そのものが通じない様なので、ぶん投げて進めますけれども」
結衣「バシッ」
雪乃「何故背中を叩かれたのか全く意味が分からないのですけれども」
結衣「そこに背中があるからだよっ」
雪乃「何を登山家気取りで言っているのかしら、という感じですけれども」
結衣「ゆきのんは両面背中みたいだから叩きやすいよね」
雪乃「喧嘩売っているのかしら、ということなのですけれど」
結衣「きょうはー、ゆきのんにー、そうだんがー、あるようなー、ないようなー」
雪乃「あるのか無いのかはっきりしなさい、とまたしても少々苛立ちましたけれども」
結衣「じつはですねー」
雪乃「あ、相談はあるようです」
結衣「さいきんー、肩がこるんですけどー、ブラのカップがひとつ上がったせいでしょうかー」
雪乃「まったりとした口調が苛立ちを増幅させるのは置いておきますね」
結衣「ま、ゆきのんには分からない悩みだよねっ」
雪乃「この喧嘩、楽屋に帰ったら買ってやろうかしら」
結衣「というのもー」
雪乃「あ、まだ続く様です」
結衣「重い物を持ったりー、長く勉強してるとー、肩がこるんですけどー」
雪乃「それは普通のことなのですけれど」
結衣「でね、ゆきのん」
雪乃「急に普段の口調に戻ったことに少々動揺してしまいましたけれど」
結衣「肩凝りって、どうやったら治るのかなぁ」
雪乃「それはまあ、マッサージしたりお風呂に入ったり、色々方法があると思いますけれどね」
結衣「あっそうだ、マッサージなんかいいかもね」
雪乃「ええ、たった今それを言ったのですけれどもね」
結衣「あとはー、お風呂がいいとー、思いますー」
雪乃「それも今言ったばかりだし、何故このタイミングで口調がゆっくりに戻ったのか、全く分かりませんけど」
結衣「ゆきのんが早く教えてくれないからだよっ」
雪乃「聞いていないだけなのではないでしょうかね」
結衣「ゆきのん、なんか冷たいね」
雪乃「散々人の身体的特徴を小馬鹿にしておいてよく言えるわね、と声を大にして訴えたい気分なのですけれど」
結衣「ゆきのんは、あたしのこと嫌い?」
雪乃「いや本気で嫌ってたらこんなに楽しく漫才なんてしないわ」
結衣雪乃「「へへへへ〜」」
雪乃「どうも、ありがとうございました」
結衣「やっはろ〜」
* * *
「でさ、ゆきのん。これ今年の文化祭でさ……」
「──却下よ」
言い終える前でカットインされ、尚且つにっこりと笑いながら拒否された由比ヶ浜は、ガビーンと効果音がしそうなくらいにショックを受けている。
つーかさ、何で漫才の台本なんか書いて来たんだよ。で、何で「ズレ漫才」なんだよ。
ピンクのベストは似合いそうだけどさ。
などと溜め息混じりで思案していると、由比ヶ浜が雪ノ下のブレザーの袖をくいくいと引っ張り出した。
「えーっ、昨日寝ないで考えたのにぃ」
「ちょ、ちょっと、近い……はぁ、分かったわ。少し考えてみましょう」
おお、相変わらず由比ヶ浜に甘いのね。チョロノ下さん。
「……仲のよろしいことで」
「あっ、次はトリオのリズムネタ作ってくるから、ヒッキーも参加してね」
──次はロ◯ートかよっ。
お読みくださいましてありがとうございます!
台本形式というか、まんま台本のお話でしたw