俺ガイル短編集   作:エコー

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どうしよう、ラストがまだ書けてない……。




打開

 翌日である。

 今回の事件は、新聞部が発行する壁新聞が新学期開始以来続けて盗まれた、というものだ。

 そしてその事情を聞く為に、俺は昨日会った彼女以外の新聞部員に話を聞くことにした。

 新聞部の部員構成は以下の通りである。

 

 部長 三年女子 相沢るい

 部員 三年男子 竹村(あたる)

 部員 二年女子 本郷梅子

 部員 二年女子 中屋敷カヤ

 

 昼休み、竹村と本郷さんの教室を訪ね終えた俺は、手詰まりを感じていた。

 まず、三年生の竹村だ。

 クラスメートの話では、竹村は今年の四月からテニス部に所属しているという。

 高校三年生から運動系の部活に入るなんてチャレンジャーだな。

 

 次は、本郷という女子。

 二年C組の扉を開けて、黒板の前に溜まっていた女子達に声をかける。

 

「すまない。本郷さんを呼んでもらえるかな」

 

 声をかけた瞬間、女子達の会話が止まった。怪しい奴を見る様な視線が一斉に俺の頭から爪先までをじろりと舐めた。

 生徒会という名称を出すべきか逡巡していると、一人の女子が低い声音で言った。

 

「──本郷さんはお休みですよ」

 

 その女子の物言いからは、悪意に近い感情が見えた。

 

 さて、残るは三人目、二年F組の中屋敷さん。

 もしも中屋敷さんまで居なかったら、早期の解決は不可能だ。

 

 二年F組の教室。扉に近い女子の集団に声をかける。

 

「あの、中屋敷さんはいるかな」

「……はい、中屋敷ですけど、誰ですか。何か用ですか」

 

 談笑する女子の一団から訝しげな表情で出て来たのは、明るい茶髪のショートボブの女子だ。

 

「新聞部について聞きたいんだけど、時間もらえるかな」

「──まあ、いいですけど」

「ありがとう」

 

 俺は、中屋敷さんを伴って廊下に出る。歩いている途中で自己紹介をし、用件を話す。

 校舎の端っこ、階段の前まで歩くと、二年生の中屋敷さんは顔を強張らせて振り向いた。

 

「あたし、もう新聞部辞めたんで詳しくは分からないですよ」

「うん。聞きたいのはその話なんだ。相沢さん以外、みんな新聞部を辞めちゃったのかな」

「……知ってる事しか話せませんよ」

 

 当然だろう。知らない事を適当に捏造されても困る。

 前置きして語り出した中屋敷さんは、何処か寂しげである。

 結果からいうと、相沢さん以外は新聞部を辞めていた。

 

 新学期に入ると、突然竹村は新聞部を辞めた。

 理由は、テニス部に入為。

 

「ーー竹村先輩は、今年卒業した橋戸(はしど)先輩のことが好きだったんですよ」

 

 卒業生、元新聞部長の橋戸京子。

 彼女は大学でテニスサークルに所属したという。この情報を竹村に教えたのは二年生の元新聞部員、本郷梅子だという。

 未だに橋戸先輩に想いを寄せていた竹村は、少しでも橋戸先輩に近づきたくて、テニス部に入部したらしい。

 

「竹村先輩はもう三年生、大会だって出られないのに今頃からテニスを始めても……無理なのに」

 

 中屋敷カヤの表情は、沈んでいた。

 

  * * *

 

 俺は、仮説を立ててみる。

 勿論証拠なんて無い、ただの推測だ。

 新聞部から竹村が辞めた理由。本郷さんが辞めた理由。

 きっとそれは、中屋敷さんが辞めた理由と同位相にある。

 今日の語り口調から見て、中屋敷さんは竹村に好意を寄せていたのだろう。

 そして、もしも本郷さんもそうであったなら。

 竹村が去った新聞部に残る理由は無い。

 そして……相沢さんだけが新聞部に残された。

 

 壁新聞は、毎週一回、B4のサイズで発行される。

 その記事作り、レイアウト、校正を一人で行うのは無理だ。故に、相沢さんは新聞部の活動を放棄した。

 これを相沢さんに突き付ければ、盗難事件は虚言である事を白状させられるかもしれない。

 ーー駄目だ。

 これでは根本的な解決には程遠い。

 

 放課後、無人の生徒会室に鞄を置いた俺は、購買に向かっていた。

 目的は比企谷だ。

 あいつなら、俺とは違う観点から何かを見つけてくれるかもしれない。

 だが、奉仕部に直接尋ねるのは躊躇した。奉仕部に赴いて話せば、この件は依頼になってしまう。

 

 購買の自販機の前に、目的の人物はいた。

 昨日と同じ、甘ったるいコーヒーを飲みながらテニスコートを見つめていた。

 

「よう、比企谷」

「おう、生徒会探偵」

 

 呼ばれ方に若干の戸惑いを覚えたが、今はそんな場合では無い。

 しかし。どう話すべきか。

 

「今日も会長がお邪魔してるのか?」

 

「ああ、今頃は女子会の真っ最中だろう。ったく、俺がいるのにあんな話を始めやがって……」

 

 比企谷は逃げてきたんだな。

 脳裏に意地悪な想像が浮かぶ。

 奉仕部の二人は、たぶん比企谷を好きなのだろう。そこへ会長だ。

 きっと比企谷の前で恋愛の話、いわゆる「恋バナ」でも始めたのだろう。

 ちらちらと比企谷を見ながら。

 その余りにもあり得る妄想に自爆して笑ってしまう。

 

「んだよ、何笑ってやがる」

 

「あ、いや。比企谷は人気者だな、って」

 

「うるせぇ。お前はどうなんだよ。あの書記の子とか」

 

「え? 藤沢さん? 無い無い。可愛いとは思うけど、俺なんか相手にされてないよ」

 

 なんでここで藤沢さんの名前が出てくるんだ。

 まさか俺が藤沢さんをちょっといいな……なんて思ってるのを知ってるのか。

 いや、無いな。誰にも云ってないし。

 

「ところで」

 

 ちゃぽんと缶を揺らした比企谷がこちらを見据える。

 

「昨日の件は、何とかなったのか」

 

「あ、いや。まだだけど……」

 

「そうか」

 

「ああ。だけど比企谷の言ったので正解かもしれない」

 

「あん?」

 

「元々壁新聞は発行してなかった、ってヤツだよ」

 

「理由を聞いてもいいか」

 

 俺は昼休みに中屋敷さんに聞いた話を比企谷に説明した。比企谷は少し考え込んでいたが、突然、思考を終えた様に息を吐いた。

 

「で、どうする」

 

「え」

 

「虚偽の報告をした新聞部に対して、お前はどうするんだよ」

 

「そりゃ、新聞部の言い分を聞いた上で事態の収束を──」

 

「へえ、で、新聞部はどうなる。部員が一人しかいないのなら、今後も毎週壁新聞を作るのが無理な状況は変わらない訳だが」

 

「それは……元いた部員に何とか戻ってもらって──」

 

「本人たちにその意志はあるのか」

 

 言葉に詰まる。

 そんな俺を見て、比企谷は尚も言葉を続けた。

 

「元々、部活なんてのは自分の意志で所属するもんだ。俺は強制だけどな」

 

 自嘲気味に笑う比企谷は、甘ったるいコーヒーを一口煽り、さらに重ねる。

 

「辞めるには辞めるなりの理由があった筈だろ。それを再三の説得によって本人の意志を捻じ曲げるのなら、それは強制と変わらない」

 

 断じる比企谷に苛立つ。

 その原因は、比企谷の意見が正論だからに他ならない。

 だけど、だからと云って。

 

「──だ、だったらどうすればいいんだ。お前ならどうするって云うんだよっ」

 

「俺なら、新聞部は廃部にする。たった一人で新聞作りなんて無理だからな。存在するだけ無駄だ。ま、そんな新聞部に入る奇特な奴がいれば話は別だけどな」

 

「そんな人間なんか簡単に見つかる訳がない」

 

「手伝える人間なら、一人だけ心当たりがある」

 

 比企谷は、にやりと笑いながらスマートフォンを取り出した。

 

 

 

 




今回もお読み頂きましてありがとうございます。
次が本牧牧人編最終話となる予定です。
まだ書けてませんけど(遠い目)

明日の投稿は……難しいかな。

あと、八幡が捨てたはずのマッカンを飲んでる感じに書いていたので、さりげなく修正しました。
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