あとがきにながーいお知らせがございますので、そちらもご覧いただけたら幸いです。
特に俺ガイルの二次を書いていらっしゃる書き手の皆さま、是非ご覧下さいませ。
夏の雲は、降り積もる雪のように
──夢。
それとも夏の蜃気楼、なのかしら。
駅のロータリーでタクシーを降りた私、雪ノ下雪乃の視線の先。
陽炎の向こうに揺れる人影があった。
白いTシャツの下はデニムという、簡素な出で立ち。
重そうな大きなバッグを肩に掛け、時々そのバッグの重さによろけながら歩く、猫背の人影。
その頭部には、くりんと立った癖っ毛。
まさか、ね。
彼は東京の大学にいるのだし、由比ヶ浜さん経由で聞いた戸塚くんの話だと、彼は夏休みの帰省はしないと聞いている。
なのに。
今私の目に映る人物は、彼としか思えない。
多少身長が高くなっているけれど、この私が彼を見間違える筈はない。
彼は立ち止まり、きょろきょろと首を振る。そして、私のいるタクシー乗り場とは逆、バス乗り場の方へと歩き出す。
「ま、待っ──」
慌てて叫んだけれど、私の声は駅前の喧騒と蝉たちの合唱に、掻き消された。
バスが立て続けにロータリーに入ってくる。
歩く彼の姿はバスの影で、すっかり見えなくなってしまった。
その瞬間、過去の光景が脳裏に浮かぶ。
『俺と友達に──』
一度目に言われた時は、彼を知らなかった。
二度目は、彼を知っていた。
もしも三度目の機会があるならば、私が彼を理解した時……なのだろうか。
いえ、その時には友達ではなく──
南中の太陽の下、私はロータリーを出るバスをずっと眺めていた。
胸に渦巻くこの感情は懐古、いえ……後悔ね、きっと。
素直になれなかった私が、一度だけ彼に告げた我儘。
『──いつか、私を助けてね』
あの時、何故あの言葉が出てきたのか。実は私自身も良く分かっていない。
ただ、無性に縋りたかった。手を差し伸べて欲しかった。でもそれを言ってしまうと、全てを彼に委ねてしまいそうで……。
委ねたい気持ちと、依存したくないという思いが、曖昧な言葉を私に吐かせた。
いつか。
いつか、そんな日が来るのだろうか。
見上げる夏空は青く、入道雲は高く積まれている。
「次の偶然は、逃せないわね」
ひとり零した言葉は、熱い風に飛ばされる。
かつん、とパンプスの踵を敷石に打ち付けて、私はタクシー待ちの列へと戻ろうとした。
「──何を逃せないって?」
後ろから声が聞こえる。
低く、籠った、懐かしい、声。
時に言い争い、時に歩み寄り、私を支えてくれた、温かい声。
聞き間違える筈はない。
何度も何度も、夢にまで出てきた彼の声だもの。
振り返ろうとして、やめる。
私だって女だ。
こういう再会のシーンは、やはり笑顔を見せたい。
懸命に笑顔を作り、よくやく振り返った先には。
暑さと重い荷物で疲れ果てた、彼がいた。
「──何をしているのかしら。帰省早々に這いつくばって」
思わず口をついて出てしまった、悪態。
彼は、怠そうに顔を上げて。
「いや、バスに乗ろうとしたんだけど、降りたバス停から家まで歩くのが嫌になって……な」
相変わらずの台詞を吐く、彼。
その首元には幾筋もの汗が流れていて、高校時代よりもやや
思わず破顔しそうになるのを懸命に堪えて、彼にハンカチを差し出す。
「ほら、拭きなさい。すごい汗よ」
彼は、差し出したハンカチと私の顔を交互に見る。
「いや、今ハンカチが必要なのは、お前だろ」
「私は汗などかいていないのだけれど」
これでも私は学部外では人気があるのだ。何故か同じ学部の男子からは「
そういえば、彼も私を氷の女王などと揶揄していたわね。
失礼極まりない話だけれど、今は彼の体が心配だわ。
「いいから使いなさい」
何処かに経口補水液を売っている店は無かったか考えつつ、もう一度、彼にハンカチを差し出す。
「え、お前、気づいてないのか?」
「何のことを……え」
とたんに、頬に水気を感じる。
指でなぞると、その先が濡れていた。
「な、涙……?」
「無意識に泣くなんて、そんなに俺の顔を見たのが辛かったのか」
「ち、違う……の」
慌てて首を横に振ると、涙が左右に飛び散った。
「なら、何か悩み事か。話くらいなら聞いてやれなくもない気がするけど」
「回りくどいわよ、馬鹿」
小さじ一杯の彼の不器用な優しさが、何倍にもなって私の心に沁みてくる。
「なあ、雪ノ下。依頼しろよ」
彼は、荷物を置いて立ち上がる。
「根本的な解決は無理かも知れねぇが、マジで話くらいなら聞いてやれる」
「依頼って、もう奉仕部では無いのよ」
「いいから、な」
思わず天を仰ぐ。
次から次へと涙が零れる。
駄目。もう止まらない。
私は溢れる涙をハンカチで払い、彼に宣言する。
「良いのかしら。これは、貴方にしか解決出来ない依頼よ、比企谷くん」
私は、泣きながらも懸命に笑顔を作って彼に向ける。
久しぶりの想い人との再会で、無様な泣き顔なんて見せられない。
けれど彼は、何故か私から目を背ける。
なぜ。どうして。
私、うまく笑えていなかったのかしら。
「……やっぱりお前の涙は心臓に悪いな。よし、マッ缶が美味い店を知ってるんだ。そこで相談を受ける」
「まだあの甘いコーヒーを飲んでいるのね」
「当たり前だ。俺のような頭脳派には糖分は必須なんだよ」
「……変わらない、のね」
彼はバッグを背負い直して、私に手を差し伸べる。
「私のおごりは、高くつくわよ」
「んなことは百も承知だ。ほら、早くしろ。せっかくのマッ缶の味が落ちるぞ」
馬鹿ね。
既製品は、どこで飲んでも同じ味よ。
でも、貴方と飲めば。
──好きな味に変わるのかもね。
お読みくださいまして、ありがとうございます。
ついに来月は「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」第14巻の発売でございます。
それに便乗して、俺ガイルの二次書き手さん仲間4人で、こんな企画を考えてみました。
題して、
原作応援
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。
短編カップリング祭り!
俺ガイルでの定番のカップリングは、八雪、八結、八沙など数々ありますが……
今回は何でもあり!
大天使トツカエルが主人公でもいいし、折本香織の友人の仲町千佳が主人公でも良いのです。
カップリングも男女の組み合わせだけでなく、男同士、女の子同士もアリ。
なんなら俺ガイルのキャラとオリキャラのカップリングも全然アリ♪
ジャンルも、恋愛や友情など、原作の枠内ならば何でもアリ♪
つきましては、この企画に書き手として参加してくださる方を募集します。
今回はカップリングの掛け算の関係で、10人くらいの募集となります。
【お祭りのルール】
①文字数は2000〜10000文字。
②参加希望の方は、執筆希望のカップリングを添えて
短編CP祭り公式垢! https://twitter.com/popoachan666?s=09
(@popoachan666)宛にツイートするか、ツイッター内のDMでご連絡ください。
③ツイッターやってないよーっていう参加希望の方は、ハーメルン内のメッセージで私宛にご連絡ください。
今回の主旨はあくまで原作応援なので、注意事項として、
①クロスオーバー禁止
②アンチヘイト禁止
③HACHIMAN禁止
④その他はハーメルン規則に準拠
と、させていただきます。
もし、
・興味はあるけど分かんない!
・まだ書き始めたばかりだけど……興味ある!
・なにがなんだかわからない!
という方がいらっしゃいましたら、上記のツイッターアカウント宛に質問しちゃってください。
【短編CP祭り運営陣】
運営用ツイッターアカウント
短編CP祭り公式垢!ぽでの ぽりあ(ぽぽあちゃん) twitter
@popoachan666
https://twitter.com/popoachan666?s=09
しゃけ式
代表作
「もしも八幡とあーしさんが赤い運命の糸で結ばれていたら」
@Mvzzk4unATn5Vwb
https://twitter.com/Mvzzk4unATn5Vwb?s=09
袖野霧亜
代表作
「トラウマの原因が覆されたら、その世界はどうなるか。」
@jQDILftaSdf3L3L
https://twitter.com/jQDILftaSdf3L3L?s=09
冬野ロクジ
代表作
「やはり俺の『本物』はまちがっている。」
@kawanonatuaki
https://twitter.com/kawanonatuaki?s=09
エコー
代表作
「千葉ラブストーリー」
@Sw20fun
https://twitter.com/Sw20fun?s=09