お菓子の国にご招待!   作:月日星夜(木端妖精)

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遊戯王小説書いてみたくて書いた。



RIDE-1 異世界転移+D・ホイール=疾走決闘アクセラレーション!!

 薄暗い空。

 鬱屈とした雰囲気と乾いた空気がはびこる廃屋(はいおく)の谷間。

 端々(はしばし)瓦礫(がれき)などが寄せ集められ、風に乗って紙屑やカードが飛んでゆく世界に、私はいた。

 

 ……正直意味がわからなかった。

 

 手を()えた石の壁は冷たく、手の平に(ひび)割れを感じさせている。見上げれば、今にも崩れそうな二階建ての家屋(かおく)があった。

 こんな建物、近所にはなかったはず……。

 眉を寄せ、目を細めて考えを(めぐ)らせながら壁に当てた左手を見る。子供のような小さな白い手。いつも通りの私の手。壁から手を離し、握ったり開いたりをしてみて、その圧倒的なリアルさにこれが夢なのか現実なのか判断つかず、ますます困惑した。

 

 そうっと吹く風が髪を揺らし、それは視界の端に黒い線となってちらちらと映る。ゆったりとした袖がはたはたと震えて、布が鎖骨の下あたりをくすぐる感触に身を(よじ)った。

 それで私は、ようやっと自分の中から外へ目を向ける事ができた。

 

 一言で表すなら、さしずめゴーストタウンと言ったところか。道は舗装されてないし、目に入る家はどれもボロボロ。シャッターは閉め切られ、ゴミは散らばり、まるで戦争でもあったみたいな酷い光景だった。

 それに、道の幅は広いのに人通りがない。少ないとかでなく皆無なのだ。人の気配がないと言い換えてもいい。

 今ここには私以外の人間はいないようで、だから改めて私は自分に意識を移した。

 

「…………」

 

 ところどころフリルがあしらわれた真っ黒いドレスのような洋服。ふんわり広がったスカートは長さの違う布を三枚重ねているみたいで少し重みがある。黒地に白い点々が散りばめられ。まるで星空のようだった。上着は同色なれども星の散らばりはなく、真っ白な布が首回りと肩を覆っている。ちょっとおしゃれ。

 それから、胸元のブローチ。スカートをつまんで揺らしていた手をそのまま首元へ持っていき、楕円の半球に指を這わせる。氷でもないのに冷たい痺れ。

 見た感じでも触った感じでも、これは宝石……っぽい。濃い紫のアメジスト。

 こんな服持ってたっけ。こんな宝石持ってたっけ。というかなんでここにいるんだっけ。

 

「……」

 

 ブローチから垂れる真っ赤なリボンを指で挟んで撫で下ろしつつ、考えを整理するために声を出そうとすれば、口から出てきたのは言葉にならない溜め息だけだった。

 

「……?」

 

 あれ?

 

「……? ……。…………!」

 

 ……衝撃の事実が発覚した。

 喋れない。

 私、喋れなくなってる。

 何を言おうとしてもぱくぱくと口が動くばかりで喉の奥からは掠れた空気しか出てこず、まるで言葉を失ってしまったかのようだった。

 実際そうなのかもしれない。

 とうにこの疾患は克服したと思っていたのだが、なんらかの原因でまたぶり返してしまったのだろうか。

 まさか。お医者様も完全に治ったと太鼓判を押してくれたし、そんなはずは。現に六年もの間私は言葉に不自由しなかった。

 社会人になってからは病気の事など忘れていたくらいだったのに、なぜ今さらになって……?

 

 というかこの服はなんだ。考えずとも私はこんな服は持ってない。……けど、私の趣味には合っている。着る勇気がなくて買うだけに留めているけど、その手の服は大好物だ。だから少し嬉しかったりする。

 ……。

 高級そうな手触りを堪能しつつしばらくぼうっとして、はっと気を取り直す。現実逃避をしている場合ではない。

 昔みたいに言葉を失い、服装まで変わって見知らぬ場所にいる。

 エマージェンシー。これってとっても異常事態だ。

 幸いと言っていいのか、私にそういった事態への免疫や耐性が皆無だったせいで取り乱すを通り越して若干暢気な気分で行動してしまっていたが、こんな場所にいつまでもいるのは危険だという脳内からの警告に従い、移動する事にした。

 

 その前にまずはボディチェックだ。誰が私をひん剥いて着せかえたのか知らないが、もしその人物に慈悲があるなら、お財布やケータイは残してくれているかもしれない。……変な事をされてないかの心配はいらない。こんな発育不全のちんちくりんに欲情してくれる人はいない。ついでにいえばお付き合いしてくれる人もゼロだ。貴重な青春時代を重度の人見知りと精神疾患で潰してしまった私は、キングオブコミュ障であった。社会の荒波に揉まれる事によって人並みの対人コミュニケーション能力を獲得したものの、結局今日という日まで恋愛というのはどうすれば良いのかとんとわからないままだった。

 よって私は彼氏いない歴=年齢とかいう悲しみの具現になってしまっている。

 

 ……まあ、私と付き合いたいなんて言っちゃう人はさすがにアレ(ロリコン)だとはわかっているので、そういうのも良い人ができない要因の一つだったのだろう。趣味が合いそうにないのも大きい。

 せめて私の体が標準的な高校生くらいまで成長してくれればワンチャンあったかもしれないのに、現実は非情。同僚の一番背の低い人と比べてもおよそ21cmは身長差ができてしまう程に私の背は低く容姿も幼い。小学校の集団下校に紛れ込めば引率する上級生に面倒をみられる大人の図ができたりする。そのくらい寸胴で童顔。救いようがない。神様とお母さんのばっきゃろー。文句言いたい事この上ない。死んでなかったらどうしてこんな体に産んだんだって詰め寄ってたね。

 お空の遠いところに向かって文句言うくらいはできるか。みっともないからしないけどさ。

 

 さて、私がこれまた高級そうな革製のブーツをぎゅむぎゅむいわせて振り返ったところ、何やら前衛的なフォルムのバイクが一台あるのを発見した。

 ついでに腰を締め付ける細いベルトに取りつけられたポーチの中に、馴染みのお財布と四角い何かを見つける事もできた。

 バイクはひとまず置いておこう。なんかとても既視感のある姿をしていたけど、気のせい気のせい。私はバイクなど所持してないし、誰かがここに廃棄したか置いといてるだけだろう。というかたぶんあれは……ファンアート的な……まあ、いいや。ごちゃごちゃ考えてても仕方ない。

 二つ折りのお財布を開き、紙幣をチェック。諭吉さんは誰一人誘拐されていない。野口さんも大丈夫。硬貨の方も抜き取られた跡はなく、てきとうに突っ込んだせいでくしゃくしゃになってしまっているレシート群も手付かずだ。

 ……謎だ。金品目的でないなら、何者かはなぜ私を着替えさせてこんなところに放り込んだのだろう。

 

「…………」

 

 ……とかなんとか言っておきながら、実は見当がついていたりする。

 右腰のベルトに取りつけられたホルダーには、なぜかは知らないが私のデッキが入っていた。遊戯王というカードゲームのデッキ。傷避けの可愛らしいキャラもののスリーブはご丁寧にも全て剥がされた状態でポーチの方に収められていた。

 ……自分は何者なのか。どこから来たのか。その答えが……じゃない。ふざけてる場合ではない。

 だけど、この場所がどこなのか、私がどういった状況に置かれているのか。そういった事を考えるのがとても億劫(おっくう)で、逃避気味に日常の安らぎの象徴であった遊戯王カードに手を伸ばし、両手で持って内容を確認する。

 

 五十五枚のカード全てがきちんと揃っていた。エクストラの十五枚とデッキの四十枚。

 十五枚の方を抜き取り、残りは片手で揃えて整え、それからポーチの方に手を突っ込む。取り出したるは謎の四角い機械……いや、謎ではない。私はこの機械を知っている。長方形の短辺にちょうどデッキが入れられそうな穴が開いているこれは、どう見たってARC-V(アークファイブ)のデュエルディスクだ。

 

 なんでこんなおもちゃがここにー、とわざとらしく口パクしつつ左腕に乗せてみれば、しゃかっと鉄の輪が出て腕に取りついた。上部の穴にデッキを差し込めばオートでシャッフルされる。おおー、超便利。……でもどうやってるんだろう、これ。

 上部と下部がにょきっと伸びて従来のデュエルディスクに近い形態になる。最後に真っ黒な光が板となり、私の腕より長く伸びた。剣にもなっちゃう素敵な光は、私が胸元にデュエルディスクを構えれば、しっかりカード置き場の役目を果たしてくれそうな安定感を見せつけた。

 試しに一枚ドローしてみる。しゃっきーん。ドロー! ドローカードは……幽鬼(ゆき)うさぎだ。真っ白な髪に真っ赤な角と真っ赤な目。着物姿のかわいこちゃん。1800円(なり)

 ……はぁ。夢かなぁ、これ。夢、だよね。どう考えても。

 いそいそとカードを戻し、ディスクのディスプレイをスマホさながら指でつっつきまくってフィーリングで操作し、展開されていたビームソードを消し去る。ディスクも元の長方形に戻ったので腕から外し、デッキを差したままポーチに戻した。

 

 今頃現実の私は自室の机に突っ伏しているのか、それとも移動中の車で寝こけているのか、はたまた楽屋で眠ってるのか。……ひょっとしたらここ数年間の記憶は病院のベッドの中で見ていた夢だったのかもしれない。

 ぞわりと背が震えた。

 そんな考えは妄想以外の何物でもないってわかってるのに、心細くてたまらず、怖くて震えてしまいそうだった。

 とりあえず目の前にあるバイク……もといD・ホイールに近付き、覗き込んで見る。ちょっとは気が紛れるかもしれない。目が覚めるまで何かしらやっていよう。目覚めた時に待ち受ける現実がどういったものかなんて想像するのはやめておこう。死にたくなる。

 

 塗装はピンクで見た目は遊星号に近いこのD・ホイール、何度おめめをぱちくりしても私の背の高さに合わせた車体の低さに見える。シートの位置も低ければ全体の大きさもこじんまり。おまけに本来デュエルディスクがセットされるべき場所には長方形の窪みがある。

 

「…………」

 

 (無言の乗車)。

 乗り込んでみたら、これが異様にしっくりくる。まるで六年使い倒してる自転車の如き安心感。それでいて外装も内装も新品同様ぴかぴかで、ハンドル? 的な横っちょの棒を握り込むと、私の小学生並みのおてて(下手すると小学生と手を合わせても劣る)でも握りやすいように、ちょうど私の指の形の窪みがあった。

 うーん、ちょっと夢っぽさが増してきて安心。こんなにあからさまに私向けにカスタマイズされてるんだもの、神様やらでなければこんなの用意できないだろうし、そんなの現実にはあり得ないのでこれはやっぱり夢って事で。

 で、実際このD・ホイールは誰のなの? っていうと、まあ、九割方私のだ。さっきお財布覗いた時に、持ってないはずの免許があったんだよね。ライセンス。顔写真付き。詐欺みたいな年齢もきっちり記載されていた。住所はちょっと意味不明だった。

 半透明の柔らかいカードケースに入っていたのはライセンスだけじゃなかったっぽいけど、なんだったんだろう。確認するべきか。……躊躇う理由はない。でも億劫だ。わざわざバイクに跨ったのにまた下りてポーチからお財布取り出してケースを取り出して……なんてするのは。

 そういえば私ここのところ残業続きですっごく疲れてるのよね。はぁー休みたい。有給とりたい。使わせてほしい切実に。有給などないけど。

 この体は燃費が悪いのだ。こまめに休憩とらなきゃ死んじゃうのだ。もっと労わって。

 ぐちぐちぐちぐち心の中で社会に文句を言っていれば(十割予定の管理ができていないだけの私が悪い)、ふとキーを入れる部分が目についた。……キーはキーでもカードキーっぽいけど。というかその背側の絵柄、どうみても遊戯王カードね。引き抜いてみれば、ふむ、表面には黒曜(こくよう)号と書かれている。

 ……黒曜……号……。

 せ、センスないって言ったら悪いかな。悪いよね。いや、センスじゃなくって。

 

 えぇと、黒曜……黒原曜子(くろはらようこ)とは私の名前だけど、そこからとったのかな。それにしたって、もっと他に何か思いつかなかったのか私。ピンク色なんだし、ピンキーちゃんとかさ。

 夢の中の設定に文句を言ってもしょうがない。キーを元あった場所に差し込み、ついでだし楽しんじゃおうかなとエンジンをかける。ん、思った通り、バイクなんか触った事ない私用にカスタマイズされたこのD・ホイール、私が動かしやすいように最適化されている。で、目の前の窪みにポーチから抜き取ったデュエルディスクをイン。カチリと音が鳴るまで嵌め込めば、ディスプレイが独りでに明るくなって、ここら辺の地図を浮かばせた。ほへー、なにこれ便利。これなら見知らぬ土地でもやっていけそうね。

 右上には『サテライトスラム』の文字が浮き上がっている。……サテライト?

 てことはここはシンクロ次元だろうか。この崩壊した街並みからてっきりハートランドかと思っていたのだけど、そっかー、シンクロ次元かぁ。

 ……ん? でもシンクロ次元にサテライトってあったっけ?

 

 ぐいっとハンドルを捻ればアクセルがかかり、ぐおんとD・ホイールが走り出す。新感覚初体験。背中側に背もたれなかったら確実に吹き飛んでたよ、今の。右足が届く位置に、たぶんギアだかなんだかを変える部分がある。げしげし蹴りつけてみれば何やら速度が変わったり変わらなかったり……よくわかんない。

 

「…………」

 

 わからない物は放置が安定だ。

 

 それから、しばらくは殺風景な街を疾走した。

 髪が(なび)く。風を感じる。

 バイクってのも案外気持ちの良いものだ。

 今の私、めちゃくちゃ格好良いかもしんない。

 

「そこのD・ホイール、止まれ!」

 

 とかなんとか(えつ)に浸ってたら警察に絡まれた。

 いや、DC(デュエルチェイサー)……もといセキュリティの人?

 とにもかくにもヘルメットをかぶった大柄な男性がピカピカライトを光らせウォンウォンエンジンを鳴らして並走してきた。めちゃくちゃ怖い。凄くビビってる。なのに表情は変わらないし言葉も出てこない。この鉄面皮は夢だからなのか。

 

「おいガキ、聞こえてんのか! 止まりやがれ!」

 

 ぐいぃとぶつかりそうなくらい近寄ってきたセキュリティの人にビビりまくって左に動き、距離を離す。さらにハンドルをグリッと限界まで回して加速加速加速!

 バタバタバタとはためく服に、重力に従って後ろへ伸びる無駄に長い髪。

 ……あ。

 なんでセキュリティに怖い声かけられてるのか、その理由がわかった。

 私ノーヘルで運転してら。

 

「止まれッッ!!」

「…………」

 

 恫喝するような声に心臓が跳ね上がるも、体はぴくりともしない。きっと涼しい顔をしているように見えるだろうけど、ほんとはもう涙目だ。止まりたくても体が強張って止まらない。

 それでも少しずつ速度が落ちてきていて、再度並走してきたセキュリティの人がさっきよりも声を荒げて停止を促してきた。止まるのはやぶさかではないけど、絶対怒られるよね。……怒るで済むのだろうか?

 ……刑務所に送られたりしないよね?

 

「…………」

「なんだぁ? 人の顔じろじろ見やがって……ん? テメェ……!」

 

 あーっ! この人よく見たら牛尾さんだ!

 

 牛尾(テツ)

 5D'sでは遊星の陣営の人で、面倒見が良い印象だった。左の目の下にできた傷に覚えがある。

 でも、こんな風に怖い顔をするようなキャラクターだったっけ?

 ううん、私ダグナー編って呼ばれてるの見た事ないんだよなぁ。再放送のクラッシュタウン編から見始めて……ARC-Vに移って……だから、一期だとか二期だとかには詳しくない。もしかしたら牛尾さんは最初は敵だったのかも。

 たんに犯罪者(私)に厳しく当たってるだけかもしれないけどね。あはは。……あはは。

 

「そのデッキも盗んだのか? えぇおい、サテライトのクズがよぉ」

「…………」

 

 クズって。今地味に傷ついたんだけど……え、本当にこの人牛尾さん? そっくりさんとかじゃなくて?

 

「フィールド魔法強制発動! スピードワールド、セット・オン!」

 

 え?

 腕を振り上げた牛尾さんが勢い良く人差し指を、おそらくはD・ホイールのディスプレイに叩きつければ、カードの効果の発動音が鳴ると共に私のデュエルディスクのディスプレイに異変が起きた。デュエルモードオンだとかなんとかガイド音声が発せられて……。

 一枚のカードが浮かび上がり、勝手に発動したのだ。するとまずディスクからビームソードが伸び、ジャガガガッと激しい音をたててデッキがオートシャッフルされた。()いで車体から円状に何かが広がっていって、周囲の色を暗く染める。圧巻……。でずにーのアトラクションみたい。

 って、スピードワールド? 2でもネオでもなく?

 という事は、今って私が知ってる時期よりかなり昔で……ええ? それってどういう事?

 

「俺の特殊追跡デッキで叩き潰してやるぜ。クズなんぞにはもったいないが、特別だ!」

「…………」

 

 なんで私の知らない知識を元に夢が展開されているのかがよくわからない。

 でも、夢ってのは得てしてそういうものだ。常識で計れるものではない。

 なら今を楽しんでみるだけだ。そうそう、せっかくこんな夢見てるんだし、デュエル、やってみちゃおっかな。

 

「デュエル!」

「デュエル……」

 

 あれっ。声、出た。

 でもなんか、覇気がない。喉に力が入んない。

 目を細めて私を睨みつけた牛尾さんが僅かに背を丸めて前傾姿勢になると、スピードを上げて私を追い越した。

 

「行くぜぇ、俺のターン!」

 

 力強いドローを見せる牛尾さん。と、手元でヴォンと機械音がした。なになに? あ、ディスプレイがライディングデュエル用に変わってる。自分のフィールドと相手のフィールドが色分けされて描かれていて、スピードカウンターの表記もあった。

 ドローカードと車体にあるカードホルダーを交互に見た牛尾さんは、後ろからでもわかるくらいニヤッと口の端を吊り上げて、勢い良くディスクにカードを叩きつけた。

 

「ゲート・ブロッカーを守備表示で召喚!」

 

 頭上に現れた光の穴からぬる~っと出てきたのは、守備の証である青色に染まったぬりかべだった。妖怪ぬりかべ。しかも一つ目。怖い。……って、牛尾さぁん、何勝手に先攻取ってるんですか!? じゃんけんは? 公平さに欠けてるよ、警察の癖に!

 ってぇ、あっあっ前見えない! ゲート・ブロッカー邪魔! なんでこんな目の前にいるの!?

 ひえっ、跳ねた、ちょ、今バイク跳ねたよっ!

 ズシンと車体が沈み、腰にダイレクトに衝撃が伝わってくるのにふっと息を吐いた。本来なら「うげっ」と色気の欠片もない声が出ていただろうに、夢の中の私は最強かわいい補正でも働いているのか、妙に可愛らしい溜め息だった。

 

「これでテメェのスピードスペルは封じた! 俺はこれでターンエンドだ!」

 

 ドキバク跳ねる心臓。目の前が見えない恐怖に背筋を凍えさせていると、どうも私を舐めているっぽい牛尾さんの声が聞こえてきた。ディスプレイに私のターンだと示す英字が躍る。

 こんな小娘、あっという間に捻り潰してやるぜって思ってるのかもだけど、残念。私デュエル強いよ。社会でも地味に役に立たって、私が再起するのにも凄く役に立った運命力ってのがあるんだから。

 

「私のターン、ドロー……」

 

 デッキトップに指を掛け、一気に六枚引き抜く。

 ルール無視ではない。最初に五枚引いてなかったからその分だ。私が状況を飲み込む前に勝手にデュエル進めちゃうんだもん、牛尾さんってばおちゃーめさん。

 ピーっと音が鳴る。今のはドローフェイズに牛尾さんのスピードカウンターが一個貯まった音だ。本来は両者のカウンターが溜まるんだけど、ゲート・ブロッカーの効果で私は無し。

 それにしても良い音だ。馴染み深い。ARC-Vにはスピードカウンターはなかった。寂しかったなぁ、あれ。

 それで、手札はーっと。やった、キーカードきてる。私、カードに選ばれすぎぃ!

 で、ええっと、カードは……この、左っかわの長方形のホルダーに差し込んでおけば良いのか。

 

「私は……」

 

 まずは手札を一枚、ディスクの横部カード差し込み口に入れようとして、半ばまで入ったところで何かに突っかかった。んっ? と疑問に思う前にビビビーッと警告音。ディスプレイにはERRORの文字。

 

「へっ、やっぱりクズはクズだな。デュエルのルールもわからないんじゃこっちがたまんねーぜ」

 

 ……………………。

 ひょっとして、スピードワールド()ではフィールド魔法って使えないの?

 え……そんな……。

 あ、しかも嫌な事に気がついてしまった。スピードワールドがある時、魔法カードは使えない。Sp(スピードスペル)ってのを代わりに使わなきゃいけないんだけど、そんなのOCG化されてないから入ってる訳ない。あってもライディングデュエルなんてしないから入れる訳ないし。

 夢なんだからちょっとくらい融通きかせてくれても良いのに、さっき見たデッキの内容は悲しいくらいいつも通りだった。

 ……なんでライディングデュエル初心者の私がその道のプロに対してハンデつけてんだろうね。

 

「どうしたぁ! さっさとターンエンドして負けちまいなぁ!」

「……そうもいかない」

 

 牛尾さんの煽りに、内心とは裏腹に静かに言い返す私。そうもこうもないけど、というか負けたってかまわないけど、いちおう私もデュエリスト。この道数年。負けたら悔しいし、せっかくなんだから勝ちたい。

 手札の一枚は完全に腐ってしまった。でも、何をしようとも除外されないフィールド魔法があるって事は悪い事ばかりじゃないんだよね。

 まぁ、まずはいつも通りに回してみよう。

 

「私は、手札からマドルチェ・エンジェリーを召喚する」

 

 コーン、と胸に響く不思議な音と共に光が集い、人型になる。

 ふわっふわの茶髪をお下げのツインテールにしている、真っ白でヒラヒラな服を纏った天使のような女の子が人形のようにデフォルメされた体を伸ばし、私の傍まで()りてきてゆったりと飛び始める。

 私はそれをぼうっと見上げていた。

 だってだって、ソリッドビジョンなんて初めて見たのだから、まるで本当にそこにいるように見える彼女の姿に感動してしまうのは仕方ない。ちょこっと私を見てにっこり微笑んでくれるのなんてとってもラブリーで、ああ、こんな夢が見れるなんて最高!

 

「それだけか?」

「ううん。エンジェリーのモンスター効果を……あ」

 

 ……いつも通りモンスターを並べてエクシーズに繋げようとして、ふと気づいた。

 この世界でエクシーズ召喚ってできるのかしら。

 もっと言うと、私のデッキにSp(スピードスペル)紛れ込ませてくれないどころか魔法の発動も許してくれないこの夢が、この世界にない召喚法を許してくれるだろうかって事。

 ……んー、ディスプレイを見る限り、ペンデュラムはできそうなんだよね。ならエクシーズもいけると思うんだけど……でもでも待って、またビーってなったらやだよ。今度は怒鳴られそう。

 それにエクシーズなんかしたら目を付けられちゃうよ。シャープとかに。もとい国家権力に。

 という訳で縛りを一つ追加だ。エクシーズなしでいけるとこまでいってみよう。

 

「エンジェリーの効果を発動する。このカードをリリースし、デッキから「マドルチェ」モンスターを1体特殊召喚する」

「なんだとぉ、生意気な!」

 

 夢なのに後の事を考えるなんて、私ってば慎重派ー、と自画自賛していれば、牛尾さんからヤジが飛んできた。どうしよう、凄く怖い。ほんとに。

 くるりと一回転したエンジェリーが光の粒となって私のデッキに流れ込んできた。シャカッと一枚カードがせり出す。それを指で挟み、引き抜いて黒いビームの上へそっと置く。

 

「マドルチェ・ホーットケーキを特殊召喚」

 

 ぱぁっと光って現れたのは、ホットケーキを斜めにかぶったフクロウ。ベストなんかを着こんでお洒落さんだ。ばっさばっさと翼をはためかせて私に追従する。

 

「ホーットケーキの効果発動。墓地のモンスターを除外し、デッキから「マドルチェ」モンスター1体を特殊召喚する」

「またデッキからだとぉ!?」

 

 大袈裟に驚いてくれる牛尾さんには悪いけど、あなたの顔はゲート・ブロッカーで見えないのです。はやくこれ退かしたいなぁ。どかすか。

 

「マドルチェ・メッセンジェラートを守備表示で特殊召喚」

 

 紅いマントに帽子の郵便屋さんが私の傍に現れる。守備表示で出したのだから青色になるはずなのに、彼はすぐにはそうならず、肩から掛けた腰のバッグに手を入れてがさごそと漁った。良いものでも見つけたのか表情を明るくさせ、一枚のカードを取り出して「はいどうぞ」とでも言わんばかりに手渡してきた。一礼した彼は蹲って防御姿勢に移り、青く染まった。

 

「自分フィールド上に「マドルチェ」の獣族がいる時に、メッセンジェラートの効果は発動する。デッキから「マドルチェ」と名のついた魔法・(トラップ)を1枚選択して手札に加える」

 

 私が手札に加えるのはこのカード、と永続魔法マドルチェ・チケットを相手に向けて掲げる。当然使えないけど、デッキ圧縮にはなる。

 ……ゲート・ブロッカーさん仕事しすぎ。牛尾さん見えてないよこれ。

 

「クズモンスターをいくら並べようが、ゲート・ブロッカーの守備力は突破できねぇ! 残念だったなぁ!」

「それはどうかな」

「なにぃ!?」

 

 それはどうかな、と言えるデュエル哲学。

 いや、言ってみたかっただけだけども。

 

「エクストラデッキのスターダスト・ドラゴンを除外し、手札よりSin(シン) スターダスト・ドラゴンを特殊召喚する」

「最上級モンスターだとぉ!?」

 

 ん、除外する方には反応なしか。

 ぺちっとビームにカードを叩きつけ、左側にモンスターが召喚される際の大きな光の穴が現れるのを確認してから右手を天に突き上げる。

 

「不穏な影に白銀の翼は黒く染め上げられた。それでも彼はこの国の守護者」

 

 (いなな)きが天をつんざく。

 現れ出るは巨大な守護龍。

 

「遥か遠き未来より飛翔せよ、Sin スターダスト・ドラゴン」

 

 闇に呑み込まれてなお美しき龍は、未だ消えぬ煌めきを羽ばたきによって散らし、私達の頭上を覆った。

 ちなみに今の召喚口上は即席で考えたものだ。私、センスある。すばらし。

 

「馬鹿な! サテライトのクズが、なぜこんなカードを!」

「カードは買った」

「買った、だと!?」

 

 うん。ストレージに入ってたのを普通に30円で。

 ギュイィンと駆動音を鳴らして隣に並んできた牛尾さんが私を見た。鋭い視線がほっぺに突き刺さるのを気にせず……もとい、怖くて目が合わせられないのでスターダストを見上げて逃げていれば、彼は「けっ」と変な声を出した。そういうのやめてほしい。いちいちビクついてしまう。今は体全然動かないんだけどさ。

 

「Sin スターダスト・ドラゴンでゲート・ブロッカーを攻撃。…………ダークネス・ソニック」

 

 さすがに苦しい即興の攻撃名に不満があるのか、長い首を振って咆哮を上げるスターダストに指示を下す。スターダスト、やっちゃってよ。てな具合にゲート・ブロッカーさんを指差せば、我がドラゴンは渋々といった様子で真っ黒なブレスを吐き出した。

 サテライトの荒廃した道路を削るように伸びていったブレスが邪魔者を消し飛ばす。これでようやく視界が戻った。すっとしたね。あ、それと、攻撃ド迫力で格好良かった。謎に風を感じたけど、たぶんバイクに乗ってるからだよね。

 

「ターンエンド」

「……ふん、いい気になりやがって」

 

 どうしてか幾分勢いが削がれた様子の牛尾さんがちらちらと私を窺いながら少し前へ出た。なんだろう。私の顔に何かついてる? ……あいにくハンドルから手が離せないので確かめようがないんだけど。しっちゃかめっちゃかに動く髪が肌に当たって、ゴミやら何やらがついていたとしても判断つかないし。

 

「俺のターン! ドロー!」

 

 ……ところで今さらだけど、スターダストなんか出して良かったのかな。しかもSin。

 映画のパラドックスって人が使ってたカードで、それは遊星のスターダストを奪って作り出した物だったんだよね、たしか。

 ……ん? 目を付けられないためにエクシーズ使わないようにしてるのに、なんでこんな迂闊(うかつ)な事してるんだろう。……て、天然さんだねぇ、私。

 天然なのでしょうがないのです。えっへん。……えっへん。

 

「この瞬間、増殖するGを墓地に送る」

「無意味に手札を減らしてなんになる!」

 

 つらつらと考え事をしつつもプレイを進める私、ほんとデュエリストの(かがみ)。シンクロ全盛期ならこれが刺さるかなって使ってみたんだけど、牛尾さんはこのGの効果を知らないらしい。こういう時って説明してあげるべきなんだろうか。なんて考えていると、「ハァーッハッハ!」と牛尾さんがハイテンションな笑い声をあげた。

 

「レベル2、レベル4、レベル5、三体のモンスターを墓地に送り、手札よりモンタージュ・ドラゴンを特殊召喚する!」

 

 スターダストに負けない巨大な影が牛尾さんの上に現れる。モンタージュ写真さながらに三つの首がかしゃかしゃかしゃりとずれた位置から合わさって、三つ首の巨竜となった。白い仮面みたいなので顔を覆った三匹一体がスターダストを威嚇するように叫ぶ。きんきんと耳に響く大きな音。

 

「こいつは捨てたモンスターのレベル×300ポイントの攻撃力を得る。よって、攻撃力は3300!!」

 

 ディスプレイに表示された奴の攻撃力は牛尾さんの言う通り3300。スターダストの攻撃力を800も上回っている。果敢に叫び返すスターダストだけど、悲しい事に破壊の運命からは逃れられないのよね。守る手立てがないんです。

 

「あなたが特殊召喚に成功したので一枚ドローする」

「まだまだいくぜぇ! 墓地のヘルウェイ・パトロールの効果発動!」

 

 牛尾さんのバイクからヴォンヴォンとけたたましいエンジン音が鳴り響く。それは牛尾さんが駆るD・ホイールの駆動音とパトランプのペープーペープーという間抜けな音と入り混じって不協和音になっていた。

 

「こいつを除外する事により、手札の攻撃力2000以下の悪魔族モンスターを特殊召喚する! 来い、ヘルウェイ・パトロール!」

 

 爆発するような音が背後から聞こえてきて、咄嗟に車体を傾けて右へ移動すれば、私がいた場所を悪魔ライダーが通り抜けていった。黄色い角が生えた怪物。なんて危険な運転をするんだろう。いやに生物的なバイクの趣味も悪い。とかディスりまくってみる。だって事故になるかと思ってびっくりした。ソリッドビジョンだから接触したって問題ないだろうけど。

 おっと、増殖するGの効果で一枚ドローだ。

 

「さらにジュッテ・ナイトを召喚!」

 

 この異形合戦の中にコミカルな影が躍り出た。丸眼鏡にちょんまげに着物、背負ったちょうちんに手に持つ十手。下手したら私より小さいモンスターが勢い良く飛び出して、ハッと決めポーズをした。……かわいいかも。

 

「レベル4のヘルウェイ・パトロールに、レベル2のジュッテ・ナイトをチューニング!」

 

 先を行く小さなナイトが緑色の輪となり、後を追う悪魔なライダーがその体を薄れさせつつ輪の中に侵入する。そうするとその体はオレンジに発光する輪郭を残すばかり。体の中にあった四つの光が輪の中心に一列に並び、瞬間、ごんぶとビームが輪を貫いた。

 

「シンクロ召喚!」

 

 カカーン。小気味良い音が鳴り響く。

 

「であえ、ゴヨウ・ガーディアン!」

 

 ひえっ、禁止カード!?

 なんてね。この時代はまだ禁止じゃなかったのはわかってる。

 でも悲鳴を上げたくなるほどの壊れカードなのは確かだよね。

 

 さっきのジュッテ・ナイトを七等身くらいにして眼鏡を外して髪のボリュームを増やして白塗りの顔に口周りと目元を真っ赤に化粧してみれば、御用された守護者の出来上がり。かわいくない。

 素材指定なし、レベル6。なのに攻撃力は驚異の2800。さらに破壊して墓地に送ったモンスターを蘇生してコントロールを奪う効果まで持っている。

 おそろしいよう、と戦慄しつつ追加でドロー。うむむ、やっぱりエクシーズ縛りはきついなぁ。私のマドルチェデッキはエクシーズなしでも戦えるように調整してあるけど、それでもエクシーズありきだし……。

 一度決めたんだから頑張ってみるけど、もし駄目だったら泣こう。泣きわめこう。夢なんだから良いよね、それくらい。私の容姿なら泣いてても白い目で見られないはずだし。

 

「何枚ドローしようがクズはクズだ! まずはそのモンスターから奪ってやるぜぇ!」

 

 ゆけ! ゴヨウ・ガーディアン!

 牛尾さんが命令を下せば、バイクの傍を飛んでいたゴヨウがくるっと振り返って、握り締めたロープの片方、先端に十手が括りつけられた方の手をぐるぐる振り回し始めた。

 

「Sin スターダスト・ドラゴンに攻撃! ゴヨウラリアットォ!」

 

 ビャッと投げられた十手がスターダストの胴体を貫く。どの辺がラリアットなのだろうか。

 こっちまで伸びてきた十手が私のD・ホイールの側面を掠る。そのせいで小さくバランスを崩してしまい、一瞬で脳内はパニック状態に。

 左右に揺れる体にギャオンギャオンと耳元で唸る風。臨場感たっぷりでさいこーだぜ。ちょっとちびったかもしんない。ちくしょう。

 

「ゴヨウ・ガーディアンの効果発動!」

 

 無駄だ。Sin スターダストは自身の効果以外では特殊召喚できない。よってゴヨウ・ガーディアンの効果は無効!

 

「こいつが相手モンスターを戦闘で破壊した時、その破壊を無効にしてコントロールを得る!」

「……!」

 

 え。

 一瞬光の欠片になって飛散しそうだったスターダストは、逆再生さながら無傷の体を取り戻した瞬間、羽や腕ごとロープでぐるぐる巻きにされてゴヨウされてしまった。一本釣りみたいに牛尾さんの傍に連れさられてしまうスターダストに困惑する。

 あれ、うそ、なんで? スターダストは無理なはずじゃ……。

 ……ひょっとしてアニメ効果? なら墓地には送られてない。なんてこったい。やばいよう。

 ついでに300の戦闘ダメージを受けて、ライフカウンターの数字が3700に落ちた。……ライフ4000ルールなんですよね。うん。……まずいなぁ。

 

「その雑魚モンスターも破壊だ! やれ、モンタージュ・ドラゴン!」

「っ……!」

 

 猛り狂う三つ首の竜が、その口腔(こうくう)にそれぞれ三色の光を溜め込む。狙われたホーットケーキはたまったもんじゃないだろう。目をかっぴらいて羽をばっさばっさ振り乱して「ぎょえー!」とでも言いそうな醜態を晒している。でもかわいい。

 光が溢れ、いよいよそれが放たれようとしている。ホーットケーキが羽で自身を庇う動作をしたのを見届けたのちに私自身も衝撃に備えて身を丸め、だけど、その光が降り注ぐ事はなかった。

 スターダストが威嚇するように叫ぶ。そうするとモンタージュ・ドラゴンは体を震わせて口の光を消し去って、全ての首をスターダストに向けた。注意が逸れたために攻撃が中断されたのだ。

 

「なんだ? なぜ攻撃しねぇ!」

 

 牛尾さんの戸惑いと同じくらい私も戸惑っていた。

 なぜあのモンスターが攻撃をやめたのかがわからなかったのだ。

 ギャイギャイと喧しく威嚇しまくっているモンタージュ・ドラゴンと、素知らぬ顔です巻きになってゴヨウされているスターダスト。

 ふと、スターダストが私を見た。それでようやく理解した。そうか、そういう事……。

 

「……「Sin」モンスターがフィールドに存在する限り、あなたの他のモンスターは攻撃できない」

「な、なんだとぉ!?」

 

 狼狽える牛尾さんに、私もまた少し驚いていた。

 現実……OCGとは違う効果や発動のタイミングに、それが通った時に発生するまた別の処理。

 それらが新鮮で、なんだか遊戯王を始めた頃を思い出して懐かしくなってしまった。

 サイクロンで死者蘇生を破壊。なにっ、くそー。みたいな。

 

「クッ……ターンエンドだ!!」

「私のターン」

 

 苦々しいエンド宣言を前に、静かにカードを引き抜く。

 む……このカードなら私のフェイバリットモンスターが出せる。けど……今出してもやられる可能性の方が高い。あのカードがくれば多少盤石(ばんじゃく)になるんだけど……今は耐えるしかない。逡巡しつつビームソードに手を伸ばす。

 

「カードを三枚伏せて、もう一体のホーットケーキを召喚し、ターンエンド。エンドフェイズ、エンジェリーの効果で呼び出されていた方のホーットケーキはデッキに戻る」

 

 私の両側に伏せ状態の大きなカードが三枚現れ、すぐに消えた。

 ビームからホーットケーキのカードを外し、デッキに差し込む。オートシャッフルって便利ね。

 ……便利ね、じゃない。表側守備表示で召喚できてないんですけど。

 

「へ、打つ手なしかよ。俺のターン!」

 

 振り抜くようにカードをドローした牛尾さんは、一際(ひときわ)大きい駆動音を鳴らして右へ車体を傾けた。ぐんと加速し、急角度で右に曲がる。モンスター達も後に続くのをピクミンみたいだなーと眺めていれば、目の前に家屋が迫っていた。

 

「っ、ぁ!」

 

 「どわっ!」と胸中で上がった悲鳴はやはり微かな声に変換され(しかもなんか、妙に色気のある)、大慌てでハンドルを握り締めた結果アクセルが全開となり私の体は壁に向かって一直線。無理矢理右に曲がろうとしても多少前部が傾くだけでどうにもならない、と思っていたら、瓦礫でも踏んづけたのかD・ホイールが大きく跳ねた。空中に躍り出た車体は地上での傾きを大袈裟に捉え、地面と水平になるくらいに傾きながら進路を右へ変えた。だけど猛回転する車輪は空気を掻き回すばかり。激突は避けられない。

 

「くっ!」

 

 ドシン! 体が軋むほどの衝撃に腰が沈み……けど、思っていたような痛みだとかはなかった。代わりに感じたのは風。

 なんと私は、壁を走っていたのだ。

 

「…………」

 

 ……はっ!?

 ほ、呆けている場合ではない。なんとかして下りないと!

 商店やら普通の家屋やらが隙間なく建つこの場所は、時速200kmを越えるスピードで走るバイクに壁走行を可能とさせているんだけど、ここは荒廃したスラム。壁の損耗は著しく、さっきから細かに車輪が跳ねて振動しっぱなしだし、ちょっと先には大穴があいた建物が待ち構えている。このままいけば地面と激突か壁と激突の最悪の二択だ。

 ええい、ままよ! かっとビングだ、私!

 握った両側のハンドルを上側へ引っ張り、心持ち腰を浮かせて車体前部を上向きに。そのまま気合いでジャンプ!

 壁から離れた車体は落ちながら横転し、上手い具合にその両輪を地面へつけた。二回目のドシン。腰骨が悲鳴を上げている。ひえー、筋肉痛は確定だ。最近凄い長引くんだよなぁ。私ももう若くないって実感する。体はこんななのにね!

 

「ちぃっ……ならば、やれ! ゴヨウ・ガーディアン!」

「……?」

 

 体の痺れがとれてきたので前を向けば、顔を歪ませた牛尾さんが身を捩ってこちらに手の平を差し向けてきていた。だがその指示は通らないはずだ。だってSinがいるんだから、ゴヨウ・ガーディアンは攻撃できない。

 だというのにゴヨウ・ガーディアンが私へと体を向ける。ソリッドビジョンが反応しているって事は可能って事? なんで? まかさスターダストのテキストが変わっていたりしないよね。アニメ効果とかに。……それだったら自身の効果で自壊してるか。

 何やらロープを振り回し、ついでにその先のスターダストを振り回し始めた守護者は、あろう事か勢いをつけたスターダストをホーットケーキに投げつけてきた。青色に染まっていたフクロウは憐れ、真っ黒な巨龍に潰されて砕け散った。

 

「こいつ以外が攻撃できないってんなら、こいつで攻撃するまでよ! どうだ、自分のモンスターにじわじわと追い詰められていく気分は!」

「…………」

「だんまりか。まあいい、俺はこれでターンエンドだ」

 

 なるほど、今のはコントロールを奪っているスターダストを攻撃表示に変更してアタックしてきたのか。それがソリッドビジョン上ではこういう風な演出になった、と。面白い。それに、安心した。奪われた私のモンスターで攻撃なんかされた日には大噴火で顔真っ赤だよ。ぶっころだよ。

 

「私のターン」

 

 幾分か勢いをつけてドローする。目の錯覚か、カードの軌跡を追うように光の帯が走った気がする。

 

「トラップ発動。マドルチェ・ハッピーフェスタ」

 

 まずはこれ。ディスプレイのセットカードの一枚をつっつけば、私の横にカードが現れ、相手に絵柄を見せるように立ち上がった。

 

「この効果により手札の「マドルチェ」モンスターを任意の数だけ特殊召喚する」

「複数同時召喚だと!」

「現れよ、私のモンスター達」

 

 なんとなくペンデュラムみたいな口上を述べつつ空に手を突き上げてみたりする。演出って大事。

 トラップカードからせり出してきた巨大なケーキの山は圧巻の一言。真っ黒なスポンジにたくさんのホイップクリーム、あしらわれた星形のクッキーやチョコ、頂きには王冠。ふえー、涎が出てきそう。出た。

 

「まずは手札より、マドルチェ・マジョレーヌ、マドルチェ・シューバリエ」

 

 ケーキの山に乗っていた二体がフィールドへと飛び降り、飛行を開始する。

 緑のたてがみに尻尾と青い体を持つ子馬に跨るは、金髪の貴公子。お菓子の国の騎士様だ。海賊みたいな黒い帽子とマントを羽織り、お菓子の槍というかまんまお菓子を掲げて勇猛さをアピール。

 マジョレーヌは説明不要。まんま魔女っ娘である。フォークに腰かけて飛行する姿は余裕たっぷり。フォークの持ち手上部はクリームを模していておいしそうだった。こなみ。

 

「そして」

 

 もう一枚を手札ホルダーから引き抜き、ビームソードの上に優しく寝かせる。ビュィーンと認識音。

 

「お菓子の国のお姫様、輝く金糸(きんし)揺蕩(たゆた)わせ、華麗なる姿を私に見せて」

 

 例によって即興の口上に合わせ、降り注ぐ光は特別な演出。光の中をゆったりと下りてきたのは、あまーい国のお姫様だ。

 ところどころカールした金髪はボリューミーで、前髪と頭頂部の境目に乗ったティアラは髪留めにもなっている。頭の左側に髪に埋まるようにチェリーがあった。

 

「舞い降りよ、マドルチェ・プディンセス」

 

 見た目そのままプティングを模した可憐な女の子がドレスを揺蕩わせて私の傍へやってきた。

 閉じられていた瞳が開けば、優雅なれども勝気な光が覗く。フリルの代わりに連なるホイップクリームと合わさってふんわり柔らかそうな印象を受けた。

 後ろから見たらパンツ見えそうね、なんてくだらない事を考えていれば、彼女はちらっと私を見た。すわ、思考を覗かれたのではあるまいな。

 

 顔の両側を流れる金糸は先端に近付くにつれくるくると巻き髪になって風に揺れ動く。上体のドレスは薄布で体にぴったりとくっついていて、細い腰も薄い胸も一目でわかる素敵仕様。ついでに肩出し鎖骨出し。胸の上でちょこんと結ばれた赤いリボンが可愛さに拍車をかけている。膨らんだスカートから覗く足もまた小さく、白生地に覆われていた。

 じーっとプディンセスを眺めながら使い終わったトラップを墓地に送り、少々の間マイフェイバリットの御姿を堪能した。そろそろプレイを続けなければ、牛尾さんからヤジが飛んできそうだ。ジャッジキルされたくない。

 

「チューナーモンスター、幽鬼(ゆき)うさぎを通常召喚」

 

 お菓子の国の住人とは雰囲気の違った少女が飛行する。鬼火のような幽体を侍らせた白肌の小鬼。着流しは紫に近い紅色で、鮮やかな夕焼け色と黄の腰巻が風に波打っていた。

 

「チューナーモンスター……まさか!」

「レベル4のマジョレーヌとメッセンジェラートに、レベル3の幽鬼(ゆき)うさぎをチューニング」

 

 足置き場を二度踏み込み、ハンドルを捻って加速する。アニメで遊星がこんな感じの動きをしていたような気がするからその真似だ。操作があっていてもそうでなくても、私専用にチューンナップされたD・ホイールなんだから、てきとーにやれば、こう、ぎゅぎゅーんとなるだろ。

 実際速度は上がっている。空高く飛び上がった幽鬼(ゆき)うさぎがその細指に挟んだお札で前方を薙げば、札の先端に灯った蒼い焔が線を引いた。瞬間、彼女の体が弾け、三つの輪に変換される。一列に並んだ緑輪(りょくりん)へバッグを押さえた郵便屋さんとフォークを()る魔女が並んで入り込み、八つの光となる。

 

(つど)え、11の光。遥か遠き(そら)より来たりて一匙(ひとさじ)の苦みを振り撒け。シンクロ召喚」

「なぁ……!」

 

 星が落ちてきた。

 辺り一帯を薄暗闇に染め上げるほど巨大なモンスターが私の(もと)に。

 

「レベル11、星態龍(せいたいりゅう)

 

 赤い体は星を包めるほど大きく、私たちからは顔が見えるから良いものの、翼も尻尾もここからじゃ見えず、だからきっとこのサテライトにいる人からはいったい何が空を飛んでいるかすらわからないだろう。

 巨体が織りなす心理的制圧力は、時として単純なアドバンテージを凌ぐ。……かもしれない。

 

「レベル11のシンクロモンスター……こ、攻撃力3200だとぉ!?」

「バトル。マドルチェ・プディンセスでスターダストに攻撃」

「何!? そのモンスターの攻撃力は1000……お前から奪ったモンスターには遠く及ばない。どういうつもりだ!?」

 

 両腕を振り上げてうおーっと飛んで行くお姫様を、ゴヨウもスターダストもぼけっと眺めている。

 『え? くるの?』みたいな。

 

「こういうつもり。トラップ発動、マドルチェ・マナー」

 

 シュピーン。残り二枚のうちの一つが起き上がり、効果を発動する。

 

「墓地の「マドルチェ」モンスターを1体選択してデッキに戻す。フィールド上の「マドルチェ」モンスターの攻撃力と守備力は、800ポイントアップする。墓地のメッセンジェラートをデッキに戻す。よってシューバリエの攻撃力は2500、プディンセスは1800にアップする」

「だがまだ届かん!」

「マドルチェ・マナーのさらなる効果。墓地のモンスターを1体デッキに戻す。増殖するGをデッキに」

「その効果じゃどうにもならねぇなぁ? どうする……?」

 

 ん?

 気のせいか、牛尾さんの勢いが滅茶苦茶削がれてるような気がする。(あなど)るような口調ではあれど、どこか伺うような空気を感じた。

 期待してるようだし、最後のセットカードを公開するとしよう。といっても、もう見せた(ふだ)なんだけどね。

 

「私はもう一枚のマドルチェ・マナーを発動。墓地のマジョレーヌと幽鬼(ゆき)うさぎをデッキに戻す。シューバリエとプディンセスの攻撃力は800ポイントアップ」

「攻撃力……2600」

「さあ、お姫様」

 

 プディンセスとシューバリエを囲むように半透明のモンスター達が浮かび上がり、手をかざして二体にパワーを与える。1600のパワーアップは破格だ。しかも永続。ぐるぐる右腕を振り回して突進したプディンセスが、スターダストの眼前に身を躍らせた。

 タイミング、ここかな。

 

本気の一撃(プディンセス・パンチ)

 

 お姫様の拳がスターダストの頬を捉える。グーパンである。これには巨龍もたまらず悲鳴を上げて爆散した。あーん、スタさまが死んだ!

 膨れ上がった煙と共に駆け(めぐ)った風が牛尾さんのD・ホイールに衝撃を与える。

 

「ぐおお!」

「この瞬間、マドルチェ・プディンセスの特殊効果が発動する」

 

 ディスプレイに浮かんだ牛尾さんのライフが100減って3900になるのを横目に、相手フィールドにあるカードを一枚指でつっつく。

 

「プディンセスがバトルを(おこな)った時、相手フィールド上のカードを一枚破壊できる。お姫様の癇癪(プディンセス・タントラム)

 

 煙が晴れれば、お姫様はちょうど片足を曲げて腰をよじり、踵側から靴を脱いでいるところだった。ぱかっと取り外した靴を持ち上げて大きく振りかぶり、思い切り投げつける。放物線を描いて飛んだ高貴な靴はゴヨウ・ガーディアンの顔面にべしりと命中! 避けようとして動き出そうとしたのか、両手両足を広げていた守護者は後ろへばったりと倒れ、粉々に砕け散った。

 ゴヨウ・ガーディアン、爆☆殺。

 私のお姫様は両腰に手を当ててむふーと満足げに息を吐いていた。かわいい。

 

「シューバリエでモンタージュ・ドラゴンを攻撃」

 

 私の命令に従い、馬を()り、お菓子の槍を携えて騎士が行く。三つ首の竜がそれぞれの口から光線を吐き出しても、手綱を引いて馬を跳ねさせ、右に左に回避しながら接近し、飛び散る瓦礫もものともしない。そして遂には間合いに入り、突き入れられた槍の穂先がドラゴンの胴を突き破った。断末魔を上げるモンタージュ・ドラゴンをきりりとした顔で見上げたシューバリエは、確実をきすように手を捻って抉りながら槍を引き抜き、馬首を返してひとっとびで私の前へ戻ってきた。同時にドラゴンが爆散する。

 だが向こうもやられっぱなしでは終われない。煙からボロボロの首が飛び出し、弱々しい光線を放った。それは相手を倒したとして油断していた騎士を粉砕するには十分だった。

 相討ち。

 

「ぬうぅ!」

 

 爆風から顔を庇う牛尾さんのライフは減少なし。でもこれでフィールドはがら空き。攻めるよ。

 

「星態龍の追撃。星落とし(スター・フォール)

「お、おおおお!!」

 

 その攻撃はブレスでも牙でも爪でもない。

 非常に原始的で、でも、だからこそ有効な……体当たり。

 星が落ちる。今度は本当に。そのまま牛尾さんを押し潰すように、けれど彼は必死に車体を左右へ走らせてなんとか直撃を回避した。でも余波だけでも彼のライフを削るには十分だったらしい。

 ピーッ、ピーッ、ピーッ。ディスプレイから三度音が発せられる。3200のダメージにより、牛尾さんのスピードカウンターが三個消えたのだ。残りライフは700。風前の灯火。

 

「くっ……そぉ! 俺のタァーン!」

 

 ちょ、まだエンド宣言してないんだけど!

 とはいってももうやる事もなかったし、良いんだけどね。

 

「私のエンドフェイズにハッピーフェスタの効果で特殊召喚していたモンスター達はデッキに戻る」

 

 お互いのスピードカウンターが一つ貯まる音を耳にしながらビームソードの上のカードを一枚デッキに差し込み、オートシャッフルされるのを見守る。私のお姫様、またすぐに出してあげますからね。

 

「が、ぐ……カードを一枚伏せ、モンスターを守備表示で召喚してターンエンドッ」

「私のターン。ドロー」

 

 彼のフィールドに現れたのは、ドローンのような機械モンスター、チェイス・スカッド。守備表示なので青色に染まっている。守備力は600。……あの伏せカードが怪しいけど……星態龍が攻撃する時、他の効果は受け付けない。ゆえに盤石。

 だから決着をつける。

 

「マドルチェ・エンジェリーを召喚」

「……」

 

 牛尾さんは反応しない。ただ、じっと私のプレイを見つめている。

 やーん、そんなに見つめられたらおもらししちゃう。社会的に抹殺する気か。

 割と本気でそうなりそうな事に焦りつつ手を動かす。

 エンジェリーをリリースしてホーットケーキをデッキから特殊召喚し、効果で墓地のエンジェリーを除外。

 

「再び舞い降りよ、お菓子の国のお姫様、マドルチェ・プディンセス」

 

 再び私の前にマイフェイバリットが登場する。ちょこんとスカートをつまんでお辞儀する余裕っぷり。素敵ね。

 

「バトル。……星態龍でチェイス・スカッドを攻撃」

(トラップ)発動! 攻撃の無力化! これで……!」

「星態龍は凶悪なドラゴン。その攻撃はいかなるカードでも(はば)めない。よってあなたの発動したカードの効果は無効」

「なにぃ!?」

星落とし(スター・フォール)

 

 落ちゆく星にチェイス・スカッドは防御を固めるばかりで反撃すらしない。だがその防御も無意味。

 龍の体に触れたそばからひしゃげて粉々に砕けていく機械に、飛散する欠片に牛尾さんのD・ホイールが激しく揺さぶられていた。

 

「とどめ。マドルチェ・プディンセスでダイレクトアタック。本気の一撃(プディンセス・パンチ)

「うぉおおお!!」

 

 ぴゃーっと飛んでいったお姫様が、ぐるぐるパンチを牛尾さんの背中に食らわせた。効果音をつけるとするなら「ぽこっ☆」だろうか。それでもダメージはダメージだ。彼のライフは0となり、D・ホイールから凄まじい量の煙が噴出して減速していった。

 私もブレーキレバーをめいっぱい握りこみ……うわーっ!

 お、お、う。

 ……めっちゃタイヤが滑って横転しかけてしまった。ドリフト気味に減速していってようやっと止まり、片足を地につける。

 ディスプレイにはYOU WINの文字。

 勝ったんだ……私。

 ソリッドビジョンが消え、愛しのマイプリンセスもまた消える。

 人生初のライディングデュエルは白星に終わった。

 

 

 あの後、いそいそとカードをデッキに戻していれば、牛尾さんが私の下までやって来た。

 何を言われるのか戦々恐々としていれば、どうも牛尾さん、しょげてる様子。

 これは一体どういうことかと思っていれば、住民票とライセンスの提示を求められた。

 ライセンスは持ってるけど住民票なんて持ってないよう、と涙目になりつつ(実際は無表情で)お財布を取り出し、できるだけ時間を稼ぐようにゆっくりゆっくり手を動かしつつ半透明のケースを取り出してライセンスを抜き取る。と、ケースの中に住民票が入っているのを見つけた。やったっ。これ幸いと二枚を牛尾さんに手渡せば、彼は何度かその二枚と私の顔を見比べて、「治安維持局に登録されている」だとか「どうして」だとか呟いていた。

 最後に、なぜシティの住民であるはずの私がここにいるのかを聞いてきたので、知りませんと答えようとして再び無口になってしまっている事に気付いた。

 牛尾さんはなんとかコミュニケーションをとろうとしてくれたものの、どうやら私はデュエル中にしか喋れないらしく無駄に終わった。

 でも、誘拐か何かだという結論に落ち着かせる事ができた。

 つまり不可抗力。意図してここに来た訳じゃない。凄まじく無理のある解釈だがそれ以外に説明がつかない、らしい。へー。

 よくわかんないけどそういう事にしてもらって、散々罵った事を一言詫びられ、その後にノーヘル運転を厳重注意されてから、彼の先導でシティへ帰還する運びとなった。予備のヘルメットを手渡されたので装着。がぼがぼ。

 ……帰還も何も、私の家はシティにはないんだけど、そこんとこどうなってるのだろうと首を傾げていたのだが、なんと、私の居城はあった。

 高層マンションまるまる一つ。シティの街並みを一望できる超広い部屋が私の部屋であった。

 基本現実で住んでる部屋と一緒だったけど、最低限の家具しかなくこの部屋は殺風景極まりない。よって私は天空コロシアム……じゃなかった、買い出しに出かける事にした。

 夢補正でお金もたーんまりあってうはうはだ。引きこもり生活ができるかもしんない。

 ……はぁーあ、なんて夢見てるんだろう、私。

 ああでも、もうそろそろこの夢ともお別れかな。

 こっちの世界で眠れば、現実で目を覚ませる……そんな気がする。

 だからその日はかなり早い時間にベッドに潜った。

 

「……」

 

 おやすみ、という呟きはなんとも言えない空気に変わり、私はゆっくりと眠りに落ちていった。







何度も見直したけどやっぱりあった間違い。
ご指摘されたのでいそいそと緊急修復。そのため変なプレイングに。

ホーットケーキがエンジェリーの効果でデッキに戻ってない

ホーットケーキを表側守備表示で召喚しようとして失敗。
エンジェリーで召喚した方をデッキに戻す描写に変更。
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