最期まで顔色一つ変えずに倒れた少女を前に、不審者二人は肩で息をしながら、恐る恐る倒れ伏す少女へと近付いていった。
ソリッドヴィジョンシステムがダウンし、モンスターやカードの映像が消えているという事は、間違いなく彼女の意識の……ひいては命の消失を意味する。
だからもう、凍てついた瞳に射られる事は二度とないはずだ。
血だまりに、黒い影。
改めてみれば、まだ十にもなっていないだろう幼い体が、枯葉のように倒れている。
「……死臭が甘い」
狐面の男は、乾ききった喉から絞り出すようにしてそれだけ言った。
ばらけた髪は刻んだチョコレートのようで、厚布のドレスは濃厚なカラメル。少しだけ覗く白い肌はイチゴソースのような血に彩られ、しっとりと濡れていた。
デュエルディスクから出ていた謎の光の板が消えた事により、地面に散らばって落ちたカードを拾おうとしゃがみ、手を伸ばした狐面は、ふと違和感を覚え、彼女の肩へ手をかけた。
「に、兄ちゃん、何するつもりだ?」
「いや……」
猫面の男が止めようとするような素振りを見せながら焦った声を出す。
不明瞭に返しつつ少女を転がし、仰向けにした狐面――モノは、はっと息を呑んだ。
少女は……黒原曜子という名の女の子は、安らかな顔で眠っていた。
――そう錯覚してしまう程に、死に顔が穏やかだったのだ。
「こりゃ、苦労しそうですねぇ……」
胸元からお腹にかけて引き裂かれた服と、穿たれた穴。肌に残る傷痕は小さく、ほとんど損傷がないように見えて、全体的に美しかった。
破れたスカートから覗くほっそりとした太ももも、見え隠れする平坦な胸も、汚れた地に落ちてなお汚れを知らない手も……頭のてっぺんから足の先まで、彼女は芸術そのものだった。
「とても……手が出し辛いですよ。この世のものとは思えない……」
彼女の体を探り、まだカードを持っていないか確かめようと考えていたモノだったが、こうして近くで見てみると、彼女にあまり触れたくないという思いが浮かんできた。
触れれば砕けてしまいそうな繊細な体。これが先程まで動いていて、喋っていたのだから驚きだ。
今ここに誰かを連れてきて「彼女が何に見えるか」と問えば、「死体」か「よくできた人形」のどちらかと答えるだろう。
「……?」
ふとモノは、曜子の胸へ視線を移した。肌にくっついているアクリル板が気になったのだ。
見も知らぬ、デフォルメされた黒髪の少女は何かのキャラクターか。
サイコデュエルの中で猛攻に晒された彼女の身に着けられていて、この首飾りは溶けも傷つきもしていなかった。
……それが、引っ掛かった。
実体化した魔力の棘が曜子を襲った時、確かに硬質な音と共に棘が弾かれていた。それはこの首飾りに当たったからとしか考えられず……ならばなぜ、これは無傷なのか。
「俺はテキトーに穴でも掘るから、カードの回収は頼んだぜ」
「……ああ」
弟の声に返事をして、モノは自分の感覚が酷く鈍くなっているのを知った。
体調が悪いだとか、そういった類のものではない。自分が撒いた薬物は面の内に隠された防護マスクで無効化され、ゆえに体調を崩す要因は何もない。
強いて言うならば……やはり彼女だろう。
物静かな立ち振る舞いをしていて、その実妙な存在感を放つ少女の骸。
今にも目を開けそうだ。そう思ってしまうと、現実にそれが起こってしまう気がして、モノはカードの方へ目を向けた。
黒いカード。それから、彼女が最後に引いた魔法カード。
不思議な光を迸らせたあのドロー。
はたして、あの局面で彼女はどんなカードを手の内に呼び込んでいたのだろうか。
「っ!?」
興味を引かれ、カードを手にした。
その時だった。
彼女の服がドロドロと溶けだしたのは。
「な……なんだ……!?」
思わず取り落としたカードが表面を見せる。そんなものを見ている余裕はない。
彼女の服はなおも溶けて……いや、違う。溶けているのではない。糸同士がより合い、縫合されていく……。
これは、服が直っているのだ!
「何が起こっているのだ、これは……」
血溜まりに波紋が広がる。
何かに持ち上げられるように少女の体が浮き上がり、まっすぐに伸びて――目を開けた。
白目が真っ黒に染まった異様な瞳だった。
「……」
ぱくぱくと口を開閉させた彼女は、煩わしげに頭を振ると、地に足をつけて、顔を手で撫で下ろした。
そうすると額の中心や両目の上下に走る線が現れた。
二人のサイコデュエリストに知る由もないが、これはダークシグナーとなった者に浮かび上がる地上絵の痣……その中の一つ、『コンドル』の痣だった。
「に、兄ちゃん!」
「下がれ……!」
血溜まりが沸き立つ。
それだけでも異常だというのに、盛り上がった水面から∞の形をした白い光が飛び出して来たから、二人は恐ろしくなって数歩後退った。
今すぐにでも逃げ出したいところだが、まだカードを回収していない。
肝心のカードは……宙を、舞っていた。
佇む彼女の周囲をぐるぐると回り、段々と収束して、その小さな手に収まった。
彼女が手を差し出せば、∞の穴から数枚のカードが鋭く飛び出し、それもまた彼女の手に。
既存のデッキに新たなカードを混ぜた曜子がそれをデュエルディスクに差し込めば、ジャガガッと激しい音をたててオートシャッフルされた。
「デュエルよ」
「な、なにっ!?」
「デュ、デュエルだと!?」
周囲を紫の炎が取り巻くのに慄きながらも、気丈に叫び返す二人。
デュエリストとしての本能が逃げろと囁く。だが、もう遅い。
地上絵に囲まれた二人は、もはやただの獲物に過ぎなかった。
『フィールド魔法、クロス・オーバー』
「――デュエル」
強制的にデュエルディスクの機能が立ち上がり、先攻と後攻が決まる。
「こ、こうなれば、やるしかないようですね……!」
「何がなんだかわからんが、倒せばいいんだろ、倒せば!」
同じ動作で五枚ドローする二人に、曜子はただ、ディスプレイに浮かんだ先攻の文字を見てカードを手にした。
「私のターン。私は――」
先程のデュエルと同じように、曜子はフィールドにモンスターを並べ、リリースし、デッキから呼び出していく。
エンジェリー、ホーットケーキ、メッセンジェラート。
一枚のカードで展開しつつ、手札の枚数は変わらない。
変わっているのは……苦しげなモンスター達の表情だけだった。
「フィールド魔法、マドルチェ・シャトーを発動し、カードを二枚伏せてターンエンド」
赤く汚れた地面ごと周囲をソリッドビジョンの光が駆け巡り、メルヘンチックな世界へと塗り替える。
地獄だった。
ケーキのお城やなめらかなクリームの道。軽やかで少女的なはずの世界は、少女が放つ重圧と闇によって死の世界へと変わってしまっていた。
フィールドに残るフクロウと郵便屋を眺めた狐面の男は、エンド宣言を聞いてすぐに動いた。
「僕のターン! 僕は、ヘルウェイ・パトロールを召喚!」
狐面の男――モノは牛尾も使う悪魔族のライダーを召喚した。砂埃をたてて疾走してきたバイクが彼の前へ止まる。煽るように鳴らされたヴォンヴォンという音にも、やはり曜子は反応せず、表情も変えなかった。
「速攻魔法、速攻召喚の効果で、もう一体のヘルウェイ・パトロールを場に出す! カードを二枚伏せてターンエンドだ!」
「お、俺のターン!」
同名モンスターが肩を並べ、その傍らで猫面の男、ワルが手札に指をかけた。
「まずは手札抹殺を発動! 全てのプレイヤーは手札を全て捨て、捨てた枚数だけカードをドローする」
「カウンタートラップ、マドルチェ・ティーブレイク。このカードは私の墓地にモンスターがいない時に発動できる。魔法・罠の発動を無効にし、手札に戻す」
「ふ、ふん! 手札に戻してどうしようってんだ? もう一度手札抹殺を発動する!」
「……」
墓地へ「マドルチェ」カードを送るためか、はたまた別の意図か、意味のないタイミングで曜子はカードを発動した。が、結局は同じ事だ。
まるで先程のデュエルの焼きなおし。どうしようというのかと聞きながらも、猫面の男には、しっかりとその意図が読めていた。クイーンの名を冠するモンスターの効果のためだ、と。
曜子の手札にあったマドルチェモンスターごと二枚のカードが墓地に送られた。これでもう数枚のトラップの発動条件は満たされなくなり、プディンセスを出しても攻守の変動はなくなった。
「そして俺は、魔轟神グリムロを召喚する!」
黒衣に黒い羽を持つ女性が光の輪を通り、フィールドへと現れる。
ヘルウェイ・パトロールと同じ悪魔族でありながら、その属性は光。
カラスのような羽を一度羽ばたかせた彼女の背後で、ワルは続けて魔法カードを発動した。
「
曜子もよく使うカードの効果で新たなモンスターが呼び出される。
小さな羽の生えた、綿の詰まった人形のような女の子がグリムロの横へ飛び出てきた。長い髪と顔を覆う手で表情が隠されている。彼女もまた、黒かった。
「魔法カード、天よりの宝札を発動!」
「またそれ?」
「っ、お、俺と兄ちゃんの手札は六枚になる!」
静かに問いかけられて、ワルはお面の中で目を見開いた。
そのような事を言ってくる少女だとは思っていなかった。――いや、性格や言動など、先のデュエルで知れた事は少ない。だからこれは勝手な印象だったが……それでも、どこか蔑ずむような口調には背に冷たいものを感じずにはいられなかった。
「良いですよぉ、ワル、きましたよ。最強カードが」
「……ああ、俺もこのドローで呼び込んだ」
手札を見た二人が怪しく囁き合う。
どうやらエースカードを引き込めたらしいが……曜子には関係のない話だった。
どんなカードを出そうと、ただちに粉砕し、この二人を倒すだけ。
そして、その後は不動遊星を探し出し、罪を償ってもらう。重い重い、罪を。
……彼女の頭の中には、そんなドロドロとした憎悪しかなかった。
ページを捲るような音をたてて、曜子は数枚纏めてドローした。
「私の手札も六枚となる」
「だが関係ねぇ。強欲な壺を三枚使用し、六枚ドローする。カードを四枚伏せ、フィールド魔法、サベージ・コロシアムを発動してターンエンドだ」
まさかの禁止カード三連打。このターンワルがドローした枚数は驚異の十六枚だった。
禁止カードが禁止指定されている所以がこの驚異的アドバンテージ。
中堅デッキに位一枚でも入れれば、上位とタメを張れるようになるだろうカードパワー。
フィールド魔法の発動に一瞬お菓子の国が揺らいだものの、周囲の景色は変わらなかった。
これは違う次元のデュエル形式。フィールド魔法がある時に別のフィールド魔法が発動しても、既存のものが破壊されたりはしない。その事に猫面の男は戸惑いを見せた。
サベージ・コロシアムは、攻撃可能なモンスターがいる時にバトルを強要する効果と、ダメージステップ終了時にライフを300回復させる効果、そしてターン終了時に、そのターン攻撃を行っていないモンスターを全て破壊する効果を持っている。
何かあるな、と曜子は胸の内で呟いた。
「じゃあ、私のターン」
男達を冷めた目で見ながら、曜子はデュエルディスクからカードを引き抜き、手札に目を移した。
たとえ何があろうと踏み潰していくだけ。彼女の歩む道にワルモノはいらない。脅威は排除する。それだけだ。
豊富なカード群。いくらでも取れる手はある。あくどくにやつこうとした曜子は、未だ笑う事ができない事に不満を持った。
「マドルチェ・ミィルフィーヤを……」
「おっと、その前に、だ。リバーストラップオープン! スキルドレイン!」
「……」
スキルドレインは、ライフを1000支払って発動する厄介なカードだ。
このカードがある限り、フィールド上のモンスター効果を無効にされてしまう。
低攻撃力のモンスターで展開していく曜子のデッキには、少しばかり辛いカードだった。
このままミィルフィーヤを出しても、攻撃力の低いモンスターを棒立ちさせるだけに終わってしまうだろう。
「だったらこのまま殴るまで」
しかしそれも、マドルチェ・シャトーがあれば話は変わってくる。
低レベルモンスターもシャトーさえあれば上級モンスター並みの攻撃力を得られるし、攻撃力に不安がある「マドルチェ」エクシーズモンスターも最上級に手が届く。
「まだだ。トラップ発動! ナイトメアデーモンズ! 俺のフィールドの魔轟神クルスをリリースする事で、貴様のフィールドにナイトメア・デーモン・トークンを三体生み出す。攻守2000だ、感謝しろよ?」
「……」
フクロウと郵便屋さんを囲むように、青い髪を持つ影のような子供が三体躍り出てきた。曜子のモンスターを脅かすように周囲を回っている。高い声が耳障りだな、と曜子は思った。
これで曜子のフィールドは全て埋まった。新たなモンスターを出す事もできなければ、レベルの違う二体のモンスターではエクシーズもできない。
ならばこうすれば良いだけだ。
「ナイトメア・デーモン・トークンを一体リリースし――」
「トラップ発動、生贄封じの仮面。このカードがある限り、お互いにいかなる方法でもモンスターをリリースする事はできません」
「………………」
リリースまで封じられては、たまったのではない。
これで曜子に打てる手はなくなった。ハーピィの羽箒――この時代では禁止カード――でもあれば良かったのだが、あいにくまだ手札にきていない。
そのカードを引く前に、まずは……バトルだ。
曜子のフィールドには攻撃力2000のトークンが三体と、2100のメッセンジェラート、そして2000のホーットケーキがいる。
対して相手フィールド上には攻撃力1600のヘルウェイ・パトロールが二体と、1700の魔轟神グリムロがいるだけ。
何もないならばこのまま攻撃すれば一人は確実に倒せるが……攻撃を強制するフィールド魔法を張った以上、何もないなんてないだろう。
「バトル」
「――に入る前に、三枚目のトラップを発動するぜ。不運なリポート!」
立ち上がった赤いカードの絵柄がソリッドヴィジョンとして飛び出す。ロウソクと、くたびれた古紙。
幾線ものグラフは急下降。まるで今の曜子の気分を表しているかのようだった。
「貴様はバトルフェイズを二回行わなければならない」
「サベージ・コロシアムの効果で戦闘は強要されています。よって発動は確実。さぁ、どうぞ、煮るなり焼くなりしてください」
「痴れ事を。バトル。メッセンジェラートで魔轟神グリムロを攻撃」
「ラストトラップ、リビングデッドの呼び声! 墓地のモンスターを攻撃表示で特殊召喚する! 俺はクルスを選択するぜ!」
「攻撃対象は変更しない」
墓地から小さな悪魔が甦ろうとお構いなしだ。
郵便屋さんがファイティングポーズをとり、黒尽くめの悪魔へと飛び込んでいく。
拳を振りかぶり、突撃。当然相手は迎撃しようと体勢を整え――瞬間、黒衣の女性は溶けて消えた。
対象を失って拳を持て余した郵便屋さんが辺りを見回せば、ふと影が差す。
「貴様の攻撃宣言時、場と手札の悪魔族モンスターを一体ずつ墓地に送る事で、手札よりダークネス・ネオスフィアを特殊召喚する!」
空が曇り、闇が下りる。地面に生まれた蕾が開き、泥のような物が蠢いて立ち上がった。
朽ちかけた人型が薄く汚れた白い片翼を広げ、その巨躯を薄暗闇の下に晒す。
曜子は、思わず呟いた。
「ダークネス……攻撃力、4000」
「さあ、どうだ? 返り討ちに合う覚悟はできたか?」
大きなモンスターの右肩と左胸には、曜子の頭以上の大きさを持つ目玉が覗き、ぎょろぎょろと動いていた。
「……相手フィールド上のモンスターの数が変動したため、バトルは巻き戻しになる。私は、メッセンジェラートの攻撃対象を魔轟神クルスに変更」
「しかし残念、こいつもダークネス・ネオスフィアに早変わりだ」
「なっ……」
小さな少女は、ワルの手札がゼロになるのと引き換えに強大なモンスターへと変わった。
攻撃力4000が二体。しかも、このターン曜子は必ず攻撃しなければならない。
「……ふふ、そういうこと」
「何がおかしいのか知りませんが……ええ、そういう事ですよ。私の手札にも弟と同じカードが二枚あります」
「へぇ、じゃあ攻撃してみようかな」
「……なんだと?」
曜子の指示に従い、郵便屋さんが
悪魔ライダーが一際高いエンジン音を残して巨大なモンスターへと変わり、それがもう一度繰り返されれば、相手フィールドには攻撃力4000のモンスターが四体並ぶという状況になってしまった。
「……ふ、ふふふ……君がどうして立ち上がれたのかは知りませんが、この状況、もう覆しようもないでしょうねぇ」
「さぁ、さっさと自爆して、今度こそあの世に行きやがれ!」
焦りが払拭され、二人に余裕が戻った。圧倒的に有利なこの状況。曜子のトラップカードは未だ発動の兆しを見せず、ならばもう、ゲームセットも同じ。
だというのに、曜子は口元に手を当て、くすくすと可憐な笑みを零した。
「なぜ……なぜ笑う!」
「……私が」
ふぅ、と憂い気に息を吐き、手札に指をかけた曜子は、目を細めて二人を眺めた。
路傍の石ころか風に舞うゴミでも見るような冷たい目つきだった。
「先程までの私であったなら、ちょっと辛かったかもしれないわ」
「い、今は違うっていうのか!?」
「これをどう覆そうというのですか? あなたのトラップがバトルフェイズを終わらせるようなものでも、もう一度バトルフェイズに入って攻撃する事になりますよ?」
「聖なるバリア -ミラーフォース-のような攻撃反応型も使えねぇ! なにせそっちからの攻撃だからなぁ!」
「安心して? この伏せカードはマドルチェ・ハッピーフェスタ。手札の「マドルチェ」モンスターを任意の数だけ特殊召喚するカード。今使っても、ダメージが増えるだけね」
「……なに? な、ならば、どうする……」
くすくす、と曜子は笑った。
何を考えているのかわからない。それは曜子が子供でありながら、まるきり子供らしくない振る舞いばかりをする事もあって、不気味さは増していた。
「メッセンジェラート。ダークネス・ネオスフィアに攻撃しなさい」
すぃ、と、細く白い腕が強大な影へ向けられる。
玉砕命令を受け、メッセンジェラートは汗を流して曜子を振り返った。
僅かに目元が暗く、愉悦が滲むその顔は狂気と憎悪に彩られ――どこまでも、本気だった。
主の命を無視する訳にはいかない。肩にかけたバックを押さえた郵便屋さんは、影を仰ぎ見て……突進した。
ダークネス・ネオスフィアが迎撃する。首が回り、180度頭が回転したかと思えば、赤髪が左右に分かれ、巨大な裂け目が姿を現す。それもまた左右に広がれば、充血した目玉がメッセンジェラートを睨み据えた。
「……ダークネス・ネオスフィアの反撃!」
目玉から光線が放たれる。それは地面を削って迫り、容易くメッセンジェラートを蒸発させた。
「攻撃力の差分、1900のダメージを食らいやがれ!」
「ええ、いただくわ。手札より
「なっ、て、手札からトラップだと!?」
フィールドに現れたカードが反転し、表面の絵柄を見せれば、――あくどい顔をしたお姫様が、フォークとナイフを手に溢れる甘味に狙いを定めている――猫面の男が叫んだ。
「何を驚いているの? さっき、あなたのお兄さんもやっていた事よ?」
「そっ……れは、」
曜子は小首を傾げ、心底不思議そうに問いかけた。
すぐに頭の位置を戻し、カード効果の説明に入る。
「このカードは自分のターンの場合、手札から発動する事ができる。このターン私が受けるダメージは、代わりにライフを回復させるものとなる。そしてライフが回復するたびにフィールド上のカードを一枚破壊できる」
「な、なんだとっ!?」
「当然止めますよ! カウンター
モノの前に立ち上がったカードは、まるで効果を無効にされでもしたかのように砂となって消滅した。
「な、なぜカードが不発に……!?」
「残念ね。私のフィールドに私以外が召喚・特殊召喚したモンスターが存在する場合、このカードの発動と効果は無効にされない」
「そんな馬鹿な!!」
メッセンジェラートが破壊され、その光の欠片が曜子を襲おうとした時、危険な物は全てケーキや洋菓子に姿を変えた。
レアチーズのタルトを手にした曜子は、小さな口を開いて、はむ、と端っこを齧ると、ほんの少しだけ顔を綻ばせた。
1900+サベージ・コロシアムの効果で300のライフが回復し、曜子のライフポイントは6200に。
そしてこれだけでは終わらない。
「マドルチェ・シャトーの効果でメッセンジェラートはデッキではなく手札に戻る。そしてディザスターバイキングの効果でスキルドレインを破壊」
漂う洋菓子の一つが敵陣へ流れ、唐突に爆発する。
巻き込まれたカードは粉々に砕け散って消滅した。
「……続いてナイトメア・デーモン・トークン三体で攻撃。今度は……そうね、お兄さんの方にしようかしら?」
「くっ、くそっ! 殲滅しなさい、ダークネス・ネオスフィアぁ!」
飛び跳ねていた黒い影は、三匹でより合い敵を見つけると、楽しげな声を上げて飛び込んで行った。
それが、たった一本のビームによって消し飛ばされる。
「戦闘ダメージの差分、6000のライフポイントと、トークンが破壊された際に私に与えられるダメージの合計、2400ポイント、そしてサベージ・コロシアムの効果でダメージ計算時に300×3の900ポイント……合わせて9300のライフを得るわ。ごちそうさま」
「ら、ライフポイント……15500だと……!?」
彼女が生きていた次元での開始時のライフを大きく上回った数値に、二人は動揺を隠せなかった。
これほどのライフ、二人が持つカードをどう繋ぎ合わせようと、そう簡単には燃やしきれない。
「さ、次はそのフィールド魔法と永続罠を破壊ね」
「ぐぅっ!」
戦闘を強制するカードも、リリースを封じるカードも破壊されてしまった。
しかも、まだもう一体の攻撃権が残っているし、不運なリポートの効果でもう一度バトルフェイズに入る事になる。
「バトル。ホーットケーキでダークネス・ネオスフィアに攻撃。弟さんの方にお願いね、ふくろうさん」
ホゥ、と鳴いたフクロウは、嫌々翼をはためかせ、くちばしを武器に敵へ突っ込んで行った。
が、白い翼で打ち返され、曜子のフィールドへと戻って来た。
「エンジェリーの効果で特殊召喚されたホーットケーキは、戦闘では破壊されない。攻撃力の差分、2000のライフを回復するわ」
これでライフは17500。
ぺろりと唇を舐めた曜子は、ディスプレイに指を伸ばしてセットカードを公開した。
「トラップ、マドルチェ・ハッピーフェスタを発動。手札のメェプル、メッセンジェラート、ピョコレート、そしてマドルチェ・プディンセスを特殊召喚するわ」
四つの光がデュエルディスクから空へと伸び、曲線を描いてフィールドへと落下。
チョコレート色のつぶらな瞳のヒヨコが傍らに黄色の子ひよこを抱いて地に足をつけ、翼を広げた。再び場に出た郵便屋さんは帽子をつまんで位置を調整し、険しい目つきで敵を睨んだ。綿菓子のような羊毛に包まれた羊は一度飛び跳ねてしっかりと着地する。
両腰に手を当てたお姫様は、怒った顔で振り返り、曜子を睨みつけた。曜子もプディンセスを見上げ、目を合わせた。
立ち
そうするとプディンセスは観念したように肩を竦め、だけど、しっしと手で闇を払い、追い返した。
腰に手を当てて怒り顔で相手フィールドに向き直る。不満たらたらだけど、それ以外は何もない。そんな顔だった。
「さぁみんな、私の糧になって?」
五体のモンスターは自爆特攻を命じられ、神妙な顔で頷き合った。
一度曜子を振り返り、彼女を取り巻く闇を見つめた後にダークネス・ネオスフィアにやられに行く。
ダメージ計算が行われるたびに曜子は腕を広げ、満ちる甘い光を浴びて僅かに口を歪めた。
幾度も光線が放たれ、地面を削り、クッキー片が巻き上がる。それすら今は宙を漂うお菓子の一部にしかならない。
「1700、2000、1900、2700、3500。合計11800回復し、私のライフは29300になった。破壊されたモンスター達は、デッキではなく手札に戻る」
「は……はは……こ、こんな、事が……」
傍にあったシューを手にして口に押し込むように食べた曜子は、口端に残ったクリームを指で拭って舌で舐め取りながら、淡々と結果を伝えた。
攻撃力4000のモンスターで総攻撃しても削り取れない膨大なライフ。もはや崩す事はできない。
「私はこれでターンエンド。エンドフェイズ、エンジェリーの効果でホーットケーキはデッキに戻る」
光に包まれたフクロウが消えれば、周囲に漂っていた洋菓子達も消え去った。後に残るのは、それだけで胸焼けしそうなほどの甘い香りばかりである。
「…………僕の、ターン」
曜子のフィールドにはモンスターもいなければ伏せカードもない。だというのに、モノにはこのままでは勝てるヴィジョンが浮かばなかった。
「そ、それでも、攻撃すればライフは削れる……ダークネス・ネオスフィアよ、攻撃するのですっ!」
数秒葛藤し、しかしやる事は一つと結論付ける。
攻撃し、削り切るのみ。幸いこちらには高火力モンスターがいる。先程大量展開のためのカードをライフ回復のために曜子は使った。だから次のターン、彼女は早々に展開できないはずだ。
二ターン。……二ターンあれば、彼女を窮地に追い込める。そのためにまずは攻撃……!
「な、ぁ」
しかしその目論見は外れる。
ダークネス・ネオスフィアの放った光線は、不可視のバリアに弾かれて掻き消されたのだ。
なぜ、攻撃が通らなかった?
なぜ彼女のライフは減っていない?
それは……今しがた彼女がデュエルディスクのような光に乗せたカードと何か関係があるのか。
「私はアクションマジック大脱出を発動した。その効果でバトルフェイズを終了させる」
「な……ん、だと……!?」
壁際に立つ彼女は、モノが悩んでいる間に悠々と歩いて壁際に落ちていたカードを拾い、発動させたのだ。
だがモノやワルには、拾ったカードがなぜ発動したのかがわからなかった。
ここはサテライト。ソリッドヴィジョンシステムで一時的にメルヘンな世界に変わってはいるが、道端にカードが捨てられている事は変わらないし、そんなのは珍しくないだろう。
だが今はデュエル中だ。自分達のデュエルディスクのように禁止カードを使えるように改造しているのならともかく、彼女のディスクではそういった不正行為は働けないはずだ。……そのはずなのに。
「ぼ、僕はこ、これでターンエンド」
動揺が激しい。
ライフの差によるものと攻撃を防がれた事によるものがモノにエンド宣言を選択させた。
理解が追い付かない。よくわからない。
そもそもあの少女は血を流し、死んだはずなのに、なぜ今自分達と相対しているのだろうか。
そんな当たり前の疑問が今さら浮かんできて、二人の男は戦慄した。
「お、お、俺のタァーンッ!」
勢い良くカードを引き抜いた男は、それを見もせずにモンスターへと指令を下す。
「ダークネス・ネオスフィア二体でダイレクトアタックだっ! 今度は防げねぇはずだ!」
頭を回転させたダークネス・ネオスフィアが、髪を掻き分けて露わにした目玉で曜子を捉える。
彼女は……とことこと歩き、反対の家屋の、割れたガラス窓に引っかかっていたカードを手にした。流れるようにディスクにカードが置かれ、認識音が鳴り響く。
「アクションマジック、アンコール。私の墓地のアクションマジックを選択し、発動する。大脱出を選択して発動。バトルフェイズを終了させる」
「な、なんなんだそれはぁ!」
「アクションカードだよ」
アクションカード、と言われても、二人にはなんの事だかさっぱりわからない。
が、説明を要求したところで今のこの少女が話してくれるとはどうしても思えなかった。
「か、カードを一枚伏せて、た、ターンエンドだ……!」
「私のターン。……じゃ、終わらせてあげるね」
「なに!?」
引いたカードを横目で見た彼女は、そう宣言をした。このターンで終わりにする、と。
「まずはマドルチェ・ミィルフィーヤを召喚。効果によりメェプルを特殊召喚」
「……くそ、何もできねぇ……!」
「そう? じゃあ遠慮なくやらせていただくわ。二体のモンスターでオーバーレイ」
地にできた光の渦に、光球となった二体のモンスターが飛び込んでいく。
爆発。
周囲一帯を
一匹の海竜が泳ぎ出る。
「虚空海竜リヴァイエールの効果を発動。オーバーレイユニットを一つ取り除き、除外されているエンジェリーを帰還させる」
宙を泳ぐ海竜の周囲を回っていた光が弾ければ、一度散らばった輝きが集まり、人型になって縁寿利へと変わった。天使の少女は祈るように手を合わせると、再び光となって曜子のディスクへと流れていった。
「エンジェリーの効果。自身をリリースする事でデッキよりホーットケーキを特殊召喚する」
これまでの焼き直し。
マドルチェの基本的な回し方をなぞるように、曜子はホーットケーキの効果で墓地のエンジェリーを除外し、デッキからメッセンジェラートを呼び出すと、
そして、ここからが違う。
「魔法カード、夢幻の宝札を発動する。私のフィールドのエクシーズモンスター一体を選択して除外し、デッキからカードを三枚ドローする。その後、除外したエクシーズモンスターのランク×500ポイントのダメージを受ける」
「エクシーズを指定するカード、ですか……」
リヴァイエールのランクは3。よって曜子は1500のダメージを受ける。
これが初期ライフ時に与えられたものならば三枚ドローと引き換えでも妥当――いや、軽すぎるくらいだが、どの道今の曜子のライフは三万近い。1500など蚊に刺されたようなものだった。
「――きた」
加えた手札の一枚は、死ぬ前のデュエルで最後に引いた――創り出したカードだった。
一度絵柄が見えるようにカードを突き出した曜子は、すぐさまディスクへとカードを叩きつけた。
「RUM-シグナーズ・フォースを発動」
「ランクアップ……マジック……?」
「場・墓地または除外されている
除外されているモンスターを帰還させるだけでなく、更なるパワーアップを果たさせる。これが曜子が、みんなと力を合わせて作り出した力。
さっきは力尽きて使う事が叶わなかったが、今ならばこうして使用する事ができる。
しかも、ダークシグナーと化した曜子に影響されたのか、カードパワー自体も向上していた。
「私は、帰還させたリヴァイエールでオーバーレイ。一体のモンスターでオーバーレイネットワークを再構築」
天に渦巻く光へ、リヴァイエールが球となって飛び込んでいく。
「遥か遠き次元に息づく
直後に爆発。
風と白色が広がり、その全てを吹き飛ばして一匹の隼が舞い降りた。
「ランクアップ・エクシーズチェンジ。現れよ、ランク4、
次元の壁を突き破り、呼び出された機械的な鳥。頭部に当たる個所にいくつもの赤い光が灯り、雷が走る。
空気を裂くような嘶きが響き渡った。
「攻撃力……100?」
「へ、へへ……どんなモンスターを出すのかと思えば、たかだか攻撃力100ぽっちの雑魚モンスターかよ!」
「さらに私は、マドルチェ・パティシューエルを特殊召喚する」
侮る彼らの声を無視し、曜子は新たなモンスターをフィールドへと呼び出した。
「このモンスターは相手フィールド上に特殊召喚されたモンスターが存在する場合、手札から特殊召喚できる」
コック……いや、パティシエールの衣装を身に纏った、三つ編みに黒縁眼鏡のの少女がクリームのついたウィスクを片手に、もう片方には銀のボウルを抱えて地に足をつけた。
地属性・悪魔族。浅黒い肌が悪魔の証。
「レベル4が二体……」
「またエクシーズ召喚か!?」
「パティシューエルの効果。このモンスターの攻撃力と守備力を0にする事で、デッキから「マドルチェ」モンスターを守備表示で特殊召喚する」
手に持つウィスクでボウルの中のクリームをかき混ぜた少女は、自身にかかるのも厭わずに勢い良くウィスクを振りかざし、クリームで曲線を描いた。
クリームが光に変わり、それが新しいモンスターになる。
「レベルマイナス3のDT《ダークチューナー》マドルチェ・クリスメイトを特殊召喚」
丸まったクリームの中からリスが頭を出し、左右を見る動作をした。
殻のように身に纏うクリームへ頭を引っ込め、クリームを撒き散らしながら手足とともに突き出す。
「ダーク……チューナー……」
「マイナス……3?」
「クリスメイトの効果発動。このカードが「マドルチェ」と名のつくカードの効果で特殊召喚に成功した時、私のフィールドにクリーム・トークンを二体特殊召喚する」
「チューナー自らが非チューナーを生み出すですって!? ひ、非常識な……」
「そして私は…………」
三枚ドローしたうちの最後の一枚に目を落とした曜子は、目を細めて思案した。
復讐の炎が燃え盛る今この時にこそ出すにふさわしい神のカード。
だがこのカードを通常召喚するためには、再び自分のターンが回ってくるのを待たなければならない。
「……いや」
……この二人程度が相手ならば、わざわざ地縛神を出すまでもないだろう。彼女は、そう判断した。
「レベル4のパティシューエルとメッセンジェラートでオーバーレイ」
再び異空間への扉が開かれる。
二つの光球が地面に渦巻く光の中心へ飛べ込めば、眩い柱が天へと突き立つ。
「――遥か遠き次元より」
紫電が迸った。
滑らかな表面は闇色に染まり、鋭い棘のついた尻尾が波打つ。
「愚鈍なる力に抗う反逆の牙、今降臨せよ」
振るわれた爪が空気を裂き、翻る翼が風を生む。
「エクシーズ召喚。ランク4、ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」
戦場に飛ぶ隼の隣へ、漆黒のドラゴンが下り立った。
「……こ、だ、だが……攻撃力は、に、2500……!」
「俺達のダークネス・ネオスフィアには、と、届かねぇ……!」
「それはどうかな」
「!?」
当然、ただ攻撃力の低いモンスターを出すだけ、な訳がない。
既存のモンスターと違うせいで男達の頭からはそれが抜けていたようだったが、どうあれ、男達の敗北は確定している。
「ライズ・ファルコンの効果発動。オーバーレイユニットを一つ使い、相手フィールド上に特殊召喚されたモンスターの攻撃力の合計の数値を、ターン終了まで自身の攻撃力に加える。さらにダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンの効果発動。オーバーレイユニットを一つ取り除き、相手フィールド上に存在するレベル5以上のモンスター一体の攻撃力を半分にし、ターン終了まで自身の攻撃力に加える。私はこの効果を二回使う。……トリーズン・ディスチャージ」
二つの光が弾け、隼と竜の叫びがフィールドに広がった。
急激に攻撃力を上昇させる二体のモンスター。電撃に縛られていたダークネス・ネオスフィアが解放された時には、優劣は逆転していた。
「こ、攻撃力6500と……」
「16100……!」
「ライズ・ファルコンは特殊召喚されたすべてのモンスターに攻撃できる」
「なっ、なにっ!?」
「バトル」
有無を言わさず、曜子は暗い瞳を狐面の男へ向けた。彼のフィールドには攻撃力4000と2000のモンスターが存在する。フッと笑った曜子は、緩く手を挙げて竜へと指令を下した。
「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンで攻撃力が変動していない方のダークネス・ネオスフィアに攻撃」
「な、ばっ、待……!」
声を掻き消すように竜が吠えた。空間を揺るがすように風が広がり、ダーク・リベリオンが飛び上がる。
「反逆のライトニング・ディスオベイ」
宙返りして低空飛行となった竜の顎から伸びる牙が地を削り、お菓子やクリームを巻き上げて相手へ迫っていく。
一閃。
光の軌跡が通り抜けた。
切り裂かれたダークネス・ネオスフィアは僅かに後退り……しかし、倒れない。
戦闘においてこのモンスターは無敵。バトルでは破壊されない効果を持っていたのだ。
「う、ぐ、おおおおお!!!」
だがプレイヤーは別だ。
巻き起こる衝撃に弾き飛ばされた男は地面位に激突し、ボールが跳ねるようにその体を宙へと投げ出した。
首から落ち、鈍い音がくぐもって鳴る。
「兄ちゃん!」
「ライズ・ファルコンの追撃。ブレイブクロー・レボリューション」
炎が燃え上がる。
飛び上がった隼は、まるで一回りも二回りも体を大きくさせたような錯覚を抱かせ――飛び込んだ。
相手フィールドを焼け野原にする絶対的な力がモンスターを通り抜け、プレイヤーを蹂躙する。
これはアクションデュエル。サイコデュエルほどでないにしても、衝撃は実体化している。これほどの高火力を受けて、ただの人間が無事でいられるはずもない。
――もっとも、彼らはただの人間ではなく
だが、彼らはデュエルに敗北した。この闇のデュエルに。
「…………」
ソリッドビジョンが消え去り、曜子の表情から感情が抜け落ちた。
ダークシグナーとなってもデュエル中でなければ喋れないというルールは残っているらしい。
「う、ぅ……」
「ぐぉ……あ」
呻く二人と、その周囲に散らばったカード達を一瞥した曜子は、背後の方から地上絵を描く炎が消えていくのを感じると、デュエルディスクのディスプレイを弄って地図機能を呼び出した。
次の目的地はシティ。
といっても、自宅に帰る訳ではない。
不動遊星を見つけ出し、罪を償わせるために向かうのだ。
「……」
チャリ、と服の内でキーホルダーが鳴る。
歩き出した彼女の目には、もう遊星の姿しか映っていなかった。
TIPS 今回のオリカ
・夢幻の宝札
爆アド。頭おかしい。
・RUM-シグナーズ・フォース
ダグナーの力と曜子のプリティーパワーが合わさって最強に見える。
墓地のこのカードを除外する事でこのカードの効果で特殊召喚したXモンスターの
攻撃力を倍にする効果を持っている。頭おかしい。
・マドルチェ・パティシューエル 星4 地属性 悪魔族 攻800 守300
お菓子の国のパティシエール。黒髪三つ編み黒縁眼鏡の西洋人っぽい女の子。
主に国中にシュークリームを配置する仕事についている。頭おかしい。
・DTマドルチェ・クリスメイト 星3 地属性 獣族 攻200 守1500
ダークチューナー。クリームを撒き散らしてレベル1のクリーム・トークンを生み出す、
お菓子の国でもっとも迷惑なリス。頭おかしい。
・ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン
なんかアニメ効果。
・RR-ライズ・ファルコン
なんかアニメ効果。