「ふぅ……すっかり暗くなってしまったな」
そう独り言ちしながら俺――兵藤一誠は、すっかり暗くなった道を進んでいた。
ここ最近、忙しさのあまり風紀委員の仕事を少し疎かにしてしまったのが原因だ。
だが、仕事を家に持ち込むわけにはいかなかった。
仕事というのは、家まで持ち込んではいけないものだ。大事なシエスタの時間が無くなってしまう。
だから、さすがに今日はオカルト研に行くのを休み風紀委員のたまっていた仕事を片付けていた。
生徒会から回ってきた仕事もあったため、いつもより時間がかかってしまった。
まあ、そのおかげで放置していた自転車を回収できたと思おう。
そう考えながら、ひたすら帰り道を走っていると―――
「……!?」
―――とある家からいやな気配がした。
外から見ると、リビングだと思われる場所は明かりが付いている。
一見すれば、ただただ普通の一軒家なのだ。
しかし、何か気配がする。濃厚な死の気配が。
こう言う気配に関しては、スタンド使いというのは本当に特殊な『嗅覚』を持っていると思う。
自分の身に対する危険な気配だとか、逆にその周りに対する気配だとかに特に鋭く反応する。
家の前に止まると、まるでその家の中がまるで別の空間につながっているのではないかという錯覚を覚えた。
俺は、その家の門に立ちインターホンを鳴らす。
もしかしたら、リビングを常に付けているだけかもしれない。だから、リビングらしき部屋から人の気配がしないのだろう。
これで、人が出てくればただの俺の『勘違い』になる。
しかし、人がこのインターホンに反応する気配すらなかった。
俺は、(不法侵入になるかもしれないが)門を開けドアの前に立った。
ノブに手を当て回してみると、ドアは開いた。開いてしまった。
俺は、外れていてほしかった自分の嗅覚に嫌気がさしながら家の中に入る。
家に入るとすぐの場所にリビングに続くドアがあった。
中に入り、リビングを見ると部屋の明かりやテレビはついている。
普通の家の様相だ……。
一個所を除いては
壁には逆さ十字の恰好で張付けられた死体があったのだ。
しかもただの死体ではない。
何か鋭い物で切り刻まれたように付いている傷。
深く切り裂かれたのだろう。中から、臓物が零れ落ちている。
壁には、血で文字が書かれている。
「これは……」
「『悪い事をした人はお仕置きよ』って言う聖なるお方の言葉を借りたもんさ」
その声にとっさに部屋の奥に飛びのくと、そこには白髪頭の神父が立っていた。
「おやおやおや、何も知らない哀れな子羊がふらふらふらと入ってきちまった」
「……何者だお前?」
「おいら?おいらはフリード。最強エクソシストのフリード様だ。別に根性だとかケロケロとは泣かないぜ。ッてあらあら?よくよく観察してみれば…アンタ悪魔じゃないっすか。ありゃりゃりゃ、これは大変だ。悪魔は即に滅多切りの斬り切り舞いにしてしまわなきゃいけないなァァ!!」
こいつは、マジに危ないやつだな。エクソシストってのは、悪魔祓いのことだ。つまり、悪魔にとってはとんでもない天敵というわけだ。
正直言って、今の俺じゃあとてもじゃないが戦えない。
負ける気はしないが、かと言ってボロボロになるのは確実だ。
……だが
「なあ、一つ聞きたい。この人を殺したのはあんたか?」
「ん~、それはもちろんイエスさイエスッ!!だ~って~、悪魔を召還しまくる常習犯だったんすよ~そりゃ、殺しまくるしかないっしょ」
やっぱりか……。
「だったらここから逃げることは……」
「んッん~?いったい何をやるきかなぁ?」
「できないなッ!!」
俺はそう言いながら、スタンドですぐそこにあった長机を神父に向かってはね上げる。
そしてそのまま、その机を思いっきり蹴りつけた。
「んなぁプガッ!?」
神父はそれに激突して吹っ飛ぶ。
「すまんが、このままお前と戦わせてもらう。それが、そこの人の命に対する『敬意』だ」
俺はそう言って、すぐに構える。
吹っ飛んだ神父はすぐに立ち上がってきた。
「あ~痛い痛い、くっそーこういうのは日本語でなんか言い表すのがあったよな。あー、何だったかなぁえーとぉ……うぶな事?いやなんか違うなぁ?やぼな事?いやこれもちげえ。鯔な事?あら?なんか遠ざかったような?じゃあ鯖な事か?」
「………味なことか?」
……なんだ、このやり取り。どこかでやった覚えがあるぞ。
「ああ、それそれ。いやぁ、僕ちゃん割と博識なんだけど割と度忘れしちゃう割とどじっこちゃんなのよ。どうも、センキューベリーマッチッ!!それじゃぁ~教えてもらった~お礼に~死をプレゼントッ!!」
そう言った瞬間奴は、どこから出したのか光る剣を横薙ぎ振る。
「!?クソッ!!」
「ありゃりゃ?避けちゃった?避けちゃったかぁ…こっちはいらないっつうことだったらァ…こっちをプレゼントッ!!」
今度は、どこからか銃を取り出してそれを俺に向かって発砲する。
銃声は聞こえなかった。だが、銃弾が飛んでくる。
恐らくは、悪魔に対して効果があるものだ。
今度はさすがに避けられない。
だったら……
「『スティッキー・フィンガーズ』ッ!!グッヅゥァ!!」
こいつで受けるッ!!
出した瞬間、弾丸は着弾し
ここで出したくなかったが、仕方がない。
あれが、悪魔に対して効果がある物だとしたら俺自身が生身で受けるのは危険だったからだ。
しかし、光の槍……あれをはじく事はできたが
「流石に……今の『スティッキー・フィンガーズ』に銃弾はきついか……」
俺の体から、
「なんだそりゃ!神器にしちゃあなぁんか若干透けてるし。まさか、悪魔のくせに守護霊なんて憑いちゃってるの?何それぇ!?おせぇておせぇて」
どうやら、奴にもスタンドが見えているようだ。前世では、スタンド使いしかスタンドを見る事ができなかった。しかし、今のスタンドは何かが違うようだ。
「済まんがこいつのことは……企業秘密だッ!『スティッキー・フィンガーズ』」
俺はスタンドを操り、銃弾を受けた左腕を庇いながら奴をぶん殴る。
「グガッ!?くっそぅ、幽霊のくせにいいパンチもってやがる。どう俺っちと一緒に天辺目指さない?」
「すまんが……それはできない相談だッ!!」
「うおう、まさかの追撃!?間一髪回避!!!」
もう一撃繰り出すが、奴はそれをバック転で避けた。
「いやぁ、御宅なんだが面白いなんか持っちゃってるじゃないですか。なんだぁ、ただのじゃこ、いや雑魚かと思って侮ってましたごめんちゃい。だから本気でー、フリード君いっきまーすッ!!」
「ッ!?」
その瞬間、奴はいきなり光の剣をこちらにぶん投げる。
俺はそれに気付いた瞬間、それを横に避ける。
が、そこから奴を見れば――
「さーてさて、それじゃあこれで最強に感動的なフィナーレだ!!」
もう一丁銃を取り出し、こちらに構える神父の姿があった。
「死ねクソ悪魔!!」
奴はそう言いながら、銃の引き金を引い――
「やめて下さい!!」
――た瞬間、部屋の入口の方から最近聞いたことがある女性の声が聞こえてきた。
俺は少し驚きながらも、
「なッ!?アルジェント……さん……?」
そこに立っていたのは、数日前街で道案内をした少女だった。
「おやおや、これは助手君のアーシアじゃぁあぁりませんか?結界は張り終わったのかなぁ?そんなら邪魔しないでね。こいつを今から蜂の巣に仕立て上げちゃうんでねぇぇぇぇええッッ!!」
「何を言って……!!い、いやぁぁぁぁあああああああ!!」
アルジェントさんは、壁に打ち付けられている切り刻まれた男の遺体をみて高い悲鳴を上げる。
「可愛い悲鳴いただきましたぁン!!アーシアちゃんも、教訓としてぇぇ神父のお仕事をお勉強しましょうねぇぇぇ!!特に、悪魔に魅入られた人間は即、首チョンパッつう事でぇッ!!」
「そ、そんな……」
不意にアルジェントさんがこちらを見た。
「えっ……なんで、イッセーさんが……ここに…?」
「あらら!?もしかしてアーシアちゃんそこの悪魔とお知り合い!?それはいけない!!悪魔は殺す!問答無用ってわけですわ!!」
「イッセーさんが……悪魔?」
アルジェントさんは、信じられないという顔でこちらを見つめる。
「あれあれ?もしかしてまさかのシスターと悪魔の禁断の恋?でぇも残念!悪魔と人間の恋なんて皆無、皆無ってやつですよ~!それに俺たちは神の加護から見放されたはぐれなんで?堕天使様の加護がなかったら生きていけないんですぜ?」
彼女はまだ、呆然としていた。
それにしても堕天使の加護だと?
あの黒羽野郎と繋がりがあるのかそう思った……が、この街で始めた会った時の彼女の行動を思いだしたのだ。
あそこまで自分の信じる主を熱心に俺に対して解いて来たのだ。
あの男の子が泣いていた時、彼女は同時に動いたのだ。
もし、彼女がこの眼の前にいる神父と同じはぐれだとしても恐らく何か理由があるはずだ。
とりあえず、今考えていることの前に
「まあそこの辺はどうでもいいんでぇぇ・・・とにかく俺様、そこの悪魔君を殺さないと気が済まないんすよねぇ!封魔銃二丁でこいつの体全体にチーズみたいに風穴空けてやるぜいッ!」
「……この状況をどう切り抜けるかだな」
眼の前の銃口をしっかりと睨み付けながらそう口に出した。
その瞬間、アルジェントさんが俺と奴の間に入り込み、俺を庇う様に腕を広げ神父をじっと見た。
「おいおい、何をしてるかわかってるのかなぁァぁあああアーシアちゃぁぁぁん?」
「……はい。フリード神父……この方を…イッセーさんをお見逃しください」
――――――なっ!?
俺はアルジェントさんの言葉に驚いた。
本来、神父やシスター――全て纏めると教会――は悪魔とは相反する仲だ。
それは前世で、父や母、教師などによく言われていた覚えがある。
彼女はそれを―――
「もうやめて下さいッ!!悪魔に魅入られただけで人を殺すなんて、間違っていますッ!!」
――その考えを真っ向から否定するように、俺を庇ったのだ。
「はぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!?この糞シスター!!お前、頭に蛆でもわいてんじゃねぇかァッ!?悪魔はクソだって、教会で習っただろうがッ!!」
「悪魔にだって、良い人はいますッ!!」
「居ねぇえよ、バァァァァァカ!目ぇ覚まそうぜ!?そこのクソ悪魔をぶち殺してさァッ!!」
「嫌です!!イッセーさんは良い人ですッ!!こんな私を助けてくれました!!だから…だから私は悪魔にだっていい人がいるって思えたんです!!」
彼女は、アルジェントさんは、自分が今まで聞いた百聞より自分がその眼で見た一見を信じたのだ。
今まで、学んだことを捨てて。
その時だった。
神父は、アルジェントさんに向けて銃口を向けたのだ。
そして、引き金を引き光の弾丸を彼女に向けてはなったのだ。
「――させるかッ!!」
それを見た瞬間俺は――
「『スティッキー・フィンガーズ』ッ!!」
――自分の事を省みずスタンドを彼女の前に滑り込ませた。
光の弾丸は、今度は
ダメージはデカい。
正直に言って足に対してのダメージは致命的だ。
「グゥ……流石に……銃弾二つはきついな」
だがそれは、一般人にとってはだ。
スタンド使いにとってはこの程度の怪我は―――
「だが……まだ動けるッ!!」
―――無いに等しいッ!
「えっ、こ、これは……?」
「おいおいおいおいおい、クソ悪魔ッ!?何やっちゃってくれちゃってるんですかァッ!?」
「何をやっているか?……お前、頭脳は間抜けか?ただ、助けただけじゃぁないか……そしてッ!」
その言葉と呼応するように、
「エッちょっちょっちょちょっちまってまさかまさかまさかのぉお!?」
「この距離だったら、お前を全力で殴り抜けれるッ!!」
そして、握り込まれた拳が神父に向かって飛んでいく。
「タコスッ!?」
その飛ばされた拳は、神父に吸い込まれる。その勢いは、衰えず神父は後方の壁へと吹き飛ばされた。
「……どんな叫びだ」
タコスは無いな。
そう言えば、タコスはメキシコ料理だったか。たまに、TVのカフェ特集なんかでみるな……新商品としてはありなんじゃないか?
俺は、そんな変な方向に思考を巡らせながら
流石に、きつくなり左足を庇う様に壁伝いに座る。
そうすると、アルジェントさんが近づいて来た。
「すまないな……俺が悪魔だという事を黙っていて……」
まずは謝るべきことを謝らなければいけないな。
俺はそう思いアルジェントさんに言った。
「……イッセーさんは良い人です!こうやってまた私を助けてくれました。だから…謝らないでください!!」
……アルジェントさんは、優しいな。
だとすれば、やはりはぐれになったのは何か理由があるはずだ……。
俺はそう思わずにはいられなかった。
その数秒後だった。突如として、床に魔法陣のようなものが現れた。
「兵藤くん、助けに……って、もう終わってるみたいだね」
そこから現れたのはオカ研の面々だった。俺は、今の満身創痍の状態を悟らせないために立ちあがる。
「……助けだって?…それにどうしてここに?」
「……先輩、レイナーレさんを心配させないように毎日家に到着したときにメールしてましたよね?」
「……確かにそうだな」
そう返すと、矢次に姫島先輩が話し始めた。
「ところが、今日に限っていつも来る時間にいつも来るはずのメールが来なかった。風紀委員の仕事があったとしても、これはおかしいことですわ」
「そこで、私の使い魔を出して探して見ればここに何やら不穏な雰囲気があった。それで、駆けつけてみれば案の定というわけよ」
そして、リアス部長がそう締めくくった。
「さてと……」
そう言いながら、リアス部長はアルジェントさんを見つめる。
「イッセー、貴方彼女の正体を知っているのね?」
「……ああ、知ってるさ。そして、悪魔とシスターが相いれないことも」
分かり切っていることを、一々聞かれるって言うのは何か若干腹が立つが……気にしないでおこう。
「――ッ!!部長、堕天使のような気配がここに近づいていますわ」
姫島先輩が何か―――額面通り受け取れば堕天使だが―――を察知しリアス部長に対し言う。
そうすると、部長は慣れた手つきで手を開きその場に魔法陣を出現させた。
「イッセー、詳しい話は後で聞くわ。今は帰るわよ」
「待ってくれ!!アルジェントさん……彼女をその魔法陣で連れて帰ることは可能か?」
「不可能よ、この魔法陣は眷属しか転移できない。だからその子も無理なの。そもそも、たとえどのような理由があるとしても彼女には堕天使が関与しているわ。そう易々と、こちらの拠点に連れてはいけないわ」
……なるほどな、だったら、
「だったら、俺はここに残る」
「――ッ!!無茶を言わないでッ!!貴方が情が深いのは、理解できる。でも、それはもはや無謀よ!!」
「無茶だろうが無謀だろうが、俺は彼女を助けたいと思っている。今の彼女は堕天使の元には行けない!!」
俺はそう言って、堕天使と戦う意思を見せるために窓の外に目を向けた。
――その時だった。不意にアルジェントさんは、俺の背中に手を当てた。
「アルジェント……さん……?」
その手は震えていた。首を少しだけそちらに向けると――彼女は微笑んでいた。
「私は、大丈夫です。だから、行ってください」
「何を言ってるんだ。俺はまだ戦えるし、堕天使との戦いだっていざとなればあなたを連れて逃げ切れる」
「大丈夫です……だから……行ってくださいイッセーさん……また会えます」
彼女は、そう言いながら涙を流していた。
それでもまだ、彼女は笑顔だった。
彼女は、その笑顔のまま俺を魔法陣の中へと押入れた。
「………ありがとう。感謝するわ、シスターさん」
「アルジェントさん……」
彼女は、涙を拭いこちらを見続けていた。
俺は魔法陣から出て、彼女を救おうとしたが――――――それは叶わなかった。
「……また、会いましょうイッセーさん!!」
その言葉を聞いた瞬間、俺たちは光に包まれ気付いた時にはオカ研の部室にいた。
**********side out***********
住宅地の一角のとある一軒家。
リビングであろう窓からは光が漏れ先ほどまで慌ただしいほどの戦いの後は鳴りを潜め、そこには一人のシスターが立つだけだった。
シスターはそっと流れる涙を拭い、彼女がこの街についた時とある人が言っていた言葉を口に出した。
「『泣いていては、何も変わらない』……ですよね、イッセーさん」
その言葉を言った彼女の眼からは、もう涙は流れなかった。
「……また、会えます。絶対に会えますイッセーさん」
静かな、一軒家の中にその言葉が染み渡った。
to be continued→
ED YES-Roundabout
いかがだったでしょうか、第八話。
こんにちわ、「もう半月たってるよ、もともと書いてたのもそろそろ四カ月になるよ!生返事だけして何もしないとか何やってんのッ!?」略して半生です。えっ?長い?……承知の上です。
ここ最近から夏休みに入ったので、ある程度余裕を持ってかけると思われたのですが……いやぁ、夏休みってイベント結構あったんですね。
ちなみに今回の自分の名前には、はよ書けという願いと前から書いてたやつ放置しすぎ!!という願いが積み込まれています。
さて、今回は主にフリード君にあのセリフを言わせたかっただけ感があります。有名ですからね、鯖な事話は。
いつかは、根掘り葉掘りもやりたいです(小並感)
ちなみに私の中では、ブチャラティは割と激情家でもあり人情家でもあると思います。だからこその、あの行動なんです。
あいつが激情家じゃなかったら、組織裏切ってボスぬっ殺すなんてやりませんもの。
それでは、次回もお楽しみに
しーゆーあげいん、BYEBYE!!
感想、批判、誤字修正、ベネ!!―――お待ちしております。