静まり返った学校の、風紀委員室で椅子に座りながら天井を見上げる一人の男性がいた。
今は、真夜中。
だがとっくにそんなところには学生なんていないはずの場所に、学生の姿をした男性がいるのだ。
男性は、一人考え事をしてはため息をつきまた考え事をしてはため息をついていた。
「シスターと悪魔は絶対に相いれない…か……」
男性は、そう言ってからまたため息をついた。
*********side イッセー**********
俺は、あの後オカ研の部室で怪我した場所の手当てを受けた。
パッと見れば、まあ重傷だったからな。
その治療を受けた時に聞いた、リアス部長の言葉を俺は風紀委員室で何度も思いだしていた。
『あのシスターのことは諦めなさい。初めから教会側の人間と悪魔は相容れないのよ、悲しいけど……それに堕天使と戦ったら私達は堕天使たちと争うことになるわ。それは、レイナーレさんとも敵対することにもなる。もし、彼女を庇っているのが例の堕天使だったら多少話が変わる可能性も出てくるけども基本的には絶対に変わらないわ。そしてもし、争いになれば私はかわいい眷属を失うことになる。……それは嫌なのよ……わかって、イッセー』
それは、組織という点から見ればもっともなことで、今の俺たちの状況から見ても避けなければいけないことだった。
ただ、俺の中ではそれを納得はできていなかった。
いつもの俺だったら、納得できないことにぶち当たってもある程度スルーしてきた。
だが今は……その納得できないことをあきらめきれないでいた。
だからこそ俺は、何か手はあったはずと――そう考えていた。
昔、チームに言った一言が俺の中によぎる。
『俺は『正しい』と思ったからやったんだ。後悔はない…こんな世界とはいえ、オレは自分の『信じられる道』を歩いていたい!』
今の俺は『正しいこと』―――『信じる道』を歩めていない。
今この時、そう思ったのだ。
「…ん……あぁ……」
気づけば、外は明るくなっていた。
(やれやれ……まさか校内で寝泊りすることになるとはな)
昨日の夜のことをまた考えようと思ったが、このまま続けたとしてもまた煮詰まってしまうことは想像に難くない。
人間―――正確にはもう人間ではないのだが―――一人で考えてもいい考えが思い浮かぶわけでもない。
それができるのは、一人握りの『天才』位だ。
ジョルノなら、臆することなく実行できるが俺はそうではなかった。
「………出るか」
俺はそう一人でつぶやきながら、風紀委員室を後にした。
結構な時間あそこで寝ていたのか、時刻はもう昼近くになっていた。
朝から何も食べて無く、養父にも何も連絡を入れていない。
(後々、携帯を確認してみれば数十件も連絡してくれていたのが分かった。心配しすぎだと思うのは俺だけではないはずだ)
流石に腹が減ったが、ここから家に戻るのは少しめんどくさい。
別に、戻って何か作るのがめんどくさいというわけではない。
今俺がいるのは駆王の中心街ともいうべき場所だ。
駆王学園も、俺が住んでいる家も場所がここから大分離れているのだ。
わざわざ、バスで来ているのにここから戻って何か作るのはさすがにためらわれた。
何処か食べられそうな店はないかと探していると―――見覚えのあるシスター服が見えた。
あの姿は間違いないだろう。
そもそも、彼女以外にここに現れたシスターなんて見たことはなかったから。
よくよく見れば、今度は迷子にでもなったんだろうか?
道の真ん中で困った様子でキョロキョロと周りを見ていた。
俺は昨日のことを少し安心しながら、彼女に近づいていった。
「アルジェントさん」
「いっ、イッセーさん!!」
「よかった……無事だったんだな」
彼女は、昨日の夜と全く変わらない姿でそこにいた。
「どうしたんだ?また、迷子にでもなったのかい?」
「えぇっと……お恥ずかしながら……」
彼女は、少し照れながらそう言った。
「そうかい……で、今度はどこに行きたいんだ?どこにだって連れていける自信があるけども」
「い、いえ……実は、行きたいと思う場所もなくて」
「……だったら、俺と一日遊ばないかい?」
俺は何となくそう言ってみた。
昨日、一般人が見るには凄惨すぎるものに遭遇したんだ。
少し位、リフレッシュさせてあげたかった。
それに、ちょっとした考えもあった。
「えっ……でも、私と居ても楽しいことなんて……」
「楽しいことは、自分で見つけるものだ。俺が、君と遊びたいから言ったんだ?それで、返事は?」
「……はいっ!喜んで!」
彼女がそう言った瞬間、どこからかキューという音が聞こえてきた。
それが聞こえてすぐに、彼女の顔が少し赤くなった。
つまりはだ―――
「…まずは、腹ごしらえだな」
「あぅぅ……よろしくお願いします」
「あ、あの……ここは?」
「ん、いや、やっぱりまずは日本的な物じゃなくてアルジェントさんの故郷の味をと思ってな」
まず、腹ごしらえに訪れたのはイタリアンレストランだった。
実際よく俺も来ている、割とリーズナブルな値段で食べれる場所だ。
「とりあえずは……すいません、マルゲリータを一枚」
そう言って、出てきたのはモッツァレラチーズを軽く焦げ目がつくくらいに焼き上げたマルゲリータピッツァだ。
「あ、あの!イッセーさんこれは!?」
「……意外だな、まさかピッツァを食べたことはなかったのか?」
「実は、教会でこう言った物は出てこなくて……」
「そうか……」
意外だったのは事実だ。
修道院や教会の食生活というのは知らないが、イタリアの出だったら一回くらいは食べたことがあるはずだと思っていたんだが……。
まあ、それはいいかと俺はその思考を一旦隅に追いやり、食べ方の手本を見せることにした。
「これはな、こうやって食べるんだ」
俺は、彼女に見せるように切り取られていたピッツァを軽く耳のところを折り曲げながら口に運び入れた。
いつもは、バイト先の物ばかり食べているため少しそれと比べようとしてしまう。
だが、やはりピッツァには優劣はあまりないと感じる一品だった。
アルジェントさんの方を見ると、恐る恐る手にとって口に運んでいた。
「……ッ!イッセーさん!これ美味しいですッ!!」
「ムグッ……そうか、それはよかった。連れてきて正解だったかな」
「ハイッ!ありがとうございます!!……ところで、これってソースか何かですか?」
そうやって彼女が指さした先には、こう言ったイタリアンレストランでよく備え付けられている赤い液体が入っているビン
―――タバスコを指していた―――
……おいちょっとまて、アルジェントさんやめろ蓋をとるな。
少し待て、『なかなか出てきませんね』じゃない!!それは一回だけで十分な代物だ!だからそんなに何回も振る物じゃあないッ!!
「うぅ~……口の中がまだヒリヒリします……」
「フッ……だから何度も止めたんだ」
一時間後、俺たちは店から出て歩いていた。
アルジェントさんは、まだ口元を押さえている。
それはそうだ。
何回どころか、何十回もタバスコをピッツァに振りかけた上で食べたんだからな。
「あっ、今笑いましたね!!」
「いや、なに。少し面白くてな」
少しからかう様に笑うと、彼女は少し赤くなって膨らんでいた。
「むぅ~……イッセーさんは意地悪です!」
「フフ……すまなかった。機嫌を治してくれ、お嬢様。さぁ、次に行こう」
「分かりました!許してあげます!!それで…次はどこに行くんですか?」
「そうだな……次は―――」
柄でもないことを言いながら、俺は彼女を次の場所へとエスコートした。
そのあとも、様々な場所に行った。ゲームセンター―――行くのは実は久しぶりだった―――だったり、服屋に服を見にに行ったり、たい焼きを買ったりと色々なことをやった。
そうやっていたら、いつの間にやら日は傾いてもう夕日が沈み始めていた。
俺とアルジェントさんは、立ち寄った公園――レイナーレさんに初めてあった公園だった――の噴水近くのベンチで腰を下ろしていた。
「ふぅ……流石に、少し疲れたかな」
「は、はい……でも、こんなに楽しかったのは生まれて初めてです!」
「そうか、それはよかった。案内できてよかったよ」
彼女は、ニコニコと笑顔で噴水のほうに顔を向けた
―――若干の陰りを見せながら。
「イッセーさん……聞いてほしい話があるんです」
笑顔は、彼女がその言葉を発した瞬間に無くなり陰りの強い顔になった。
「私の……昔の話です……聞いていてもらってもよろしいでしょうか……?」
「……あぁ」
俺がそう言うと、彼女は一筋の涙を流してから語り始めた。
「私はですね……イタリアの北部の生まれなそうなんです。そうというのは、私は生まれてすぐに捨てられてしまってずっと教会で過ごしていたからです」
「7歳の頃には拾ってくれた教会で、私はずっーと過ごしていって将来立派なシスターになれると……そう考えていました」
「……8歳の時でした。教会のお庭で遊んでいると、そこで怪我をした子犬を見つけたんです」
「私は……何とかしようとして、助けてあげようとして必死に何かをしようとしたんです。その時に、私は不思議な力というものでしょうか。それに目覚めたんだと思います」
「その不思議な力は、子犬の怪我をあっという間に治してくれたんです」
「それを、見ていた方がいました。その時ちょうど、中央から来られていた神父様でした」
「神父様は、私を生家ともいうべき教会から連れ出して中央に向かいました。そこで私は、治癒の力を持った『聖女』と言われるようになりました」
「別に嫌ではなかったんです。中央の大教会の方々は良くしてくださいましたし、怪我をしてしまった方を治すのも嫌いではありませんでした。むしろ、自分の力が役に立ってうれしかったくらいです」
「……でもですね、少し寂しい気持ちもありました」
「大教会の方々は優しくしてくださりました。でも、誰も私のことを理解してはいませんでした。私には、心を許せる友人なんて……居ませんでした」
「そんなある日ですね……怪我をした方が倒れていました。でも、彼は悪魔でした。私は、それでもほおっておけなくて自分の力をその方に使ったんです」
「怪我は見る見るうちになくなっていきました。でもですね……大教会の方々はそれを見た瞬間全く目の色を変えてしまわれました」
「私の力は……異端の力だとそう口々に言う様になりました」
「その内私は……『魔女』と言われるようになって……教会から追放されました」
「大教会の方々は誰も庇ってくれませんでした。私の住んでいた教会の方も誰も……」
「追放されて路頭に迷った私は、極東の……日本の『はぐれ悪魔祓い』の方々に拾われてここに来ました」
「……私は、主への祈りを忘れたことは……ありませんでした。感謝も……忘れることは……ありませんでした。でも、主は…救ってはくれませんでした」
彼女の声は、どんどん後半になるにつれ嗚咽交じりになっていった。
「でも……これはきっと、私の祈りが足りなかったんです。それにこれは、主が与えてくださった試練なんです。この試練を乗り越えれば……きっと、私にも友達が……」
そう言って、彼女は自嘲気味に笑っていた。
俺はそれを聞いて、なんで俺が彼女のことを何とかしようとしていたのかようやく理解できた。
「アルジェントさん、ちょっとこっちを向いてもらえるか?」
俺は、ふいに彼女にそう言った。
「ふぇ……」
彼女がこちらを向くと、俺は
「これは……昨日の……」
「ああ……こいつはな、子供のころからずっといる俺の半身みたいなものだ」
俺は、話を続けた。
「誰も、こいつを見ることができなかった。誰も、こいつのことを知らなかった……だからかな俺は、自分が周囲から浮いているように思えてな。誰かと話すことはできても……俺はずっと孤独だった」
スタンド使いは、言ってしまえば孤独と隣り合わせだ。
特に、生まれてからすぐスタンドに目覚めてしまった人間なんて目も当てられない。
誰も、自分には見えている“何か”に気付かない
誰も、自分の苦悩をわかってくれない
誰も、自分の痛みをわかってくれない
「でも……今のイッセーさんはそうは見えません」
「そうかな……そう見えているんだとしたら、それはきっとあの馬鹿二人のせいかな……」
「馬鹿……二人?」
アルジェントさんは、その言葉を聞いて少し困ったような顔になった。
「そう、馬鹿二人だ。あいつらはな、小学校の頃からの友人だった。当時の俺は、まぁいろいろあってな結構荒んでいたと思う」
俺はそう言いながら、
「そんな荒んだ俺の心に、あいつらは土足どころかスパイクまみれのサッカーシューズで入り込んできやがったんだ」
アルジェントさんは、俺の言葉にじっと耳を傾けていた。
「それ以来、あいつらとはずっーと腐れ縁みたいなものが続いてる。……でもな、あいつらのああいうところに俺は多少なりとも救われた……俺はそう思ってる」
俺の孤独は、前世の記憶を持っていたのも一つの要因だったのかも知れない。
それでもだ、誰にも真の自分というものをさらけ出せないのは本当につらかった。
それは、俺の心の壁ともいうべきものになっていたのかもしれない。
あの悪友二人は、そんな心の壁を軽々と超えていきやがった。
それは、俺の孤独を打ち壊すには十分なものだった。
俺はそれに感謝した。
純粋に、その時は嬉しかったのだ。
実際に言葉にするのは恥ずかしいが、あの二人には本当に感謝していたのだ。
確かに今は、もはや完全なる馬鹿な変態二人組だとしても俺にとってはある意味で恩人だ。
「……今日俺と遊ぼうなんて言ったのは……多分、俺は自分みたいな状態だったアルジェントさんを何とかしてやりたいと思っていたんだ」
「えっ……」
「実はな、今日行った場所……レストランはさすがに違うけど、あいつらと初めて会った時に遊んだルートそのままなんだ」
「そ、そうだったんですか!」
そう聞いたアルジェントさんは、少し驚いていた。
「そうさ……俺は、今日みたいに遊んだ後にこう言ったんだ『どうして、友人でもない俺をこんなに連れ回して遊んだんだ』ってな……そしたら、あいつらはこう言ったんだ」
『知らねぇよ、お前と遊びてぇって思ったら体が自然に動いてただけだ』
『それに、友人でも何でもないなんて言うもんじゃねぇぜ。
少しでも、遊んだらそれはもうすでに―――
――友人だってな」
「……ッ!!」
それを聞いた瞬間、彼女の眼からは涙が流れ落ちていった。
「だからさ……俺たちは一日遊んだんだ…こんなに暗くなるまでな。だから、あいつらの言葉かりれば……もうそれだけで友達なんだ俺たちは」
「……いいん……ですか?」
「ああ、俺は全然困らないよ」
俺が言った言葉を聞いて、彼女の涙はさらにあふれ出した。
彼女はそれを必死にぬぐおうとする。
「あれ…ヒッグ…止まりません……泣いてちゃ、何も…変わらないのに」
……そうか、あの時言っていた言葉を覚えていたのか。
「……今は、泣いてもいい時だと俺は思うよ」
「でっ……でも…」
「言った本人が言ってるんだ……今が、本当に“泣く時”だよ」
アルジェントさんは、俺の言葉を聞いてから声を荒げてさらに泣き始めた。
……よっぽど苦しかったんだろう。
俺は、そっと彼女の背中に手を当てた。
泣き続ける彼女を声を聞きながら、俺は一つあることを考えていた。
傷を治せる力。それは、あの男―――ドーナシークが狙っている力なのではと。
おそらくだが……この子が持っている力は、スタンドではなく『神器』の方だろう。
怪我を治す力、他人を癒すことができる力はこの地球上でおそらく最も優しい力だろう。
だが、それはあくまでもその力を心優しき人間が使った場合だけだ。
悪意を持ってそれを扱えば、それは私利私欲の為だけの力になるだろう。
―――特に、あいつみたいなやつには。
あの時と同じ、夕暮れ時。
あの時と同じ、公園。
あの時と同じ、羽搏きが聞こえた。
「それは無理だな」
そして、あの時聞いた声が聞こえてきた。
***********side out************
夕暮れに沈む公園。
その真ん中にそびえる噴水には、二人の男女。
そして、それを見下すように空中に羽の生えた男が佇んでいる。
「……やっぱりか、ドーナシーク」
「……ドーナシーク……様」
噴水の傍で、女性に手を添えていた男性が後ろを振り向き空中にいる男――ドーナシークを睨み付ける。
女性の方は、その声に少しの怯えを交えてそちらを見上げる。
「おや、シスターアーシア、そこにいたのか。さぁ、そろそろこちらにいらっしゃい。そろそろ、帰宅の時間だ……」
優しい声でドーナシークは言うが、女性―――アーシアが怯えるように近くの男性の後ろに隠れるとその眼には怒気が宿った。
それを見て、彼女のそばの男性は彼女を庇う様に立つ。
「すまないが、彼女はもうお前のところには帰りたくないそうだ」
そう男性が言った瞬間、彼から人型が現れる。
人型は、ドーナシークに向かい戦闘態勢をとる。
それを見て、ドーナシークは先ほどの怒気を弱め余裕そうな顔を浮かべた。
「……俺は、この見た目通りまあ頭がよくてね……」
その顔のまま、ドーナシークは喋り始めた。
「……何が言いたい?」
「その、『スティッキィ・フィンガーズ』……とか言ったか?そいつの能力については……大体察しがついている」
ドーナシークはそう言いながら、一定の距離を保ちながら彼にそう言った。
「……ハッタリだったら……俺には効かんぞ」
「ハッタリじゃない、確信さ……大体そいつの射程距離は、2m位といったところだろう?」
その言葉を聞いた瞬間、男性は少し身じろいだ。
「おっ、図星か?ズバリ当たってしまったか…なァーーーーー!?」
(くそ……やはり、見せすぎてしまっていたか……)
つい先日の戦闘において彼は、『能力』をなるべく使わないようにしていた。
だが、いかんせん生身でやすやすと戦える相手ではなかったのだ。
それにより、ドーナシークに基本的な能力を晒してしまったのだ。
「それにだ……初めてお前に会った時の『ジッパー』とか言うやつ……あれは恐らくだが、そいつが触らないと付けれないんだろう?」
「……正解だ」
男性は、更に能力の答えを言い当てられそれを正解だと口にする。
「だが、それがどうした。俺は、お前に彼女を渡したりはしない」
男性はそう言って、ドーナシークを睨み付ける。
しかし、ドーナシークの余裕の表情は崩れない。
「お前自身は普通の……ごくごく一般的な普通の悪魔だ……もともと人間だがね。そんなお前が、シスターアーシアを庇って戦って何時間……いや、何分持つ?」
「…………………」
男性は、押し黙った。
実際、堕天使と悪魔が戦えば光を弱点とする悪魔がかなりの劣勢に立たされる。
その上、誰かを庇いながらだ。
かなりの不利に、彼は立たされていた。
だが、彼は押し黙りながらもその戦闘への集中を切らさない。
「シスターアーシア、その男が傷つき死んでいく様を見たくはないだろう?さぁ、だからこちらにおいで」
「……アルジェントさん、行くことはない……大丈夫だ、必ず、守り通す」
そう二人の男の声と共に、少しの静寂が訪れた。
そして―――
「分かり……ました……」
その静寂を、破ったのは彼女の―――アーシア・アルジェントの弱弱しい声だった。
「アルジェント……さん?」
「イッセーさん、今日は一日……ありがとうございます。本当に…楽しかったです」
彼女は男性に向けて満面の笑みを見せ、そしてドーナシークのほうへと進みだす。
ドーナシークは、それを見てにやにやとした顔をした。
「いい子だ、シスターアーシア。それでいい。今日の儀式で、君の苦悩は消え去るのだから」
(儀式……だと……!?)
ここにきて、彼は確信した。
やはり彼女が、ドーナシークが狙っていた『少女』だと。
彼は、より一層彼女を救わなければいけないと思った。
「アルジェントさん!!待ってくれ!!」
男性は声を強く荒げる。
しかし―――
「イッセーさん、こんな私と友達になってくれてありがとうございました」
無情にも―――
「さようなら」
その
彼女が、言葉を告げた瞬間彼女はドーナシークの黒い翼に覆われる。
「この子のおかげで命拾いしたな……次に邪魔をしてみろ、その時は必ず殺す」
そう言って、ドーナシークは天高くに飛んでいった。
その手に、アーシアを抱えて。
そして、公園に残されたのは黒い羽根と一人の男だけになった。
男はひらりと落ちてきた黒い羽根を拾い上げ、ぐしゃりと握りつぶした。
そして、飛んでいった男を睨み付けるように空を見る。
「彼女に託されたのもある……だがだ、これはもう俺だけの問題だ。友人を助けに行くという俺だけの問題だ」
握りつぶした羽根を捨て、男性は振り返る。
「『レイナーレさん達を守る』、『あいつも倒す』……『彼女も救う』」
男性は、決して振り返らず人型を自分の中へと戻し公園から去る。
「必ず……必ず……助けに行く」
その顔に―――
「『真の覚悟』はここからだ」
―――強い強い『黄金の意志』をのせて。
to be continued→
ED YES-Roundabout
いかがだったでしょうか、第九話。
こんにちわ、「半分にされたナウマンゾウ」略して半生です。
なんか無理やり感出てきましたね。
いやぁ……時間の流れって恐ろしいですね。
気づけば9月です。
さて、今回は中々重たかったりしてます。
実際、スタンド使いは悲しみを背負うことが多いですね。
ブチャラティは、パッショーネに入るときにスタンドに目覚めましたから周りには仲間がたくさんいました。
でも、あくまでそれはスタンドをたくさん保有している組織だからこそたくさんいたわけです。
普通は、今回のブチャラティや某緑色した腐ったメロンさんのようにスタンド使いは孤独なんだと思います。
さて、次回から三、四話くらいは甲冑を脱いだ銀の戦車並みに一気に駆け抜ける所存であります。
それでは、また次回もお楽しみください。
しーゆーあげいん、BYEBYE!!
感想、批判、誤字修正、ベネ!!―――お待ちしております。