とある茨の禁書目録   作:darkrad26

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にじファンから移転してきました!
拙い出来ではありますが、読んだことがある方もまだの方もお楽しみいただければ幸いです。




プロローグ

『学園都市』

 

 東京西部を一気に開発して作り出され、一部を神奈川や埼玉に及ばせながら東京都の中央三分の一を円形に占めている巨大な閉鎖型都市。

 

 外よりも30年は進んだ科学技術の他、「記憶術」だの「暗記術」という名目で脳の開発、即ち「超能力研究」を行っている学生の街である。

 

 

 その学園都市のある研究所。

 普段なら置き去り(チャイルドエラー)などを使って非人道的な研究を行っており、ろくに人も寄り付かないような辺鄙な場所だが、現在は見るも無残に半壊しており、静かだった所内では時折銃声や悲鳴、破壊音が響き渡っている。

 

 

「ったく、この程度の研究所潰すのになんで俺が出てこなきゃならないんだよ? プロジェクト『見張る者(エグリゴリ)』だか何だかしらねぇが、面倒くせぇ」

 

 

 そう悪態をつきながら悲鳴飛び交う研究所内を歩いているのはホストのような格好をした少年。

 何よりも目をひくのは背中に生えている一対の純白の羽根だろう。

 時折思い出したようにその羽根を振るい、辺りを無造作に破壊している。

 彼こそ学園都市に7人しかいないと言われている(・・・・・・)レベル5の第二位『未元物質(ダークマター)』垣根帝督である。

 

 

「仕方ないじゃない。どんなにつまらない依頼でもウチ(スクール)に来た以上断れないんだから」

 

 

 そう答えたのは14歳ほどで、小柄で華奢な体つきにも拘らず、 まるでホステスのような背中の開いた丈の短いドレスを着込んでいる少女。

 垣根とは違い、特に何もせず彼の一歩後ろを歩いている。

 

 

「ってかお前も仕事しろよ。さっきからついて来てるだけじゃねぇか」

 

「私の能力は『心理定(メジャーハート)』、戦闘向きじゃないんだしいいじゃない。邪魔にはなってないでしょ?」

 

「確かに邪魔はしてないけどよ。さっさと終わらせて帰りたいんだよ」

 

 

 彼らこそ学園都市の暗部『スクール』の構成員である。

 垣根は心底面倒そうにため息をつきながらそうぼやくと、前方にある厳重に封鎖された扉を一瞥し、羽根の一撃でもって跡形もなく吹き飛ばした。

 

 

「………」

「…なによこれ!?」

 

 

 部屋に入った二人の眼に飛び込んできたのは殺気立った研究員や警備員達…ではなく、おびただしい数のおそらくこの研究所の職員であっただろう物体。

 ここで迎え撃つつもりだったのか逃亡の準備をしていたのか。小さなホール程の広さの部屋には銃やら駆動鎧、その他にも用途のわからない機械や書類がそこら中に散乱している。

 それだけならさして驚くことではない。彼ら以外の襲撃者達が始末した後に自分たちが来ただけなのかもしれないからだ。

 だがそれは銃で撃たれたりなんなりしてただ死んでいた場合のこと。

 ここにあるのはそんな普通の死に方をしたようなものではない。

 ここにある死体達は例外なく全て干からびている(・・・・・・・)

 中にはまるで数千年も放置され風化したように崩れているものもあり、最早それは死体ではなく器物や遺物といった表現の方が正しいのだろう。

 殺人現場というよりは墓場等といった不気味な雰囲気が漂っている。

 

 

「これってミイラ? ピラミッドじゃあるまいし、ここはエジプトじゃなくて日本よ?」

 

「体中の血液、水分が完全に抜かれてやがる。こんなことができるのは…」

 

 

 

「そう、このオレだけだ」

 

 

 生きてる人間は垣根達二人以外誰もいないはずの部屋に声が響きわたる。

 その瞬間垣根は背にさらに羽根を生やし、三対六枚の翼でもって臨戦態勢を取り、『心理定規』はその後ろに退避し拳銃を取り出し油断なく構える。

 

 

「警告、及び伝達だ、第二位。最近の行動は目に余ると統括理事会からのお達しでな。そのせいでこのオレが派遣されたわけだ。心当たりはあるだろう?」

 

 

 その声が聞こえてきたのは二人の頭上。なぜ気付かなかったのだろうか。

 そこにいたのは魂まで奪われそうな昏い雰囲気を醸し出し、天井に張り付いて、いや直立する漆黒の青年。

 片目を覆い腰元まで伸びる黒い長髪を無造作に首元で括り、オーダーメイドであろうダークスーツを着こんでいる。中に着ているシャツまで黒でそれ以外の色は一切見当たらない。

 奇妙なことに髪の毛一本すら重力に囚われていないのか、まるで天井が地面だとでもいうように悠然と佇んでいる。

 何よりも特徴的なのはその眼、すべてを遥か高みから俯瞰するような無機質な色を宿す瞳だった。

 

 

「てめぇ第六位か! 警告なんざされる謂れはないぞ!」

 

 

 そう叫びながらも内心では統括理事長への反逆計画がばれたのかと焦りを浮かべる垣根。一体どこから計画のことが漏れたのか、まだ挽回は可能かなどとその高性能な頭脳を高速回転させるが解決案は一向に浮かんでこない。

 そのせいもあるのだろうか。普段ではありえないことだが焦りや相手が自分と同じレベル5第六位ということもあって思わず思考に意識を集中させてしまい対象から目を離してしまった。

 気付いた時にはもう遅い。いくら能力の相性がよく正面から戦えば負けることはないとはいえ、自分では第六位には勝つこともできないのだ。

 致命的な隙を晒したかと自分の馬鹿さ加減に歯噛みしながらも時間を稼ぐために一撃を叩きこもうと天井に視線をやる。

 だが、最早そこには誰もいない。

 

 

「ちっ!(くそっどこに行きやがった?)」

 

 

 思わず舌打ちをしながらいつでも反撃、離脱できるように周囲に気を配る。

 第六位の奇襲など第一位のような反射を持っていない自分ではその一撃を防ぐ自信がない。

 背中に嫌な汗を滲ませながら垣根は生き残ることを第一に考えて意識を集中させていく。

 だが―――

 

 

 

「やあ久し振りだね心理定規。よかったらこれからディナーでもどうかな?」

 

 

 そんな気の抜けるような台詞が真後ろから聞こえてきた。

 

 

「お久しぶりです北斗さん。私でよかったらぜひお願いします」

 

「やっぱり君は笑っている方が可愛いね」

 

「そんな可愛いだなんて…」

 

 

 悲壮な決意を固めていた垣根とは違い第六位と心理定規は楽しそうに会話していた。

 しかもさっきの雰囲気はなんだったのかというほどの爽やかさである。

 彼女は彼女でピンクな空気を形成し始めているし垣根に対してとは違い敬語だ。場違いにも程がある。

 もちろんそんな雰囲気を目の当たりにした垣根は黙っていられるはずもなく――

 

 

「北斗ォォォッ!! てめぇ今めっちゃシリアスな場面だったじゃねぇかよ!? 俺の覚悟はどこにやればいいんだ!? っつかさっきと口調違いすぎだろ!」

 

 

 当然爆発する。

 先ほどの緊張感など消え失せて、どこかコメディチックな雰囲気すら出している。

 しかし第六位、いや北斗と呼ばれた男は慣れているのかそんな垣根をさらりと流し鬱陶しそうにしている。

 

「うるさいぞ垣根。今いいとこだろうが。お前の覚悟なんてそこら辺に捨てとけ。あとさっきのは仕事用の口調だ」

 

「うるさいわよ。今北斗さんと話してるんだからあなたはその辺でメルヘンしてなさい」

 

「えっ? 俺がおかしいのか!? ってか息ぴったりだなおい!」

 

 

 一蹴である。勢い込んで二人に詰め寄った垣根だったが、最早その姿は可哀想を通り越して哀れですらあった。

 そして二人は垣根を無視してまた楽しそうに会話を続けている。

 

 

「そういえばまだおじさん達相手にバイトしているのかい?

気晴らしならオレがいつでも付き合ってあげるよ」

 

「本当ですか!?じゃあ仕事が終わったら休もうと思って部屋をとってあるのでディナーの後にでもそこで付き合っていただければ…」

 

「ふふっ相変わらず積極的だね。喜んで付き合わせてもらうよ」

 

 

 いちゃいちゃしている。

 これは独り身の自分に対するあてつけなのかなどとどうでもいいことを考えながら黄昏ている垣根。

 だが忘れているかもしれないがここはミイラが転がっている部屋の中である。

 一見ほのぼのとした光景に見えるかもしれないがいろいろと台無しだった。

 

 

「おい北斗。やっぱりこのミイラ共はお前がやったのかよ?」

 

 

 そこに一石を投じたのは復活した垣根。

 北斗と心理定規の二人だけの空間に土足で踏み入る、実に空気の読めない男である。

 

 

「…冷蔵庫が。……当たり前だろ?他にこんなことができる奴がいるんなら教えてほしいものだな」

 

「今なんつった? なぁ? なぁ!?」

 

「それで警告についてだが…」

 

「無視かよっ!」

 

「黙れ冷蔵庫。そんなんだからチンピラホストって言われるんだよ」

 

「てめぇぶっ殺してやらぁぁぁっ!」

 

「黙りなさい冷蔵庫。北斗さんが話してるでしょ」

 

「なんなんだよもう…」

 

 

 またもや一蹴。懲りない冷蔵庫、もといチンピラホストである。

 そんな垣根は無視して北斗は話を続ける。

 さりげなく彼女の腰に手を回してるのが憎たらしい。

 

 

「お前最近仕事の度に物を壊しすぎなんだよ。修繕費も馬鹿にならないらしくてな。

 借金になるらしいから…まぁ頑張れ、応援してる」

 

「…そんなことをわざわざ言いに来たのか?」

 

「ちょうど暇だったからな。アレイスターの頼みを断るのもあれだし」

 

「ご苦労さまだな。…ちょうどいいから仕事手伝ってくれねぇか?

 お前の『茨棘王冠』ならすぐ終わるだろ?」

 

「さっきの会話を聞いてなかったのか? オレはこれからデートなんだから無理だ。

 じゃあ行こうか?」

 

「はい北斗さん」

 

 

 そう言うと北斗は心理定規を抱きかかえる。いわゆるお姫様抱っこだ。

 またピンクな空気を纏い始めた二人だが、何度でも言おう、ここはミイラだらけの部屋である。

 

 

「北斗はともかく、お前はまだ仕事が終わってねぇだろ!?」

 

「そんなもんお前がやれよ。何のためのレベル5だ」

 

「少なくともゴミ掃除の為じゃねぇよ!? 男女差別反対!」

 

「女の子には優しくするもんだよ。

…っと、言い忘れてたが借金は12億2800万だそうだ。お前の口座から自動的に落とされてくそうだから安心しとけ。それじゃ」

 

「…は?ちょっ待っ…」

 

 

 慌てて垣根が詰め寄ろうとするがすでにそこには二人の姿はなくただ空しく声が響くだけだった。

 どれほど時間がたっただろうか?二人が去ってから微動だにせず呆然とする垣根の前に頭部に環状の金属製ゴーグルをつけた少年が歩み寄る。

 

 

「リーダーこっちはあらかた終わりましたよ。そっちは……ってどうかしましたか?」

 

「…12億…ふっふふふふふふふふふふ」

 

「リーダー!? ちょっ誰かー! リーダーが壊れたー!!」

 

 

 借金の額がショックだったのか壊れたように笑い出し、周囲の人間が何事かと集まってくる。

 しばらく研究所に不気味な笑い声が響き渡っていた。

 

 

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか?
移転前と比べて加筆していますが展開は同じです、別話では改訂もあるのでまた読んでいただけたら幸いです。

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