今回はみんな大好きあの四人組の登場ですよー
第七学区のファミレス、昼時という時間帯でもあることから多くの学生で賑わう店内でテーブル席に陣取り異色を放つ四人組がいた。
「あれ?今日のシャケ弁と昨日のシャケ弁はなんか違う気がするけど。あれー?」
第四位『
「結局さ、サバの缶詰がキてる訳よ。味噌ね、赤味噌が最高」
麦野の隣に座るのはフレンダ=セイヴェルン。ベレー帽を被った金髪碧眼の高校生だ。缶詰を開けようとしているが上手に缶切りが使えないのかしばらく缶詰を睨みつけた後、小型の爆破ツールを使って蓋を焼き切っている。
一方、フレンダの向かいに座っている、涼しげなワンピースを着た十二歳ぐらいの絹旗最愛という少女は、そうした他人の行動を一切気に留めず映画のパンフレットに目を通している。
「上海黄龍電影カンパニーのC級ウルトラ問題作……様々な意味で手に汗握りそうで、逆に超気になります。滝壺さんも見に行きません?」
話を振られたのは絹旗の隣にいる滝壺理后という脱力系の女の子。ピンクのジャージにTシャツとオシャレを投げ出したような恰好をしている。ソファ状の席にだらっと手足を投げ出したまま、どことも知れない所へ視線を彷徨わせている。
「……北北東から信号がきてる……」
彼女たちは『アイテム』。
学園都市の暗部組織で、主な任務は統括理事会を含む『上層部』の監視及び暴走の阻止。『グループ』や『スクール』などと同等の機密レベルを誇る集団である。
「そう言えば聞いたー? 第二位の話。なんか仕事でミスって借金背負ったらしいわよ」
「私はその借金のせいで住んでたマンション追い払われて冷蔵庫工場で超働いてるって聞きましたけど」
「結局、第二位にはその程度がお似合いって訳よ」
「大丈夫。私はそんな第二位を応援してる」
どうやら先日の垣根の一件は各方面に広まっているらしい。本当に冷蔵庫を作っているのかは定かではないが、もし働いているならば瞬く間に工場長にまで上り詰めることだろう。
そんな取りとめもない話をしている四人の隣の席にウェイトレスが客を案内してくる。長身のスーツの男性と手を繋いでいる少女。御門北斗と黒夜海鳥の二人である。対面で座ればいいものをわざわざ抱きかかえるように密着して座っているが、これが二人の当り前なのだろうか。
「こちらがメニューになります。ではご注文がお決まりになりましたらお呼びください」
「ほら好きなもの頼んでいいぞ。腹減ってるだろ?」
「…こんなことでこの前置き去りにしたのを許すなんて思うなよ。そもそも私はしばらく食べなくったって平気なんだ」
「ツンデレだなー。どこで教育間違ったのやら」
「ツンデレじゃない!…こ、この後一日付き合ってくれるなら許してやる」
「はいはい、仰せのままにお嬢様」
またもや黒夜は不平不満を口に出しているようだが、その姿は仲のいい兄妹のような、妹が大好きな兄に構ってほしくて意地を張ってるような微笑ましい光景を連想させる。例によって黒夜は北斗の膝の上に座っているのだから尚更だ。二人は笑顔で仲良くメニューを眺めている。
一方、そんな光景を視界の端に捉えた麦野は先ほどとは打って変わり悪鬼もかくやという表情を浮かべる。不運にも真横に座っていたフレンダはその凄絶な形相を間近で見てしまい、頬をひくつかせ顔色を青ざめさせる。
「ほくとぉぉおおお!! テメェ、この私を一カ月以上も放置しといてなにこんなチビといちゃついてやがんだあ!? ああ゛っ?」
思わぬ人物の登場に驚きの表情を浮かべた北斗だったが、すぐに笑みを貼り付け怒れる彼女と相対した。
「…沈利じゃないか、久しぶり。放置もなにもオレは連絡とれなくなったしフられたと思ったんだけどな」
「あれは仕事でついうっかりケータイを壊したからで…いや、あの後買いなおしたケータイで暗記してた番号にかけてももう使われてないってのはどういうことだ!?」
「あぁ、オレもケータイ壊しちゃってねー」
もちろんタイミング良く北斗のケータイも壊れたなど嘘である。北斗は彼女一人につき一台のケータイを使っており、連絡がつかなくなる、別れた、飽きたなどの理由があるとすぐに解約している。なお、彼は常に複数台のケータイを持ち歩いているが全て最新の小型端末のため嵩張ることはない。
ともあれ、今回のことは麦野には不幸なすれ違いと言えるだろう。もっとも北斗は連絡が取れなくなってもちっとも気にしていなかったが。
そこで自信の頭上で交わされる会話を不快に思ったのか、それとも目の前の人物のことが気になったのか黒夜が会話に割り込んでくる。
「なあ北斗、コイツ誰だ?」
「麦野、こいつらはどこのどいつな訳よ?」
フレンダも麦野と親しげに会話する男性が気になっていたのかグッドタイミングとばかりに話に加わる。彼女にしても麦野がこんなに男と仲良さげにしているのを見るのは初めてだ。
「んー、じゃあお互いに自己紹介と行こうか。麦野もひとまず落ち着いてさ」
これ幸いと北斗も麦野を宥め話題を変える。さすがに怒った彼女を相手にするのは面倒なようだ。向こうもこの場は一旦引き下がることにしたようで、彼女を皮切りに続々と自己紹介していく。
「ちっ、後で詳しく話聞かせてもらうからな! ……私は麦野沈利、第四位よ」
「フレンダ=セイヴェルンよ」
「絹旗最愛です………なんでアンタがここにいるんですか」
「…滝壺理后…」
絹旗だけは黒夜に憎々しげに視線を向けている。それはこちらも同じなようで――
「オレは第六位の御門北斗。君たちには沈利が世話になっているようだね」
「黒夜海鳥。…それはこっちのセリフだぜ絹旗ちゃんよお」
ただの自己紹介のはずが何故か二名の雰囲気が異様に険悪だ。片方は後ろから北斗に抱きかかえられているので台無しではあるが。
「…『成績』もろくに出せなかった劣等性が、見ない間にずいぶんと超大きな口を叩くようになりましたね。第六位の威を借りて調子乗ってるんじゃないですか?」
「あっれえ? 『暗闇の五月計画』の事言ってるう?」
嫌味を口にする絹旗を嘲るように見下した後、ニヤニヤと笑いながら黒夜は北斗の膝から降り、絹旗に相対する。
「あんな研究者連中の都合のいい犬だった優等生の絹旗ちゃんに比べたら劣等性だったかもしれないねぇ。それとも自分には守ってくれる男がいないからってひがんでんのかあ?」
「超殺すッ!」
「図星だからって逆ギレしてンじゃねェよォッ!」
お互いに沸点が低いのか最早二人の雰囲気は一触即発だ。昼間から大能力者同士のバトルが展開されようとしているこの店が哀れでならない。すぐに瓦礫の山になるのが目に見えている。遠巻きに様子を覗っていた先ほどのウェイトレスなど顔が真っ青で今にも気絶しそうである。
だがそんな火花を散らせている二人を余所に北斗はと言えば…
「フレンダちゃんに理后ちゃんだっけ?よかったらアドレス交換しない?」
「…いいよ。よろしくね、みかど」
暢気にアドレスを交換していた。このタイミングで聞く北斗も北斗だがまったく動じずに応じる滝壺も相当のものである。
しかしそんな光景に我慢できないのが一人。
「そんなことより結局あの二人は放置でいい訳!?」
「放っておきなさい。流石に場所をわきまえる程度の分別はあるでしょ」
「ヤバくなったらオレが止めるさ。沈利も交換しなおそうぜ」
「そうね、今度は壊さないでよ?」
焦りまくっていたフレンダだったが、麦野に窘められる。彼女も罵りあう二人の姿を見て醒めたのか北斗と普通にアドレス交換している。
そんなやり取りをしている一方で二人は言い合いから実力行使に移ったようで激しく能力をぶつけ合っている。もちろんそんなことをしていれば周囲に被害が出るわけで…
「ああ!? 私のサバ缶が真っ二つに!? 結局私に被害が来る訳よ!」
「大丈夫、そんなふれんだを私は応援してる」
余波でフレンダのサバ缶が机ごと一刀両断され、続く衝撃で木っ端みじんに四散する。その光景を目の当たりにしてフレンダ涙目になりながら叫んでいる。もっとも、窒素コンビの二人やフレンダとは違って滝壺は実にマイペースであった。
ちなみに比較的常識人である残された北斗と麦野の二人は後ろで店側と損害賠償の話をしていた。
「被害総額がわかりましたらご連絡ください。あそこの金髪が謝罪兼お支払いに参りますので」
「え゛っ!?」
実に哀れである。
第三話をお届けしましたー
この話は少し加筆した程度なので意外と簡単に出来上がりました。
しかし数あるとあるSSの中でもむぎのんが元カノなんて小説なかなかありませんよね(笑)
実はこの主人公意外な人物と付き合っていたこともあります。
まぁ本編では日の目を見る予定のない裏設定なんですけどねw
ただはっきり言っておくとするとこの作品のメインヒロインは黒夜です!
理由は作者の趣味です(爆)
そして垣根ェとフレンダェ…