龍帝になれなかった少年   作:超人類DX

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ちと遅くなりました。


……。うーん、このスタンス故にイチャイチャしかしやがらねぇ


リベンジマッチ

 夏休み……。

 それは恋と出会いの季節。

 プールに行けば水着のおんにゃのこ。

 夏祭りに行けば浴衣なおんにゃのこ。

 

 そんな子は大体心が普段よりオープンであり、そこをうまーく運べばお持ち帰りが出来る!

 故に俺は夏休みが大好きであり、ナンパの為に全力を尽くすのだ! ぬははは――――――

 

 

「夏休み開始から一週間目だが、一誠の戦績は?」

 

「256戦256敗なのだー!!」

 

「…………………」

 

 

 は……はは………はぁ。

 

 

「よくまぁ毎年毎年懲りもせずだぜオメーは」

 

「虚しくはならないの?」

 

「…………………………。時折ちょっとだけ」

 

 

 出会いの夏なんぞというキャッチフレーズなんて全部嘘だ。

 中一の頃から今まで何度となく頑張っておんにゃのことの出会いを求めてきたけど、出会った試しもない大人にもなれやしない。

 名瀬と古賀が何かしてやったり顔のニヤケ顔で俺を煽ってるが、ここ一週間のナンパライフをコイツ等は本当に邪魔をしなかったので言い返すことも出来やしない。

 

 故に結構凹んでしまう。

 

 

「がっつき過ぎもあるけど、普通の人間からすればお前って軽すぎというか遊び人に見えるから警戒されんだよ」

 

「一に誠と書いて一誠って名前なのに?」

 

「うん、正直名前負けしてるよねイッセーくんって」

 

「おっふ……古賀……さん……。今の言葉は結構心に来たぞ」

 

 

 挙げ句の果てに見た目以外はおんにゃのこらしさ皆無の変人女二人に駄目出しされると来た。

 ホントまじで凹むわぁ……。

 

 

「そろそろ腹括れよ? オレと古賀ちゃんの二人でハーレムじゃねーか。よ、色男ー」

 

「アタシが全力で抱き着いても平気なのってイッセーくんくらいだしねー?」

 

「冗談じゃねーよ。

エセ根暗とバッタライダー擬きなんてお先真っ暗じゃねーか。あぁ……普通のおんにゃのこが恋しい……」

 

 

 何の柵も後ろめたさも無く俺に近付ける女がこの二人って……いや、良いんだけど複雑だぜ。

 

 

 

 十三組じゃないイッセーくんは、アタシや名瀬ちゃんと違って夏休みの宿題がある。

 でもイッセーくんは放っておくとそれらをしようとはしないので、まあ、理由付けって意味で知り合ってからは毎年見てあげる事にしてる。

 

 

「『夏休みとおっぱいの成長比率』――――へっへっへ、今年の自由研究と朝刊トップはこれで決まりだな」

 

「何が決まりだなだ馬鹿――――――いや、ちょっと気になるかも」

 

「いやいやいやいや、駄目だからね? 不謹慎通り越して反省文書かされちゃうからね?」

 

 

 こんな風に、見てないと碌でもない事を平気でしでかしてしまう。

 だから抑止力的な意味合いで、ニヤニヤしてるイッセーくんと釣られそうになってる名瀬ちゃんを止めつつ……ふと思い出した。

 

 

「そういえば今年の夏休みは数学の宿題は無いんだね?」

 

 

 宿題はイッセーくんの家のリビングでやってるんだけど、基本的に出されたもの全てをテーブル上に一旦出すスタンスという感じでやってる。

 それだからこそ気付いたのだが、毎年絶対にある筈の数学の課題書が無いのだ……少なくとも私が見る限り。

 

 

「あぁん? 数学は確かあるぜ、変なドリル渡されたし……んーっと」

 

 

 私の声にイッセーくんはあると答えながら積み重ねていた夏休みの宿題の参考書を漁っているけど……イッセーくんも今になってそれが無いことに気付く。

 

 

「あれ、おっかしいな……。

確かにあったんだけど……む、無い」

 

「鞄はよ?」

 

「鞄? かばん……かばん…………ふむやっぱり無いぜ」

 

 

 無い。テーブルにも鞄にも数学の課題が無い。

 それはつまりイッセーくんが無くしたのか……。

 

 

「あ……あぁー……アレだわ。学校の教室の机ん中だわ」

 

 

 学校に忘れてしまったから……それが無い真相という事になる。

 

 

「アレだな、今年の数学の宿題はやんない方向にするか」

 

「駄目だよ! ちゃんと取りに行く!」

 

 

 基本的に不真面目なイッセーくんはヘラヘラしながら言うので、アタシはピシャリと取りに行けと命じる。

 まったく……ホント私か名瀬ちゃんが居ないと駄目人間なんだから……。

 

 

 

 霧島一誠は誰の味方でも無い。

 私と……そしてやっぱり球磨川が引き込もうとしたが『遊びたいから嫌だ』と断られてから一週間目。

 ある程度の対策……つまり日之影前生徒会長の提案である凶化合宿の途中で生徒会戦挙の庶務戦が開始されることになったのだが……。

 

 

「『庶務戦は僕が出るけど?』」

 

「っ!?」

 

 

 早速というか……奴らしいというか。

 過負荷(マイナス)側で出てきたのは球磨川本人だった。

 

 

「『いやー前々から庶務って言葉に憧れてたんだよねー』『という訳で善吉ちゃん!』『正々堂々フェアーに戦おうよ!』」

 

「ぐっ……」

 

「く、球磨川! 貴様は何処までマイナスなんだ!」

 

 

 マイナスである球磨川……いや球磨川自身に善吉は怖れている。

 だから多分球磨川はわざと善吉とぶつかる様に自身を庶務戦に登用したのが解るが、解っていても腹立たしく感じてしまう。

 

 

「『本当は霧島くんさえ僕とお友達になって貰えたらこんな小細工なんて要らなかったんだけどねー』」

 

「っ!? き、貴様がそれを言うことは、やはり奴は――」

 

「『そうだよ』『ヘラヘラ覆い隠してるつもりなんだろうけど』『彼はまさしくコッチ側の人間さ』『あと名瀬さんって子もね』」

 

「っ!? くじらまでマークしてたのかいキミは……」

 

「『当たり前じゃないか真黒ちゃん』『調べによれば古賀さんのお陰であの二人はどっち付かずの均衡を保ってる様だけどねー』」

 

 

 そうやってヘラヘラしながら霧島二年生とくじ姉について話す球磨川に私は何も言えずに居た。

 確かに……何故か私は初めて見た時から霧島一誠へと踏み込む気がしなかった。

 それは踏み込んだら最後――全てを……私の在り方を変えられてしまいそうだから……そんな漠然とした理由で私は……。

 

 

『いや別に良いし。

マグロ反応っぽいキミに嫌われても俺は全然傷つかねーし』

 

 

 …………。何か頭の中でケタケタと私を指差しながら笑って宣う霧島一誠の姿が出てきたせいで余計ムカムカしてきた。

 あの男はある意味球磨川より理解できない……いや、というより奴は悉く私が『そうなりたい』という願望の先に何時だって先回りしている。

 

 特にくじ姉の件がそうだ。

 あんなにくじ姉が一人の人間に執着する姿なんて見た事が無かった。

 

 それが悔しくてつい因縁付けるみたいにして殴り掛かったりもしたけど、奴はそれすら半笑いで押し潰した。

 手も足も出せずに一瞬で……。喚く子供を押さえ付ける父親の様に。

 

 

「それでは定刻となりましたので、生徒会戦挙の方を始めさせて頂きます」

 

 

 私の先を行き、私の望んだものを嫌味の如く持っている。

 そんな霧島一誠に私は嫉妬している。

 

 

 

 

 

 

 忘れ物をした一誠に古賀と一緒に付き合って学校に来たんだが、そういや思い出した。

 夏休み中に黒神達と球磨川先輩達が何かするんだったよなそーいえば。

 

 

「なにあれ?

校庭のど真ん中に大穴空けてその上に金網敷いて誰か殴りあってね?」

 

 

 夏休みなので、人の居ない教室から宿題のドリルを回収しようと何故か開けっぱなしの正門を通って歩いていた俺達の目に飛び込んできたのは、校庭のど真ん中で変なギミックを施した変な場所で、学ランの男と―――あれは確か人吉って奴か? が、生徒会と……目元を布で隠してる変な男が見守る中戦ってる絵面だった。

 

 

「あ……思い出した。アレって多分生徒会戦挙って奴だよ。

ほら終業式の時に黒神が言ってアタシ達も巻き込まれそうになった……」

 

「あ? ………あー思い出したわ。マジで夏休みの最中にやってんだ? 御苦労様こって」

 

 

 球磨川先輩が一方的に殴られてる姿を見ながら、一誠はどうでも良さそうに皮肉を飛ばしてる。

 まあ、コイツにしてみればどっちが勝とうが負けようが知ったこっちゃねーもんな……そういう奴だし。

 だがちょっと気になる事がひとつ。

 

 

「お前の事だから球磨川先輩側を支持するかと思ったんだがな。ほら、終業式の時に宣った笑えねーマニフェスト擬きとか聞いてたし」

 

 

 見るからに『どっちでも良い』って顔の一誠に、終業式の時の事を蒸し返しながら聞いてみる。

 オレも何気なく聞いてたんだが、冗談っぽく壇上でのほざいてた球磨川先輩のマニフェスト擬きとか何となく好きそうだったからな。

 

 

「あぁ……確か直立二足歩行の禁止だとか何だーとか、不純異性交遊の義務化だ奉仕活動の無理強いだー……だっけ?

 別にそんなもん聞かされたからって支持なんてしないぜ」

 

 

 が、一誠からは意外な返しをしながら眠そうな表情を変えずに黒神達の様子を眺めていた。

 

 

「えー? イッセーくんなら飛び付く話なのに……何で?」

 

 

 まさかの返しに古賀ちゃんも驚きながら聞くので、オレも黙って答えを待つと、一誠は『へっ……』っと鼻で笑いながら言った。

 

 

「義務だ強要だでおんにゃのこにそんな真似したってつまんねーだろ?

やっぱりそういう事は自分(テメー)の実力で獲てこそ、そこに至った達成感は半端ねーし―――って、これこの前言ったような……」

 

 

 『そもそも不純異性交遊にしても既にやってる奴だってこの学園にわんさか居るだろうしよ……ケッ!』……と何故か悔しそうにしやがら締める一誠にオレと古賀ちゃんはコイツらしいと思いつつ納得した。

 

 考えてみれば、一誠って本気で女子が嫌がる事になれぱ大人しく引き下がる奴だったっけか。

 その代わり、贔屓する差が露骨に激しいが。

 

 

「うぐぁぁぁぁぁっ!?!?!?」

 

「あ、ボコボコにしてた人吉後輩くんの断末魔だ。何されたんだ?」

 

「さーな。金網が下がって見えなくなってるせいでわかんねーよ」

 

「ちょっと普通じゃない絶叫なんだけど……だ、大丈夫なの?」

 

 

 つーか奉仕活動やら不純異性交遊を一誠が望むなら構わずやるしな。

 考えてみれば球磨川先輩の似非マニフェストに魅力を感じないのも納得だが……。

 

 

「大丈夫だろ。

人吉後輩くんって結構粘り腰とかあるし、多分勝つんじゃね?」

 

 

 何と無く……ホントに何と無くだが、オレ達も奴等の騒動に巻き込まれてしまう様な予感がしてなら無いと、忘れ物をさっさと回収し、何故か黒神が『乱神モード』って奴になって暴れようとしてる姿を最後に俺達は学園を後にする。

 

 そして僅か数時間後……。

 

 

「頼む……何でもする……! 何でもするから……私達に力を貸してくれ!」

 

「…………えー?」

 

「わ、わざわざイッセーくんの家に来てまで……何かあったの?」

 

「…………」

 

 

 オレの予感は、泣きそうな顔をしている黒神がイッセーの家に来たという形で当たってしまった。

 あーあ、黒神の顔からしてあの人吉っつー奴に何かあったな?

 

 

 

 

 名瀬……いや、『今は』くじら状態だが、そのくじらも多分予感はしてたんだと思う。

 

 

「頼む……もう頼れるのは貴様達しかいないんだ! 何でもするから協力を……!」

 

「ん? 今何でもするって――――――――うっわ、テンションが全然上がらねぇ」

 

「取り敢えず黒神も落ち着きなよ? 昼間球磨川って人と人吉の戦いから何があったの?」

 

 

 何でもすると……まぁ一応女の子である黒神後輩ちゃんに言われてるんだが、全く以てテンションが上がらないのは仕様なのか。

 さっきからマジで追い詰められた顔して俺のの住むマンションの部屋の前で連呼してる黒神後輩ちゃんを取り敢えず……気は進まんけどご近所に変な誤解されても嫌なので中に入れてお茶を出しつつ話を聞くだけ聞いてみる事にする。

 

 

「私を抜かした生徒会が全滅した……」

 

「おおっと、まさかの展開っすね」

 

 

 若干落ち着いたのか、妙に目立つ生徒会の制服を着ている黒神後輩ちゃんはヘシ折れ掛かった顔をしながら自分の仲間がほぼ病院送りにされたと告白してきた。

 

 やっぱり人吉後輩くんの断末魔は気のせいじゃなかったんだな。

 

 

「善吉は毒蛇の神経毒を浴びて意識不明の重体。

阿久根書記、喜界島会計、前生徒会長で協力者だった日之影前会長も球磨川の仲間にやられてしまった……」

 

「あ? おい待てや。

イケメンあんちくしょーな阿久根君と前生徒会長とやらはどうでも良いとして、喜界島後輩ちゃんが病院送りだと? キミ何してたわけ?」

 

「……………」

 

 

 全滅は解ったが、病院送りに喜界島後輩ちゃんがされたのは聞き捨てならなかったので、ちょっとだけ睨んで

問い詰めるも、黒神後輩ちゃんは何時もの覇気すら無く項垂れているだけだった。

 

 

「一誠、今そんな話じゃねーだろ。全滅したから黒神は此処に来たんだ。

となれば答えは一つだろ?」

 

「代理で私達に生徒会戦挙に参加してほしい……そうだよね黒神」

 

「……………」

 

 

 が、くじらにたしなめられ、古賀が代わりに問い掛けると、黒神後輩ちゃんは項垂れながら頷いた。

 

 

「おいふざけんな。テメーの仲間が病院送りにされる重症を負わされたからって、今度は俺達も病院送りにされる危険性を帯びたくだんねーもんに出ろってか? ちょっとそれはありえねーなオイ」

 

 

 が、そんなもん嫌に決まってる。

 そもそも何だよ神経毒って? 選挙じゃねーじゃねーだろ最早。

 

 

「最悪俺は構わない……。

だけど、くじらと古賀をそんなくだんねーことで病院送りにされたなんて事になったら、テメー等が争ってる元ごとぶっ壊して更地にするぜ俺は?」

 

「……………」

 

 

 らしくない……それほどまでに追い込まれたのは察するが、俺も俺でこの二人をそんな訳のわかんねー状況に好き好んで送り出すなんて事は嫌だ。

 そもそもテメーの判断ミスでそうなったんなら大人しく敗けを認めて折れちまえ。

 

 

「き、危険は解ってて頼んでいる。

貴様は性格はアレだが、こういう事ならある意味誰よりも信用できるし……」

 

 

 だが黒神後輩ちゃんも後輩ちゃんで譲れないもんとやでもあるのか、此処に来てまさかの名前二つを出しながら再度頼んでくる。

 そんなに球磨川センパイ達に負けたくねーもんかね……。

 

 

「どうするんだ?」

 

「どうするも何もな……。

俺一人がコイツ等のゴタゴタの生け贄にでもなれば良い話ではあるがよ」

 

「え、ということは黒神に協力するの?」

 

「どうかな、俺はそんな事に時間を割く位ならナンパしていたいからパスしたい心境だったりする。

それともお前等のどっちかが出るか?」

 

 

 俺は嫌だけど、二人が出たいってんなら別に止めやしない。

 その際は全力でフォローするだけだしな。

 

 

「「………………」」

 

 

 くじらと古賀が顔を無言で合わせ、数秒ほど見つめ合う。

 そして互いに頷いたかと思いきや、不安そうにしている黒神後輩ちゃんへと向き――――

 

 

 

 

 

 

「本当に霧島二年生に傷を負わせれば、三人とも協力してくれるくれるのですかくじらお姉さま?」

 

「おう、出来ればの話だがな」

 

「………」

 

 

 私は今追い込まれていた。

 善吉が庶務戦で勝利をしてくれたが、球磨川の策で一度完全に死ぬほどの重症を負い、仲間達は私達が球磨川に注目させられている隙に潰されてしまった。

 そのせいで残りの書記、会計、副会長戦はこのままでは実質敗けとなってしまう。

 

 だから私は、形振り構わずとばかりに霧島二年生とくじ姉と古賀二年生に協力を仰ぐ為に訪れたのだが……。

 

 

「黒神の完成(アブノーマル)が一誠の無神臓(アブノーマル)に食い下がれるか……それをもう少し見て確かめたいんだ。

満足行く結果を出せたら協力してやるぜ黒神よ」

 

「俺に全く得が無いんだけどな……まぁ良いけどさ」

 

「……………」

 

 

 くじ姉が提示してきた条件はとてつもない難易度の高さだった。

 辺りが既に暗くなって無人となっていた近所の公園までやって来た私は、めんどくさそうに突っ立っている霧島二年生を鋭く見据えながら構えた。

 

 碌に戦えもせず私を叩き潰してきた霧島二年生に勝てとまでは言わぬが、膝を付かせろとは……。

 

 

「ほら何時でも良いぜ黒神後輩」

 

「……っ」

 

 

 恐ろしく難しい。

 私の上を歩く霧島二年生に膝をつかせるだけでも、今の私に出来る自信なんて無い。

 無いが、此処で諦める訳にはいかない。

 何としてでもこの生徒会戦挙だけは勝たなければならず、勝つためにはこの三人の協力が必要不可欠なのだ。

 だから……だから――

 

 

「行くぞ、霧島二年生!!」

 

 黒神めだか――改神モード

 

 

 負けるわけにはいかない。

 出し惜しみ無し、最初から全力全開となった私はダラダラとした出で立ちで立つ霧島二年生に向かって渾身の一撃を見舞おうと拳を突き立てる。

 高千穂三年生との戦いで修得の、未完成な黒神ファントムも惜しみ無く使う。

 

 だが――

 

 

「良いねそれ……俺も覚えようかな」

 

「うっ……!?」

 

 

 霧島二年生に届く事はなく、当たり前のように彼は最高スピードに乗って突撃した私の額を押さえ付け、薄く嗤っていた。

 

 

「くっ……!」

 

「お、即動くか。しかもこの動きは……」

 

「わ、私の動き……」

 

「へぇ、古賀ちゃんの異常駆動を完成させたのか黒神は」

 

 

 呆ける暇など無いと意識を切り替え、あらゆる角度から霧島二年生を倒そうと攻撃を仕掛けるが、それでも動じず……その場から一歩も動かずに私の攻撃は片手で捌かれていく。

 

 

「くっ……ううっ!!」

 

「強いな……単純に強い。この前小競り合った時より更に強くなってるじゃないか……いやはや末恐ろしいね」

 

 

 どれだけ攻撃を加えてもダメ。

 暗器の類いで騙し討ちをしても悉く通らない。

 これまで二度に渡って霧島二年生によって叩き伏せられてきた私だが、今初めて此処で思いしった……。

 

 

「最初キミの使った凄い早い奴ってさ――」

 

 ―改神モード・無神臓ver―

 

「!? ぐはっ!?」

 

「ふむ、こんな感じでオーケーかい?」

 

 

 球磨川以上に、霧島二年生は私の心を容易くへし折れるんだと。

 私の遥か……いやまるで違う次元の人間なのだと。

 私の黒神ファントムを……それも自身に受けるダメージは一切無い謂わば完全版ともいうべき状態で楽々と再現して見せた霧島二年生に殴られた私は地面をボールのように何度もバウンドしながら私は……ちょっと泣きそうになった。

 

 

「う……くぅ……!」

 

「そら立ちなよ。今のを食らってキミも新しい感覚が掴めたんだろ? これで自爆技じゃ無くなったぜ?」

 

「く、か、簡単に言ってくれるなよ霧島二年生……!」

 

 

 一撃で全身がガタガタになってしまい、満足に立ち上がる事すら出来なくなって膝を折る私に霧島二年生は余裕な表情だ。

 くじ姉を盗られた気持ちもあるせいで、私は今まで以上に悔しく、思わず恨み言の様に言い返してしまう。

 

 

「古賀やくじらなら平然と向かってくるぜ黒神後輩ちゃんよ?」

 

「慣れたしな、寧ろ気持ちいいくらいだぜ」

 

「それ名瀬ちゃんだけだよ? 私違うよ?」

 

 

「う、あぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

 悔しい……悔しい悔しい悔しい!

 自分の弱さが……! 自分の要領の悪さの何もかもが悔しい!

 

 

「……む」

 

「……。おい、黒神の奴キレてねーか?」

 

「ひょっとしてマズイ……?」

 

 

 もっと力があれば守れた……! 霧島二年生の様な力があれば守れたんだ!

 

 

「……。おっと、完成の意味が少し解った気がするぜ」

 

 

 負けたくない。此処で負けたらまた私は……! 私は!!

 

 

「うわぁぁぁっ!! 霧島ァァァァッ!!」

 

 

 だから勝つ。

 勝って……守るために私は……!

 

 

「おいおい、そんな殺意剥き出しにされても困るぜ」

 

「フーッ!! フーッ!! 貴様に勝つ!」

 

 黒神めだか……完成(ジエンド)ver無神臓(インフィニットヒーロー)

 

 

 貴様を越える!

 

 

「黒神ファントム……完成版!」

 

 

 越えて――

 

 

 

 

 

 

「まあ俺のこれは完成させた途端に意味が無くなる奴だから、キミが強くなったのは全部気のせいだけどね……残念でした」

 

「え……?」

 

 

 私はまた叩き潰された。

 

 

「くじらか古賀でも無い限り、誰も俺の性質は御せない。例えスキルを完成させられるキミだろうがな! そら、頬っぺたつねつねじゃい!!」

 

「いひゃいいひゃい!?」

 

「まあ、成長したらわかんねーが、今のキミでは無理だよ」

 

 

 

 

 一誠の勝ちか。

 黒神がもし一誠の異常性を覚えて完成させたら……なんて思ったが、やはり完成と無神臓は似て非なるもので最悪の組み合わせだという予想は当たりだったな。

 

 

「まあ、キミには借り――はねーが、後輩にそこまで頼まれてるのに無下にする訳にもいかんからな。しょうがねぇから出るだけ出るよ」

 

「しゅ、しゅまん。恩に着る……頬っぺたがヒリヒリする」

 

 

 黒神のレベルが足りないという一誠の言葉通りなら、その内黒神も一誠と同じ領域になれると思うが……何か微妙にムカつくのは気のせいじゃない。

 

 

「チッ、もし黒神が一誠と同じ領域に入って誰よりも理解できる様になったら嫉妬で気が狂いそうになるぜ」

 

「何年経ってもそこまで行けないからね……それはわかるよ名瀬ちゃん」

 

 

 涙目でケタケタ笑ってる一誠を睨んでる黒神がある意味一誠に近いなんて、世の中ってのは不条理だ。

 不条理過ぎて泣きそうにすらなるぜ。

 

 

「で、では明日学園の生徒会室に来てくれ……」

 

「おーう、変態に気を付けて家に帰れよー」

 

 

 一瞬だけだが、黒神は確かに一誠の領域に侵入していた。

 今は完成の邪魔があって一誠の異常性は黒神の中から排除されたみたいだが……くそ、実験目的でけしかけたのはオレとはいえ、こう意図も簡単に見せ付けられると悔しいもんだ。

 

 

「……………。あーぁ、ノリで引き受けたけどもう怠くなってきたわ」

 

「まあでも、ああまで言われちゃうと帰れなんて言えないしねー」

 

「今年も童貞のままっぽいし……はぁ、どうしてこうも色褪せた青春なんだか」

 

「だから卒業させてやるって言ってんだろうが、このドヘタレが」

 

 

 が、まぁ良い。今回の実験で掴めた所は掴めたんだ。

 何れ自分自身を改造してまでもコイツに追い付いてやる。

 奇しくも、過負荷共も観察出来る様になったしな。

 後はそうだな――この言うだけ番長のヘタレ野郎をどうその気にさせるかだな。

 

 

「この前は名瀬ちゃん泣かせた挙げ句結局何にもしなかったよねイッセーくん」

 

「だってあれ只の冗談だし、お前で卒業したら人生の墓穴コースじゃんかよ。

それにオメーの兄貴と妹に知られたら末代まで祟られそうだわ」

 

「ケッ、普段気にしてねーじゃねーかよ」

 

 

 のらりくらりと逃げるこのヘタレ一誠を取っ捕まえる。

 それが一番の目的だし、これだけは何が何でも叶えさせて貰う。

 

 

「気にしはしねーけどもよ……。つーかこの際聞くけど、くじらも古賀も俺の事好きなわけ? 一々誘うような台詞吐くけどよ」

 

「今の台詞だけは本当に酷いよイッセーくん……」

 

「お前はオレと古賀ちゃんが誰彼構わず誘う様な奴に見えるのかよ? この前の意地悪レベルに傷付いたぞ」

 

「お……おう? す、すまん……」




補足

まだ届かない。
が、まあ……ナンパも失敗続きで飽きたので手助けはする。


その2
ホームレス時代から一緒に居すぎて、今更照れ臭かったりする一誠は、多分肝心でヘタレます。
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