龍帝になれなかった少年   作:超人類DX

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これ、多分書き直すかも。

てのも……うん。


覚醒――否、取り戻し

 昔、まだ俺が何も無かったクソガキだった頃にソイツは現れてこう言った。

 

 

『おかしいな、何故イッセーだけ俺を他人と記憶してるんだ? まさかまたクソ神のミスか……ったく手間の掛かる』

 

 

 俺と同じ背格好、俺と同じ声、俺と同じ顔。

 まるで鏡を見ている様な……されどその表情は人を陥れようとする悪意に満ちた顔をした男が現れてから、それまで当たり前だと思っていた全ては変わった。

 

 

『ま、待ってよ父さん母さん! お、おれがイッセーじゃないか!』

 

『? キミもイッセーなのか? うちの子とソックリに加えて名前まで一緒だとはね』

 

『何処の子かしらね……』

 

『なっ……!』

 

『ククク』

 

 

 まず、当時の親があっという間にソイツに取り込まれた。

 突然現れた男を自分の子と認識し、俺を他人と認識した。

 

 

『ま、まってイリナ! お、おれが……!』

 

『? キミだぁれ? イッセーくんの弟?』

 

『いや俺と似てるけど知らない子だよイリナ……ふふ』

 

 

 それまで仲の良かった子が奪われた。

 

 

『心配しなくても俺が兵藤一誠として生きるから、お前は安心して居なくなれ。

まあ、孤児が妥当かな?』

 

『ふ、ふざけ――いだっ!?』

 

『雑魚でガキが調子に乗るなよ。赤龍帝ですらないカスが』

 

 

 そして抵抗する間すら与えられずに、俺は名前から何から全てを奪われた。

 

 

『……。おれは、だれなんだ?』

 

 

 自分が解らなくなる。

 親は俺を一誠とは呼ばず、勝手に沸いて出てきた奴を自分の子として認識し、兵藤一誠としての何もかもは全て奴に奪われた。

 故に俺は自分の在り方も見失い、帰る家も無くした状態でただ宛もなく、腹を空かせながらさ迷い、気付けば流れの急な川の淵へと無気力な状態で立っていた。

 

 

『疲れちゃったよ。変な奴に全部取られて……もう』

 

 

 そこからの記憶は曖昧だった。

 何せほぼ自然に、覚悟も何も考えないまま川に飛び込んだのだから。

 冷たい水が全身を包み、息苦しさを感じながらやがて何も考えられずに意識を手放した俺は思った。

 

 

『殺してやる……』

 

 

 俺から全てを奪ったアイツを。

 アイツを簡単に肯定するこの世界の全てを許さないと

いう殺意を孕みながら、俺はあの世界での短い一生に終止符を打った。

 

 だが、それでも俺は生きていた。

 死に際に抱いた精神から生まれた二つのスキルにより『あの女』を引き付け、あの女の手によりクソ共が居ない世界で独り生きる道を歩み……そして変人女と出会って――

 

 

「く、そ……がぁっ!!」

 

「っと、そんなもん投げても無駄――っ!? 隠れたのか? チッ、往生際が悪いな」

 

 

 そして今、俺はその変人女を前にクソダサい姿を晒してしまっている。

 あぁ……ホント俺はバカ野郎だぜ。

 

 

 

 

 他人の古傷を開き、更には心の傷まで開く過負荷(マイナス)か。

 なるほど、なるほどな……。

 

 

「だとしたら、これ程までに一誠にとって相性最悪な相手はいねーわな」

 

 

 事前に調べでもして一誠に伝えてれば、ふざけもせずあっという間に捻って終わりだったろうに、全く……遊び癖が災いしてんじゃねーかバカが。

 

 

「く、くじ姉は知ってるのですか? 霧島二年生の心の古傷を……?」

 

 

 どうしたもんか……あの志布志って奴から隠れやがった一誠を完全に向こう側へ連れていかせない為にどうしようかと心配そうに冷凍庫の様子を眺めている古賀ちゃん横に考えていると、球磨川と繋がれた黒神とついでに人吉と人吉の母親が焦った顔をしながら聞いてくる。

 

 はっ、まあ、コイツ等の前じゃ一誠は基本煽るような態度しかしてなかったしな……あんな死にそうな顔をしたアイツの姿はある意味でショックだろうぜ。

 

 

「知らねーよ。アイツが何を怯えてるのか……その原因である過去なんてもんは」

 

「『ふーん?』『名瀬さんと古賀さんは友達の癖に霧島くんの事を知らないんだ?』『僕なら彼の心の傷を無かった事にしてあげられるんだけどなー?』」

 

 

 球磨川が意味深に笑いかけてくる。

 無かった事にね……。人吉と戦った時に浮き彫りと無かった球磨川禊の『全てを無かった事にするマイナス』なら確かに不可能じゃないのかもしれないが……。

 

 

「根掘り葉掘りアイツを知ったから親友ですなんてもんはガキの考えそうな事だな」

 

 

 くだらねーよそんなもん。

 

 

「オレがアイツと知り合ったのは、あの家を出て直ぐだった。

ごみ箱から残飯を漁り、周りから薄汚れたガキだと罵倒され、石を投げ付けられた憐れな姿を晒して、それでも自分を不幸だなんて思っちゃ居ないと堂々とオレに半笑いで言ってのけた男――それが一誠という男だ」

 

「…………」

 

「ごみ箱って……あの子に親は?」

 

「さぁ? 本人は『捨てられた』と言ってるから居ないんじゃねーか?

まあそんな感じに運命的な出会いを果たしたオレとアイツは、こうして楽しく今まで無事に生きている訳なんだ」

 

 

 そうだ、いくら夢に魘されてる姿を見ようとも、それについて適当ほざいて辛そうな顔して誤魔化そうとしている姿を見せられても、本人が話したくなければオレは構わない。

 

 

「だからオレはアイツの過去に興味はないし、アイツが自分から語ろうとしなければ聞くつもりもない。

だってよ――古賀ちゃん」

 

「うわー足が痺れて縺れてしまったよー(棒)」

 

 

 オレにとって大事なのは――と、一旦此処で一息入れながら古賀ちゃんに目で合図を送り、それを受けた古賀ちゃんは頷き、下手くそな小芝居を鋏ながら冷凍庫の強化ガラスをぶち破る。

 

 

「っ!?」

 

「れ、冷気がこっちにも!」

 

「『……』」

 

 

 古賀ちゃんの拳でガラスが破られ、凍り付く様な冷気をその身に浴びつつ、顔に巻いていた包帯を自分で取っ払いながらオレは言った。

 

 

「隠し事をしてる事に憤慨なんかしない。

だってオレは、オレの事を変人だけど大事な奴だと言ってくれたアイツが――大好きだから」

 

 

 過去なんて関係ない。

 今の一誠と一緒であるなら全て関係なんかない。

 過去のトラウマを隠したければ、オレはその隠し事をする一誠をそのまま……愛してやる。

 オレ自身の価値観を笑ってねじ曲げてくれやがったバカ野郎を想いながら、オレはオレの正直な気持ちをぶちまけてやった。

 

 

「ま、アイツは素直じゃねーから『全然嬉しかねーよ』と宣うんだろうがな……クックックッ」

 

「そこがイッセーくんらしいんだけどねー」

 

 

 だから過去なんて知らないままで結構だ。

 オレの知らないアイツの過去をほじくり返されてアイツが苦しんでるってんなら、オレはそのままアイツに対して言葉を投げ掛けるだけ……。

 

 

「オイコラ一誠! リスクも考えないでオレ達以外の女に現を抜かすからそうなったんだ! 自業自得だバカ!」

 

「そうだそうだ! この浮気者!」

 

 

 昔、オレに対してアイツが言った様に、今度はオレがアイツに言ってやる。ただそれだけだ。

 

 

 

 オイコラ一誠! リスクも考えないでオレ達以外の女に現を抜かすからそうなったんだ! 自業自得だバカ!

 

 そうだそうだ! この浮気者!

 

 

「だってよー霧島先輩? いい加減逃げ回ってないでぶちのめされちまえよー?」

 

「………」

 

 

 心の傷を開かれ、それまで封じてきたトラウマにより一気に精神がすり減らされた一誠は、隙を見て逃げ隠れしながら精神を持ち直そうとしたが、一度開かれたトラウマによりダメージはそう簡単に黙らせる事も出来ず、無神臓(インフィニットヒーロー)を実質封じられた状態のままだった。

 

 しかし今しがた聞こえた……この世界に於ける一誠の心の拠り所とも言うべき二人の少女の声が僅かながら一誠を正気に戻した。

 

 

「オメーがどんなトラウマを持ってるかなんてのは知らねーし聞こうとも思わねぇよ。

そらそうだよな? 何時も毎朝夢に魘され、真っ青で自殺しそうな顔でオメーは何時だって『ハーレムの夢見てたらヤンデレに鉈でNice boatされた』とか訳のわかんねー事をほざくだけで話さねーもんな?」

 

(……)

 

 

 ぶち破られた強化ガラスの向こう側から聞こえるくじらの声に、一誠はトラウマの影響で強張ばる表情を少しだけ伏せる中、くじらといたみは続ける。

 

 

「だからオレも古賀ちゃんもお前に何があったかなんてのはこれからも絶対に聞かねーよ」

 

「聞いたって私達にそのトラウマを癒せる事なんて出来ないもん!」

 

「そうだ、オレも古賀ちゃんもそんな力なんて無い。

だからオレたちに言えるのは一つ――」

 

 

 

 

 「オレ達にとって出会ってから今まで一緒だった一誠が 全てだ! バカでアホでドヘタレな一誠がオレも古賀ちゃんも大好きなんだよ。

 だから――そんな一年坊に負けんじゃねーよ!!」

 

 

「……」

 

 

 言ってしまえば只の戯れ言。

 言った所で根本的な解決はしない。

 だが……しかし。

 

 

「バカなのはお前等だよ。

こんな貧弱精神を露呈してるのにまだ幻滅も嫌うもしねーのかよ……」

 

 

 その言葉は――

 

 

「ったく……いっそ嫌ったら全部否定して逃げてやったのによ……くくっ」

 

 

 

 

 

 

「そこまで言われたら応えてやらなきゃあな……クソッタレが!」

 

 

 マイナスへと引きずり込まれそうになっていた己が精神を持ち直す切っ掛けとなる。

 

 

「とはいえ、あんなもんをもう一度食らったらヤバイ。

今度は床にゲロぶちまける勢いでぶっ壊れちまう……」

 

 

 寒さが原因ではない、未だ震える身体に鞭を打ちながら立ち上がった一誠にもう一度心の傷を抉られて無事でいられる保証は無いものの、それでも尚ばか正直に自分を信じている二人の少女に応える為に立った一誠は考える。

 心の傷を開かれても大丈夫な精神力を保つ方法を……。

 

 

「……………」

 

「おーおー? わざわざ二人の涙ぐましい応援に姿を晒してくれるとは嬉しいよ霧島センパイ。

が、もう一度食らったら今度は気絶じゃ済まされねぇよな?」

 

 

 探し回る飛沫の前にヨロヨロと立ちふさがった一誠は、考え、考え考え、考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え考え――――考えた。

 

 

「っ!?

ま、まだ霧島二年生に精神ダメージが残ってるという顔が……」

 

「ま、まずい! 精神ダメージが先輩に有効だという以上、また食らったら今度こそ……!」

 

「『……』『どうするんだい霧島くん?』」

 

 

 めだかも善吉も……そして何かを期待しているような眼差しをする球磨川を前に一誠は考えた結果……何の心配もしてませんなあっけらかんとした表情を見せる素顔状態となったくじらといたみに一瞬視線を向ける。

 

 

「カッコつけて出て来て、即さようならだ霧島センパイよぉぉぉっ!!」

 

(案の定ってツラしやがって……わーったよ二人とも――)

 

 

 飛沫が獰猛な笑みと共に飛び掛かるのと同時に、二人の表情をその目に焼き付けた一誠は決意する。

 

 

幻実逃否(リアリティーエスケープ)

 

 

 封じ込めてきたネガティブ因子である過負荷(マイナス)を使う事を。

 そして――

 

 

「決めた、キミは絶対に泣かす。だから来いよ、赤龍帝の籠手(ブースデッドギア)……!」

 

『Boost!』

 

 

 嘗て奪い取られた筈の力である、霧島――否、兵藤一誠を兵藤一誠足らしめる本来の力を。

 

 

「っ!? な、何だその腕……!?」

 

「は……使えてしまうのが嫌になるなオイ」

 

 

 今一度だけ兵藤一誠へと戻って使用する覚悟を、動揺する面子を尻目に決意した。

 

 

「何の因果かこれは俺の中に戻ってきた訳だが、相変わらず趣味じゃねーやコレは」

 

「な、なんだと?」

 

 

 赤き龍帝……。

 神をも滅ぼす力を保持する神滅具に数えられる――異常でも過負荷でもない神器の力。

 当然この力はこの世に一誠だけしか持ち得ない異界の力であり、知らない面々からすれば怪奇な出で立ちにしか見えず、過負荷(マイナス)面子ですら左腕に纏う真っ赤な装甲に驚愕している。

 

 

『Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!』

 

 

 淡く輝く腕から聞こえる声が、狂った様に同じ言葉を連呼する中、ふざけた態度を一切引っ込めた……敢えて云うなら冷たい殺意が籠った瞳で飛沫を見据えた一誠はごうごうと冷凍庫の起動音をBGMにしながら静かに言った。

 

 

「おい特盛おっぱいちゃん。

最悪これで死んだら饅頭くらいはお供えしてやるよ……だから遠慮しないで逝きな」

 

 

 明らかに先程までの取り乱しが消え失せている一言に、唐突すぎて訳が分からないといった飛沫は吠えた。

 

 

「な、何を言ってるんだ!

そんなもんやらせる前に精神ダメージをもう一度……!」

 

 

 あの腕が何なのかは知らない。

 だが精神が脆いと先程で理解した飛沫にしてみれば、当然とも言える対処である。

 だがしかし、そんな飛沫の言葉に対して一誠は静かに笑うと……。

 

 

「無理だな、その前にキミのスキルは否定した。故にキミはスキルを使えない」

 

「なっ!?」

 

 

 左肩まで覆われた真っ赤な……何かの装甲を思わせる得体の知れないものに驚きつつも、その前に手を打とうと一誠の眼前に手を翳した飛沫だが、平然としている一誠に――そして己のスキルである致死武器(スカーデッド)が『使えない』事に驚愕する。

 

 

「ば、馬鹿な! な、何で……!? ま、まさかその変な腕で……!」

 

 

 過負荷(マイナス)の中で一、二を争える程に己のスキルを制御できていた飛沫は、突如として使えなくなった事に一誠の腕に関係があると叫ぶが、一誠はふんと鼻を鳴らしながらそれを否定する。

 

 

「これは単に使用者の力を倍加させる神器(セイクリッドギア)という玩具だよ。

だからこれは無関係だ……」

 

「な、ならどうして!」

 

「簡単だ……単純にキミの持つスキルを否定して一時的に消しただけだよ。

あんまり使うと碌な目に合わないから使わない事にしてたんだが――」

 

 

 この際遊ぶのも出し惜しみもやめることにしたから使う。

 当たり前の様に使えたスキルが使えず、徐々に一誠に対して恐怖を抱き始めたのか、先程までの勢いが完全に引っ込み、一歩一歩後ずさりする飛沫に対し、一誠は歯を剥き出しにした……さながら悪魔の様な笑みを浮かべながら宣言した。

 

 

「今在る現実をねじ曲げて否定し、己の中で作り上げた夢へと強制的に書き換える逃げる為だけのスキル、 幻実逃否(リアリティーエスケープ)。それが俺の過負荷(マイナス)だ」

 

 

 左に龍帝の籠手と巨大な釘を。

 右に巨大な杭を……。

 

 

「故に今キミは俺にスキルを否定されて消された……単なる特盛女子高生だ。

喜べ……キミはこれで幸せになれるぜ? その前に死ぬかもしれんがな、クックックッ……!」

 

「っぐ……ふ、ふざけ――がっ!?」

 

 

 狼狽える飛沫の全身に刺して地面に縫い付けた一誠は、呆れるほどにドSな顔だったとか。

 

 

「『なにあれ?』『過負荷は予想してたけどあんな漫画に出てきそうな腕は知らないんだけど』」

 

「い、いってる場合ですか! このままだと志布志さんが……!」

 

「『いやー』『これ無理だと思うよ』『最悪殺されても無かった事に―――いやその前に霧島くんに否定されたらその時点で詰んじゃうかなー』」

 

 

「デ、デビルかっけぇ……なんだよ赤龍帝の籠手って! あんなの見たことねーぞ!」

 

「……。ビックリ人間ショーを見せられてる気分というか、やはりこの前も遊ばれてたんだな私は……」

 

「あれって異常でも過負荷でも無いわね……というかそういった概念とは別の威圧感があるわ」

 

 

 

 

「ほらな、あの変な腕については予想外だったが、これで何とかなっただろ?」

 

「わわ……これは後で説明を求めないとね名瀬ちゃん」

 

「あぁ……神器(セイクリッドギア)なんてもん聞いたことも無いからな。

微妙にショックだぜ……気付けなかった事に――」

 

「オイいたみにくじらぁ!! この特盛潰して家帰ったら抱き枕になってくれや! 色々と落ち着いて寝れないかもしれんし!」

 

「…………おー オメーから言われるのは初めてだが、毎日でも良いぜー つーか寝惚けたオメーにベッドに引きずり込まれて全身まさぐられてたりしてるし、責任とれよー」

 

 

 

 霧島一誠……。

 トラウマを利用し、新たな領域へ……。




補足

やっぱり心の拠り所が居たから何とかなれました。

そして押し込んでいた+中学時代には実は戻っていたコレを初実践投入です。

基本性能しか使えてませんが、無限の進化に夢幻の力を合わせる事で、禁手も覇龍も必要ないレベルにはエグく、ある意味後々の人外達への対抗馬にもなる、かも。
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