※ちょっと手直し。
今にしてみれば不必要で使うことなんて無いと思ってほったらかしにしていた只の脱け殻だったってのに、世の中はやはり皮肉で溢れているもんだぜ。
「ったく、全部あの女の思い通りってか……マジでやってらんねー」
「な、何を言って……」
使用者の力を倍加させる力。
持っていた故に消された原因。
あのクソ野郎が持っていた筈の力。
龍だか竜だかが封印された代物だと頭の中に誰かの……どっかで聞いた様な女の声が流れるお陰でおおよその使い方は解った。
解ったが……。
「使おうと一瞬考えた結果、やっぱイラネ」
やはりこんなもんは俺には不必要だ。
つーかそもそも俺が相手にしているのは人間なんだ。
こんなガラクタを使っては相手に失礼だぜ……なんて思い至った俺は、自分の左腕に引っ付いている邪魔なもんを反対の拳で殴り付けて破壊する。
「!?」
「お、おい!? 何で壊してんだよ!?」
その際外野と特盛おっぱいちゃんがギョッとした顔をしていたが、自分で自分のもんをぶっ壊した事を責められる謂れも無いので半笑いで無視しつつ、俺は言った。
「全部茶番だよ。こんな玩具は俺には必要がないものだ……」
そうだ。
テメーの過去の遺物が戻った所で意味なんてありゃしない。
今だってもし過去のトラウマを抉られたら発狂してしまうので克服なんざしちゃいない。
だが……俺はもう封印して誤魔化す真似はしねぇ。
「俺は今も昔も
それも
敢えて寄せて、受け入れるのでは無く撥ね飛ばす。
吐き気すら覚えるほどに辛くて、殺意しか沸かないテメーの過去を招き入れ、その上で塗り潰す。
「自分自身の力を永久に進化させ続ける最初のスキル……
ま、ヒーローなんぞになるつもりは更々無いが、あの二人の前でこれ以上無様な姿を見せたくないんでね……敢えてこれでお前を捻り潰す。
二度と俺に楯突こうと思わせない程に……徹底的にな!」
「ひ、ひぃ!?」
やってやるよ、見せてやるよいたみにくじら。
お前達にとって俺は兵藤一誠じゃないもんな?
「さぁ聞いて驚け見て笑え! 俺こそが霧島一誠だ!」
腐れ縁で友達で……まぁ、割りと好きな奴相手に格好くらい付けさせて貰うぜ。
「アイツ、あの腕の変な奴を壊しやがった」
「でも今のイッセーくんの顔は大丈夫だよ」
「あぁ……まったく世話の掛かる男だ」
二転三転とゴチャゴチャとしたが、結局の所一誠は誰だろうと簡単に捻り潰してケタケタ笑うような変態だ。
過去にどんな事があろうとも、オレと古賀ちゃんがそれを知って何とか出来ずとも、アイツはアイツなんだ。
「何怖がってるんだい後輩ちゃん? そんな涙目になるなよ? ゾックゾクするぜオイ?」
「く、来るな!」
そうだ。ニタニタしながら相手を叩き潰すスタイルこそが一誠。
ドン引きする程変態じみた笑い顔で捻り潰すスタイルこそが一誠。
「ライダー海老反り固め!」
「いだだだだだだ!?!?」
「ライダーサソリ固め!」
「ぐぇぇぇぇ!?」
「ライダージャイアントスイング!!」
「ひぇぇぇぇっ!?!?」
相手の嫌がる事を立て続けに仕掛ける男こそ一誠だ。
ほら見てみろ。既に復活した一誠は生き生きしながら志布志って奴をお仕置きプロレス技コースを執行してらぁ。
「あの一年坊め……イッセーのお仕置きフルコースを食らってるじゃねーか。代わって欲しいくらいだ」
「それ言えるの世界でも名瀬ちゃんだけだよ……ホント」
いいなー……オレもお仕置きされてぇよ。
「わ、わかったアタシの敗けで良い! 致死武器を封じられた時点でアンタに勝てるとは思ってない! だ、だから――うきゃ!?」
「あぁん? 聞 こ え ん な ぁ ?」
しかもごく稀にしか味わえないノリノリ状態でのお仕置きじゃねーか。
ふざけんな志布志飛沫め……羨ましいぞこのやろー
「な、何なんだよ。左腕のデビルカッケー籠手は消えちゃったし、復活したかと思えばあんな調子だし……」
「『あーぁ』『後一息って所で名瀬さんと古賀さんに邪魔されちゃったか』」
「……。おい貴様の後輩だろ。霧島二年生に頼んでさっさと終わらせるよう頼まないのか?」
「『あんなニタニタしながら飛沫ちゃんをいじめてる霧島くんが聞くとは思えないんだよね』『というかめだかちゃんこそ止めたらどうなのさ?』『僕頼みなんてらしくないぜ?』」
「…………。私が言っても聞いてくれんからだよ」
アルゼンチンバックブリーカー……だったか? 志布志をひょいと持ち上げ、自分の肩の上に相手を仰向けに乗せて顎と腿を掴み、自分の首を支点とし相手の背中を弓なりに反らせる技なんだが、一誠が本気で掛けたら相手の上半身と下半身が文字通り真っ二つになっちまう凶悪技に変貌する禁じ技に変貌する。
「このままタワーブリッジに派生させたら……あぁ、今ノッてるからキミの上半身と下半身が永久にサヨナラするかもね」
「ひぃ!? な、なんでもするからやめてぇ!」
が、まあ……今の楽しくて仕方ないって顔の一誠を見る限りじゃそこまではしないな。
ちきしょう……あんなのオレがもし食らったら軽くイッちまいそうなのに……オレにも掛けてくんねーかな……。
「………………。書記戦は霧島様、現生徒会側の勝利となります」
『…………』
「うっく……ひっく……」
「はぁ……4割程スッキリした」
復活したと同時に飛沫の持つ手を全部封殺し、更には三十分程の時間を掛けてプロレス技の実験台にした一誠は、すっかり泣いて戦意が喪失してしまった飛沫を抱えながら実に清々しい顔をしながら悠々と冷凍庫から出て来た。
ぶっちゃけ、トラウマを抉られた時の一誠はまだ同情できる箇所があったものの、覚醒と進化によって復活してからの一誠は鬼畜そのものであり、わざと気絶しないように絶妙な力加減で飛沫をいじめ抜くその姿は、悪役レスラーそのものでヘイトを集めるのに十二分だった。
「『大丈夫飛沫ちゃん?』」
「ぐ、ぐまがわざん~!」
トラウマを開いて追い詰めたまではよかった。というかそのまま勝てた。
しかしいたみとくじらが一誠に言葉を掛けた途端、彼は自分達も知らない謎の力を解放し……たかと思えばその具現化した力を自分で破壊し、復活した精神力をフル活用して飛沫をいじめまくった。
ぶっちゃけいくら
ヘラヘラニタニタしたゲス笑いを浮かべた男にプロレス技を延々と掛けられたともなれば、涙で顔を濡らし球磨川の肩を借りながらメソメソ泣いたって誰も責められない。
寧ろ見ていためだか達も飛沫に同情的だった。
「あ、ほらスキルはキミに返しておくよ」
挙げ句の果てにはパーツの交換みたいに簡単に封じたスキルを使えるように戻したと宣う一誠に、最早飛沫は挑み掛かるメンタルすら無くなっていた。
「ひっ!?」
スッカリ一誠が『トラウマ』になってしまった飛沫は、球磨川と蝶ヶ崎を盾にするように隠れてしまう。
「なんだ、散々他人のトラウマ抉っておきながら、イザやり返されると露骨に怯えちゃって」
「『残念だよ霧島くん』『もう少しでキミの友達になれたんだけどね』」
「はん、心にも無いこと言うなよ先輩さん。
顔に出てはねーが、アンタは一度たりとも俺と友達になりたいとは思ってねーだろうに」
人を食った様な貼りつけた笑みを浮かべる球磨川に対し、一誠もヘラヘラ笑いながら返す。
何やら互いに一物抱えた言い方をしている気がするとめだかは思うが、如何せん二人ともめだかには読めないタイプの人間ゆえに、その一物の正体は結局解らずじまいだった。
「『そうだね』『少なくとも"今の"キミとは頑張っても友達にはなれそうもないや』」
「はっ、宛が外れて残念だったな」
しかしどうであれ一時は思わぬ苦戦があったものの一誠が予定通り勝利を納めた。
トラウマという古傷を開かれ、それによって自分の過去と今一度向き合わされた事によって一段階進化を果たした一誠にめだかは複雑な眼差しだった。
「………………。ふぅ、正直言うと今もまだ精神的にグラグラ来てたりするんだわ。久々に下手くそな虚勢張って何とかなったが……いやー、ぶっちゃけ見られたくなったよお前ら二人にこんなザマは」
「あ? 毎朝夢に魘されてから起きてるお前の顔で慣れてるからどうとも思ってねーよ」
「そうそう、アタシ達は幻滅もしなければ嫌いにもならないよ」
「あ、そ……。
ホント変人だわお前ら……ふふ」
長者原の宣言により書記戦は終了し、解散の号令と共に球磨川達はメソメソと泣く飛沫を連れて退散し、一誠とくじらといたみもそのまま帰ろうとするが……。
「ちょっと待て霧島二年生」
「んぁ?」
それに待ったを掛けたのはめだかだった。
「まずは阿久根書記の代わりに出てくれて感謝する」
並んで他愛の無い話をしながら出ていこうとした一誠、くじら、いたみを呼び止めためだかがペコリと頭を下げる。
「いや……ぶっちゃけ今日は永遠の黒歴史にしたい気分だから忘れて欲しいくらいだったりするんだよね。だから気にせんといて」
「先輩も色々とあったんすね……敢えて聞きませんけど」
「おう、そうしてくれると助かる。ったく、遊び癖も大概にしないとな俺も」
「……。まだ開かれた傷は塞がってないのね?」
「やっぱり見抜いちゃう程度に分かりやすくなってます? へぇ一応まだガタガタっす」
元心療内科医である瞳の問いに、一誠は目を逸らしながら頷いた。
流石に今日の出来事は一誠でも堪えたのだろう、さっきまでの勢いが消え失せ、ちょっとだけセンチメンタル的な表情だった。
「そうか……。
なら敢えてそこに私達は触れぬが、先程貴様がくじ姉に口走った言葉――抱き枕がどうとかという話はまさか本気じゃないよな?」
「は?」
いくら見た目が合法ロリとはいえ、後輩のお母さんというのもあって流石にちょっとは畏まった一誠に、急に目付きを鋭くしためだかが、先程飛沫との戦いでくじらといたみに向かって宣った事について問い詰めてきた。
いくら協力者で一役買ってくれたとしても、妹としてはやはりチャランポランな一誠は認められないのか、微妙に残念な空気を纏っていた。
「また言ってるよ。
あのよ黒神、何で一々オレがお前の許可なんか取らなきゃならねーんだよ。
抱き枕だろうがそれ以上だろうがオレは構わねーよ」
「アタシは……ちょっと恥ずかしいかな。別に良いけど」
「うぬ……! で、ですがお姉様! このめだかとは一度も一緒に寝ては下さらなかったではないですか!」
呆れた眼差を向けるくじらに、めだかはたじろきつつも、姉妹の触れ合いがしたくて堪らないとぶっちゃける。
最早一誠とくじらといたみの仲は切っても切れない間柄だというのは理解した。
しかし女子生徒を片っ端からナンパしまくる様な男と、ましてや抱き枕にされるなんて納得がめだかにはどうても出来なかった。
「まあ、めだかちゃんの言い分もわからんでもないけどよ……」
「そんなにだらしないの? 女の子に対して」
「正直そこだけは先輩として尊敬できない位だし」
後ろでヒソヒソと親子で一誠のチャランポランさについて話している善吉と瞳を背に、めだかは更に必死になる。
「狡いんだよ貴様は! 大体どうやってくじ姉を手懐けたんだ! 私にも教えろ!」
「手懐けたんたって……人聞きの悪いことを言うなよ。
偶々出会って気づいたら腐れ縁になってただけで、特別何かしたわけじゃねーよ」
「うぬぬ! あくまでシラを切るつもりか!」
ぶっちゃけ、この場にもし真黒が居て先程の話を聞いていたら発狂してしまうだろうやり取りというか、恋人でも無い男女がする会話では無いだろう。
だがそれは一般的であって、この三人……特に一誠とくじらに関してはその概念を超越してしまって節すらある。
寧ろこういう場面になると性格が極端に悪くなる一誠の事だ、段々とめだかの必死さにニヤニヤと悪い笑みを浮かべ始めたらもう最後。
「ふーんあっそ……なら『こうすれば』キミは納得するんだな?」
「!?」
「なっ!?」
敢えて相手をおちょくる事しかしなくなる。
今だってヒートアップするめだかの目の前で、くじらの肩へと手を回し、これ見よがしに抱き寄せながら『ニタァ』と嗤い始めた。
「き、貴様!」
「怒るなよ? 俺はそもそも合意を求めたんだぜ? それに対してコイツ等はyesと答えた。
ならもう問題なんてねーじゃん? だろくじら?」
「……。お、おー……そうだな」
微妙に緊張した表情でコクコクと頷くくじらにめだかは嫉妬やら何やらで色々と爆発しそうな表情に顔を歪ませる。
「? 何照れてるんだお前」
「い、いや別に照れてねーよ。考えてみたらこんな真似を素面でされるのは初めてというか、あっても大体お前が寝惚けてるから……」
「わりと正攻法に弱いんだね、名瀬ちゃんは」
割りと初めてに近い素面一誠から抱き寄せられた事に照れて頬をちょっと紅潮させながら俯くくじら。
めだかの言葉を全無視どころか目の前でイチャつきだしたのだ。
これはめだかでなくとも切れたくなる。
「霧島ァァァァッ!!」
そんなものを妹である自分を前に見せられたとなれば、溜まりに溜まった嫉妬玉は一気に膨らみ、遂には破裂するのも必然だった。
髪を真っ赤に染め上げ、所謂乱神モードへと暴走しためだかは、形振り構わず姉にベタベタしてる不届き者を成敗せんとリミッター完全に解除の全力で殴り掛かった。
「くじ姉から離れ――へぶっ!?」
「あ、やっべ……つい反射的に……」
だが復活と同時に新たな領域へ進化し、元々その前の一誠にも舐められ状態であしらわれていためだかじゃあこのエロ大魔神を倒すことは出来ず、全力の突撃も空しく頭を軽く叩かれ、盛大に地面とキスする事になってしまった。
「ちょっとからかい過ぎたかな……」
「知るか。何でオレがコイツの顔色を伺わなければならねーんだよ」
涙目で顔を汚すめだかと、慌てて駆け寄る善吉と瞳を見ながらポリポリと頬を掻く一誠にくじらはくだらねぇと鼻を鳴らしつつ、然り気無く一誠との密着を堪能する。
ズタボロにいじめられるのもアリだが、こういう正攻法も悪くない……なんて思いながら。
「く、くじ姉ぇ~」
「ほ、本当にアッサリとめだかちゃんを叩き伏せたわね……」
「チャランポランなのに理不尽の塊みたいな人だからな……ほら涙拭けよめだかちゃん」
「くじ姉ぇ~……」
グスグスと一誠になじられまくった飛沫みたいに涙を流し、スタスタとさっさと帰っていった三人を見送るしか出来なかっためだかは改めて決心する。
球磨川との件が終わったら、一度真正面から一誠とやり合ってやろう。
そしてその為にも強くなって見せると……。
良くも悪くも相手に何かしらの影響を与えるめだかだが、奇しくもそれは一誠も同じだった。
まるで何かの共通点があるかの様に……。
黒神を煽る為だけにオレを抱き寄せた一誠だが、学園の外に出る頃にはさっさと離れやがった。
どうせそんな事だろうとは思ってたが、ちょっと腹が立つので古賀ちゃんと無言で合図を交わしながら引っ付いてやろうとした……その時だった。
「っ……と……?」
「い、イッセーくん!?」
それまで普通にヘラヘラしていた一誠が虚勢を張って誤魔化していたボロボロの精神を露呈させながら、その場にヘタリ込み、自虐的な笑みを溢し始める。
「はは、はぁ……これ以上弱味を握られたくないからブラフ噛ましてたが、ちと限界だわ……」
「だ、大丈夫? やっぱり完全には克服できなかった?」
「まぁ、な。
そんな簡単にテメーの中のモノと折り合いはつけられねーや……あはは」
外周部を覆うフェンスを背にズルズルと座り込む一誠は、志布志に開かれた時とは言わずとも辛そうに笑って見せるつつ、左腕に例の神器とかいうものを呼び出した? というべきなのか、とにかく真っ赤な籠手みたいな物体を纏わせ、オレ達に見せ付けながら複雑そうな表情を浮かべていた。
「本気で使ったら相手を殺してしまうかもしれないから使うのを直前で止めたが、やっぱぶっ壊しても無駄だったか……鬱陶しい」
「これが……何か変な威圧感を感じる気がする」
「紛いなりにも神滅具の一つらしいからな。曰く、神に喧嘩を売って勝てる可能性のある力だとか」
「あ? 何だその『らしい』ってのは?」
「いや……俺にもイマイチ分からんからなコレ。
使えると自覚したのも、古賀とつるみ出した辺りからだし……ぶっちゃけお前らに話す程のもんじゃねーガラクタだし」
そう嫌そうに自分の左腕にくっついてる……確か
然り気無く中学時代には自覚していたらしく、一誠はガラクタだと言い切ってるが、オレや古賀ちゃんにしてみればこの神器というもの未知なる概念で興味が沸く。
正直このまま一誠を解剖したいという欲求すら刺激する程にな。
まあ今の弱った一誠にするつもりは無いが。
「使う人の力を倍加させるって言ってたけど、それ本当なの?」
「おう。
事実さっきの特盛おっぱいちゃんに対して使おうとした時にもしそのままぶっぱなしてたら、箱庭学園……いや街全体が核爆撃跡の残骸と化してたかもな」
「お前の場合、素でも出来そうだと思ってるから驚かねーが、その籠手とやらの効力としてだけを考えると凄まじいな」
どうせならちょっと見てみたかったりもするが、巻き込まれて生き残れる自信が無いし、恐らく一誠は素直じゃないから誤魔化してるが、オレと古賀ちゃんを巻き込まない為に直前で止めたんだろう。
古賀ちゃんも察してるが敢えて何も言わずに頷いているし、解りやすいぜ。
「そんな事よりだ、くじら……」
取り敢えず一誠の神器とやらについてはここまでにしておく事にして、まだちょっと精神的に来ていて立とうとしない一誠をさっさと家に連れて帰ろうと、まずは古賀ちゃんと一緒に肩を貸して立たせようと手を伸ばす。
が、何を思ったのか一誠は伸ばしたオレの腕をガッチリと掴むと……。
「悪い、まだ立てないから暫くこうさせてくれ」
「うわ……!」
そのままさっきの黒神との小競り合いの時のように引き寄せられたかと思ったら、今度は正面からダイレクトに抱き締められた……。
余りの唐突さにオレは一瞬不覚にも思考が停止してしまった。
「お、おい一誠……?」
デコピンされたり、ひっぱたかれたりは数あれど、さっきと今みたいに抱き寄せられる事は殆ど無いし、さっきは黒神で遊ぶ為に見せしめ目的で抱き寄せられた事を考えると、こんなただ普通に抱き締められたのは実は初めてで……。
「あら……こんなお外でまさかの大胆行動。
かなり堪えたんだねイッセーくん?」
横で古賀ちゃんが複雑そうに見ている中、これこそ何時もの冗談さを感じない抱かれにオレはよく分からない気分のままただ抱きついてくる一誠の心音が聞こえるせいで冷静な思考が出来ない中、一誠は言った。
「変な女だと信用してぶっちゃけるけど、お前と古賀に慣れすぎたせいか、こうすると地味に落ち着くわ。
なんつーの、やっぱ変だけど女だなというか、普通に良い匂いがするし……何より眠……く……にゃる……ぐー」
……………。いや、変なのはお互い様だろ。
というか何だよそれ……ふざけんなよ、そこまで言っておきながら何で知らねー女をナンパすんだよ。
「ねぇ、これってもしかして告白されてるの?」
「い、いや……どうなんだ?」
「Zzz」
餓鬼みたいに安心しきったツラでオレに抱き着いたままスヤスヤ寝る一誠の寝顔を見ながら、オレも古賀ちゃんもなんとも言えない気分になってしまった。
お前らとなんか罰ゲームじゃねーかと宣う癖にこんな事をする……挙げ句安心するとか何なんだよ。
じゃあ結婚しろよ。
「Zzz……」
「やっぱ付き合いが長い名瀬ちゃんかー……」
「あ、いや……古賀ちゃんもって言ってたし……」
ホント何時だって狡い奴だよ……お前は。
スヤスヤと眠る一誠を抱き絞め返しながら、オレはこの先ヘラヘラとナンパするだろう浮気癖男の邪魔を永遠にしてやろうと、改めて決めた。
だってそうだろう……?
「っ!? お、おい、くすぐったいからやめ……ぁっ……!」
「Zzz」
「ちょ、ちょっとイッセーくん! ここ外だから駄目だよ!」
こんな真似までされてんだ。
永遠に憑き纏ってやるぜ。
補足
赤龍帝の籠手は籠手ですがドライグは無いです。
つまり脱け殻であり、本人もぶっちゃけイラネと思ってますので使うのをやめました。
……。というのは表向きであり、実際は使ってみたら学園どころか街全体が核戦争後の世紀末になるくらいのパワーが元々のスペック故に一瞬で倍加して溜まってしまったので、くじらさんといたみさんを巻き込みたくないと内心想って止めました。
+自分から全部奪った転生者の顔がチラつくのが嫌なのもありますが。
そしてその代わりに飛沫さんのプライドはプロレス技と共にズッタズタにされましたが……。
その2
めだかちゃんは実力こそ認めてますが、やはりチャランポランなのでくじ姉との仲は納得してません。
ていうか、あそこまでくじ姉の心を開いてるイッセーに嫉妬心はパルパルパルパル。
その3
ある程度踏み越えられはしましたが、それでもまだ完全とは言えません。
そのせいでスリープモードに入ります……抱き枕ありきでね。
その4
脱け殻ですが、破壊されても一誠の中で自己修復してしまうので切っても切れないモノになってます。
なのでこのままやってても禁手化も覇龍も不可能ですが、一誠のスペのせいで寧ろ必要がない代物なのかもしれない。
『Boost!』しただけで手からビーム出せる様になる時点でオーバーキルだし。