龍帝になれなかった少年   作:超人類DX

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巡回ルートその2
つーか久々更新です。

忘れてたな……彼女がアレだったの。

※ちょっとオマケを加筆しました。


夏休み気分と夢の中

 予想外ながらも個人的な仕返しは終わった。

 つまり、もう俺の仕事は終わった筈なので、学校に来なくても良いという事である筈……なんだよ多分。

 

 

「今日近所でお祭りがあるんだけどよ……てかもう既に始まってるんだけどさ……。

俺は何故学校に居るのかが分からねぇ」

 

 

 だというのに、夏休みも八月突入後だというのに、俺は何故か夕方なのにも拘わらず学校に居た。

 そう……結局頼まれるがままに引き受けてしまった生徒会選挙――いや、戦と書いて戦挙の代理出場のせいでだ。

 

 

「俺だけ帰って良くないか? だって書記戦出たじゃん?」

 

 

 縁なんて絶対に無いと思ってた箱庭学園の生徒会室――の、隣にある会議室。

 その会議室内にて椅子に座らされている俺は、来週始まる会計戦についてマジな顔して話し合ってる本来の二人ほど欠けてる生徒会役員と保護者一人に向かってもう何度も同じ言葉を嫌味の如くぶつけてるんだけど、誰も返事をしてくれない。

 

 

「あぁ、浴衣のおんにゃのこ……」

 

 

 会計戦に古賀が出る以上、知らん顔して帰る訳にもいかない。

 確か相手はピンク髪の女の子で、人吉後輩くん曰く何でもかんでも腐敗させる過負荷(マイナス)らしいし、更に人吉後輩のカーチャン曰く、書記戦を見ててそのマイナスを更に逆成長させたとの事だから、肉体派の古賀的に色々と大変だってのは俺でも分かる。

 分かるけど、今更ジタバタしたってしょうがないんじゃねーのとも思うわけよ俺は。

 

 現に古賀本人はくじらと時計塔のフラスコなんちゃら跡地から役立つ道具を失敬しに行って精神的にも落ち着いてる訳だし、キミ達が慌ててもしょうがねーじゃんと思うんだわよ。

 

 

「ただいまー」

 

「大分片付けられてたが、使えそうな道具を何個か運び出しておいたぜ」

 

 

 故に俺は暇で暇で暇なまま、ただただ無駄な時を過ごしていたのだが……。

 

 

「む、くじ姉、それは何ですか?」

 

 

 時計塔の地下から古賀の改造道具を頂いてきて戻ってきたくじらの手に抱えられてるソレに気付いた黒神後輩ちゃんの質問が、暇時間にマシな潤いを与える切っ掛けとなる。

 

 

「あ、見てわかんねーのか? 花火セットだよ」

 

「は?」

 

 

 ビニール製のプールバッグみたいな入れ物に詰められた色とりどりの花火セットを抱えるくじらの『だから?』ってな感じの軽い返しに黒神後輩も人吉後輩も人吉後輩のカーチャンもキョトンとすると、同じサイズの花火セットを抱えた古賀がくじらに続く。

 

 

「名瀬ちゃんにさっきまで『調整』して貰った事だし、折角だから少しは夏休みらしくしようかなってね?」

 

「そーいう事だ。そこでナンパ男が死んだ顔し続けるのを見てると憐れだしな」

 

「は、はぁ……」

 

 

 チラッと机に顎乗せながらボーッとしていた俺を見て言う二人に、三人は何とも言えない顔をしていた。

 まあ、本人達からすれば生徒会存続の危機なのに遊んでられないって思ってるんだろうが……。

 

 

「学園でやったらうるせー風紀委員のチビガキが喧しいし、確か近くに河川敷があったろ? そこでやるぞ」

 

 

 俺は悪いが花火を取るぜ。

 こんな場所で昼からずっと居続けていい加減息が詰まりそうなんだ……ちったぁ遊ばせて貰うぜ。

 

 

「話し合うのも良いが、少しは古賀ちゃんを信じて貰いてーし、オレもそれなりに対策を施してある」

 

「最悪負けても二勝一敗だしってイッセーくんに言われて私としては変に気負ってないからさ」

 

「おい霧島……何を吹き込んでいるんだ貴様」

 

「だって事実じゃん。人吉君と俺で二勝してるし、最悪二敗してもキミが決めれば勝てるじゃん」

 

「いやそういう問題じゃねーから!」

 

 

 ええぃうるさい! 俺は遊びたいの!

 

 

 

 代理で出る会計戦に向けて名瀬ちゃんに調整して貰った私は、イッセーくんの尽力やその他で異常駆動の弱点であるスタミナの無さをそれなりに改善出来た。

 具体的には常にMAXで動いても8時間はガス欠にならない程度にはね。

 

 後は対戦相手の江迎さんって子のマイナスの特長である手に触れずして倒せれば良いけど、そう簡単に行くとは思ってないので、それなりに慎重に臨むというのが私の方針だ。

 

 

「浴衣のおんにゃのこが居たらパーフェクトなんだけどな……」

 

「そんな悠長な事言ってて、古賀先輩が心配じゃないんですかアンタは?」

 

「心配して事が収まるなら心配してやるよ。だが、そういう状況じゃねーだろ?」

 

 

 まあ、そういう訳で何時までも頭ばっかり使ってたら疲れちゃうので、気晴らしにと名瀬ちゃんと話してイッセーくんと花火でもやろうと思って結構な量の花火を持って河川敷へとやって来たのだけど、黒神が『くじ姉が心配だから』と言って人吉や人吉のお母さんと一緒に付いて来ており、瞳さんが用意したワゴン車の中で着替えてる私たちに先んじて人吉とイッセーくんが外で話してる声が聞こえる。

 

 

「ウチの善吉君も心配性ねぇ」

 

「霧島がお気楽過ぎるんですよ。奴だって書記戦の時に痛い目に合ったのに」

 

「結果的に勝ったんだから良いだろ。アイツは何度痛い目に逢おうが懲りねーよ」

 

「そうそう、ヤ◯ザ屋さんの奥さんナンパして事務所に連れていかれて小指詰めさせられ掛けても懲りなかったしね」

 

 

 車の直ぐ外で話してる人吉とイッセーくんの会話を聞きながら着替えを終えた私達は私達で話ながら、ワゴン車のドアを開けて外に出る。

 

 

「お待たせイッセーくん」

 

「おう、お望み通り浴衣のおんにゃのこになってやったぞ? だから精々喜びやがれ」

 

 

 一人ずつ車から降りて、人吉とイッセーくんに自分達の姿を見せると、二人は……あ、特に普通な顔だった。

 

 

「妙に荷物が多いと思ったらそういう事かよ」

 

「せ、先輩もまた気楽ですね」

 

 

 着替えをした理由は、書記戦が終わった辺りからイッセーくんが浴衣姿のおんにゃのこと遊びてぇとぶつくさ言い出し始めたからであり、一種のサプライズ感覚で着替えてみたんだけど……うーん、イッセーくんが微妙な顔してるよ。

 折角名瀬ちゃんも素顔なのになー……。

 

 

 

 いたみとくじらの発案で始まった花火遊びだが、最初は乗り気でなかった善吉とめだかも、無意識にストレスを抱えていたのが徐々に発散されてきたのだろう、割りと二人も楽しみだしていた。

 

 

「阿久根書記と喜界島会計もこの場に居たらもっと楽しかったのに……」

 

 

 しかし重症を負った仲間の事を思うと心の底からは楽しめず、二色に輝く棒花火を眺めながらめだかはしんみりした声で呟きつつチラッと視線を花火からそこへと移すが……。

 

 

「古賀ってやっぱ見た目は可愛いな。見た目だけは」

 

「む、見た目だけって酷くない?」

 

「おい、オレはよ?」

 

「オメーは目付きが悪すぎだ。-60点」

 

 

 三人組はそれでも暢気に花火を楽しみながら暢気にくっちゃべっている。

 

 

「おい霧島。貴様、くじ姉を-60点などと宣ってるが一体何様だ?」

 

 

 それが特に、自分の敬愛する姉をバカにされてるとめだかは気にくわない訳で……。

 ペシペシと素顔のくじらの額を叩きながら半笑いになってる一誠に噛み付く。

 

 

「だってコイツ最初っからずっと目付き悪いんだもん」

 

「最初からだと? まるで幼き頃から知ってますと私に自慢でもしてる様な言い方だが、嫌味か? 嫌味なのか!?」

 

「いや嫌味じゃ無く目付き悪いだろコイツ」

 

 

 ぴょこんと伸びてるくじらのアホ毛を指で弄くりながら目付きの悪さを指摘する一誠に、何時見ても距離の近さが気に食わないめだかが更に怒る。

 

 

「それが良いのだろうが! それを不躾にベラベラと……えぇぃ! くじ姉と距離が近いんだよ!」

 

「うわっと」

 

「おい」

 

 

 白系に青いラインの入った浴衣姿のめだかが、くじらとイッセーの間に入って無理矢理引き剥がしながらプンスカと怒る。

 その行動に不満なか顔をするくじらに、めんどくさそうな顔をしたイッセーだったが。

 

 

「どわっ!? め、めだかちゃんが暴れたせいで他の花火に引火しやがった!」

 

「わわっ!?」

 

 

 その拍子にぶつかられた善吉の持ってた花火が手からポーンと飛び、置いておいた未使用の花火に全て引火するという事件が発生。

 

 

「のわ!? ろ、ロケット花火が爆発して――あち!? アチチチ!!? て、テメクソガキ、俺を盾にするなバカ!」

 

「うるさい! くじ姉に引っ付き過ぎた罰として私達の盾になれ!」

 

「盾は百歩譲って納得するが、何で俺を爆心地に押そうとすんだこのガキ!」

 

 

 激しい爆音と一瞬の煌めきと共に、プチ花火大会は一瞬にして崩壊してしまうのだった。

 

 

 

 

 あーあ、折角恥ずかしいの我慢して素顔晒してやったのによー……。

 

 

「あのガキ、隙あらば俺を殺そうとしてんじゃねーのか?」

 

「まあ、花火の暴発で死ぬ訳も無いって解ってての行動かもしれないけどね」

 

「それにしたって、俺を思いきり押し込もうとしてたんだぞ? どんだけ俺が嫌いなんだし」

 

 

 近所の住人に通報され、警察に怒られ、そのまま解散となって家に帰る事になったオレ達は、黒神達と別れてトボトボと歩いて帰る。

 ちなにみ格好はゴタゴタしてて着替えられず、浴衣のまんまで非常に歩きづらい。

 

 

「結局中途半端に終わったし、ナンパも出来なかったしで散々な夏休みだぜ……」

 

 

 古賀ちゃんは着た経験でもあるのか、下駄でも一誠の歩幅に着いていけてるが、オレは歩きづらいのと慣れてないのとで着いていくのもやっとで中々会話に入れず、何とか歩くスピードに付いていこうとした瞬間……。

 

 

「うわ!?」

 

 

 足が内側を向き、そのままバランスを崩して前のめりに転んでしまい、それどころか足を挫くという間抜けまで晒してしまった。

 

 

「い、いててて……」

 

「な、名瀬ちゃん大丈夫? 随分派手に転んだけど……」

 

「あ、あぁ……足を捻っちまった。

クソ、慣れねぇもん着たり履いたりはするもんじゃ――ぐっ!?」

 

 

 体を起こして立とうとした瞬間全身に響く足首の痛みにそのまましゃがみこんでしまう。

 とはいえ、痛み止めでも打てばこんなのどうって事は無いので、紙袋に入ってる制服から痛み止めの注射器を取りだしてくれとオレは古賀ちゃんに頼もうとしたその時だった。

 

 

「ったく、無理するからだっつーの」

 

「お、おい……!?」

 

 

 呆れながら憎まれ口を叩いた一誠がオレを背中に背負いだし、そのまま歩き出した。

 

 

「何してんだよ、別に痛み止めでも打てば歩ける……」

 

「そんなの家でやれば良いだろ。良いから黙って背負われとけ体力無し」

 

 

 淡々と言いながらオレを背負って歩く一誠に言われて押し黙ってしまったまま、結局そのまま背負われる形になる。

 コイツ、また人の隙間を縫ってくる様な真似しやがって……古賀ちゃんが何か言いたげな顔して見てくるせいで微妙に気まずいんだよ。

 

 

「良かったね名瀬ちゃ~ん?」

 

「な、何だよ……」

 

「べっつにー?」

 

 

 ああ、クソ恥ずかしいな。只でさえ素顔なのに余計に恥ずいけど……ちくしょう。

 

 

「……。なぁオイ、ひとつ聞いて良いか?」

 

「あ? な、なんだよ……」

 

 

 昔病気でぶっ倒れた時もこんな事されたっけ……と思いながら背負われていたオレだったが、不意に一誠に話し掛けられて変な調子の声が出てしまうが、そのまま返事をすると……。

 

 

「お前……もしかして下着つけてないだろ?」

 

「え!?」

 

 

 一誠は若干引いた声でオレに下着の着用の有無を聞いて来て、それを横で聞いていた古賀ちゃんが驚いた顔をする。

 

 

「え、なにそれ? どういう事?」

 

「いや……何か、背中に感じる感触に下着の感覚がまるでしないからよ……まさかとは思うが」

 

「そ、それは無いよイッセーくん。

だって着替えてた時は着けてたもん」

 

「あ、そう。

なんだ、じゃあ俺の思い過ごしか」

 

 

 ……? 何言ってんだこの二人は? まるで付けてると思いたいって様子だが……。

 

 

「つけてねーけど?」

 

 

 つけるわけねーじゃん。だって一誠がボソッと言ってたの聞いたし。

 

 

「…………………………。え、お前は馬鹿なのか?」

 

「い、何時取ったの?」

 

「何時って降りる直前に思い出したからだが? というか一誠はこっちの方が良いんだろ?」

 

「いや誰がお前にそんな事しろって言ったんだよ!? お前馬鹿か!? いや馬鹿だ!」

 

 

 お、おう……怪我してるからって今日は罵倒か。

 へ、へへ……悪くねーじゃん?

 

 

「………………。せ、背中が熱いのは何でた?」

 

「さ、さぁ?

でも今名瀬ちゃん降ろしても逆にまずいんじゃないの? ほら名瀬ちゃんがエライ顔で二へラ二へラと……」

 

「へ、へへへ……」

 

 

 悪くねーじゃんどころか良いじゃんこのパターン。

 芯から身体を疼かせやがるぜ……!

 

 

「お、おい古賀……!

せ、背中が湿っぽくなってきたのは何でだよ……! コイツまさかし、下もなのか!?」

 

「た、多分かなー……」

 

「あ、熱い……一誠……熱い……!」

 

「て、テメッ! 絶対やめろよ!? やったらマジ駄目な奴だからなそれ!!」

 

 

 何か一誠が焦って走り出したけど……。

 

 

「ぁ、ゆ、揺らすなよぉ……お、おかひくなりゅう……」

 

「何がだこのド変態が!」

 

「あっ……!? ば、ばか……そ、そんな事言われたらおれ……!」

 

「ぎゃぁぁぁっ!? 何か背中の下が熱いんですけど! 古賀何とかしてよ!」

 

「も、もう無理だよ! 名瀬ちゃんスイッチオンしちゃってるし!」

 

 

 あは、あははははは……♪

 

 

 

 PS.帰ったら速攻風呂場に放り込まれた。

 その時一誠が古賀ちゃんに……。

 

「俺のせいじゃないよな!? くじらが勝手にラリっただけだよな!?」

 

「さ、さぁ……アタシが知り合った時から名瀬ちゃんってああいう所あったし……」

 

 って話し声が聞こえた。

 

 

閑話休題・終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは、書記戦にてトラウマを抉られた日以降の出来事だった。

 

 

「………………」

 

 

 相変わらず『思い出したくないクソな事』に関する悪夢に魘される事はあるものの、飛沫との戦いで半ばは開き直った影響なのか、一誠はあの日から別の夢を見るようになった。

 

 

「誰にも信じて貰えそうに無い悪夢に魘される事と、その悪夢に対して割り込んで見せるこの僕との逢い引き。

果たしてキミにはどちらがマシかな?」

 

 

 その夢の内容は、とある学校の教室の様な空間のど真ん中の席に自分が座り、目の前には教卓に腰かけた髪の長い少女が気安く話し掛けてくるという内容のものだった。

 

 

「まあ、自惚れじゃなく此方の方がキミにとって千倍はマシなんじゃないかなと思ったりするけどね」

 

 

 その少女の容姿は可愛らしく、その少女の声は耳障りが非常に良く、そして……自分の過去を含めた全てを当たり前の様に知っていて、今見せられているこの夢も目の前で薄く笑みを浮かべる少女が見せているらしい。

 

 飛沫との戦闘を経てから見る様になったこの夢は、見たくもない過去を見せられ続けてきた一誠にしてみれば確かに少女の言うように『マシ』なそれだと思えるものではあった。

 

 

「確かにあの時死んだ俺をこの世界に流したのは、お前自身なのか? それとも、顔だけ同じの別人なのか?」

 

 

 そんな夢に対して――いや、そんな夢を見せていると嘯く少女に一誠はかつて確かに命を失った先で見た少女と同じ姿が故に、決まってこの質問をする。

 

 

「それはキミの――一誠の判断に任せておくと僕は毎回返すし、今日だって同じ答えだ」

 

 

 それに対して少女は何時でものらりくらりとした態度で同じ様な答えを返してくるのに、教室の様な空間のど真ん中で学ラン姿の一誠はジーッと教卓に立て膝座りをする少女を見据える。

 

 

「……。俺を送り込んだ女とアンタは別人だと思ってる」

 

「へぇ? そりゃどうして……?」

 

 

 教卓に行儀悪く立て膝立てて膝に顎を軽く乗せながら座る少女が笑いつつも目を細めてくるのに対し、一誠は窓の外に見える見覚えなしの景色へと視線を逸らしつつ口を開く。

 

 

「勘」

 

「勘?」

 

「そう、勘」

 

「そりゃあまた随分と曖昧だな」

 

 

 ありゃりゃと苦笑いする少女に一誠は無言になる。

 目の前で愛想よく見せてる少女と、あの時死の先に現れた少女は違う事に確かな確証は無く、少女に質問しても答えを濁される以上、そのまま肯定するのが何か嫌なので単純に違うとだけ言い張ってるだけなんて口が裂けても言いたくないのだ。

 

 

「まあ勘でも何でも良いけど、志布志さんに心の古傷開かれて取り乱してくれたお陰で僕がこうして夢の中とはいえ入り込む事が出来た訳だし、彼女には感謝しないとね」

 

「………」

 

「お陰でキミを射程圏内に捉えられた訳だしな」

 

「……………」

 

「黒神さんと古賀さんには悪いけどね」

 

「………。アイツ等が何だよ?」

 

 

 無言となる一誠だったが、少女が口にした二人の名前に対し、それまで窓の外へと向けていた視線を再び戻し、若干低い声を出す一誠。

 

 

「アイツ等に何かするつもりかアンタ……?」

 

 

 最早魔法の言葉とも言える名前に、少女の表情がニンマリとする。

 

 

「単純で結構。

ホントお前は二人を大事にしてて、思わず妬いちまうくらいだぜ。どちらにとは言わねーけど」

 

「質問に答えろ。何かするつもりかこの野郎」

 

「しないしない。見ての通り、今の僕は球磨川君のマイナスで封印されて表に出れないし、何よりキミに嫌われる真似はしないしない。

正直、黒神さんより前にお前と接触してれば良かったと後悔だけはしてたりするんだけど」

 

「………」

 

 

 胡散臭い笑みを見せる少女を若干睨み付けるようにして睨んでた一誠だが、少女の現状と照らし合わせて今口にした言葉に嘘は無いと判断して殺気を引っ込める。

 

 

「大事だもんね、昔みたいにキミを簡単に否定した連中共と比べるまでも無くあの子達はキミにとって?」

 

「………」

 

「大事だもんね? フラスコ計画をめだかちゃんが潰しに行く事が不知火君から知らされた時、事と次第に寄ってはめだかちゃん達を完全に捻り潰してやるつもりだったもんな?」

 

「……」

 

「全てを成り代わりに奪われても尚主人公力(ハイスクールD×D)は、世界を変えてもお前の中に残り続ける。

故にお前は唯一めだかちゃんに真正面から対抗できる絶対の存在。

一京のスキルと七億の個性持つ僕を超越する主人公(イレギュラー)さは、既にめだかちゃんを下してるからして保証されている」

 

「だから何だよ。この世界が台本通りに出来てるとでも言いてぇのか?」

 

「ある意味そうだったけど、お前のお陰でその理から外れているのさ。

皮肉だね、イレギュラーに否定された子供がイレギュラーとなるなんて……」

 

 

 ペラペラと語るのを暫く黙って聞いてた一誠。

 だが、イレギュラー否定されたイレギュラーという少女の言葉に引っ込めいた殺意が膨れ上がる。

 

 

「何が言いたいんだよ……」

 

 

 かつて奪われた自分と同じ。

 暗にそう言われてる気がした一誠は、それ以上抜かす様なら……と、少女に殺意を向けたのだが……。

 

 

「ん、だから成り代わりになって、女落としていい気分に浸りたいだけのカスとお前は同じ様でで違うってことだよ」

 

 

 少女のこの言葉に思わず膨れ上げていた殺意が霧散し、目が丸くなってしまった。

 

 

「…………。何だそりゃ」

 

「自由にやっては居るけど、世界の根底をねじ曲げる真似はしてないって意味さ」

 

「……。アホらし」

 

 

 『まあ、球磨川くんが友達になりだがるのは意外だけどな』と笑う少女に急激に毒気を抜かれた気分にさせられた一誠は、鏡で見るまでも無く微妙な顔をしてるだろうなと内心思いつつ、それを誤魔化す様に小さく悪態を付くと、そのまま席を立ち、この夢の空間から戻ろうと教室の扉……即ち出口へと向かう。

 

 

「ん、もう帰るの?」

 

「アンタと居ると疲れる」

 

 

 そんな一誠に少々ながら不服気味な顔をする少女が呼び止めようとするが、それに対して振り向く事無く只一言ぶっきらぼうに返すと、そのまま扉を開けようと――

 

 

「あ、忘れてた」

 

「え?」

 

 

 した瞬間、ピタリと止まった一誠が急に何かを思い出したかの様にそう呟いた。

 これには少女も一瞬だけ面を喰らった様な声を出してしまい、振り向いて教壇に腰かけたままの自分に向かって近づいてくる一誠にキョトンとしてしまう。

 

 

「よいしょっと」

 

 

 一体何なんだ? と思いつつ自分に近寄って来た一誠を見ているだけの少女だったが、何を思ったのか、座ってた自分をひょいと抱えて教壇から下ろして立たせるという行動に不審に思う以前に何がしたいなかイマイチ分からず、思わずされるがままになってしまう。

 

 

「えっと、これは何のつもり?」

 

「………」

 

 

 頭一つ分の身長差がある一誠を見上げる形で問い掛ける少女に一誠は何も返さず、ただジーッと少女を見つめてる。

 

 

「今更お見合いでもしようってのかい?」

 

「…………」

 

「それとも見惚れた? それなら別に吝かでも――」

 

「……………」

 

「……。何か答えろよ。一人で喋ってる僕が馬鹿みたいじゃんか」

 

「………………」

 

 

 少女ですら、ある意味思考回路が読めない一誠のこの行動に対して律儀に付き合うのだが、ジーッと見つめたまま微動だにしないまま結局何もしないまま、再びくるりと背を向けて出口へと行ってしまった一誠に少女は『わっけわかんねー』と呟きながら見送ろうと――――

 

 

「しっかし、地味なんもん着けてんだなアンタって」

 

 

 したその瞬間、急に小バカにするような顔した一誠がそ手に持つ女性用の下着をひらひらと見せびらかすというふざけた行動に、少女は物凄い久々に心の底からハッとした。

 

 

「え……あ……それ、まさか」

 

「此処に女はアンタだけって事はそういう事だぜ、ケケケケケ!」

 

 

 コークスクリューパンチでもしてやりたくなる程のムカつく顔で、ひらひらと下着の上下を振りかざされ、思わず胸元と下腹部を押さえて有無を確認した少女は……あった筈のものが『無い』事に気付き、二度目の驚愕をする。

 

 

「何時の間にというか、しょうもねー……」

 

「全部知ってるってツラしてんのがムカついてね。単純な意趣返しのつもりだったが……くく、まあ、内部年齢がヤバイ婆さんにゃあ地味なのが良いわなぁ?」

 

「おい返せよ。別に夢の中だからアレだけど返せよ」

 

 

 ドレスブレイク越えの変態技術にこの少女ですら餌食になってしまい、呆れつつも何故か目の前の少年の前でノーブラ&ノーパン状態である事を自覚すればする程変な恥ずかしさが込み上げて来たので、何時もの調子ですよーと主張しながら、されど激しく動いたらアレなので小さくぴょんぴょんとしながら、ひょいと頭上に掲げてられた下着を取り替えそうとする。

 

 

「おやおや? この程度ならハイキックの一発でも噛ませば良いじゃないの? 出来ないわけねーよなぁ?」

 

「したらまる見えになっちゃうじゃんか。だから返せよ……結構恥ずかしいんだぞ、僕でも」

 

 

 そんな反応が愉快ですとばかりに手を伸ばす少女てわ遊ぶ一誠だけど、流石に返さない事はせずそのまま返してやる。

 

 

「あーおもしろかった。じゃ、飽きたから俺帰るわ」

 

「………」

 

 

 そして満足したホクホク顔で今度こそ教室から出て行くのを少女は見送ったが、一誠は気付かなかった。

 

 

「ふっ、じゃあお返ししてあげるさ」

 

 

 薄い笑みを少女が浮かべてた事に……。

 

 そして――

 

 

「一誠が寝ていたその手に女の下着があった訳だが、オレのでも無ければ古賀ちゃんのでも無い」

 

「誰のかなぁ~? 私達の知らないお友だちかなぁ?」

 

 

 起きたらその下着がそのまま握られてて、くじらといたみにめっちゃ問い詰められる事になってしまい、一誠は若干やったことに後悔したのだったとか。

 

終わり




補足
流石に自分のせいで名瀬ちゃんがアレになっちゃった事を気にしだすイッセーくん。

しかしもう遅い。

その2
死の先で自分を流した少女とそっくりな少女と、飛沫さん戦以降夢の中で会う様になった一誠。

しかし、本人とその少女が同一人物とは思っておらず、若干嘗めた態度なのはご愛敬。

てか、彼女から下着だけをひっぺがせる時点で進化の速度がヤバくなってる事に気付いてない。


ちなみに現実に戻った後、くじらさんと古賀ちゃんにずーっと問い詰められ続けるのだったとか。
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