王すら鼻で笑うせいで……王様は王様らしくに。
黒神めだか……ね。
言われてみれば確かに
しかしながら所詮雇われの身でフラスコ計画にも十三組にも関係がない……筈の俺にはどうでも良い話でしかない。
「ご苦労だったな名瀬、古賀……そして霧島よ」
「「「……」」」
例えこの生徒会長に何を施そうが、只の他人でしか無い俺には関係がないのだ……金に釣られて捕縛した俺が言うべきことじゃあねーがな。
「さて、これで霧島の仕事は終わり――と言いたいが」
「そら来た。どうせそんな事だろうと思ってましたよ」
黒神後輩ちゃんを取っ捕まえ、まるで凶悪犯を大人しくさせるかのような拘束器具で簀巻きにされていくのをどうでもいい気分で眺め、お役後免の言葉を雇い主の一人であるスーパーサイヤ人こと都城王土に貰おうとしたのだが、案の定というか――頑なに理事長含めた奴等の誘いを蹴り飛ばし続けたツケが此処で回ってきたみたいで……。
「黒神を捕縛する依頼と同時に邪魔な取り巻きを撃退する依頼をした筈だが、奴等はどうやら諦めるつもりが無いらしい。
雲仙と高千穂と宗像が
「……。あぁ、あの子達目を覚ましたんだ……」
「随分と加減したんだな一誠」
「追い出せと言われただけで再起不能にしろとは言われてなかったんでね……メンタルはやっぱり強いなアイツ等」
何時見ても偉そうというか、王様というか……まあ取りあえずオーラビリビリ出してる都城先輩さんが簀巻きにされて眠ってる黒神後輩ちゃんの頭に手を乗せ、俺達に背を向けながら話す言葉に耳を傾ける。
「前に名瀬が言っていた、"
その為にこの黒神の人格を今から俺が直々に書き換えなければならん。従って――」
「黒神の
その横に変な仮面を付けたチビが……いや行橋先輩さんが居て都城先輩さんの言葉を遮るようにして俺達に話す。
「遊ぶねぇ……?
また撃退しろって言わない辺り、黒神後輩ちゃんの洗脳が終わるまで時間稼ぎをしろと聞こえますが……?」
「そうだよ。ぶっちゃけると王土に洗脳された黒神を生徒会連中にぶつけてみたいってのもあるからね!
さっき
「その生徒会連中と遊んで時間を稼げと……。
オレも人の事言えねーが、やっぱアンタ等はエゲツねーや」
既に素顔を隠したくじらがラフな言い方で二人の先輩さんをおちょくる言葉に栄養ドリンクと俺が渡したバランス栄養食品で体力回復を図ってた古賀はコクコクと頷いて同意してる。
まあ、ダチ同士を潰し合わせる――しかも片方は実験目的で無理矢理人格が書き換えられてる黒神後輩ちゃんだ。
生徒会の子達の心を折るという意味ではこの二人の言ってることは概ね正しいやり方だと言えるだろうさ。
「二人の先輩さんに言われたら仕方ねーか……行ってきますぜ」
「おっと、当然の事ながらオレも行くぜ一誠? オメーの遊びでもしかしたから何か分かるかもしれねーからな」
「ん、6割程体力回復! アタシも一緒だよ!」
只……ふっ、あの生徒会達がこんな程度で心を折るとは思えないし、此処にまた出戻りすると聞いた今となっては確信に近いものを感じるぜ……先輩方よ?
眠る黒神後輩ちゃんの頭に手を乗せ、俺達に背を向ける都城先輩さん。
変な仮面を付けた状態で俺達を越しに見てる行橋先輩さん。
この二人を背に部屋から出て階段を登る俺達は、大将を奪い返すために再び心に火を灯した生徒会の子達の元へ遊びに行くのだった。
「行橋、霧島の心はやはり受信出来なかったか?」
一誠達が出て行ってから数十秒程経った頃だった。
居ないと気配で確認した都城王土は自身の側近でもある行橋未造に対し、めだかに対する洗脳の作業をする傍らで問うた。
人心支配……都城王土が王である理由とも言うべき
何せ普段はヘラヘラと下品な思考回路そのままに生きてるような男だというのに、このフラスコ計画の責任者であり箱庭学園の理事長でもあった不知火袴は言うのだ……
『まさか、歴代フラスコ計画の――それも全加入者を合わせても尚お釣りが来る逸材が現れるとは……』
王である自分を含めた、これまでこの世に生まれた全異常者を合わせても尚足りないほどの圧倒的な何かを持つとまで言われた男――霧島一誠に王土は――自分自身の異常性に支配されっぱなしという密かな屈辱に打ちのめされた都城王土は嫉妬にも近い感情があった。
『
そりゃボインでSっ気たっぷりな御姉様にそれ言われたらホイホイ太股だろうが脚だろうが嘗めますが、スーパーサイヤ人みたいな男の人にそれ言われてもなぁ……』
最初、名瀬と古賀の二人の口から語られたのを発端に、興味本意と試すという意味合いで対面した時もそうだ。
自分の支配を何食わぬ顔で撥ね飛ばし、ヘラヘラと笑って見せた時は『名瀬と古賀に言われるだけある』と感心したものだった。
けれどそれは違った……それでも自分の方が上だと思っていた王土のプライドを壊したのは直後に見せた――
『やっぱり"ココは"住み心地が良いなぁ。
くじらと古賀以外にも俺みたいな奴等ゴロゴロ居やがる……クックックッ!』
自分をまるで遥か上――光を太陽が天から降らせるが如く、いや宇宙から地球を見下ろすが如く……自分を含めた全てを見下せるような圧倒的で異常者たる自分達ですら理解できない領域の一端であろう
「いや……相変わらず煩悩まみれさ」
「……。そうか」
故に都城王土は何もされずともへし折られた心を打ち直すため……霧島一誠という化け物に対して一定の距離から観察をすることにした。
何を考えているのか、何を動機に生きているのか、それほどの性質を持ちながら何故そんな呑気に生きていられるのか……。
他人の心の言葉を受信出来る側近、行橋を使って幾度と無くその心を知ろうとしたのも手の一つだった。
まあ、自分の支配性すら半笑いで消し飛ばすせいで行橋もまたその内面の奥底は受信出来ないで居るのだが……。
「アイツの訳の分からなさは分かってる。単なる異常者じゃないことも含めて霧島は僕達や王土ですら理解が出来ないのも、僕達側の名瀬や古賀何であんな平然とアイツの傍に居れるのかとかも解らない」
「あぁ、そうだな……」
だからこそ、側近である行橋未造は王土が心配だった。
自分本意で身勝手なこの男の心が霧島一誠に対するこ拘りの為にその異常性を弱らせているのではないか。
究極の自分本意がある意味自分を救ってくれた男が堕ちて行くのを近くで見るのは耐えられないと未造は、する必要がない筈の心配をしてしまう。
「出来ることなら、僕にそんな性質があるなら今すぐにでも王土の記憶から霧島の記憶の全てを消してやりたいくらいだ。
アレが現れたせいで王土は――」
「行橋」
「っ……!」
だからこそ未造は……正直な所霧島一誠が気に食わなかった。
自分をある意味で救って、尚且つ側近だと傍に置いてくれる王土のプライドを誰にも悟られずにへし折ってくれた唯一の存在が。
王土を含めた自分を簡単に否定した不知火理事長をも含めて未造は気に食わなかった。
けれど王土は決まって悪態を付こうとする未造を咎める。
今だって眠るめだかの洗脳を進めるために背を此方に向けながら王土は未造の言葉を遮った。
「気に食わんのは俺とて同じだ。あんなチャランポランがこの俺の遥か上――という言葉すら生温い領域に鎮座してるのだ。気に食わん決まってる」
「…………」
静かに、仮面越しに王土の大きな背中を見つめながら未造は黙って聞く。
決まって口にする言葉を聞くために……。
「だからこそこの俺が――王である俺が奴を引き摺り落としてやるんだよ」
「王土……お前……」
七年間が無駄になった時に感じた敗北感。
霧島一誠という化け物と相対した時にも感じた敗北感。
王である自分が二度も受けたこの屈辱は確かに忘れたくても忘れられないし、未造の言うとおり忘れられるなら忘れたいとも思う。
だがそれでは何の解決にもならないし、王である自分がこの二つから背を向ける事なぞ笑止。
「まあ見てろ行橋よ。俺が案外往生際の悪い男だとお前はよく知っているはずだ。
近い将来、あのエロバカを俺とお前の前で平伏させてやるから、それを楽しみにお前は俺の側近をやっていれば良い」
折れても打ち直せばいい。
裸の王となっても上り詰め直せばいい。
自分の異常性に支配されている事を知り、諦め掛けていた気持ちが霧島一誠という存在によって再び甦った都城王土は、人知れず――それこそ未造以外の十三組面子や不知火理事長ですら知り得ない心を持っていた。
「フハ! 偉そうな事を言っておきながら、現状はこの様だがな」
黒神めだかという少年漫画……そして実は異世界から迷い込んだライトノベルが持つ主人公力を。
「………。えへへ」
だからこそ行橋未造は、自分を救ってくれた王気質で忘れずに進化の殻を破って飛び出し始めた今の王土が大好きだと思っていた。
余計なものまで受信しないようにと仮面を被り、王土の為だけにこの異常性を使うことをますます躊躇わせない程に……。
「えへ~ やっぱ王土はそうじゃなくちゃね~ どうしよ、前より好きになるし……霧島達に王土の手伝いはさせたくないなぁ」
「ん? お前も行くのか?」
「うん、王土が働いてるのに側近の僕がだらける訳にはいかないだろ?」
「そうか……。だが気を付けろよ行橋。お前の異常は他人からの影響を受けやすい。
精々奴等の影響に浸らぬ事だな」
「えへへー! 嫌だなぁ王土ったら。
僕はお前の側近だぜ? お前に対する忠誠心以外はぜーんぶ受信したところで意味の無いものなのさ!」
行橋未造は都城王土の側近であった。
都城 王土
所属・三年十三組及び、フラスコ計画十三組の十三人メンバー
検体名・
異常・人心支配
行橋未造
所属・三年十三組及び、フラスコ計画十三組の十三人メンバー
検体名・
異常・先鋭受信
「なら俺からは何も言わん……頑張れよ行橋」
「うん! えへへ……王土の役に立って帰って来れからちゅーしてね?」
「フッ……そんなナリで言われてもな」
「む……好きでこんな小さくないやい!」
備考――霧島一誠によって折られ、霧島一誠によって覚醒する道を見付けた真なる王と、唯一その王に認められ傍に居ることを許される側近の……実は女の子。
終わり
オマケ……君臨
もう昔の話だ。
俺がまだ兵藤一誠として生きていたあの頃。
くじらや古賀――もっと言えば俺と似た奴等がわんさかと居るこの世界じゃない世界でそれなりに楽しく生きていたつもりだったあの時。
俺という存在そのものもが、沸いて出てきた訳の解らない奴によって否定され、生きている意味も生き抜こうとする気持ちすら失い、その重圧すべてから逃げようと自ら命を経った時、俺は奴の姿を見た。
『やぁ、キミみたいなお馬鹿が自殺するとは、直前まで見ていた僕でもビックリだよ。
でもこれで漸く僕の声が届いたね?』
俺の悩み、俺の傷ついた心、俺に与えられた残酷な現実。
その全てが馬鹿馬鹿しく感じてしまうほどの圧倒的な何かを体現した様な女。
見たところは女子高生くらいか……とにかく俺の心の隙間に縫って入ってくるような笑みを浮かべるその女は言った。
『まあ、でも心配しなくてもキミは死なないよ。
何故ならキミはあの自殺で命が消える直前に目覚めてしまったからね――失った脳の機能を他の脳が補うように、本来持つべき
『故にキミは死ねない。どんだけ自殺しようが、どんだけ自傷に走ろうが、どれだけ生きることに諦めようがお前は絶対に死なない。
夢と現実の境界を自在に操るスキルと、自分自身を永久進化させるスキルによって、キミはもう一人の僕に――いや、それ以上な人外へとなるだろう』
『だからこそ、兵藤一誠くん……キミには僕達の世界で生きる方が相応しい。
転生者なんてふざけた存在に好き勝手されるキミの世界なんかじゃなく、キミの同類が沢山居る僕達世界に……』
『ふふ、まだ子供だから理解できてないって顔だな? なぁに、行ってみれば解るよ一誠。
キミを追い出そうとした転生者は当然居ない、キミを追い出したあの世界は僕が消してあげたから、存分に……今度こそキミの思うがままに生きろ。
ふふふ……まったく、偶然見守ってきただけにすぎないこの僕に対して、子供の癖に此処までさせるだなんてやっぱりオメーはラノベの主人公だ』
『?????』
ハッキリ言って、当時はこの女が何をいってるのか殆ど分からなかった。
けれどその中で餓鬼だった俺でも解ったことは、俺は自分の中に燻らせていたそれを覚醒させた事によってこの女に助けられ、覚醒させたが故にこの女の世界に住むことを許されたという事だけ。
『じゃあ兵藤――いや、今からキミは霧島一誠と名乗って精々生きたまえ。
なぁに、お前ならサバイバルな生活でも生きていけるだろうからそこは心配してねーぜ?』
そう言って女との接触が切れ、死んだつもりの俺は気付いたら全く知らない街の、全く知らない路地裏のゴミ捨て場に立っていた。
勿論ただ俺が見てた夢だったのかもしれないと思ったが、夢じゃないと認めるには然して時間は掛からず、俺はあの世界から全く違うこの世界の人間になった事を受け入れる事になる。
俺から全てを奪い、信じていた筈の親も居ない、家もない。金も、友達も、何もかも無いままこの女の世界とやらに俺は飛ばされた。
既に見限っていた俺からすれば親に対する情なんてとっくに無く、誰も俺を知らない――自由に生きる事に口出ししてこないこの世界で俺は元の世界で以上に楽しく生きる事を人生の目的として定め、ホームレスみたいな生活も甘んじて受け入れた。
そりゃあ誰の後ろ楯も無く現代社会を餓鬼一人が生き抜くはかなり大変だろうと覚悟はしてたが――へっ、あの女の言った通りだったよ。
『お前は……何なんだよ? 何でこんな状況でもヘラヘラしてられるんだよ?』
同類が……同類と出会えた時は思わず笑っちゃったもんだよ。
そして転生者とやらに全てを奪われて以来初めて感じたよ……『あぁ、嬉しいなぁ』ってな。
『俺はお前と違って不幸だとか、幸福だとかに拘ってねーんだよ。
親が居ないから……家がないから不幸だなんて思わねぇし、幸福だとも思っちゃいない。
まあ、お前にはわからんだろうが、俺は今猛烈に愉しいのさ……この人生が』
『………』
自殺する直前の俺を思わせるひねた目をした同年代の子供。
不幸を知ればもっと結果が付いてくる……なんて訳のわからん持論を得意気に語る変な奴。
それが俺が初めて出逢った同類の奴であり――
『オレ以上にアレなのに……テメーは何かムカつく。
だからテメーに付きまとってテメーの正体を見破ってやる』
『え、嫌だ。女子高生くらいでボインな女の人なら歓迎だけど……何でお前みたいなちんちくりんを傍に置かなきゃなんねーんだ? やーなこった!』
『ぼいん? 何言ってんのかわかんねーが、オレがそう決めた以上拒否権なんかねーよばーか』
元の世界の全てを合わせても足りないくらい、最も付き合いの長い……変な女と奇妙な縁だ。
そしてこの奇妙な縁こそが――
「今日一日ですっかりあの子達にとっての悪役になっちまったなぁ。
ったく、これからのナンパライフがますます楽じゃあ無くなりそうだぜ」
「どっちにしろお前のナンパが成功するなんてあり得ねぇよ。餓鬼の頃からそうだったじゃねーか」
「そうそう、中学の頃だって女子大生に100回もナンパして1回も成功してないしね!」
「るせっ! その内何とかなるわい!」
俺の力の源……。
恐らく不知火理事長の思惑は、フラスコ計画に参加しようとしない一誠と黒神……そして俺達十三組の生徒の誰かをぶつけさせる事で起こる何かを検証しようとしてるんだろう。
でなければわざわざ一誠唯一の弱点でもあるオレと古賀ちゃんがピンチに陥る映像を見せる真似なんてしやしない。
「怪我させない様にと気を使いすぎたせいで、とんだ残業だぜ。手当でも付けさせないと割りに合わねーや」
裏の六人が黒神達に負けた高千穂先輩達と+αやり合ってる間を縫って、此処に戻ってくるだろう生徒会連中を迎え撃つ為、半分以上体力を回復させた古賀ちゃんと、今この瞬間にも恐らく強くなってるだろう一誠が並んで立つのを後ろから見てるだけのオレは、果たしてこの事実を知ってるのかどうかと考える。
「今度は骨の一本でも――あ、でも女の子も居るしなぁ」
「思うんだけど、何でアイツ等に気を使ってアタシや名瀬ちゃんには割りと容赦しないの? 何か差別を感じてすっごく不満なんだけどー?」
「は? ……ははは! 何で今更オメー等に気を使わなきゃなんねーんだよ? お姫様扱いでもされてーのか? 笑わせるなっつーの」
「ムカッ! やっぱり差別してる!!」
「…………」
ヘラヘラと笑って軽口を叩く何時もの姿を見るに、多分気付いてないんだろうとオレは思う――いや、気付いててもそれすらどうでも良いのかもしれない。
コイツは昔からそうだ……誰よりも常に先の領域へと一人進み続け後ろは決して振り返らない……オレと古賀ちゃん以外はな。
だからまぁ……オレが感じる予感も一誠にとってすれば所詮蟻が恐竜の爪先をかじる程度にしか思ってすら居ないんだろう――現に一誠にはそう思えるだけのナニかがある。
「へ、オメーが気を使っても向こうは容赦なく来るだろうぜ? ついでに言えば明日からあの特別科の眼鏡から広がってオメーの不評が広まりまくって――」
「ジーザス!? つまり明日から俺は特別科のおんにゃのこ達に嫌われてしまう!?」
ただ、実に分かりやすい馬鹿というか……。
今も女絡みの話をしたら途端に狼狽えてるし……ホント馬鹿だぜコイツ。
「ま、そうなるな。どうする? 奴等が来たら向こう側に回るか? そうすれば多少なりとも見直されるかもな?」
「え"? 名瀬ちゃん正気? イッセーくんが向こう側になったら間違いなく数時間もしない内にフラスコ計画が消えちゃうんだけど……」
でも馬鹿だけどオレは確信してる事がある。
馬鹿で未だにコイツの内面や性質の正体が掴めてないけど、信じてることがある。
「そうなったらそうなったらで、まあ――」
「ねーよ」
女絡みだと平然と掌返す性格をしてるがゆえに、オレより全然付き合いの短い古賀ちゃんは、ちょっと狼狽えてる様だが、オレの言葉を遮るようにして低い声を出した一誠は何時だってそうだ。
「まぁ確かに? 痴女スタイルの古賀だとか、包帯女になってまで素性を隠すくじら――いや、今は名瀬よりも遥かに普通科やら特別科のおんにゃのこ方がおんにゃのこしとるし、嫌われたら辛いかもしれねーけど、だからってテメー等裏切ってまで付こうとは思っちゃいねーよ」
オレと古賀ちゃんば絶対に裏切らないとな。
「え……ぁ……う、うん……」
「ほー? 珍しいじゃねーか、オメーがそんな事をオレ等の前で言うなんてよー?」
「ケッ、オメー等に俺が此処に来た理由を見抜かれた今日一日限定じゃボケ」
だからオレはコイツを嫌いになれない。
どんなに凄まじかろうと、オレはコイツを真に理解するまで――いや理解した後でもオレはコイツに付きまとい続けるつもりだ。
「そら、嘘じゃない証拠だ」
「わっ!?」
「わぷ!?」
こうやって今も、たまに素直になるかと思ったら、オレと古賀ちゃんの手を掴んで引き寄せ、抱き締めてきやがる辺りとかも理由のひとつだし――
「ど、どうしよ名瀬ちゃん?
不覚にもイッセーくんが格好いいと思っちゃてるアタシが居る」
「コイツはたまに寒い事を平然とするからな。前にもあっただろ?」
「あ、そういえば……」
「……。ぜ、全然可愛くねー反応しやがって。やらなきゃよかったぜバーカバーカ!!」
要らねぇと思ってた気持ちまで思い出させてくれやがった責任だけは絶対に取って貰う為にオレは付きまとい続けるぜ。
「あ……身体の怠さが……?」
「ついでにお前の蓄積して回復しきれなかった疲労を否定してやっといんだよ。これで全開でやれる筈だから、精々足を引っ張んなよ?」
「ひ、否定? またよく解らない言葉が……」
「……。おい、オレにはねーのかよっつーか、オメーってどっちかと言うと古賀ちゃんにはなんやかんや贔屓するよなぁ?」
「あ? じゃあその薄気味悪い包帯取ってか――」
「おう、取ったぞ。何してくれるんだ? 腹パンしてくれるのか? 尻百叩きか?」
「な、名瀬ちゃん……」
「……。お前の兄妹が見たら泣くぞ……」
終わり
補足
黒神くじらについて
家出した先に出会った超絶な異常者少年との出逢いで運命を変えた……は、良いけどあまりに近すぎて女としてまるで見られてないせいで女扱いされない……事に不満はあれど気持ちが良いという変な方向に目覚めてしまった。
つまり、彼にとっての二人は善吉君にとってのめだかちゃんみたいな存在とも云えますね
本人は恥ずかしいので意地でも普段は言いませんが。