龍帝になれなかった少年   作:超人類DX

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なまじ勝つからこうなる。

ある意味彼もまた他人に影響を与える気質がある。


「くじ姉ぇ……」

 朝起きて歯を磨く。

 そして適当に用意した朝飯にかぶりつきながら美人お天気お姉さんのお天気予報を見て気合いを入れてからいざ登校。

 

 それがどんなに心に余裕を持たせられる癒やしか諸君には分かるだろうか?

 見たくも思い出したくもない『昔の夢』のせいで色々とナーバスになる気持ちですらリセット出来るこの神聖なる儀式をだ。

 

 まあ、昔の夢を見て未だに気分が悪くなる辺り俺自身貧弱なだけなんけどよ。

 

 

「っしゃあ! 今日も元気良く、ハーレム王に俺はなるっ!!!」

 

「朝っぱらから正門前でバカがアホな事をほざいてるぜ古賀ちゃん」

 

「無理なのにねー?」

 

「うるせぇ!! なるったらなるんだよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 負けた。

 ハッキリしっかり、誰が見ても認める様な敗北を私は日に二度も同じ人物から味合わされた。

 解らないほどの差を見せつけられながらの圧倒的で理不尽で強烈な負けっぷりであり、よりにもよって味合わせてくれた相手は――

 

 

「うぉぉぉっ! 女子テニス部のみなすわぁぁん! 俺に恋のスマッシュをぶちかましてくれぇぇ!!」

 

 

 ネット越しに女子テニス部の練習風景をだらしない顔で眺めながら訳の分からない台詞を吐いてる問題児……霧島一誠という男にだった。

 

 

「あーぁ、霧島がまーたやってるぜ」

 

「ホント懲りねぇよな……ある意味尊敬するぜあのスタンスに」

 

 

 霧島二年生はある意味で有名だ。

 それは勿論いい意味では無いのだが、ある意味で私より目立ってる時がある。

 今だって同クラスだと思わしき数人の男子生徒から生暖かい視線を受けても何のその状態で、引いてる女子テニス部にちょっかいを掛けてる姿が実に目立ってる。

 

 先日の敗北以降、単なる騒がしい生徒では無いと恥ずかしながら気付かされた身としては、時を同じくしてこの学園に入り込んだとある男の事よりある意味で厄介であるのだが、それと同時に危惧すべきは、その男が去った後死んだフリをしていた鍋島三年生から聞いた話……。

 

 

『気付けなかったというか、ハッキリ言ってあの霧島クンもヤバイかもしれへん。

ちょっとしか見てなかったけど、彼……例の学ラン君みたいな空気放って自分で自分の目を抉り取ったんよ……』

 

 

 霧島二年生が球磨川と同じかもしれない。

 只でさえ二重の意味で手が付けられない存在だというのに、それに加えて球磨川の様な危険さまで持っているだなど……いや、それ以前に酷い真似をしてくじ姉を手懐けたという現実が実に妬ましく思う。

 

 だから球磨川が転校してきたという事に平行し、今まで以上に霧島一誠という男を観察して見定めてやろうと朝からこうして奴の足取りを尾行してるのだが……。

 

 

「おう霧島ー! 毎日無駄な努力乙!」

 

「うるせー! ヘタレなテメー等よりマシじゃい!!」

 

 

 女癖の悪さ以外は至って普通――いや、ちょっと騒がしい1生徒にしか私には見えない。

 時計塔の地下で感じた『上から全部を押し潰す』様な気配は感じないし、クラスメート達との仲も見ている限り良好。

 ……。球磨川と似ている所があるのを忘れてしまうほどだ。

 

 

「なぁ霧島、朝からずっと生徒会長がお前をガン見してるんだけど……」

 

「あーん? …………。あれだろ、俺のファンにでもなったんじゃね?」

 

「にしては怖い顔なんだけど」

 

「元々目付き悪いだろあの子は。ほっとけほっとけ」

 

「ほっとけってお前……。

前から思ってたけど、女子にちょっかい掛ける癖に生徒会長には何もしないよな? 何で?」

 

「あぁ、それ前に本人に聞かれたんだけど……アレだわ、目付きは悪いし、愛嬌ねーし、ベッドの上じゃマグ―――あべしっ!?」

 

 

 昼休みの教室でクラスメートと昼食を取りながら然り気無く私の悪口をニタニタしながら言おうとしたのにムカついてつい、持ってたスーパーボールを投げつけてしまったりもしたが、やはり探ろうとしても霧島一誠は全然尻尾を出さない。

 

 あくまで私が今見てるのは、時計塔で魅せられる前の問題児・霧島一誠のであり、観察を続けている内に気が付けば放課後になってしまった。

 

 

「あ、イッセーくん!」

 

「遅せぇよ」

 

 

 見せ付けられたあの時の事が嘘みたいに何も感じさせない霧島一誠は放課後になると、部活動や委員会に所属しないので帰るか部活動中の女子生徒にちょっかいを掛けるのが通例である筈なのだが、この日は本来登校義務が無い十三組所属の古賀二年生……そしてくじ姉と待ち合わせをしていた様で、ほぼ無人と言っても良い二年十三組の教室へと赴き、待っていた二人と楽しそうにしているのが見える。

 

 

「遅せぇよってな……。

フラスコ計画が凍結したとはいえ十三組所属が何で普通に来るんだよ……」

 

 

 先日の事件により都城三年生と行橋三年生がフラスコ計画から抜け、十三組の十三人も球磨川によって入院となり、永久凍結という処理が下された事によってまた十三組の生徒は消えていった訳だが、古賀二年生とくじ姉は寧ろフラスコ計画が凍結となったと同時に学園に登校するようになっていた。

 

 

「オレと古賀ちゃんだってちゃんとした学生だしな」

 

「そういうこと!」

 

 

 理由は恐らく、霧島一誠と親しい関係である事がちょっとだけ明るみに出た為、隠す必要も無いからと開き直ったんだと思う。

 

 

「あ、そ……。

まあ何でも良いけど俺がおんにゃのこにデート申し込む邪魔だけはしないでね。変な誤解はされたくねぇ」

 

「おう、お前が無駄な努力をしてる所にオレと古賀ちゃんが都合良く現れれば良いんだな? 任せろ」

 

「こう、何時もの様に腕なんか組めば良いんだよね? 任せて!」

 

「よーし分かったぞ、テメー等さては喧嘩売ってんだな?」

 

 

 だからこそ知ってしまう。

 あのくじ姉がどれ程古賀二年生――そして霧島一誠が大切なのかを。

 時計塔の地下でくじ姉が恍惚な表情で霧島一誠に……という件を聞いた時はショックやら何やらでつい我を忘れてしまったが……。

 

 

「ねぇ、向こうの角から黒神がガン見してるんだけど……」

 

「あ? あぁ、ほっとけよ。朝からずっとあんな感じで別に何もされてないし」

 

 

 見れば見るほど理解してしまうんだ。

 くじ姉は決して嫌がって無いという現実を。

 それは勿論、そんなくじ姉を良いことに霧島一誠がセクハラじみた真似をするのは許せないけど……うぅ。

 

 

「んな事より今日もやるんだろ? 早く行こうぜ」

 

 

 くじ姉ぇ……。

 やっと再会出来たと思ったのに、再会したくじ姉はいい意味で変わられたと同時に悪い意味でも変わられてしまったのですね?

 

 

「何でそんな張り切ってんだよ。わっかんねーな」

 

「そりゃあ当然だろ。

腐ってもオレは研究者タイプだし、オメーが本腰いれてオレと古賀ちゃんに協力してくれるともなれば血が騒ぐに決まってる」

 

「うん、今まで適当にあしらうだけのイッセーくんが付き合ってくれるだけでやる気も上がるよ!」

「ま、研究の一貫として一誠クラスの人間との間に出来る餓鬼はどんなもんなのかとか身体張って試してみたい」

 

「おいおいおいおいおい、それこそ何の罰ゲームだっつーの」

 

 

 くじ姉からあそまで信頼を寄せられてる霧島一誠が実に妬ましい。

 妬ましいと思ったからこそ、食って掛かってしまった挙げ句あしらわれてしまったという醜態を晒してしまったが、やはりこうして冷静に三人のやり取りを見てると悔しいと思えて仕方ない。

 兄貴こと黒神真黒も霧島一誠を妬みに妬んでたし、何より今の私では到底たどり着けない境地に居るというのも悔しい。

 

 

「そういや都城先輩と行橋先輩が修行の旅とやらに出たらしい」

 

「ほーん、あの王様がねぇ? 修行とかどこの漫画だよという突っ込みは後回しにして、どういう心境の変化なのやら」

 

「噂によると、イッセーくんをぶちのめす為に1から勉強し直すとか何とか……」

 

「何だよそれ……? ちぇ、だったらあの時嘘でも黒神後輩ちゃんにぶちのめされたフリでもしとけば良かったかも」

 

 

 一緒に居る事が当たり前という雰囲気をくじ姉からも思われてる事も、チャランポランな男に勝てないことも全部……。

 

 

「くっ、これで全委員会系の女子は逆コンプでナンパ失敗だぜクソッタレ。

まあ、見るからに変な集団の寄せ集めみたいなアレだったしダメージは少ないが」

 

「向こうだって絶対に同じ事を思ってるだろうな」

 

「『変態に言われたくない』ってね」

 

「覚えとけ、エロスは男の嗜みなんだよ。紳士なんて隠れホモか不能かヘタレのほざく言い訳だ」

 

 

 悔しい。悔しい……!

 

 

 

 都城王土と行橋未造。

 現・フラスコ計画の首謀格であった二人が学園を自主退学した事により、自動的に計画は凍結となった訳だが、俺達生徒会はそれについて素直に喜べなかった。

 

 

「『久しぶりめだかちゃん!』『僕だよ』」

 

 

 あのおぞましい男。

 思い出したく無かった男。

 球磨川禊が転校してきたのだから。

 

 

「球磨川って人、あの日以降姿を見せないね。明日なんて言ってたけど」

 

 

 フラスコ計画の凍結と球磨川が出現したあの日、電話をした不知火の様子が変で、その日以降学校を休んでしまっている事も気になるが、俺にとって一番に警戒すべきはやはり球磨川だ。

 生徒会室で花に水やりなんてして誤魔化しているが、俺の心の中には再会してしまった球磨川と――

 

 

「黒神さんは?」

 

「あー……アイツなら今日も変態先輩――つまり霧島先輩の様子を眺めてると思うぜ」

 

「あー……」

 

 

 ある意味球磨川以上にその在り方解らないジョーカーみたいな男……霧島一誠がこびりついて離れない。

 異常(アブノーマル)を完全にコントロールしためだかちゃんを、殆ど遊んでるようにして片手間に倒したあの煩悩の塊みたいな男は、今日も何時ものように全校の女子の尻を追いかけており、計画の凍結を期に登校するようになっためだかちゃん姉貴と古賀先輩と仲良くやってるみたいらしく、そのせいで姉貴と仲直りしたくて堪らないめだかちゃんの不機嫌度は過去最大だ。

 

 まあ事実の程はよくわかんねーけど、あんな……なんか特殊すぎる性癖を自分の姉貴がよりにもよって学園最強最悪の変態男に好意と共に向けてるんだから、ショックもデカいだろう。

 

 

「霧島二年生の事が一つ解ったぞ!」

 

 

 だからこそめだかちゃんは、霧島先輩に嫉妬混じりのマークをしており、今も言った通り観察に出掛けていた訳だが、勢い良く生徒会室の扉を開けて帰って来ためだかちゃんは、ビックリする俺達を半分無視しながら興奮した面持ちで言う。

 

 

「あの男は変態の他に家事が得意らしい! くじ姉と古賀二年生に手製の弁当を毎朝作ってきてる」

 

「あ、あぁ……そうなの? でも先輩って調べによれば独り暮らしいし、まあ、一応理に叶ってるんじゃないか?」

 

「……。毎日毎日、凄いどうでも良い情報ばっかり……」

 

 

 鼻息荒く会長席に座っためだかちゃんの、かなりどうでも良い情報に俺と喜界島は呆れてしまう。

 ちなみに阿久根先輩は出払ってるのこの場に居ないけど、あの人もあの人で霧島先輩を嫌ってるからなぁ。

 今居なくて助かったってのが本音だ。

 

 

「もっと他に無かったのかよ?」

 

「他にだと? くじ姉と仲良くやってる理由はもしかしたら料理上手だからかもしれんだろ!

くっ……変態なのに料理上手でくじ姉の胃袋を掴んだのか? 私だって結構得意なのに……」

 

「……。黒神さんってやっぱり一周回ってバカなのかも……」

 

 

 霧島先輩に叩き潰され、多分めだかちゃんにとっては明確なる『敗け』を味あわされたせいか、異様に霧島先輩に対抗意識を燃やしているめだかちゃんの、的外れ過ぎな見解に喜界島が小さく呟いたのを聞いて俺もちょっと同意した。

 

 料理上手とか、単に高校前からの付き合いだからだとか、多分だけど霧島先輩と名瀬先輩と古賀先輩の三人はそんな次元の繋がりでは無いと思う。

 

 

「霧島先輩の事は確かに気になるかも知れねーけど、めだかちゃんの姉貴と仲良くやってる事に関しては俺達がどうこう言える事じゃないだろ。

第一あの時気づかなかったかもしれないけど、めだかちゃんがあの人に『私が勝ったらくじ姉から離れて貰おう』って言った時、それまでずっとふざけてたあの人が『本気で怒った』って顔したんだぜ?」

 

「む……」

 

 

 対抗意識を燃やしまくってるめだかちゃんを宥めるついでに、気付いてなかっただろう霧島先輩の『別の側面』について話す。

 そうだ……めだかちゃんはあの衝撃的過ぎる話を聞かされて気が散ってて気付けなかったんだろうが、確かにあの時一瞬だけ霧島先輩の表情が氷の様に無になって、寒気がするような殺意を放ってたんだ。

 

 まあ、その…特殊すぎるアレについて別にしても、俺にとってめだかちゃんがそうである様に、霧島先輩にとってあの二人は『大事』なんだろう。

 でなければあの場に……最高のタイミングで援軍として現れもしないだろうし、そもそもその後二人に問い詰められて嫌々来た理由を答えてたからな。

 

 

「だから俺としてはいくら妹だからって、あの人達の関係に口出しすべきじゃないと思う」

 

「別に離れろと言うつもりは無いし、私だってバカじゃない……くじ姉と古賀二年生が好きであの男と一緒だというのも理解はしている。

だが……だがやはり悔しいのだ。子供頃から心を開いてくれなかったくじ姉の心をあんなにも開かせている霧島一誠がな」

 

 

 宥めるように言う俺にめだかちゃんは渋い顔付きで言うので、俺は『あー』と心の中で理解した。

 結局コイツは姉貴を取られて嫉妬してるのだ……霧島先輩に。

 

 

『ねぇねぇ、放課後暇ならこれから俺とデートにいかない? え、この子達はって?

さぁ、知らないなぁ? 顔面に包帯巻いてる女とか、お団子縛りの女なんて俺の知り合いじゃねーから安心―――――あっ!? 違うから、そんな事ないから……ってノーゥ!!?』

 

「っ!? き、霧島二年生の声!? ど、何処だ? 外か!?」

 

「窓の外だな……。どーやらナンパがまた失敗したみたいだぜ?」

 

「……。左右から先輩二人にくっつかれてるままナンパしてるなんて、女の子を軽く見てるとしか思えない……やっぱりサイテー」

 

 

 そうだ、めだかちゃんにはある意味勝ってるのが霧島一誠であり、球磨川と同じくらいにめだかちゃんは意識をしている。

 今だって外から聞こえる先輩のナンパ失敗の声に機敏な反応と動きで窓際から眺めてるめだかちゃんは、ギャンギャンとしてやったり顔に見える名瀬先輩と古賀先輩の二人にキレてる霧島先輩をハンターみたいな目で見てるくらいにはな。

 

 

『ふ、ふざけんなコラ! お前等が急に後ろからくっつく真似なんざしたせいで今の女の子から完全に誤解されたじゃねーか!! どうしてくれる!?』

 

『どっちにしろ失敗するんだし、くっつきたくなったからなー?』

 

『そうだよ、イッセーくんは大きい胸の女の子が好きなんでしょ? だからちょっとしたサービス心を添えてって奴だよ』

 

『要らねーよオメー等のなんか!! くそ、登校するようになってからあからさまに邪魔しやがって……! クラスの奴等から完全に誤解されて最悪だぜ! あの不知火ってチビ餓鬼はケタケタ笑って俺のナンパ失敗を写メされるしよぉ』

 

『不知火? って……あぁ、確か一年生の?』

 

『そうだよ。あのアホ毛チビめ……先輩を嘗めてるとどうなるか、エロコスプレ撮影会の刑にでもしてわからせてやろうか……』

 

 

 ……。男女の関係については俺もよくわからねーが、最初から見ててもあの二人は完全に霧島先輩が好きなんだなー……なんて思う。

 でなけりゃそんな露骨な邪魔なんてしやしないだろうし……こりゃ真黒さんが見てたら発狂しちまうかもな。

 

 

「霧島先輩も何で普段は素直にならねーんだろうか? つーかナンパする必要もないだろ」

 

「どうせハーレムがどうとか思ってるんでしょ? ふん」

 

「ぐぬぬぬ霧島二年生めぇ……! ずるいぞ……」

 

 

 大股で怒りながら行ってしまう霧島先輩の後ろをちょこちょこと付いていく姿を見ながら、この時だけは球磨川の事を忘れることが出来た気がしたよ。

 

 

「あ、遅くなってすいません。ちょっと人吉クンの『妹さん』と会いまして」

 

「は? 妹なんて俺には………ゲッ!?」

 

 

 まあ、直ぐに現実に引きずり戻されたけどな?




補足

不知火ちゃんとは実はそれなりに知り合いですが、一誠くんのストライクゾーンから大幅に外れてるばかりか、人吉くん経由で初めて会った時なんか……。

「ふん、心配せんでもおっぱい力が0に加えて寸胴でアホ毛チビなんぞに興味はねーよ」

と半笑いで小バカにしたせいで、水面下での嫌がらせのやり合い戦が勃発してたり。


割りと二人は一誠のナンパをマジになって邪魔します。
それこそ『コイツはコブ付きだからやめとけ』と解らせるためにぴっとりくっついたり。


そんなだから黒神兄妹からはかなり嫉妬されてます。
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