龍帝になれなかった少年   作:超人類DX

8 / 14
イッセーがイッセーらしく……なんて。

ちょっとアレです。

※ちょっと直しました。


『ほほー? クマちゃんおぱんちゅとはまだまだお子ちゃまでちゅねー?』

 おとーさん、おかーさん、どうしてぼくをみないの?

 どうしてしらないこにやさしくしてるの?

 

 ぼくがいっせーなのに……どうして……?

 

 

『キミはウチのイッセーにそっくりだけど、何処の子だい?』

 

『早くお家に帰らないとご両親が心配するわよ?』

 

『な、なに言ってるの? ぼくがイッセーで、あの子が……うっ……!』

 

 

 おとーさんはぼくを他人って言った。

 おかーさんはぼくを知らない子と言った。

 そして――

 

 

『チッ、あの馬鹿ロリ神が。

憑依転生じゃねーのかよ?

のっけからメンドクセー作業させやがって』

 

『だ、誰なんだよ! お前は――がっ!?』

 

『うるせぇな、本来は俺が成り代わった時点でテメーは死んでるんだよ。

だから死ねや……今すぐ此処で』

 

 

 ぼくと同じ顔をした……誰だか解らない人にぼくは僕の全てを――

 

 

『困った子だ。どうする、警察を呼ぶべきか?』

 

『そうねぇ、私達を親と思われても困るし』

 

 

 

『イ、イリナちゃ――』

 

『え、アナタだれ? イッセーくんにそっくりだけど……って、あ、イッセーくーん!』

 

 

 

 奪われた。

 親も、大切な友達も、環境も、名前も、何もかもをソイツに奪い取られた。

  残ったのは名前を奪われた只の餓鬼。

 何も出来ない弱い子供。

 

 泣いても誰も見てくれない。自分がイッセーだと主張しても誰も信じてくれない。

 全ては『成り代り転生者』とやらが中心となって俺を消そうとする。

 

 だから俺は自分の命を終わらせた。

 忍び込んだ廃ビルの屋上からその身を投げ出した。

 

 

『あ、やっと死んでくれるんだ? ははは、直接手を下さずとも死んでくれるなんて嬉しいねぇ……はははは!』

 

 

 最後まで、俺を奪った男の嘲笑を聞きながら、自身の現実と世界から逃げた。

 

 

 

 

 

 

 

「一誠っ……おい一誠!」

 

「うおっ!?」

 

 

 霧島一誠。

 かつて全てを奪われ、その重圧に堪えきれず自らの命を絶った少年は、その命の灯火が切れるか切れないかの刹那で覚醒させた力に似たような力を持つ人間が少なからず存在する世界へと、とある少女によって送られた。

 

 そこには自分を忘れてしまった両親は居ない。

 自分がイッセーだと忘れてしまった元・お友達もいない。

 全てを奪い取った転生者とやらも居ない。

 

 つまり一誠にとっては重圧に押し潰されること無い世界であり、自分の同類が少なからず居る居心地の良い世界でもあった。

 

 しかしながら一誠は忘れなれなかった。

 どんなにヘラヘラ態度で周りに対して繕っても、その心の奥底に残る記憶は、十年近く経った今でも根深いトラウマとして一誠の悪夢として蝕んでくる。

 

 

「っく!? う、ぁ……!」

 

「大丈夫か?

魘されてる声が聞こえたから来てみたんだが……」

 

 

 受け入れているつもりだ。過去の事だと割りきってるつもりだ。

 けれど毎晩の様に過去のトラウマは一誠の悪夢となってその精神を削り、吐き気すら催してくる。

 

 

「ぅ……く……」

 

「落ち着け、落ち着いて呼吸しろ」

 

 

 生きるために『何でもした』結果得た多額の資金で購入した自宅の寝室のベッドの上に、大量の汗を流しながら悪夢によって最悪の目覚めをした一誠は、自分の魘された声が気になって来たと言う親友の少女が他の誰からには絶対見せない『心配する』表情を見せながら、これまた普段決して誰にも見せない『泣きそうな』顔を無意識に浮かべながら片手で顔を覆って息を切らせている一誠は、少女に背中を擦られながら徐々に呼吸を落ち着かせる。

 

 

「っ……ぐ、ハァ、ハァ……クソが」

 

 

 少し落ち着いた所でポツリと漏らした悪態。

 出来ることなら永遠に葬り去りたい過去への夢を見る頻度がここ数年で一番多くなってる事に焦りにも似た何かを感じては居たが、どんな手を尽くしても見てしまう悪夢は、一誠を永遠と嘲笑っているようだった。

 

 それは十年近く一緒に行動してきた少女――くじらも一誠が定期的に魘される姿を何度か見て来ており、最近その頻度が高くなってる事も気付いていた。

 

 

「またお前好みの美少女とやらに囲まれていい気になってたら、頭のおかしな女に鉈か何かでズタズタにされる夢でも見たのか?」

 

 

 だがくじらは決して一誠が何故長年夢に魘されているのかという理由を問いただそうとはせず、何時も一誠が使うバレバレの嘘に付き合う。

 

 

「お、おう……よ。

夢の中の俺はモテモテだけど弱いからね、いやー参った参った……あははは」

 

「…………」

 

 

 嘘つけ……。

 痛々しいとすら思えてしまう作り笑顔でヘラヘラ宣う一誠にくじらは内心呟き、目を逸らして握り拳を作って震えを誤魔化してる姿を見つめる。

 本人が言いたくないのであれば、追求つもりなんて無いし現に今まで追求しなかったけど、こうまで何時もの一誠じゃない姿を見せられると、諸々の意味で心配になってしまう訳で……。

 

 

「ったく、夢の中でも馬鹿だなお前は」

 

「へ、へへ、うっせーな。俺がこんなんだって事はオメーなら解ってんだろ」

 

 

 何を一体隠しているのか、くじらはそろそろ知りたいと思い始めてくるのだった。

 

 

 

 ……。最も見られたくない姿を、最も見て欲しくない女に見られた。

 ぶっちゃけ、俺の宣う嘘にしてもくじらはもう嘘だと分かってるんだろう。

 けれどくじらは決して自分からは聞こうとはせず俺の戯れ言に付き合ってくれ、決して誰かに言い触らす真似だってしない。

 

 それがどんなに助かってるか……だから俺はコイツを信用してつるんでるんだ。

 

 

「あれ、古賀は?」

 

「古賀ちゃんなら一旦家に帰ったぞ。オレ達と違って古賀ちゃんにはちゃんと親が居るからな」

 

「あー……そういえば古賀にゃあ両親居るんだよなー」

 

 

 クソみたいな夢のせいで最低な朝を迎えた俺は、べとべとする身体をシャワーで洗い流した後、既にリビングに居たくじらに古賀が居ない理由を聞き、あぁ……と納得しながら冷蔵庫から取り出した水を飲む。

 

 

「…………。つーかお前もお前で高校進学と共に別々家で暮らすって話だったのに、殆ど此所に居るよな? 借りた部屋はどうしたんだよ?」

 

「フラスコ計画も凍結したし、別々になる理由が特に無くなったからな……。こっちの方が学園と近いし」

 

 

 くじらはそう言いながら素顔の状態で何やら小難しい本を読んでいる。

 いやあのな……お前はそれで構わねーのかもしれないけど俺は困るんだよね。

 具体的にはおんにゃのこをお持ち帰り出来ないとかそこら辺の理由で。

 

 

「バーカ、心配しなくてもオメーがそこら辺の女をお持ち帰り出来る訳がねーよ」

 

「あぁん? 何も言ってないだろうが」

 

「顔に出てるんだよお前の場合」

 

 

 声に出してないのに、何故かくじらは挑発的に笑って本に向けてた視線を此方に向けてほざく。

 その表情が実に憎たらしいが……あの忌々しいクソ夢のせいで精神的にまだ疲れてたせいで何にも言い返す気がせず、チッと舌打ちしながらくじらが勝手に占拠してるソファのその隣に座る。

 

 

「なぁくじら」

 

「ん?」

 

 

 そしてTVをつける気力もまだ無く、俺はよくわからん活字だらけの本を読んでるくじらに、只何と無く聞こうと話し掛ける。

 

 

「お前ってあんまり深く聞いてこないよな?」

 

「あ、何がだ?」

 

「いやほらよ……。

紅髪やら黒髪ポニテやら金髪シスター服やら白髪猫耳美少女ハーレムの夢の内容的な……」

 

「は? 何だよ、話したくでもなったのか?」

 

 

 いや話したくは別に無いけど、お前の事だからとっくの昔に今言った夢が嘘だって見抜いてるだろうし……。

 わざわざ俺の茶番に付き合ってくれてる理由というか……いや、別に聞く必要なんて無いんだけど――って、何だか女々しいな俺。

 

 

「別にそういう訳じゃねーけど……」

 

「だったら聞かねーよ。

誰にだって言いたくない事の一つや二つあるだろうし、無理に聞いてもお前はどうせ答えねーだろ?」

 

「おう、まぁ多分……」

 

 

 その点こいう時のくじらは実にサッパリしてる。

 もう何かそこら辺の雑魚男より男らしいくらいなんだけどさ。

 

 

「おいおい何だその顔は?

まさか遂にオレに慰めて欲しくでもなったのか?」

 

「馬鹿言うなよアホらしい」

 

 

 ただまぁ……やっぱ変な奴には変わりはないが。

 

 

「しょーがねーなー!

珍しく甘えん坊一誠のご所望に答えて膝枕でもしてやるよ」

 

「いらねーよ」

 

「何だよ遠慮すんなよ? オレはお前にメチャメチャにされるのも良いが、そうやって弱い部分見せて貰うのも嫌いじゃねーぞ? ほら」

 

「だからいらねーっつーの」

 

 

 ニタニタしながら自身の黒タイツで覆われてる膝をポンポコ叩いてるくじらにちょっとイラッとしながら要らんと突っぱねる。

 何が悲しくてそんな真似されなきゃなんねーんだよ。こんな餓鬼みてーな…………でも無い程度には女だなコイツ。

 意識する必要なんて全く無かったからアレだけど、意外と女らしくは――まあ、目付き悪すぎだけどまぁまぁ……うん。

 

 

 

 

 美少女ハーレムの夢が何だと宣う一誠が嘘言ってるなんて初めから分かってる。

 けどオレにはそれ以上踏み込む資格なんて無く、だから何も聞かないでいるんだけど、こうも最近その魘される頻度が多くなってきてると流石に心配というか、今日は珍しく弱った姿をまだ見せてるので、何と無く膝枕でもしてやろうとしたが見事に断られちまった。

 

 

「チッ、少しくらいは頼れよ」

 

 

 別に膝枕云々じゃないが、何時だって一誠を追い掛け、何度も救われてる身としては逆に頼られてみたいという欲がある。

 けれどこの馬鹿は基本素直じゃないんで絶対にオレや古賀ちゃんに弱さを見せようとしない。

 見せても自力で全てを――それこそオレわ古賀ちゃんのトラブルですら何とかしようとしてしまうというのが一誠という男だ。

 

 

「じゃあ可愛くておっぱいの大きい美少女を連れてきて俺に紹介してくれよ?」

 

 

 別にそれが悪いなんて思ってないんだが……ハァ。

 

 

「目の前に居るし、一時間もしない内にもう一人来るぜ? お前の大好きな巨乳女が」

 

「すいませーん、刹那のチェンジでお願いしまーす。

もっと普通に愛嬌の良い子で」

 

 

 ほら、もう持ち直しやがった。

 オレと古賀ちゃんじゃお前の役に立てないなんて分かってるけど、少しくらいは迷惑掛けて欲しい……。

 

 

「おいおい冗談だっての。そんなマジになんなよ~」

 

 

 追い掛け、追い付き、並ぶ。

 誰よりも先に進みすぎて独りにさせない為に、どんな事をしても一誠を見失わない。

 

 最初は一誠を見返す為だったのが、何時からかそんな願いをする様になっちまったオレは果たして馬鹿な女なのか、愚か者なのか、無謀なのかは知らねぇ。

 けどそれで良いとオレは思ってるし、てかオレはコイツが好きだからな。

 

 離す気も離れる気もねーんだよ。

 だからまあ、もしオメーの上っ面だけしか見抜けずに好く女が居たら……ヘッ!

 

 

「今からそんな眉間に皺なんて寄せてっと、三十路辺り後悔するぜ?」

 

「む……」

 

 

 思わずバラバラに解体してホルマリン漬けにしちまう――その程度にオレは一誠に狂っちまってるんだ。

 そうやってオレの額を気安く小突けるお前に。

 

 

「お、最近やんなかったけど、餓鬼の頃から頬っぺたの柔らかさは変わってーな」

 

「ふぁへほ!」

 

「良いじゃねーかよ。膝枕よりこっちのが楽しいぜ俺にとっちゃな」

 

「ふみゅ……」

 

 

 気安くベタベタさせてやろうと思う男もお前だけだよバカ一誠。

 

 

 

 

 

 球磨川禊という過負荷(マイナス)の少年が転校するという衝撃の話は、ある程度彼を知る・知った生徒会達にとっては何よりも警戒する話であり、現にその球磨川のマイナスに引き付けられたかの様に次々と箱庭学園へ過負荷(マイナス)が集結し始めていた。

 

 めだか達もこの事は重々承知しており、霧島一誠の事もそうだが球磨川禊に対しても警戒をしなければ意気込みながら全校生徒を体育館に終結させた終業式に臨んだのだが……。

 

 

「『箱庭学園学校則第45条第三項に基づき』『生徒会長黒神めだか』『キミに解任請求(リコール)を宣言する』」

 

 

 明日から夏休み気分の生徒達を一気にマイナスへと誘う負完全の登場により、体育館内は緊張感に包まれることになった。

 

 

「お、おいおい誰だよアレ?

というかあの生徒会長に解任請求って?」

 

 

 事情を知らない一般生徒からすれば、完璧すぎてちょっとアレな生徒会長に対して解任請求する理由も、そもそもさっきからあの学ランの生徒は誰なんだとざわめくが、所詮一般生徒は見ているだけしか出来ず、生徒会長・黒神めだかと球磨川の攻防は激化していく。

 

 

「『副会長の不在』『これは明らかに生徒会則第二条に違反だ』『つまりこの解任請求は言い掛かりでも何でもない』」

 

「っ!?」

 

「ふ、副会長の不在……!?」

 

 

 ある目的を成す為に生徒会長の座を必要とする球磨川禊により、球磨川禊らしいルールという網の目を潜ってくるかの様な正論にめだかサイドは一気に言葉を詰まらせてしまい、球磨川が持ち込んできた署名に絶句する。

 

 

「『一年生から三年生の全マイナス十三組』『三クラス分の署名さ』」

 

「っ……名ばかりの署名か。随分と大したみんなだな球磨川……!」

 

「『おいおい』『この署名をしてくれた皆だってれっきとした箱庭学園の生徒なんだぜ?』『――――差別するなよ』」

 

「ぐっ……!」

 

 

 完全に球磨川のペース。

 重箱の隅をつついて来るような言葉の乱撃にめだかも歯を食い縛りながら睨むことしかできずだ。

 そした球磨川は後ろに居た喜界島、善吉、阿久根の三人にまで笑顔で『お疲れさま』と言うと、次の生徒会は僕達だよと言わんばかりにそのメンバーのお披露目をする。

 

 

「『僕達が新しい生徒会だよ』」

 

「なっ……不知火!?」

 

「………」

 

 

 その中には善吉の親友である筈の不知火半袖の姿があり、善吉を絶句させるが、本人はペロペロキャンディーを片手に善吉を見ることは無く、何時もの様子とは明らかに違う雰囲気で佇んでいた。

 

 そして球磨川が呼び出した他のマイナス十三組の生徒もまた出で立ちだけでその場の人間の心を凍えさせるような雰囲気を纏っており、生徒の中には顔色を真っ青にするような者まで居た。

 だが球磨川禊はいっそ清々しい笑顔を浮かべながら壇上のマイクを占領しながら、自身が生徒会長になった時の……マイナスらしいマニフェストを白々しくも発表していくが…………。

 

 

「ぬほ!? 不純異性交遊の義務化とな!?」

 

『!?』

 

 

 球磨川禊のマニフェスト発表の一つを口にした途端、それまで他の生徒達とは違って眠そうな顔付きで『早く終わらねーかなー』なんて呑気に考えていた茶髪の生徒が、一気に覚醒した意識のまま大きく騒ぎだした。

 それにより球磨川達マイナスの空気に心がへし折られそうになっていた全生徒はその者に視線を向けた。

 

 

「良いじゃんか良いじゃんか……眠たいことを何時まで俺達一般生徒を置いてけぼりにやってんだよと、そろそろクレーム付けてやろうと思ってたが、ちょっとだけ見直したぜそこの学ラン。だがしかし――」

 

 

 それはある意味学園の有名人であり、そして生徒会と風紀委員ですら改心不可能な問題児。

 そして生徒達にとってのコメディーリリーフとも言える最大級の変人。

 

 

「き、霧島二年生……?」

 

「『やぁ霧島くん』『早速僕の支持をしてくれるなんて光栄だ――っと?』」

 

 

 箱庭学園二年二組、出席番号7番・霧島一誠はポカンとするめだか達と、笑顔でお礼を言う球磨川……そして全生徒の視線を一斉に受けながらスタスタと壇上を上がると、球磨川が持っていたスタンドマイクを引ったくり始める。

 

 

『あーあーテステス、本日は晴天なり~ 後ろのおんにゃのこ達は俺の声が聞こえるかい?』

 

『…………』

 

「お、おい霧島二年生……?」

 

「『ちょっとちょっと?』『急に困るんだけどな?』」

 

 

 意図が解らなすぎる行動にそれまでの緊張感が一気に霧散した気持ちになった生徒達は、壇上に上がってマイクを片手にテストをしている一誠に注目してしまう。

 すると一誠は生徒会長のめだかとそのメンバー……そして球磨川とその仲間達にそれぞれ視線を寄越すと……。

 

 

『取り敢えず長い。

さっきから眠気を推して聞いてたら生徒会長を辞めろだ何だと、一般生徒からすれば、そんなもんクソどうでも良い。

俺達が欲しいのは、生徒会長より終業式の先に待ち構えてるサマーバケーションなんだよ』

 

「なっ……」

 

「『……』」

 

『(で、出た! 霧島の空気読まない発言。

よりにもよってこの状況で言いやがったー!!!)』

 

 

 それまでの空気を全部破壊する一言を平然と宣った。

 

 

『こちとら夏休み前の終業式だからと我慢してやってたってのにグダグダグダグダとやれ『解任請求』だ『学園則何条』だの……んなもんくっちゃべられても殆どの奴等が把握してる訳ねーだろうし、誰が辞めて新しくなろうが、夏休みの魔力の前には全てが無価値だ馬鹿者め』

 

 

 ある意味黒神めだか並みに有名な一誠の身勝手すぎる言い様にめだかサイドも球磨川サイドもポカンとしてしまう訳で、それまで球磨川達マイナスの空気に当てられて気分を害していた一般生徒は、この空気の読めない一誠の一言により精神を持ち直したのか、クスクスと笑い声が所々から聞こえてくる。

 

 

『だからやるなら放課後に個人で――っと?』

 

 

 それがめだか達や球磨川と半袖以外のマイナスを驚かせる事になるのだが、一誠本人は割りと辛辣な言葉を双方にぶつけつつ球磨川の後ろで突っ立っていたマイナス十三組のメンバー――――の、一人としてペロキャンを持っている小柄な女子の姿を見るや否や『ニィタァ』とした笑みへと変貌させつつその少女の前まで来ると、憎たらしい声色でこう言い始めた。

 

 

『おやおやぁ? これはこれはアホ毛おチビ後輩ちゃんじゃないか?

なんだなんだその悟り開いた目? 急にクールぶったキャラにチェンジかい?』

 

「………っ」

 

 

 え? って顔をする球磨川やめだかをガン無視して僅かに頬をピクピクさせてる半袖を何故か煽り始めた一誠。

 人吉善吉のクラスメートにて、大きなアホ毛が特徴の少女・不知火半袖とは実のところ顔見知りだったりする。

 とはいえ、仲の良い先輩後輩な関係とはとてもじゃないが云えず、寧ろ互いに弱味を突ついては指を差してケタケタ笑うような間柄というべきだろう。

 

 

「…………」

 

『あ、何その態度?

この前目の前で限定シュークリームをこれ見よがしに食ってやった事をまだ根に持ってるのか? 心配せんでも美味かったぜ不知火後輩ちゃんよ?』

 

『(こ、子供かっ……!)』

 

 

 不知火半袖と霧島一誠の嫌がらせ合戦の攻防についてもまたある意味有名だったりする訳で、特に目の前で見せられてた善吉は、それまでの緊張感を霧散させられた事含めて、呆れてしまったのか片手で顔を覆う仕草をしながら上を向き、事情を知る生徒の一部もまた同様に、大食い少女の目の前で限定シュークリームをこれ見よがしに食ってやったとニタニタしながらマイク片手に宣う大人気無さ――いや餓鬼レベルの嫌がらせをしていた一誠に呆れてしまう。

 

 

『あら無視? 無視しちゃうのかい? おいおいおいおい、キミみたいなのがそんなキャラに無理矢理転向しても長続きしねーからやめろって? 悪いことは言わねーぜ?』

 

「………………………」

 

 

 しかし一誠はそんな冷えた視線を物ともせず、寧ろ妙に水を得た魚の如く半袖を煽りまくる。

 が、色々とあってちょっとナーバス気味な半袖は付き合ってられないと――そしてそんな安い挑発には乗らんとばかりに白けた目をしながらソッポを向く。

 が……それがまた一誠の中に燻る変な炎を燃やす事になる訳で……。

 

 

『ほほー? クマちゃんおぱんちゅとはまだまだお子ちゃまでちゅねー半袖たーん?』

 

「っ!?!?」

 

 

 学園最強の変態とはまさにこの事。

 まるで躊躇もせず、ソッポを向いていた半袖のスカートをピラリと捲るという暴挙を平然とやらかした一誠により、半袖の表情および顔が真っ赤に……羞恥に染まり上がる。

 

 

「な、なっ……!?」

 

『おっと、ようやく何時ものアホ毛おチビ後輩ちゃんらしくなったじゃん? やっぱりキミは俺に対してもケタケタ笑って小馬鹿にしてこなきゃ――おごっ!?』

 

 

 これには堪らず半袖は自身の全力を注いだ顔面パンチをしゃがんでいた一誠の鼻に向かってぶっぱなした。

 

 

『ちょ、は、鼻はやめれ――ちょっと効いた――うべし!?』

「うるさい黙れこのド変態……!」

 

 

 誰しもが唖然とする……マイナスも生徒会も関係なく呆然と半袖に殴られて悶絶している一誠を見ていると……。

 

 

「良いぞ不知火さん! そのままその変態をぶちのめせぇ!!」

 

「女の敵よ! もっとボコボコにしちゃいなさい!!」

 

「やっぱりイッセーは馬鹿だぜ!!」

 

「半袖たんのパンツを見るなんて最低よ! 私だってペロペロとかしたかったのに!!」

 

 

 気付けば真っ赤に――そして不知火半袖らしからぬ感情の剥き出しで一誠のマウントをとってポカポカと殴ってる光景に、一人……また一人と生徒達が先程の重苦しい空気を忘れて歓声を挙げて半袖の応援をしていた。

 

 

「な、なんだ……何故こうなったんだ」

 

「『ふふ』『やってくれたね霧島君』」

 

 

 これにより今までが嘘のように蚊帳の外へと追い出されためだかと球磨川は霧島一誠という存在を更に刻み込めた。

 

 

「ば、馬鹿やめろって不知火!」

 

「は、離せよ人吉! こ、この変態先輩はよりにもよって人吉の前でアタシの――」

 

「おいおい人吉後輩も察しろよ? この子はキミが――うげぇ!? お、男の勲章を踏み潰す……のぉぉぉ!?!?」

 

「わ、わけわかんねーよ!? 何でそこで俺が……い、いやそんな事より落ち着けって不知火も」

 

「ううっ……ひとよしー……」

 

 

 まるで格闘技の観戦に来た観客の如くやんややんやと一誠をぶちのめせコールで埋め尽くされる体育館内は、恥ずかしさと悔しさで思わず善吉に抱き着く半袖が落ち着くまで続き、当初の話に戻るまで三十分以上掛かったとか。

 だがこの騒動が挟まった事により、付け焼き刃とはいえ生徒達の精神は球磨川達にすり減らされることは無かったとか。

 

 

 そしてそんな空気のまま、めだかが口にした逆転の手により始まることになった生徒会戦挙だが……

 

 

「あの終業式の時に見せた貴様の手腕は素直に称賛し、そして礼を言う。

貴様の故意でなくとも時間が稼げたお陰で、球磨川に対抗できる手を導き出せたのだからな。

だが、それでも貴様が球磨川サイドに行ってしまえば本末転倒。

故に気に食わないが、どちらにも染まれる貴様が球磨側に付けば確実に今の私達ではどうるする事も出来なくなる」

 

 

 運命は……。

 

 

「だから霧島一誠、古賀二年生、そしてくじ姉……恥を忍んで頼む、私達を鍛えてくれ。

生徒会戦挙に勝つ為には貴様が必要なんだ」

 

 

 一誠に更なる進化を求めていた。

 

 

「おう良いぜ」

 

「ほ、本当――」

 

「――な~んて言うと思ったかい? 勿論俺は嫌だねと言うよ」

 

「か……なっ!?」

 

 

 無限(アブノーマル)夢幻(マイナス)を持つ、黒神めだかですら未だ敵わない少年に対し運命は動き出す。

 

 

「別にキミ達が勝手に喧嘩でも何でもして潰し合えば良いじゃん? 俺関係ないしお好きにってね」

 

「オレもお断りだ。一誠に挑んでは激しくぶちのめされる夏休みライフの予定があって暇じゃねぇ。それにコイツが不知火半袖にセクハラした事についてみっちり話を聞かないとならねーんでな」

 

「名瀬ちゃんとは違うけど、同じくイッセーくんと遊びたいから私も無理、かなー……不知火さんにセクハラした事についての見解もちゃんと聞かないといけないし」

 

「ぐっ」

 

 

 まぁ本人はまるでやる気なんて無く、歯噛みしてるめだかや仲間達を冷めた目で見ているわけだが。

 

 

「大体終業式の様子は俺も見てたけど、一般生徒代表からすればポカーンだからね? 何か勝手に校則を互いにペラペラ語って解任請求するだしないだで盛り上がってた所悪いけど」

 

「き、貴様だって分かってる筈だろ! 球磨川禊という男がどれ程危ういのかを! それにそもそも貴様という男は何故あんな場面でもセクハラなど……!」

 

「危うかったら何だよ? それにセクハラは男の嗜みだぜ…………って、そんな目で見ないでくれよ、古賀にくじら」

 

 

 さて、一体何故こうなってるのか?

 それは一誠がめんどくさそうに呟いた数時間前の終業式に起こった騒動が原因であり、生徒会と過負荷(マイナス)な転校生達による小競り合いが、一誠達三人をこの場に縛り付けてる原因だったりするのだが、所詮は人間だろと異常者も過負荷も――そして自分自身を評してる一誠にはどうでも良い話な様で、めだか以下生徒会メンバーとガタイの良い大男、そして小学生と思われる女の子からの視線を浴びながら小指で耳をホジホジしていた。

 

 

「大体キミがその生徒会戦挙だかを提案しといて、他人任せにしようとすんなよ。

身内で解決しろよそんなの」

 

「ぐっ……」

 

 

 死んだフリをしていた鍋島猫美による情報が、何としても一誠を球磨川禊のもとへと行かせてはならないと、何時に無くめだかを焦らせていたりするが、一誠本人は知らないとばかりに突き放す言動だけだった。

 

 

終わり

 

 

 

 オマケ……合法ロリ(42歳)

 

 

 世の中には未知というか触れてはいけないものというか、色々な人が居るとは思ってたつもりだけど……。

 

 

「え、何だって?」

 

「だから私は人吉瞳! 善吉ちゃんの母親だよ!」

 

 

 …………。フッ、合法ロリって居たんだね。

 しかも子持ちと来て俺ぁビックリだ。

 

 

「…………。え、マジなの? おままごとの設定とかじゃなくて?」

 

 

 俺の調度腹辺りかその下……まあ兎に角どう見ても小学校低学年としか思えない小娘一匹。

 まあこの時点で何で高校にそんなのが居るの? って話であり、事の真相を苦虫500匹噛み潰した顔をして見てる人吉後輩くんに、目の前でニコニコしてる小娘が果たしてマジで母親なのかと聞いてみた所……。

 

 

「マ、マジです……」

 

 

 結果マジらしく、ガチて言いたくねぇオーラ出しながら後輩くんは言った。

 そうか……母親ねぇ。

 

 

「チェンジ」

 

「は?」

 

 

 うん、まあそうだよな。チェンジですわこんなん。

 

 

「へっ、キミ等の所のボス……つまり黒神後輩ちゃんのストーカーについてクレーム入れようとしたら、何だって? 見た目がチビ餓鬼にしか思えないコレが子持ちの母親? おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい!! そんなに俺の夢ぶち壊して楽しいかい? え?」

 

「は、い、いや……夢ってなんすかそれ?」

 

 

 俺ね……女の子は好きかもしれねぇけど何故かこういう――なんて言ったら良いのか、取り敢えずロリっ娘って感じのタイプが好きじゃねぇんだよ。不知火後輩ちゃんは例外だけど。

 マジで何でか知らねぇけど、ロリっ娘のせいで人生グチャグチャにされた気がしてならねぇというか……とにかく子持ちはボッキュンボンで色気ムンムンの欲求不満溜まりまくりの女性でなければ許せんのだ。

 

 つまり、このチビは確実にアウトで間違いなしなのだ。

 

 

「人の夢をぶっ壊したお前等なんか大嫌いだ!

喜界島後輩ちゃん以外はなぁ!!」

 

「……………」

 

「……………」

 

「………………」

 

「……………………」

 

 

 嫌う理由は全く無いし、別に嫌悪感なんて無いけど、好く理由なんて全くこの合法ロリには無い。

 寧ろ子持ち人妻・未亡人に対するイメージを真っ向から壊してくれたこのチビ……いや、人吉後輩くんのお母ちゃんとはこの挨拶だけの関係に終わる……つーか終わらせる。

 

 

「めだかちゃんはこんな人に負けたのかよ……」

 

「霧島くん……キミ、失礼過ぎないか?」

 

「ていうか変態のアナタに好かれたくない」

 

「息子みたいな歳の子からこんなに蔑まれた目をされたの初めてだわ……ちょっとショック」

 

 

 そんな俺の正直な感想に、生徒会諸君は中々に酷い事ばかりだ。

 いや、逆に好きですから結婚してくださいってこんなナリのおばはんに言ったらそれこそ変態だろうし……。

 

 

「確かに言い過ぎましたけど、貴女を子持ちのお母ちゃんとは思いたくねぇといいますか……。

せめてロリならロリで頭に巨乳の属性付けろやと超文句言いてぇというか、そんな絶壁でよく母にゅ―――いでぇ!?」

 

「あらごめんなさい? ウチの善吉くん以上に『教育』したい子が居るなんて思わなかったわ……おほほほ」

 

「こ、このロリババァ……!

裸にひん剥いて繁華街の変態オッサンに300円で売ってやろ――おぼっ!?」

 

「あらあら再びごめんなさいね? 足が滑ってしまって……」

 

 

 とにかく一誠レーダー的に『ないわー』であるのだよアンタは。

 

 

「お母さんをあんなキレさせた人初めて見たかも……」

 

 

終わり

 

 

 彼女だって女の子。

 

 

 黒神くじらは一誠に対して被虐的精神を持っている……のは昔からの話であり、それを知らなかった彼女の兄や妹はショックだった。

 

 が、本当の所はそれだけではない。

 確かにくじらは一誠に対して一種のマゾ的願望を持ってるけど、それだけじゃ無い。

 

 

「むにゃむにゃ……」

 

「…………」

 

 

 それはとある寒さの厳しい真冬の明け方だった。

 何時もの様に一誠の寝込みを狙って、開発した新薬を投与してやろうとした黒神くじらは、己の身に起きてるこの状況に珍しく狼狽えていた。

 

 

「うぇへへ……zZZ」

 

「何でオレは一誠に抱き枕にされてるんだ……?」

 

 

 ぼそりと真横で自分の身を抱き締めながら妙に幸せそうに寝ている一誠と密着してる現実に、よく解らない動悸を覚えながら呟くくじらに答えは誰も教えない。

 あるのはただ、自分は腕を掴まれたかと思ったらベッドに引きずり込まれ、素直じゃない男に抱き枕にされている状況だけであり、今も寝ぼけてる一誠が抱き締めながら自分に頬擦りしている。

 

 

「…………」

 

 

 これは何だ? 寒いからこうなったのか? 一誠の足が逃がさんとばかりに絡み付き、ますます動けなくなるという悪循環の中で考えても、くじらには解らず小生意気な態度しか見せないのが嘘のように、一誠はますますくじらの身体を抱き締める。

 

 そう、一誠は確かに寝惚けている。

 寒いのもあってか自然と暖かいものを欲していたが故にくじらを抱き枕にしてるのは間違いなかった。

 

 

「っ……!?」

 

 

 けれど寝惚けてしまってるからこそ、本人は知らず知らずの内に暖かさを求め、くじらの頬に頬擦りなんて正気の彼が聞いたら恥ずかしさの余り発狂するだろう行為もしてしまうし……。

 

 

「お、おい……!? お、お前本当は起きて……!?」

 

 

 身動きとれない彼女の身体に何かやらかしてしまってるんだろう。

 

 

「ちょ、っと……待て……! ま、まだ心の準備とかしてな……い!」

 

「ZZZ……」

 

 

 布団の下で何が起こってるのかは、されてるくじら本人しか知らない話であるが、少なくとも顔を赤くさせながらもぞもぞする度に身体を小刻みに痙攣させる。

 しかしこれは抱き枕にされているだけであり、決して何をされている訳ではない。

 

 

「ば、ばか……! こ、この変態……!」

 

「すやすや……」

 

「ど、何処触ってんだこのっ……!

そ、それ以上お前にそんな事されたら、お、おれ……ぅ……あぁっ……!」

 

 

 耐えきれず、擦れた態度をする彼女とは思えない声を出し、上気した頬で全身を大きく波打たせたとしても、何にも無いのだ。決して。

 

 

「は、はぁ……はぁ……こ、このへんたいやろー

お、お前があんなことしたせいで………うぅ……」

 

「うぇへへへ、リアスちゃん捕まえたぞ~? これでおっぱい揉みもみしてやるぜー……zZZ」

 

「だ、誰だよソイツ。いきなり浮気かてめー……っひ!? ば、ばか! オレはオメーの夢の中のバーチャル女じゃねー……っあ!?」

 

 

 以上、中学入学した年の聖夜。




補足

普段は寧ろ半袖たんにやられ気味だったり。

故に今回に限りは実はかなり勝ったといえるかもしれない。


その2
こんなアホで変態が居るせいで、マイナス空気に当てられてアレだった生徒達の気力は一気に引き戻されたとさ。


その3
この一誠な『合法ロリ? 揉めない時点でありえない』と世界のロリコンを敵に回してます。

故に瞳さんにあんな事を……。


その4
くじらさんが前に
『なに? 何って色々されたな。
開発した薬を注入しようとしたら思いきり頭をどつかれたとか。
『汚いから風呂に入れ』っていきなり素っ裸に剥かれた後激しい水責めをされたりと、二次成長入る頃に『ムラムラする』って野獣みたいに無理矢理……』

と言ってたのは実はそんなに出鱈目でも無かったり。

まあ、一誠くん本人は寝惚けてて知らなかったのですがね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。