龍帝になれなかった少年   作:超人類DX

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一誠くんのお友達条件。

『Cカップ以上で、魔改造ゴリラでも似非シャイガールじゃなければ喜んで』


『夏休みになってまで学校? ありえねぇな』

 名瀬妖歌(黒神くじら)と古賀いたみは、一誠に対して一切の遠慮はしないし、一誠も二人に対して遠慮はしない。

 だからこそ、目に見えない繋がりが強く扱いづらい。

 

 黒神めだかは特に一誠に対して最近はますますそう思うようになったという。

 

 

「生徒会選挙……いや戦と書いて戦挙だっけ? まるで漫画みたいな展開でついていけねーっつーの」

 

 

 球磨川禊との因縁が再び浮上した本日の終業式直後の生徒会室に、霧島一誠は出されたお茶を図々しく飲みながらヘラヘラと数時間前の球磨川とめだかのやり取りを笑っていた。

 

 

「まぁでも良いんじゃねーの?

あの学ラン野郎と前に何があったのかは知らんけど、それで互いの七面倒そうな因縁が片付くならさっさとやるべきだぜ? だから影ながら応援はしてやらん事もねーぞ? なー?」

 

「まぁな」

 

「うん」

 

 

 

『…………』

 

 

 その態度はまさに『他人事』。

 協力してくれと頭を下げためだかも、下げた甲斐を微塵も感じる事が出来ず、実にモヤモヤした表情で出したきんつばを食べてる一誠を見つめるしか出来ない。

 包帯で顔を隠してる姉と極自然に距離が近いのが妬ましくてついつい目付きが鋭くなってしまうのは果たして気のせいなのか……。

 

 

「そ、そうか……。

僕達が球磨川君達と戦う間もキミは妹と楽しくよろしくやるってのかい? へぇ……羨ましくて血涙が出そうさ……ぐぬぬ!」

 

 

 少なくとも球磨川と因縁が一応あり、この場に同席していたくじらの兄である真黒は思いきり態度に出ており、めだかとの会話の最中で露見した一誠と妹の距離の近さに思いきりド嫉妬していた。

 

 

「よろしくやるってアンタ……別に何もしませんっての。

今年こそ夏休み中におっぱい大きくて可愛い彼女をゲッツするって崇高な目標がありますからねぇ? 寧ろコイツ等を引き取ってくれたら大いに助かりますが?」

 

 

 それを解ってるのか解ってないのか、だからお前はモテないんだよとツッコミたくなる台詞をニタニタしながら真黒に吐く一誠に、それぞれ隣で聞いてたくじらといたみは鼻で笑っている。

 

 

「それ言い始めてもう4年目になるが、女との出会いすらまるで無い奴には無理だろ永遠に」

 

「ナンパの台詞もダサいし、スケベな目も隠せてないし、女の子からしたらドン引きだもん。だから今年も無理! ていうか名瀬ちゃんの言うとおりずっと無理!」

 

「んだとボケゴラ! テメー等どっちの味方なんだよ!?」

 

 

 フラスコ計画の凍結以降、ちゃんと箱庭学園の制服を着る様になったいたみとくじらの全否定に一誠が二人に食って掛かる。

 このやり取りも黒神兄妹からすれば恨めしいというか妬ましく、ますます面白くない気分だったのは謂うまでもない。

 

 

「気分悪くなった。もう帰る!」

 

 

 挙げ句すっかり気分を損ねてしまった一誠は大股で歩きながら生徒会室から出ていってしまい、結局めだかは頭を下げた意味が無く、フンスと鼻息荒く出て行った一誠に続くくじらといたみからの協力も仰げずに失敗となってしまうのであった。

 

 

 

 

「なぁ、やっぱり無理だったんだよ霧島先輩を引き込むなんて」

 

 

 つい霧島一誠とくじ姉の距離感にモヤモヤしてしまい、それを態度に出したせいで協力を獲るのに失敗してしまった。

 球磨川との戦の為に、毒を以て毒を制すという意味合いで奴を引き込もうとしたのだが……くっ、やはり呆れた様子で言う善吉の言うとおり無理だったのだろうか……。

 いや、それ以前に私を含めて微妙にこの場の全員が霧島一誠が嫌いだったせいなのかもしれない……。

 

 

「確かにあの人は凄いと思うけど、凶化合宿に託つけてセクハラされたくないし……」

 

 

 霧島一誠の性癖をくじ姉から聞いた以降、普通に女性として幻滅してる喜界島会計は水球大会の時を彷彿とさせる冷めた顔でハッキリ言って……。

 

 

「……。彼にめだかさんが頭を下げてまで頼るのが嫌です」

 

 

 私に対して態度が悪いからとかそんな理由で嫌ってる阿久根書記も同じく露骨なまでに敵意を持った表情で……。

 

 

「うぅ……あんなナンパ君に僕のくじらが……ぐぎぎぎ……!」

 

 

 兄貴は兄貴らしくもなく露骨に敵意を持っている。

 コレでは連帯を強める以前に奴を引き込んだら崩壊してしまうかとしれない……そう思うとこの結末が正解だったのかもしれないとは思う。

 

 

「霧島君ね……。

めだかちゃんの話を聞いて見てみたけど、何とも言えないわね。

球磨川君とは違って奥底にしまい込むタイプみたいだし」

 

 人吉先生も微妙に奴の性質を掴みかねていた。

 元心療内科の先生ですら見抜かせない奴の態度のせいで、私ですら奴の正体を言われるまで気付けなかったのだ。

 球磨川と似た性質を感じたと言っていた鍋島三年生の言っていた事が本当かどうかもまだ解らないし、それ以前に懸念すべきは……。

 

 

「奴がもし球磨川側に行ってしまったら……」

 

 

 もし、もしも球磨川に誘われ、乗ってしまったらと思うと私達はその時点で詰んでしまう。

 幸い奴自身は夏休みまで学校に来たくないと言っているので大丈夫だとは思うが、それでも不安だ。

 球磨川が終業式の際に宣った生徒会マニフェストは実に『霧島一誠が好みそう』なのだから……。

 

 

 

 

 

 ったく、子持ち合法ロリのせいで夢はぶち壊されるわ、ぐじらの兄貴と妹に思いきり妬まれるわで疲れるぜ。

 

 

「で、良いのか?」

 

「何が?」

 

「いやほら……黒神達に協力しなくて」

 

 

 明日から夏休みとなりこの校舎とも約1ヶ月はおさらばする訳だが、散々俺がモテませんだ何だと半笑いで煽ってきた可愛くもねーダチ公二人は、妙に神妙なツラして生徒会室での話を蒸し返してきた。

 

 

「確かにオレも古賀ちゃんもお前も、あの球磨川って奴とは何の関係もないが、放っておいて構わないって訳でもあんまり無いだろう?」

 

「うん、もし黒神が球磨川って人に負けたらこの学園は……」

 

 

 どうやら、くじらと古賀の二人は二人なりに若干の不安をあの球磨川って学ラン野郎に持っている様で、俺が黒神後輩ちゃんの言葉を蹴っ飛ばしたのが気になるらしい。

 

 

「さぁな、どっちが勝とうが負けようが俺には関係ないし変わりゃしない。

夏休みはさっさと宿題終らせてさっさと遊ぶ! それが学生の本分だろうが、違うか?」

 

「「………」」

 

「そもそも聞けば5対5の団体戦とやらをするんだろ? その時点で少年漫画かよって突っ込みたくなる意味不明さだし、人数は足りてるだろうが……副会長以外は」

 

 

 どいつもこいつも漫画脳なのか知らねぇがな。なんで選挙なのにバトルするんだよ。

 普通に支持率で争えよ……バカらしい。ついていけねーぜ。

 

 

「それともお前等があの子達に付くか? 俺は別に止めねーぞ?」

 

「オレだっていかねーよ。性癖だけで勝手にお前を嫌悪してる奴等に誰が協力なんかするか」

 

「いや、殆ど名瀬ちゃんのせいでそうなったんだからね?」

 

 

 そうだバカヤロー、さも『怒ってます』って様子見せちゃってるが、そもそもくじらがある事無い事言ったせいであの子達にドン引きされたんじゃねーか……。

 それまでは喜界島後輩ちゃんからそんな嫌われて無かったのに……ちくしょうめ。

 

 

「お前の性癖に巻き込まれて良い迷惑だぜ……ハァ」

 

 

 良いんだけどとか思ってる俺は実に甘っちょろくて嫌になんぜ。

 

 

 

 こうして一誠達は、黒神めだかと球磨川禊の戦いに不干渉というスタンスで夏休みを満喫する予定だった。

 然るに、あの時計塔にて双方に見せてしまった双方の気質がそれを許さ無かった。

 

 プラスがアプローチを描ければ、マイナスもまた然り。

 黒神めだかが嫌々ながら協力してくれと頭を下げたように、あの時計塔での邂逅以降、敢えて顔を合わせなかった負完全もまた……。

 

 

「『やぁ霧島君だったよね?』『ほんの十分で良いから僕達に付き合ってくれないかな?』」

 

「……あー?」

 

「………」

 

「ぅ……出た」

 

 

 引きずり込もうと姿を見せる。

 球磨川禊は、時計塔の時と同じ笑顔を見せながら、三人の前へ現れるのだ。

 

 

「チッ、次から次へと……」

 

「おい、ここオレ等が使ってた教室じゃねーか」

 

「何時の間に占拠されてる……」

 

 

 弐ノ十三と書かれたプレート――の下に-壱から-参ノ十三組と書かれた紙が貼り付けられた教室に連れて来られた一誠、くじら、いたみは、ニコニコしながら座ってと促す球磨川に仕方なくと椅子に座り、一誠は心の底から怠いですな態度を、くじらといたみは自分達の教室が居ない間に過負荷(マイナス)達のものにされている事に顔をしかめていた。

 

 

「『さてと』『こうしてキミ達を招いた理由をわざわざ言う必要は――』『無いよね?』」

 

「………ハァ」

 

 

 しかしそれを知ってか知らずかの球磨川は実に良い笑顔で招いた理由を省略し、一誠はげんなりした様子で大きくため息を漏らす。

 

 

「黒神後輩ちゃんみたいな事をどうせ言うつもりなんでしょう? 学ラン――あ、いや球磨川先輩、でしたか?」

 

「『僕は確かに球磨川禊で間違いないけど』『そんな急に畏まらなくても良いよ?』」

 

「いやいや、どうであれ先輩となる人には一定の態度を取らせて貰ってるんで」

 

 

 あくまで全部建前だけどな……。

 そう内心毒づきつつも一応年上に当たる球磨川に中途半端な敬語口調となる一誠に隣に其々座るくじらといたみはどうするんだと目で訴えていた。

 

 球磨川禊という負完全が現れた事により、本格的に過負荷(マイナス)を知り、そして耐性が無かったいたみは特に不安そうにしているが分かる。

 故に一誠は――

 

 

「『じゃあ言うね霧島君』『僕と友達に――』」

 

「嫌どす。

おんにゃのこ友達なら良いけど、野郎同士の友情なんて耳クソ以下というのが俺の持論でごわす」

 

 

 ちゃっちゃとさっさと、めだか達と同じように球磨川達の誘いを蹴るのであった。

 

 

「『わーぉ速答過ぎて悲しくなってきたよ』」

 

 

 然るに球磨川はそんな程度で引くタイプでは無く、嫌だと言われてるにも拘わらず、諦めた様子が微塵も無さそうなニコニコ笑顔で行儀悪く両足を机に乗せて座る一誠を見ている。

 

 

「『さっきめだかちゃんがどうとか言ってたのを聞いて察するけど』『僕は決してキミを生徒会戦挙に出てくれなんて言わないよ?』『ただキミみたいな人とお友達になりたいなって思ってるだけ』『これは本当だぜ?』」

 

「へっ、俺と友達になりたかったら女に輪廻転生してCカップ以上を装備しろ。でなきゃ話になりませんな」

 

「「……」」

 

 

 人としてド畜生極まりない台詞を平然と宣う一誠をしらーっとした目で見る二人の視線を敢えて流し、球磨川からの友達宣言を切り落としていく。

 此処に来ても自分を崩さない態度は流石……といたみは思ってるのだが、実際の所はまだ過負荷(マイナス)に対して不安を感じるいたみの心を落ち着かせている為にふざけた態度をしていたりする。

 

 

(素直じゃねーな……ホント)

 

 

 唯一それを知るのは、呆れた目をしつつ内心笑っていたいたりするくじらだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 過負荷……。

 確かに俺の幻実逃否(コレ)はそのカテゴリーであるのだろう。

 しかし、それだからといって俺は自分を不幸だなんて思っちゃいねぇ。

 

 

「何だろな……。

黒神後輩ちゃんに正体晒した辺りから変なことに巻き込まれてる気がすんぜ」

 

 

 球磨川学ラン先輩さんからのワケわからんスカウトも蹴り飛ばし、彼についてる他の過負荷から――特にとある子からすっげー睨まれながら退散した俺達は、今度こそ家に帰る為に学園を出れた。

 

 

「はぁ……まだ慣れないな」

 

「基本的に奴等を『どうであれ所詮は人間だ』と思えば割りとどうでも良くなったりするぞ?」

 

「いやー……そう思える名瀬ちゃんの領域にはまだまだなれないなぁ」

 

 

 別に隠してたつもりは無く、バレたらバレで割りとどうでも良かったんだが、こうも変なことに巻き込まれかけると少々鬱陶しいし、何よりマイナス耐性がまだ完全じゃない古賀には重荷だ。

 だからこそ、もしも何かの間違いで黒神後輩ちゃんがあの負完全とやらに屈して箱庭学園がマイナスだらけになっても平気な様に、古賀には夏休み初めの一週間で『慣れて』貰わなければならん。

 

 ……。いや、ぶっちゃけ古賀がどうしても怖いとか思うなら刹那であのマイナスを全員アレすれば良いんだけど、どうせなら――半分その要素を持ってしまってる俺としての本音は過負荷(ヤツラ)相手でも平気になって欲しいのだ。

 

 え、くじらはだと?

 

 

「でも名瀬ちゃんは流石だよね。あの球磨川って人を前にしても平気なんでしょ?」

 

「まーな……球磨川センパイや他の連中の方が遥かに最低(マイナス)度が突き抜けてるだろうが、オレはオレで餓鬼の頃から半分その素養を持ってた一誠(コイツ)と一緒だったんだ。気にする程興味もねーし」

 

「あー……うん、名瀬ちゃんらしいや」

 

 

 

 ご覧の通りだ。

 俺みたいなバカと10年以上一緒に居てくれる程のアホな女だからな……本人の通り耐性なんかとっくの昔に出来上がっちまってんだよ。

 

 

「へっ」

 

「何だよ今オレ見て鼻で笑っただろ? 何か言いたいことでもあんのかよ?」

 

 

 ホントにバカな奴でホントに無謀で……嫌いじゃねーよ。絶対に本人に言わねーがな。

 

 

「なんだよ……変な奴」

 

「時折、優しく笑うよねイッセーくんって」

 

 

 

 さてと……。くじらがアホだし古賀もやっぱりアホって事で朝刊トップは決まりで一旦終わりとしてだ。

 漸く今年も夏休みに突入できると思うと心がワクワクしてしまう。

 

 水着なおんにゃのこ蔓延るビーチとかプールとかとかとかとか……ぐふふ。

 

 

「うひひひひ!」

 

「……。と思ったら今度は一人で変な顔して笑ってる……」

 

「どうせアホな妄想でもしてるんだろうしほっとけ。

妄想だけならタダだしな」

 

 横で煩いのが何か言ってるが、今の俺は明日から始まるサマーバケーションの為のイメージトレーニングをしなければならんので気にしない。

 気にしないったら気にしない………あ、そうだ。

 

 

「先に二人に言っとくが、今年こそナンパ目的で行くプールやら海に付いてくるなよな? 去年も一昨年もお前らが居たせいで全然成功しなかったんだ」

 

 

 これを先に言って釘を刺して置かないとな。

 この二人……俺を散々半笑いでバカにしてくれてるが、ほぼ八割俺にかわいいおんにゃのこの恋人が出来ない原因だったりするんだ。

 

 こっそりナンパしに海やらプールやら遊園地やらお祭りに行くと絶対後ろに居やがる――異様にニヤニヤしたツラというオマケ付きでな。

 おかげで――

 

 

『え……でもキミの後ろに居る女の子は? ……正直片方は随分変わってると思うけどちゃんと居るじゃん? もしかしてからかってたの?』

 

 

 ………。なんて言われて何度憂いなき目に遭わされたことか。

 普段の名瀬妖歌としてのくじらはともかくとして、古賀って割りと女としてのレベルって高いせいで、コブか何かだと勘違いされちゃうんだよね。……魔改造ゴリラなのも知らずにさ。

 

 

「どっちにしろお前が一人でそこら辺の女に声掛けたって成功しねーじゃねーか」

 

「そうだよ。

行っては弾かれ、行っては玉砕してるイッセーくんを毎年見てると可哀想というか憐れというか……」

 

「何でテメー等に同情されなきゃなんねーんだよ。

狙い済ました様にテメー等が出なけりゃあ俺は今頃脱童貞してたの!」

 

 

 それをコイツ等は俺が勝手にナンパしてもどうせ彼女なんて出来やしないと過小評価し、合わせて同情心で俺の近くに現れて『イッセーは可哀想な人じゃないよ』的な余計なフォロー噛ますせいでこの様よ。

 おかげさまでまだ童貞っすよ。

 

 

「童貞ねー?

じゃあ今からお前の家で取っ払ってやろうか? 解ってると思うがオレは新品だぜ? あと古賀ちゃんも」

 

「え!? ちょ、ちょっと待ってよ! そんな唐突に言われてもま、まま、まだ心の準備が……」

 

「…………」

 

 

 で、この手の話題を出すと決まってニヤニヤし出すくじらが挑発してくるし、古賀はバカみたいに大袈裟なリアクションをしてアタフタする。

 今だってニィ~っと包帯で隠れた素顔から一部覗いてる目と口元をニタ付かせながら宣うくじらと、それを聞いて急にテンパってるし……。

 

 コイツ等って俺の事ひょっとしてマジな意味で好きなのか? と思ってしまうぜ。

 

 

「どうせオメーを相手にするのにそこら辺の女にゃ無理だし、仕方ねーからオレと古賀ちゃんで妥協しとけよ? な?」

 

「え、え? こ、これって本当なの? ど、どうしよ……えっと……イッセーくんのお家で見たエッチな本みたいにすれば……」

 

「……」

 

 

 とはいえ、古賀はともかくとしてくじらのこの態度はちょっとイラっとする訳で。

 

 

「どうなんだよ? なーなー? いっせ~?」

 

 

 こんにゃろ、俺が嫌だと言うのを解ってる癖に。

 ポンポンと俺の肩叩きながらニヤニヤしてるくじらに、いい加減仕返しでもしたくなる衝動に駆られる……いやしようかいっそ。

 

 うんそうしよう……てな訳で――

 

 

「あっそう。それならマジで頼もうかな?」

 

「そうそう、その方が―――――は!?」

 

「えっと……お風呂にちゃんと入って……」

 

 

 取り敢えず今まで一度も出してないパターンで仕返してやることにしよう。

 そう内心ほくそ笑みながら予想外な返しを口にした俺にギョッとするくじら――

 

 

 

 

 

 

「な、古賀?」

 

「ふぇ?」

「え゛!?」

 

 

 では無く、さっきからヒートしながらブツブツ言ってる古賀の肩に腕を回して引き寄せ……出来るだけ『マジです』的な笑みを浮かべて言ってやったぜ。

 すると案の定くじらは鳩がバズーカ砲でも喰らったってリアクションを見せてくれた。

 

 

「そこまで俺の事を気遣ってくれるのであれば是非頼みたいな……な、古賀? 良いんだろ? ていうか良い?」

 

「え……そ、え?」

 

「……!?」

 

 

 イマイチ状況が解って無い様子の古賀にもついでにからかうつもりで……こう、めっちゃ距離を縮めて迫るフリをしてやったぜ。

 そしたらどうだ? へへん、何か面白い事になってきたぜ。

 

 

「言うのも変だから言わなかったけど、古賀って実は結構可愛いと俺は本気で思ってたりするんだわ。

だからよ、そんな古賀と○○的な事が出来るなんて実は結構嬉しいんだなこれが。だから……」

 

 

 そうわざと耳元で囁く様に言いつつ俺は――――ぶっ飛ばされない事を祈りつつ――

 

 

「はひゃ!? イ、イイ、イッセーくん……!? や、やめ……耳たぶはひゃめてぇ……!」

 

 

 ……。お、突き飛ばしても来ない? いやそれどころかめっちゃ真っ赤になってへにゃへにゃした顔に―――――あれ?

 

 

「ちょ……おい!? きゅ、急にどうしたんだお前!?」

 

「は? だってお前等が言った事だろ? だったらそのご厚意に甘えるわ」

 

 

 何か色々と予定と違う古賀の反応に内心ちょっと戸惑うも、取り敢えずは珍しく狼狽えてるくじらにヘラヘラ笑って言ってやる。

 

 

「じゃ、じゃあオレも……! オレも良いぞ!」

 

「は? いやごめん……俺古賀とが良い」

 

「なっ!?」

 

 

 …………。あれ? これ冗談のつもりなんだけど……くじらが此処まで狼狽えてザマァないなとは思うが。

 てか冗談とはいえ今の俺かなりやらかしてないか? 主に古賀に対して。

 …………………。まぁ良いか。取り敢えずもうちょい仕返しさせて貰おう。

 

 

「な、何でオレは駄目なんだよ!? おかしいだろ!」

 

「別におかしくなくね? 3P発展より普通じゃね?」

 

 

 お、おぉ……? こんなムキになるくじら初めてだな。

 てかお前……その異常な狼狽え方を見ると、まさか今まで冗談で言ってた訳じゃなかったの? え、マジなの? そっちの方が俺としては色々とビビるんですけど。

 

 

「イ、イッセーくん……その……優しくしてね?」

 

「よしよし、善処するぜ古賀――いや、いたみ」

 

「な、な……!」

 

 

 ………。え、古賀も古賀で何でこんな顔なの? ちょっとやめろよ。何だよその小動物みたいな態度は? お前ライオンをぶちのめすのに何でそんな顔に―――

 

 

 

 

「……………グス」

 

「え゛!?」

 

 

 色々と予想外な反応を二人から向けられ、そろそろ『嘘に決まってんだろ』と言って終わりにすべきだと思ったその時だった。

 古賀が良いと俺が言った辺りから、結構本気でショック受けてたくじらが……。

 

 

「な、なんだよそれ……オレは駄目なのかよ……グスッ……。

いつも一誠に冗談半分でからかったせいなのか? オレが嫌いになったのか……?」

 

「え、あ……ええっ!?」

 

 

 え、嘘だろ? く、くじらが泣き出したんですけど。

 マジでボロボロ涙流してるんですけど……。

 

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……! オレがちゃんとハッキリ言わなかったせいで……!」

 

「ちょ、ちょっと待て!

ば、バカ全部冗談だよ! 毎回お前に半笑いで小バカにされるもんだから、仕返し目的で言ってみただけだっつーの! ま、マジで泣くなよ!」

 

 

 ど、どど……どうしよ、やっちまった。

 思ってた反応と違いすぎなのと、激レア泣きされたせいで本気の罪悪感で死にそうなんだけど。

 

 

「ほ、ほら……ちゃんとお前も古賀と同じく大好きだから。な、泣くなよ……罪悪感で死にそうになる」

 

「くすん……」

 

「イッセーくん……」

 

「お、お前も何時までもボーッとすんなよ! 名瀬が泣いたんだから俺をぶちのめそうとしろよ!?」

 

 

 やらなきゃ良かったという後悔しか俺にはない。

 まさか過ぎる反応だったくじらをあやしながら俺は幸先悪すぎな夏休み前を過ごすのであった。

 

 

 

 

 

 今までオレと古賀ちゃんは同じ扱いを一誠にされていたので気にする事はなかった。

 だが初めて……冗談だったとはいえ本気の片方贔屓をされた瞬間、オレは筆舌にしがたい苦痛を胸の中で味わい……気付けば初めて本気で泣いた。

 

 

「イッセーくんさ、冗談半分でも女の子を泣かしちゃ駄目だと思う。……アタシに言った事含めて」

 

「は、はい……」

 

「もう良いぜ古賀ちゃん。オレ達も一誠に嫌われないと鷹を括って色々と言い過ぎたし」

 

 

 オレより古賀ちゃん。

 それが演技だったとはいえ真顔で言われた時に感じたのは、この世がどうでも良くなるほどの絶望。

 そして拒絶された事による明確な悲しみだ。

 

 自分でも気付かない……いや気付いた気になってて自覚してない程、オレはどうやら一誠に依存してたからこそ死にたくなるくらいに辛かった。

 

 

「でも女の子の心を弄んだ罪は大きいんだからね?」

 

「そ、それを言うならお前等だって常日頃から意味深な事言うじゃん……特にくじら」

 

「お互い様だろ」

 

 

 オレは一誠しか男を知らない。

 というか、初めて会った男が一誠のせいで他の男がどうでも良くなってる。

 

 憎まれ口叩く癖に、危なくなったら助けてくれる。

 そんな奴が餓鬼の頃からずっと一緒だったんだ……ずっと。

 

 

「悪かったよ。

ほら、お詫びにお手てとか繋いでやるから許せ」

 

「ん……」

 

「あれ、アタシには?」

 

「え? …………。わかったよホラ!

ったく、自分から言った事とはいえ餓鬼じゃねーっつーのに……ブツブツ」

 

 

 ずっとこう在りたい……か。

 

 

「……。言ってなかったけど、毎朝起こそうとすると寝惚けたお前にベッドに引きずり込まれたあげく、全身を無理矢理まさぐられてるんだからな。オレも古賀ちゃんも」

 

「は!?」

 

「そうだね。

ひょっとしてイッセーくんがわざとやってるのかって思ってたけど、その顔からして本当に寝惚けてたんだね毎回」

 

「……………。ま、まぁ……た、多分お前等の事が嫌いじゃないからとか、その意思が寝ぼけて表面化したとかそんなしょーもない理由じゃないの?

ぶっちゃけるとお前等両方にふざけて抱き付いたりするのとかって嫌いじゃねーし」

 

「「………」」

 

「…………………。あ、ごめん今の全部無しで」

 

 

「……。一誠お前……そこまで言っときながら他の女をナンパしようとするなよ……」

 

「成功するとは思ってないけど、今の台詞って確実に告白だよね?」

 

「ち、ちげーよ!! 嫌いじゃないと言っただけだ!

誰がテメー等みたいな可愛い気の無い腐れ縁なんぞ……! ああくそ何か調子狂うなぁ!!!」

 

「「……」」

 

 

「そ、そりゃ確かに俺みたいなバカと一緒にしても居てくれる二人を嫌いと思ったこと無いが、それは別に異性として意識なんてしな―――――あ、でもぶっちゃけ鍋島先輩やら喜界島後輩ちゃんとか、好みのおんにゃのことコイツ等のどっちかしか助けられないってなったら迷わずコイツ等を優先するかも知れねーけど、別にそれはダチだしってだけて…………ええぃ! 明日からナンパすれば全部解決する! 一時の気の迷い!」

 

「「……。(今年も絶対に邪魔しよう)」」

 

 

終わり。




補足

ナンパ玉砕の原因は、本人の下心アリアリな顔もそうなんですが、行く先々で狙い済ましたかの如く二人がニヤニヤしながら、必死こいてナンパを成功させる寸前まで行った一誠くんに話し掛けつつわざとらしくベタベタするせいでもあったりする。


そのせいで、最近はやや諦めて二人とダラッダラしてれば良いかなー……と思ってますが、やっぱり素直じゃないので、意地と執念のナンパ道と二人の妨害は続く。

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