初めてこういった文章を書いたので至らぬ点は多いかと思いますがご容赦ください。
(やっと終わりだ・・・。)
青ざめた血のような空。儀式の秘匿が破られた証である、赤く染まった丸い月。激しく炎上する建物の裏手にある、枯れたような大樹とその下に広がる美しい花畑。白い花たちに埋もれるように、うねる触手が数本生えたナメクジのような、名状しがたい姿形をした者が横たわっていた。「獣狩りの夜」に巻き込まれ、狩りを続けた人間の成れの果てである。
かつて夢の中で目覚めた彼は、車椅子の老人、ゲールマンに言われるがままに獣を狩り、上位者を狩り、殺し、時に殺され、そしてついには月の魔物をも打倒して、終わらない悪夢を破ることに成功した。多くの上位者を狩り、赤子のへその緒によって脳内に瞳を得たことで、どうやら自分自身も上位者に成り果ててしまったらしい。
全ての元凶である、魔物を殺したことによって崩壊を始めた【狩人の夢】の中で横たわる彼の目の前には、透き通った白い肌と美しい灰色の髪を持つ女の形をした人形(ひとがた)が立っている。
「ああ、お寒いでしょう。」
生まれたばかりの上位者である彼を地面から持ち上げ胸に抱く彼女は、ゲールマンによってかつての弟子を模して作られた【人形】である。魔物によって作られた夢の中にあるために意思を持って動いているように見える人形だが、上位者の力を得た彼に掛かれば彼女に本物の命を吹き込むこともできるだろう。
美しい彼女は、人間とは思えない不可思議な姿になった彼に笑いかける。
「ふふふ、狩人様」
もし上位者となった今の自分の姿をミコラーシュに見せたら羨ましがるだろうか、悔しがるだろうか。ふと、そんな他愛のないことを考えて、触手を揺らす。
「笑っているのですか?」
どうやらこの姿では人の言葉を発することはできないようだ。
・・・これからどうしようか。人形と共に生きてゆくのも悪くはないだろう。人間ではない自分というものの勝手がいまいちわからないが、少しずつ慣れていくことにしよう。
一通り考え事を済ますと、急に疲れがどっと押し寄せてきた。長い長い夢の旅の間、全く休んでいなかったのだからそれも当然だろう。眠るのはいつ以来だろうか、ヤーナムに来てからは全く眠っていなかっただろうか、などと考えながら彼は意識を閉ざす。深い深い微睡みへ沈んでゆく、
「赤子は眠るものです。おやすみなさいませ、狩人様。」
(夢の中で眠る、というのもおかしなものだな。)
不思議と暖かい人形の腕の中で、彼は眠りに落ちた。