P3inP4   作:ふゆゆ

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選択

 湊は新しい携帯音楽プレイヤーを見ていた。理想としてはやはり容量。そして手軽に持ち歩ける大きさのもの。その点今持っているモノは悪い訳ではないのだが、よりいい物を探すことは別段不自然な事でもないだろう。

 それに湊は二人のように身体が怠かったりする事が全く無かった。もしかしたらあのペルソナのお蔭なのかもしれないが。

 だからすぐに帰る必要性を感じなかったし、今日は菜々子も遊びに行くと言っていた訳で。未だ夕刻には遠い今、ジュネスで色々物色するのも悪くはない選択肢だ。

 

 

 

「……」

 

 

 三十分ほど見てみたが、以前住んでいた場所の少し世代の遅れたものが多い。どうにも目当てのモノは見つかりそうもないようだ。

 

 嘆息し、時計を見る。

 

 正直帰るにはまだ早すぎる時間だ。さてどうしようか。と、腕を組んだ。

 

 

「…………」

 

 

 買い物して帰ろう。

 買い物をする事を菜々子の子供用携帯へと掛けようと、自分の携帯を未だ着慣れない制服のポケットから引っ張り出そうとする。

 

 

 チャリッ……

 

 

「? ……っ!」

 

 すると携帯以外の何かが、ポケットの中にある事に気付く。

 それを取り出して、湊は息を呑んだ。

 

 

 夢だと思っていた、青に染まった部屋での出来事。それが現実だと証明するかのように、その『鍵』は確かにそこにあった。

 

 仮面の意匠の鍵頭に、シンプルな鍵先。

 『契約者の鍵』。

 

 

 

「…………」

 

 

 

 湊は鍵をポケットへとしまう。

 そして今度は携帯を取り出した。携帯で連絡先を探しながら、足早にある場所へと向かっていく。

 

「……もしもし。うん。友達と一緒だった? そう。ごめんね」

 

 

 そして程なく目的の場所へとたどり着く。同じ階であった為に、それほど時間も掛からなかった。

 そこは大きなテレビの前。

 

 異界への、入り口。

 

 

「――今日は少し、遅くなるかもしれない」

 

 そして携帯を切った。

 

 普通に考えるなら、行く必要もない場所。というよりも決して近寄ってはならない場所だ。

 

 けれど気になる事が幾つもあったのだ。それはポスターなどの奇妙な共通点もあるが、向こうに行こうと思ったなにより大きな要因はそうじゃない。

 

 

 湊は思考を巡らせながら、テレビへと手を伸ばす。

 

 

 トプリと沈んでいく。何ら問題は無く、向こうへと行けそうだ。

 

 

「…………」

 

 

 手を差し入れる前に確認した通り、周りには誰もいない。

 

 気になったのはクマの言葉。

 

 

 迷惑だと、そう言った。

 

 

 何故迷惑なのだろうかと考えてみる。それは当然シャドウの事なのだろう。クマの言葉や、雰囲気からもそれは読み取れた。

 

 しかしこれまであそこに住んでいたというのなら、シャドウへの対策の一つや二つはあって然るべきだろう。けれどクマはシャドウと遭った時、逃げるのみで何もしなかった。

 それは何故だろう。

 

 湊はそこに迷惑だという理由が読み取れた。

 人を放り込む事が迷惑だと言っていた。つまりシャドウは人を狙い、何かしら、例えば狂暴化するのかもしれない。そうでなくても、対策が効かなくなるような状態になると考えられる。

 つまりは人がいると、シャドウは積極的に人を狙うのだ。

 

 それは異界への異物の排除と言う側面もあるのかもしれないが、そんな事までは流石に分からない。

 

 

 湊が今重視しているのは、先ほどのシャドウとの遭遇時。

 

 

 

 クマが逃げた事だ(・・・・・・・・)

 

 

 

 あの時のシャドウが、例で言えば狂暴化していたと想像ができる。それは湊達という人が居たからだとも考えられるが、それだけではないのかもしれない。

 何より、クマは忙しいと言っていた。

 

 あのような場所で何をする事があるのだろうか。シャドウに対し何か出来るとは思えない。他には何も思いつかない。まさかゲームがあるわけでもあるまいし。

 ならば湊達と同じような人を、同じように助けに行ったとは考えられないのだろうか。クマの平穏を守る為に外へ出そうとしたと。

 

 

 

 つまりは今も向こうに、人がいるのだ。

 

 

 

 

 湊はそう、結論づけていた。

 

 

 

 

 放っておけばいい。

 そんな考えもあった。

 

 

 でも、もう一つの懸念が湊を動かした。

 殆ど感覚に頼ったそれは、もし合っていたならどうしようもなく残酷な事実だ。

 シャドウ、クマ、あの異界に感じた何かと同じあの人。そしてそれを裏付けるような現象。

 

 

 ならばそれが正しかった場合による傷跡が少なくなるよう、動きたいと思った。

 それだけの力は、持っている筈だから。

 

 

 湊は息を吸い、テレビの中へ手を進めていく。

 

 手、腕、頭、肩。

 

 

「…………」

 

 

 そして下半身も入る寸前。

 

 

 

「――い――ってんだよ――!」

 

 

 誰かの声が聞こえ、誰かに湊の身体が掴まれる。

 そして湊とその誰かは、共にテレビの中へと吸い込まれていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ……」

 

「い、いてぇえええ!!」

 

 

 湊が降り立った場所は、三人と入った時と同じ場所。

 そこには湊、そして本来居るべきではない人影があった。

 

 

 それは。

 

「花村? どうしてっ?」

 

「っつー……有里こそ! 何でまたこんなとこに入ろうとしてんだよ!」

 

 

 陽介だった。

 千枝と同じで身体の調子が悪いと、そう言って帰ったはずだ。

 それなのにここにいる。

 

 

 湊は、決してこの世界を甘く見てはいないし、自身の力も過信していない。それに陽介の顔色は、贔屓目に見ても悪い事がよく分かる。

 

 自然湊の視線も険しい物へと変化していたのだろう。陽介はたじろいだ。

 しかしぐっと気合を入れると、負けじと湊へと返す。

 

 

 

「……っ。そりゃ俺だって、こんな所来たくなかったっつーの。でも、お前が、一人で変な顔して中に入ってこうとするの見て、なんつうか放って置けなかったつーか……」

 

「……はぁ」

 

「な、なにため息吐いてんだよ! そもそも有里があんな……い、いや、それはもういい! ほら早く帰るぞ!!」

 

「どうやって?」

 

「は? どうやってって……そりゃ、テレビ……が、ない? ない! ない!?」

 

 

 湊も陽介の必死な顔と言葉に、何故だか厳しい顔ではいられなくなってしまう。綻びそうな顔を湊は、ため息を吐く事で誤魔化した。

 ため息に陽介は反応するものの、早くここから出る事こそが最優先だと切り替える。

 

 しかし湊の言うとおり、ここから出る為のテレビが設置されていなかった。

 

 

 

 

 クマが回収したのだろうか。

 

 だとしたらやはりここに居るはずの誰かの為に、回収したのだろうか。湊は自分の考えが、少しづつ当たり始めている事に嫌な予感を拭いきれなかった。

 

 

「…………」

 

 

 

 ちらりとテレビを探す陽介を見る。

 ここに捕まった人を助ける時の事を考えると、出来る事なら陽介を連れて来たくは無かった。

 

 しかしこうなってはそうも言ってられないだろう。ここにシャドウが来ないとも限らない。それにどうやらこの空間は、大多数の人間にとって毒のようなものらしい。ならばいざという時の為に、ペルソナという手札を持つ自分と行動した方がいいはずだ。

 

 湊は小さく息を吐く。

 

 

「花村……ちょっと」

 

「んあ!? ちょ、テレビどこにもねえぞ!」

 

「それは、どうでもいい。話を聞いて」

 

「ど、どうでもいいって、おいおい」

 

「花村」

 

「うっ。わ、分かったっつーの」

 

 

 そして話す。

 簡潔に、ここに他にも人がいて、そこにクマもいるのではないかと。

 陽介はパッと顔を輝かせたが、その後すぐに露骨に嫌そうな顔をした。

 

 

「そ、それって、あれだよな。シャドウ? とかとかち合う可能性あるんだよな?」

 

「うん」

 

「……人助け。ヒーローみたいな。でもシャドウとか……あんなん無理だろ。拳銃あっても勝てる気しねえよ……でも、な……うーん」

 

 

 人助けをする自分を想像して、顔を輝かせたはいいが、シャドウという化け物を思い出し、一気に現実に引き戻されたようだ。うんうん唸り、ひたすらに迷っている。

 

 湊はそれを見て、再度自分の考えを陽介に話す。

 

「ここにもシャドウが来ないとも限らない。それにどっちにしろクマがいないとここから出られないから」

 

「お、おお。確かにそうなんだけどよぉ」

 

 

 湊はそんな陽介に微笑みかけた。

 

「大丈夫。花村は守るから」

 

「……! ……くそ! 俺だって男だっ! そんな事言われたら、行くしかねえじゃんかよ!」

 

 

 

 陽介も湊の微笑みと言葉に、しっかり元気づけられたようだった。男としての矜持が陽介を奮い立たせたのだろう。それだけじゃなく、湊への気遣いも感じられた。

 

 

「よし。じゃあ、行こう」

 

 

 湊はそれに笑い返し、自分だけが感じているのだろう感覚を頼りに、霧に惑わされる事無く、しっかりと地面を踏みしめ歩き出したのだった。

 

 香り立つ死の匂いが集う場所へ。




デビサバ2の新作を買おうかどうか迷い中です。
アニメ見てると買いたくなったり……

さて、こっからオリジナル展開になっていく、かもしれないです。展開は見抜かれちゃうかもしれません……
どうか暖かく見守ってやってください!
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