P3inP4   作:ふゆゆ

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デビルサバイバー見ました。
えっ……マジで?

こうなりました。いやいや。まじで。
何ともアトラスらしいって思いました。
絵は可愛いのに、荒廃してますね……

でも大丈夫!
伴ちゃんいるし!
頑張ります!



影堕ち

『だから、利用したんだよねぇ? 花ちゃんを』

 

 

「え……?」

 

「は、花ちゃん……?」

 

 

 境界の向こうで、早紀が顔を上げ震えた声を出した。

 境界のこちらで、陽介が耳を疑うように声を漏らした。

 

 湊は、未だどうするか決めあぐねていた。しかし金色の瞳を持つ早紀は、蔑むように早紀、そしてちらりと境界のこちら――陽介――を見て、言葉を続ける。

 

 嘲笑と苦しさと悲しさが籠った、深く冷たい声であった。

 陽介は視線と、その声に固まり動くことが出来なかった。

 

 

『ジュネスの事良く知る為に。ジュネスの店長の息子だから。ジュネスの中での立場を良くする為に。将来いつかジュネスに対抗するために。商店街の復興の為に。沢山沢山利用するために、花ちゃんに近づいたんだぁ。()ったら。なのに、さあ……?』

 

「そ、そんなつもりじゃ」

 

『いいの。()が、言いたかった事。変わりに言ってあげる……ずっと、ずっと、言えなかった……事』

 

 

 そう言って、懐から取り出されたのは、写真と、二枚のチケット。

 

 

「そ、それは、花ちゃんから貰った……! それに皆で撮った写真も……何でアナタが!?」

 

『アナタは()()はアナタだもの……だから言えるわ。私、花ちゃんの事ずっと――』

 

 

 取り出された、ガチガチに緊張した陽介と柔らかく笑う早紀が映る写真。そして陽介が早紀に渡したチケット。

 金の瞳が妖しく光り、にこりと慈母のような笑顔を浮かべ、写真とチケットを両手で掴み――

 

「あ、あぁ!! や、やめて! 何で破くの!? 破かないで! やめてよっ!」

 

『――うざいと、思ってた』

 

 びりびりと写真とチケットを破き、掌から地面へ零す。

 早紀の引きつった声が、境界を跨ぎ響いてくる。しかしその悲痛な声に、陽介は動けない。湊は動かない陽介に声を掛け肩を揺らすが、陽介は茫然自失、ただ破かれた写真とチケットを見ているだけ。

 

 早紀が、泣いているというのに。悲痛な声を上げているというのに。

 

  

 

『仲良くしてた意味も気付かずに、勝手に盛り上がってさぁ……苦しんで、必死に取り繕ってる()に全く気付かずに、自分だけ幸せそうにへらへらしてる花ちゃんがウザかった!』

 

「違う……違うっ」

 

 

 湊は悍ましく濃くなる香りに、ついに障子を力任せに殴りつける。しかしびくともしない。

 その合間にも嫌な予感は増してゆく。

 

 

『家も、学校も、バイトも、地元でも、心安らぐこともできない()に気付こうともしないで、幸せそうに、振る舞ってる花ちゃんがウザかった!』

 

「そんな、そんな事ない! 花ちゃんといる時間は、それだけは私も心地よく過ごせた! 安心して」

 

『でも、思ったでしょう!? 同じような立場なのに、なぜ花ちゃんだけがあんなにも幸せそうに過ごしているの!? そんな羨ましい場所にいるのに、花ちゃんは何故()にあんなにも羨望を抱いているの!? 羨ましいのは、こっちなのに! そうやってイラついていたでしょう!? いくら助けて欲しいってサインを送っても、気づこうともしない花ちゃんに!』

 

「そ、そんな、そんな事!!」

 

『この前だってそう! ()はいつもと違う様子だって花ちゃんは気づいていたのに、気づかない振りをしてたじゃない! 自分だけ、心地のいい場所に居ようと卑怯に振る舞ってたじゃない! 本当、ウザい、ウザいウザいウザい!』

 

 

 ヤバい。

 湊は警鐘を鳴らす自身の予感に従い、ペルソナを召喚する事に決めた。未だ早紀が犯人かどうか分からない中、自分の手を見せたくは無かったが、最早そんな事は言ってられないだろう事態である事は明白だったからだ。遅すぎる判断をした自分に舌打ちをしながら、自身の心へ意識を向ける。

 

 しかし。

 

 

『邪魔をするな!!』

 

 

「っくぅ……!!」

 

 

 早紀から及ぼされた二重の衝撃に、湊は容易く吹き飛ばされてしまった。

 酒の置かれた棚や、机を巻き込みながら、短くない距離を飛ばされる。視界が回り、上下が分からなくなり、刹那であり長くも感じる瞬間の中、金色の瞳を持つ早紀に攻撃を受けたと気づいた。

 

 やがて時間の流れは、地面へと衝突した衝撃により、通常の流れへと戻った。

 

 瓶の破片が湊の頬に切り傷を作り、頭からは、酒と混じった血が流れてきた。身体も打撲によって痛み、特に頭を庇った腕はもしかしたら折れているかもしれない、鈍い痛みに襲われていた。

 

 頭の傷口に入り込んだ酒のせいで、鋭どく熱い痛みが脈に呼応して頭を襲う。血液は次々と流れだし、幾ら拭っても止まらない。制服は血に塗れ、上着はともかく中のシャツには赤黒い染みが広がっていた。

 

 頭を庇った両腕も、じくじくと鈍く痛み、寒気を湊に齎している。上げる事すら億劫になってくる両腕は、呼吸にすらも反応し、痛みが湊を襲っていた。

 

 揺さぶられた内臓は、吐き気と、言葉にしがたい気持ちの悪さを身体の奥底からせり上がらせ、湊の身体を動かす意思をがりがりと削っていく。

 

 しかしそうも言ってられないのだ。

 

 湊は身体を反転し、仰向けからうつぶせになり、肘を使い状態を起こす。そして巻き込まれたかもしれない陽介を探した。常人よりも遥かに強靭であるはずの身体が、たった一撃でここまで破壊された。陽介ではとても耐えられないはずだ。

 一刻も早く治療しなければならない。

 

 

「は、はあっ、はあっ……! っつう……!」

 

 朦朧とする視界の中に、陽介を見つける。先程の弾丸の如き重撃は指向性だったのだろうか。障子も陽介もそのままに、湊だけに効果を及ぼしたようだった。

 

 しかし、泣き言も言っていられない光景が湊の前に広がっているのに気付く。陽介の恐怖に歪んだ視線の早先には、もう一人陽介がいた。金色の瞳が禍々しく光るもう一人の陽介が。三日月のような笑顔を浮かべ、立っていた。

 

 

 

 

「は、花村……っ!」

 

 

 

 

 湊は、ペルソナを出そうとする。しかし酷く負傷した湊では召喚出来ないのか、はたまた別の理由か、光は淡く浮かぶだけで形を取ろうとしない。どくりどくりと自分の中の何かが激しく脈を打ち、どうしようもない恐怖とと取り返しのつかない悪寒に襲われて、それが光を霧散させてしまうのだ。

 

 

 

 それでも湊はペルソナを呼ぼうと繰り返した。痛みに歯を食いしばり、息を荒げながら繰り返した。陽介が今無事でも、いつ何がどうなってしまうのか分からないのだから。

 

 

 そんな朦朧とする湊がもがいている合間にも、刻一刻と変わっていく状況が音として届いてくる。

 障子から漏れる、黒板を引っ掻くような不快なノイズ交じりの声と、やめてと泣き喚く声。

 

『ジュネスなんてどうだっていい。うちの店も、商店街も! 親も、みんなも! 全部無くなればいい!』

 

 

「やめて! やめてよ!」

 

 

 

 茫然としている、陽介の息を呑んだ声。

 もう一人の陽介の、エコー掛かった全てを見下すような声。心を闇で冒す声。

 

 

『ウザい。だってよぉ? 悲しいよなぁ、苦しいよなァ? 全く好き勝手言いやがってよぉ。何もかもがウザいって思ってんのは、()の方だってーのによぉ?』

 

 

「あ、ぁ、お、お前は」

 

 

『俺は、お前だ。分かってんだろ? あそこのあれと同じだよ。お前の事なら全部分かるんだよぉ』

 

 

「ぜ、全部?」

 

 

『ああ。何が人を助ける為にここまで来ただ。格好つけやがって。お前は単にこの場所に非日常を感じて、わくわくしてただけだろうが。こんな田舎に飽き飽きしてたんだろう? あわよくば、特別な何かになれる。そう思ってたんだよなぁ』

 

 

「お、俺は、そんなっ」

 

 

『センパイの言葉にも、ぶっちゃけ迷惑で堪らないんだろう? だってセンパイの事情を聞いて、変に行動して孤立したら嫌だもんなァ。せっかくへらへらして、寂しくないように上手く立ち回ってんのに、それが壊れたら嫌だもんなァ。ウザがられてもいい人ぶって、可哀想なセンパイと喋ってあげて、自己満足に浸ってられるだけで良かったのに。踏み込まれるのは迷惑だっただろう?』

  

 

「違うっ! 違う違うっ!!」

 

 

 

 

 湊は自身の内を叩く鼓動と、眩暈のしそうな悲鳴交じりの絶叫に耐えながら、軋む身体を起こしていく。痛みはある。しかし流れる血に塞がれ片方だけしか見えない視界に、不吉な赤黒い霧が見えたのだ。酷く嫌な予感のするものだった。一刻も早く行動しなければいけないという焦燥感が湊を焼いていた。

 

 

「ぺ、ペル……ソ……ぅぁ……っ!」

 

 

 けれどもペルソナが制御できない。自分の中のナニカが、ここから出せと暴れているように。湊の手を離れていきそうになってしまうのだ。

 

 

 

 湊の歪む視界の先。障子はいつの間にか開いていた、その向こうの早紀たちの様子が良く見える。

 

 

 金色の瞳は赤く、黒く、濃くなっていく霧の中から、光りを漏らしている。早紀の悲痛な叫びに呼応するように、濃く、より濃くなっていく。早紀が答えから逃げる度に。早紀から金色の瞳を持つ早紀へと、甘ったるく気持ちの悪い香りも移っていく。

 心の影が移っていく。

 

『そうよ。私に向き合わない花ちゃんも、みんな、みんな無くなってしまえばいい。――でも、無くなってはくれない』

 

「やめて、やめて!! 一体アナタは何なのよ! もうやめてよぉっ!!」

 

 

 

 

 

 それは陽介と相対する金色も同じ。その陽介にうり二つな身体は少しづつ溢れる赤く黒い霧に包まれていく。

 陽介が言葉を否定するたびに、濃く、更に濃くなっていく。

 心の影が積もっていく。

 

 

『違わねえよ! お前は毎日が詰まんなくて、自分を勝手な敵意だけで見る奴等にも飽き飽きしてただろうがっ! センパイへの想いもそうだ! 単なる刺激としてもってられればよかったって思ってんだよ!』

 

 

「違うっ! 違うっ!! お前は、お前は一体何なんだよおっ!」

 

 

 

 そして両者の声が重なった。

 金色の瞳の鈍い煌めきが、重なった。

 

『――()? 言ったでしょう。我は影、真なる我。()は、アナタよ』

 

『――何だ。だって? 言ったじゃねえか。我は影、真なる我。()はお前だよぉ』

 

 

 

 そして両者の声が重なった。

 耳を塞ぎ、目を閉じ、放たれた否定の声が重なった。

 

 

「――そんな、そんな筈ない!」

 

「――違うっ!」

 

 

 

 

 

 

 瞬間。

 湊は肌が泡立つのを感じた。ペルソナを形作ろうとしていないのに、今までで一番激しく、自分の内を叩かれた。どうしようもないナニカが、間近にまで迫っているのを感じた。

 

 そして絶望を齎す声が、空間を震わせる。

 それはさながら死の叫び。重く冷たく、悲しく苦しく響く声。

 

『ふ、ふふふふふふ。来るわ、力が! 安心して、アナタの望みは叶えてあげるわ!』

 

『あは。あはははは! 来る。来るぜ力がさあっ!!』

 

「アナタは、アナタは私じゃない!」

 

「お前が、お前なんかが、俺なはずがねえっ!!

 

 

 

 二つの声が重なり響く。声に乗せた心の影が金と赤と黒に力を与えていく。

 勢いを増した赤黒い霧の奔流が、二人の金色を覆い隠していった。

 

 

 

『ふふふふふっ。アナタは私。私はアナタよッ! 辛い事全部、忘れさせてあげるっ!』

 

『あは、あは、あはははっ! ああ、そうさ俺は俺だぁっ! よわっちいお前なんかじゃねえ!』

 

 

 そして二つの赤く黒い柱が、凄まじき力の奔流と共に異界の中に立った。

 

 人の歪んだ面が、大いなる影となって。

 心を喰らわんと、湊達の前に立ち塞がった。




メガテン4を早く買いたい今日この頃……
凄い楽しみです!
これからもよろしくお願いします!

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