P3inP4   作:ふゆゆ

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ホンットに長い間申し訳ありませんでした!!
見て下さる方、本当に感謝しています。

どうかこれからもよろしくお願いします!


逢うは死

 視界が黒に染まる。

 自身の内より溢れる黒い霧。

 

 

 これは相手の攻撃のせいなのだろうか。

 そう考えた所で。

 

 違う。

 

 湊はその考えを否定した。

 

 

 この黒い霧は、あの風とは無関係だ。この黒い霧は風に感じた禍々しさも感じないどころか、本能的な安らぎを覚える程に、柔らかく優しく湊を包んでくれている。

 まるであの風から湊を守るように。

 

 

 

 風は黒い霧を恐れ嫌うように避けていく。

 

 そんな黒い霧の合間より見える光景に、湊が考えを巡らせようとしてある事に気付く。

 この霧は自分しか守っていない……?

 

 

「――っ!」

 

 

 すぐに後方へ視線を向ける。

 

 風は霧に触れたからか、遅くなっている。しかしその早さは、ボロボロの湊の走る速度よりは早いのは、火を見るより明らかだった。

 

 風の向こう。

 黒い霧に包まれた湊を見て、恐怖と焦燥に包まれた早紀が見えた。

 陽介の腕より逃れようと、必死にもがいている。

 

 

 

(――……っ)

 

 所詮はそんなものだ。

 他人よりも、自分が大事なのだ。

 だが湊にとってそんな事は、これまでの人生で十分に分かっていた事であったし、それで自身の行動が変わるわけでもない。

 

 ただ今は、あの二人を守る為に何が出来るかを考えなければいけない。

 

 

 

 攻撃魔法は、駄目だ。二人も巻き込んでしまう。最大威力を出すのなら兎も角、風だけを狙いそれでいて効果は最大にするような緻密な操作は難しい。

 

 回復――は問題外だ。それは事が起こってからの対処。

 

 補助魔法……悔しいが、今の自分では効果的な魔法を持っていない。

 

 

 まさに八方塞がり。

 

 

 

 それでも諦めるなんて事が出来るはずも無い。だったら何か、他に出来る事は無いか。

 考えようとした所で、気付く。

 巨大な質量を持った物体が、空気を唸らせて迫る音。

 

 

 前方に急いで視線を戻す。

 

 

「――ちぃっ!」

 

『何だよそれ、何なんだよそれはぁあぁあああああ!!』

 

 

 凄まじい勢いでこちらへ突撃してくるそれは、陽介の影。

 何かを怖れるように半狂乱になり、怖れに負けたように叫びを上げながらこちらへと『突進』してきている。

 

 

 湊が気づいた時には既に、陽介の影はすぐそばまで迫っていた。

 

 

 

 ――避けきれない。

 

 

 

 訪れるだろう衝撃に、歯を食いしばり備える。

 せめてもの抵抗として腕を交差して。

 

 

「――っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ぬ、ぬぉおおっ……!』

 

 だが、衝撃は訪れる事は無かった。

 黒く渦巻く光の粒の外。あれほどの質量が、あれほどの速度で迫りながら、その訪れるはずの衝撃は湊に訪れず、黒い光りの霧に触れるかどうかの場所で陽介の影は停止した。

 

 衝突音は無く。ただ信じられないとありったけの力を込める陽介の影の唸り声のみが、湊の耳へと入って来ていた。

 

 

 湊はその現象に一瞬目を見開くも、すぐさま自身の背後へと目を向ける。

 本来敵から目を離すべきではない現状で、湊が後ろを向いたのは、この黒い霧への絶対的な安心感を自分という存在が覚えている(・・・・・)と何故か分かっていた事と、守ろうとしていた二人が後ろにいたからだ。

 

 

 

 

 

「くそ……!」

 

 

 

 

 

 しかし遅かった。

 湊の歯ぎしりの音が、陽介の影の黒い霧を殴りつける風音に混じり漏れた。

 湊が見たのは、二人をさらさらと風が通り抜けた光景。

 

 それはつまり、あの風を二人が受けてしまった事に他ならなかった。

 それはつまり、湊が二人を守れなかった事に他ならなかった。

 

 

 

 怒り、悲しみ。何とも言えない感情が心を満たす。

 そこまで仲のいい二人では無かった。

 

 

 ただ。

 陽介は湊が溶け込めるよう気さくに話しかけてくれていたし、千枝達とのやりとりも悪い気はしなかった。

 多分少しだけ好きになり始めていたのだ。

 

 早紀だって、今の陽介を守ろうと体に抱いたあの姿を見れば、自分がどれほど的外れな予想をしていたかよく分かる。自分はどれほど彼女を見誤っていたのだろうか。

 

 彼女は自分が好きになり始めていた、陽介が惚れている女なのだ。

 だったら少しくらい彼女を信じていれば、こんな事態には陥らなかったかもしれない。

 

 

 

 しかし。

 たらればなんて言っていてもしょうがない。

 湊は激情が渦巻く心のまま、今の状況を受け入れた。

 

 

 その瞬間だ。

 

 

 

『ちくしょうがァ!! テメエこれ以上奇妙な真似はさせねえぞっ!!!』

 

 

 

 

 

 渦巻いていた霧が、湊と同じように立ち尽くしていたオルフェウスへと集っていく。

 陽介の影はそれを止めようと更に攻撃を重ねていくが、それはなんら結果に影響を及ぼすことは無かった。

 

 

『オォオォォォォ……』

 

 

 オルフェウスは黒い霧を受け入れるように、両手を広げ低い呼吸音を響かせる。

 呼応するように霧の収束は早まっていった。

 

 霧は形作る。

 

 

 オルフェウスの背後、鎖で繋がれた八つの棺桶の翼。

 棺桶の蓋には祈りを捧げる天使が十字架を抱き、死に囚われた者共を慰め。

 鎖の擦れる甲高く禍々しい音が、影達の心を竦ませた。

 

 

 オルフェウスの肩から面へと包まれ、出でたもの。左右両端の棺桶の鎖から繋がるは、白面の鋭き嘴を持ったモノ。

 口からは鋭き冷気を呼気と共に吐きだし、その漆黒にくり抜かれた眼は自らの力を振るうべき対象を冷たく見据えている。

 

 白きアーム・ロングに包まれた両手の内、右手には魂を斬りとる為の装飾の無い無骨な長剣が握られていた。

 

 

 黒き霧が晴れ、姿を現したのは。

 目の前の二つの影など比較にならぬ圧倒的に過ぎる死の気配を撒き散らす存在。

 死を本能とし、死を齎す衝動。

 

 死の化身。

 

 

 その名は。

 

 

 

「タナ、トス――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 濃厚な死の気配は、その場の空気を凍りつかせる。

 実際に重みを感じるような重々しさを持つものへと空気は変化し身体は鈍くなり、震えの来そうな冷気が呼吸を邪魔し、目を閉ざせば二度と光を感じられなくなるという予感が、瞼を閉ざすことを拒否させた。

 

 

 その中にあって、湊は不思議な程心を落ち着かせていた。

 タナトスへの懐かしい既視感と。

 タナトスへの絶対的な信頼感が。

 湊の心を静へと落ち着かせる。

 

 

 本来今の湊では扱えるはずも無いペルソナ。

 普通ならその暴走を警戒し、対策を考え備えるべきだ。

 だが何故だろう。

 

 湊はそのような事をする必要性など全く感じなかった。

 

 

 

 

 

 タナトスが完全に現れてから、時間は全く経っていない。

 一瞬でタナトスはその場を掌握していた。

 そして当然、主を守る心の鎧たるペルソナがただ現れ突っ立っているだけな訳も無く。

 

 その存在に恐れ震える二つの影より、落ち着き素早く思考を回転させ始めた湊より、その場の誰よりも早くタナトスは動いていた。

 

 

 

 

『グル……グルルルルゥラァアア!』

 

『ッ……!』

 

 

 死の咆哮が空間を軋ませる。

 禍々しき唸り声にタナトスの目前にいた陽介の影が、ヒュッと短い悲鳴をあげた。

 あれほどに好戦的であった影は、その声に反射的に行動する。

 

 全ての存在が死を前にした時にとる、当然の行動。即ち死からの逃亡。

 

 だがそれは瞬きの合間も無く潰される。

 

 

 

 

『グルゥ、グルララァアッ!!』

 

『うがっ! や、やめっ……ぎゃあああああああああっ!!』

 

 

 

 タナトスは一瞬にして陽介の影の上方へ飛び、左手でその巨体を押さえつける。

 陽介の影は抗えず膝を折り、地面へと減り込んでいった。

 

 逃亡は失敗に終わり、陽介の影は思わずといったようにタナトスへと制止の声を絞り出そうとしたが、それすらも阻まれる。

 更に込められた力によって。

 

 力に耐え切れなくなった地面と共に四本の大足を文字通り物理的に潰す。

 潰された足は黒いどろどろの粘液へと変わり、辺り一帯を汚すそれは、人に流れる生命の水たる血液のようだった。

 

 

 もうもうと起きた砂煙の中から、陽介の影が出す悲痛な悲鳴が響き渡る。

 

 湊はその悲鳴を聞きふと考える。生物なのかどうかも分からない影でも、痛覚はあるのかもしれない。だとすれば、四肢が圧搾される痛みは如何ほどだろうか。

 

 タナトスの持つ圧倒的な力は、先程まで危機に在った湊にそんなどうでもいい事さえ考える余裕を与えるほどのものであった。

 

 

 湊はいつしか無意識に口角をあげていた。

 嗜虐に満ちた、そんな笑みを浮かべていた。苦悶なる叫喚をBGMに笑みを浮かべ、死を使役する湊は見る物が見れば異形なる影達よりも邪悪に見えたかもしれない。

 

 

「っ……?」

 

 

 しかし湊がその力に酔うかのように笑みを浮かべていたのも一瞬。

 ノイズ交じりの映像が脳裏に瞬いた。

 

 

 空に大きく佇む緑がかった月。

 緑に霞む夜空の下、内より引き裂かれバラバラになるオルフェウス。

 その内より現れるは、眼前で暴虐を尽くす死神タナトス。

 

 

 場面がぶつりぶつりと切り替わる。

 

 

 タナトスが月を背後に、その恐ろしく悍ましい咆哮を上げる。

 向かう先は、以前にも見た大きな影。百手と夥しい仮面の影。

 影を叩き潰し、右手の剣を振るうタナトス。瞬きの間に細切れにされる大きな影。

 

 

 以前の続きなのだろうか。

 湊は漠然とそう感じた。

 

 

 千切れた腕がのたうち、それに息を呑む誰かの呼吸音。

 やがて腕と仮面は溶け黒い粘液へと変貌していく。

 荒い息を吐くタナトスは、月をバックに遠吠えをあげ――次の瞬間にはバラバラになったはずのオルフェウスへと姿を変えていた。

 

 

 これは何なのだろうか。

 湊は続きを見たいと。そう思った。

 

 が。

 

 

『グゥォオオオオオッ!!!』

 

『ギャアア、ガァッ!?』

 

 

 タナトスの咆哮が湊を現実へと立ち戻らせる。

 タナトスは最後の止めだと、陽介の影の下半身を剣で縫い止め、人の形をした上半身の頭部を両手で鷲掴んだ。

 

 

「…………」

 

 湊はその光景に何も感じなかった。

 タナトスの力からすれば、この光景は当然の結果であり、それよりも映像の続きが気になってしょうがなかったのだ。

 しかしよくよく冷静になって考えれば、今はこの状況をどうにかする事が大切だ。

 

 今すべきことを見失うなど、自分らしくも無い。

 

 

 

 もっとも。

 

 

 

 

 

「もう決着は着いた」

 

 

 

 

 その心配は杞憂のようだったが。

 

 

 何にせよどうにもならないと思った現状が、どうにかなりそうだ。

 この影達を(くだ)せば、クマを探し最初の場所に戻って、現実へと帰る事が出来る。

 

 あの風の効果を考えると気が重くなるが、命があるのは何より尊い事だ。そう思わないとやってられないのもあるが、それは紛う事なき事実。そして湊は今後の事も考え、しっかりと覚悟を決めていた。

 

 高校生に出来ることなどたかが知れているかもしれないけれど……

 

 あの二人の力になろう。

 

 そして、ただ今はこの場を生き延びた事を喜ぼう。

 

 

 そしてタナトスが止めを刺そうと、更に力を入れようとしたその瞬間。

 

 

 

 

「ま、まって、待ってくれぇ!!」

 

 

 カチカチと歯を鳴らす音と、震えた弱弱しい声が響く。

 音源は湊の背後。

 

 

 湊が、そしてタナトスがゆっくりと向けた視線の先には。

 涙をボロボロと零しながら、早紀をその腕に抱く陽介がいた。

 

 そして陽介はガクガクと震え、血の気の引いた顔に恐怖を乗せながら、泣きじゃくる子供のように声を上げる。

 

 

 

「お、遅いかもしれない。でも、俺ちゃんと受け止められたんだよぉ。センパイの……センパイがぁっ……庇ってくれたからぁっ! 認められたんだっ………!」

 

 

 タナトスがキリキリと嘴を擦らせる。

 漏れる呼気はパキリと空気を凍らせて、軋む鎖の音が空間を縛る

 (あやま)てばタナトスは陽介に襲いかかってしまいそうな、そんな張り詰めた空気の中陽介は鼻をすすりながら大声を張り上げる。

 

 

「ソイツは。ソイツはぁ、オレなんだって事を――」

 

 




これがスランプというやつか……
なんてのに苦しみながら、設定を確認して、もう一度原作を確認してを繰り返し何とか書き上げられました……

長さはちょっと長くなりました。
これからは少しでも早く書き上げていきたいです!
それとアトラス!
P4Uの続編が出るとか!?
キタローが出るとか!!???

何という事でしょう。
またお金を溜めなければいけませんね。

願わくば公式救済を!
あ、生○目さんのはノーサンキューです。
是非べスさんで!

それでは失礼いたします!

8/27 加筆・修正
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