「一斉にかかれ!」
「「「「「了解だ!ぶっ潰してやらぁ!」」」」」
リーダーの掛け声で相手が一斉に襲いかかってくる。その方法は二種類で近接攻撃をしかけようと接近する者、遠距離から魔法で攻撃するものの二種。近接攻撃を仕掛けようとする奴等は揃って強化魔法をかけているらしく、かなりのスピードでこちらに迫ってくる。それと同時に遠距離攻撃を考えている奴等の手はいつでも魔法が放てる状態にある。俺は一旦ドラゴを小型化させ、ある魔法の命令式を組む。そして、近接組の拳や武器が俺に襲いかかろうとしたその瞬間に、
「魔法、発動」
その魔法を発動させた。魔法を発動したその瞬間、闇属性の魔法が俺を中心にドーム状に展開する。そしてそのドームは俺に向かって放たれた拳や武器による攻撃をまるで泥沼に突っ込んだみたいに威力を無くさせた。
「な、なんだ!?この魔法は!?」
相手は驚きを隠せない。さらにもう一人の生徒が、
「きょ、強化魔法が切れた!?」
と動揺する。そう、これが覚醒した俺に備わった、俺だけに備わった能力、【魔力奪取】だ。転校生が他人に魔力を受け渡すなら俺はそれの逆、即ち他人の魔力を奪うのだ。そして今起こっている現象はこうだ。特殊な防御魔法を発動させ攻撃の威力を無くす、ここまでは普通の魔法使いでもできないことはない。そこからだ、このドームが展開している最中、常に俺の右手がドームに触れている。このドームに触れている『手』が重要なのだ。この『手』が触れることにより、俺の能力がドームにも伝わり、そのドームも同様に魔力奪取の力が付与される。そして魔法として放たれた魔力を放たれる前の魔力に戻す。そしてドームに吸収された魔力はドームに触れた『手』を伝わり俺に吸収されるか、そのままドームに蓄積される。
「てんめぇ!」
諦めが悪いのか、単に原理に気づいてないのか、相手は攻撃の手を緩めない。それに加えて遠距離から放たれる魔法も次々とドームに着弾する。しかし、その魔法も着弾と同時に吸収される。このまま相手の魔力が切れるまでドームを張り続けてもいいが、面白味がない。よし、仕掛けるとするか。俺はドームの内部で別の命令式を組み上げ、すぐさまその魔法を発動させた。
「弾けろ」
その声と共に俺を囲っていたドームが弾け、近くにいた相手3人を吹き飛ばした。今放った魔法はドームに蓄積された相手の魔法をドーム自体が弾ける威力に乗せて放ったものだ。相当な数の魔法が蓄積されていたその威力は強力、吹き飛ばされた3人はそのまま気絶した。
「どうした?俺をぶっ潰すんじゃなかったのか?」
挑発するようにまだ残っている相手生徒に言い放つ。
「いくら数が勝っていようともその数を生かした戦いが出来なければ意味がない。いくら数が多くてもそれを指揮する者の腕が伴わなければ意味がない。そして!相手を観察することもせず、ただ力任せに攻撃するだけなら……この俺に、勝てるわけがない!!」
一瞬の静寂。そして、
「「「てめええええええ!!!」」」
ついに激昂した残りの3人が魔法を放ちながら向かってくる。こうなればもう俺の勝ち。冷静さを失った瞬間、戦いには勝てない。
「終わりだ。融合、第4形態」
その言葉と共に零士の体の四肢が霧に包まれる。そして一瞬のうちに彼の四肢は魔物の物と化した。会場にどよめきが起こる。
「な、なんだありゃ?」
「ま、魔物?」
「何で霧が入り込んでるのに平気なんだ?」
観客席は混乱を隠せない生徒が多い。そんな中興味深そうに零士を見つめる青みがかった銀髪の少女がいた。彼女の名は【宍戸結希】。この学園の【魔道兵器開発局】に所属している言わば学園在住の研究者である。彼女もまた、彼の行動に驚きを隠せていない。普通なら霧が体内に入り込めば、個人差はあるとはいえ衰弱、あるいは魔物と化す。そして魔物になってしまったら、自我を無くし通常の魔物同様に人間を襲う。ところが目の前の彼はどうだ。彼の四肢は完全に魔物の物と化しているのにも関わらず彼は平気そうにしている。それともう一つ気になるのは彼が連れているモンスター、なぜあそこまで自分の体の状態を自由に変えれるのか。考えれば考えるほど謎は出てくるばかり。
「一度、調べてみる必要があるわね……」
今は少しでも参考になるように彼の戦いを見ておくことにしましょう。
「このやろおおおおお!!!」
次々と放たれる魔法。その魔法は着実に俺を捉えている。しかし、
「どうした?それが全力か?」
その攻撃は全て魔物の腕に防がれている。おまけにその魔物の腕にすら傷はついていない。それもそのはず約3年前から俺と共に戦い、おまけに他の魔物を吸収したドラゴは魔物の最強の階級に位置付けられるムサシ級とほぼ同レベルにまで育っているのだから。おまけに本来のダークドラゴンの鱗の硬さもあいまってその防御力は絶大。この程度の魔法では傷一つつかないのだ。
攻撃を全て受け止めながら、それも無傷で、彼はゆっくりと歩みを進める。その様子は相手に恐怖を植え付けるには充分だった。仲間があっさりやられ、攻撃も効かない、そんな相手が今度は自分を倒すと思うと恐怖せざるを得ない。そして、そんな彼らには零士が本物の魔物の様に見えるのだろう。彼らは必死に魔法を放った。しかし、恐怖という感情に支配された今、もはや魔法の狙いは定まっておらず零士に当たることすらしない。さて、そろそろ頃合いか、終わりにしよう。
「融合、第5形態」
その言葉と共に背中に霧が集まり黒い龍の翼が現れる。それと同時に床を蹴って少し飛び上がり翼を使って一気に相手との距離を詰める。
「うわあああああ!!!」
相手は怯えながら必死に魔法を放つが先程と同様に当たりもしない。そして、相手との距離が3メートルになった時、体を横に思いっきり捻って膝を畳み蹴りの姿勢を作る。そしてその距離が1メートルに達した時、右足を突きだす。そのまま飛行の速さと自らの体重を乗せて相手に叩き込んだ。喰らった相手は一瞬の内にコロシアムの端まで吹っ飛び、その壁に打ち付けられて気絶した。
このコロシアムは魔法を全力で撃っても仮想ダメージしか入らないように結界が張ってある。それのおかげで容赦の無い一撃が叩き込めるってことさ。本当なら、よくて粉砕骨折、悪くて死んでる。蹴りの着地点には残りの二人。怯え、逃げようとするそいつらを掴んで翼を使って高く飛び上がりそのまま下に投げつけた。これまた恐ろしい速さで地面に激突し気絶した。
「これで、俺の勝ちだな」
ここで対抗戦終了のホイッスルが鳴り響く。
勝利を手にし、ゆっくりと翼を羽ばたかせながら降りるその姿はまさにドラゴンの様であった。そして、地面に降り立った彼は勝利の余韻にひたることなく会場を後にした。
その後、会場では
「な、なんて奴だ……」
「あ、あんなのが居たのかよ?」
「下手したら会長や、あの生天目より強いんじゃ……」
「なんか、怖い…」
圧倒的強さを見せつけられた生徒達のざわめきがしばらく続いた。一方、対決を見守っていた転校生達はというと
「あいつ、覚醒して1ヶ月であんな魔法を覚えたと言うのか……?」
「あ、あんなにあっけなく……」
「前より、さらに強くなってる……」
こちらも驚きを隠せていない様子だ。今回の対抗戦は学園生に【黒塚零士という転校生の存在】を刻み付けて終了した。
続く
さて、いかがでしたか?正直彼には色々な物を与えすぎたかもしれません()次回は、今回ちらっと出てきた宍戸さんとのお話です。お楽しみに。