では本編どうぞ
~朝・学園生寮・黒塚の部屋~
ピピピピピピピピ
「朝...か?」
部屋に響き渡る目覚まし時計の音、昨日5時30分にセットしておいたものだ。水無月から指定された時間の一時間半前か。食堂が開くにも早すぎる時間になぜセットしてあったのか。理由は二つ。
一つは軍時代の感覚が残っているから。もう一つは...
「147...148...149...150っと」
毎日欠かさずやっている筋トレのためだ。学園生になったからには授業で大体の時間は潰れるだろうし、放課後は精鋭部隊の訓練があるし、夜と朝くらいしか時間がないからだ。
一通りのメニューを終え時間を確認すると、もう少しで6時になろうとしている。食堂が開く時間も6時、調度いい時間だ。そうとなれば支度だ。
この学園の制服はミストファイバー製ということもあり先程のトレーニングでかいた汗は一度形態を変えれば分解される。ミストファイバーは軍服にも使われてたから大体の扱い方はわかる。この学園では戦闘服と呼ばれるものに変化させるにはデバイスを使うらしい。俺は早速デバイスの変身機能を作動させ、
「変身...なんてな」
といい、戦闘服へ姿を変える。この学園では戦闘服になることを【変身】と呼ぶらしい。そしてほんの1秒もかからずに変身が完了した。といっても昨日の訓練の際に一度変身したからやり方はわかってる。
俺の戦闘服は、黒の軍服の上に黒のロングコート、そして黒のブーツだ。どことなくエレンの戦闘服に似ているが、大きく違うのがコートを【着る】のでは無く【羽織っている】ところだ。
そしてこの状態からまた制服に戻す。これで身仕度は完了。道具は昨日のうちに用意してあるし、これで準備完了。後は...
トントン
「黒塚さん起きてる?」
転校生を起こしに行こうと思ってたがその必要は無さそうだ。
~校門~
「ちゃんと時間通りに来たみてーですね。」
「遅れる訳無いだろう。これでも元軍人なんだぜ?」
「はいはい、それじゃ校則違反してるような奴を見かけたら適当にとっつかまえてくだせー」
こうして朝食を食べ終えた俺達は水無月と共に朝の取り締まりを開始した。
〜30分後〜
登校時間がピークに達したのか段々と人が増えてきた。
水無月曰くこの時間帯が一番目を光らせなければいけないらしい。面倒だと思っていたその時周囲がザワつき始めた。
「お、おいあれって精鋭部隊の第二部隊じゃないか?」
「すごいやられようだぞ...」
そんな声がちらほらと聴こえてくる。水無月も、
「めずらしーですね。第二部隊とはいえあそこまで酷くやられて帰ってくるのは」
と言っている。これは一体何があったのか、昨日所属したばかりとはいえ仲間がやられたのだ。黙ってる訳にもいかない。
「悪いが水無月、あいつらに話を聞いてきてもいいか?」
「別に構いませんよ。アンタさんも精鋭部隊らしいですからね」
「すまない」と短く返し第二部隊の元へ駆け寄る。
その状態は酷いものだった。隊員全員が重傷あるいはそれに等しい傷を負っている。
この学園で発令されるクエストの魔物はそこまで強くない。稀に一般生徒では対処出来ない魔物が出現した際に精鋭部隊に討伐が依頼されるがそれでも軍が対処している魔物と比べれば弱い方だ。となれば乱入してきた可能性が高い。
「突然ですまん。まだ話が出来るやつはいるか?」
すると比較的傷の浅いリーダーと思われる男子生徒が口を開いた。
「あんたは、もしかしてエレンさんが言っていた...黒塚さんか?」
「ああ、そうだ。エレンから話を聞いてるとは思うが、俺も元国連軍所属だ。魔物にはそれなりに詳しい。話してくれ」
その男子生徒は今回の出来事を話始めた。
「俺達の討伐対象は【ダッシュライノス】だった。そいつは比較的苦労せずに倒した。でも、その倒した後だ。奴が...出てきたのは...」
やはり乱入してきた魔物か...
「奴は突然地面から出てきて、撤退しようとしたけど、あまりの素早さに翻弄されてしまって...」
「そいつの正体は分かるか?」
俺の問いかけにそいつはこう答えた。
「ああ、名前だけは聞いたことがあるが間違いなくあれは【スコーピオン】だ」
「やっぱりそうか...」
【スコーピオン】その名の通り蠍型の魔物であり、非常に硬い外骨格を持ち並の魔法では傷一つつかないという厄介な魔物だ。それどころか対処法を知らないと軍ですら手を焼く強敵だ。
「情報提供感謝する。早速で悪いが、学園の方に報告してくれないか?」
〜一時間後〜精鋭部隊詰所〜
「先ほど学園から我々にクエストの依頼が届いた。討伐対象は第二部隊がやられた【スコーピオン】だ」
あの後このことを学園に報告したらその場に居合わせた俺に直接精鋭部隊宛にクエストの依頼が下され、現在それに備えてブリーフィングを行っている。
「こいつの厄介なところは並大抵の魔法では傷一つつかない強固な外骨格と巨大な鋏、そしてその巨体に見合わない驚異的なスピードだ。とてつもなく厄介に聞こえるが対処法を知っていればある程度は討伐が楽になる。よって今からその対処法を教える」
そう言いエレンはホワイトボードに簡潔に魔物の絵を描き説明した。
「奴には弱点がある。それはこの口に相当する器官、そこから内部に攻撃を仕掛ければ有効打を与えられるが...」
「鋏が邪魔...ってことだろ」
エレンの言葉を遮り来栖がそう言った。
「その通りだ。口内を直接狙うのは非常に難しい。大抵、この強固な鋏に防がれる。となれば鋏を切断、もしくは破砕しなければいけない。その際に狙う部位は、鋏の付け根だ。そこが奴の外骨格の中で比較的脆い場所にあたる。そこを集中的に攻撃すれば鋏を根元から切断できる」
その説明を聞いた俺が付け足すように言う。
「エレンが言う通りその部位が比較的脆いが、硬いことに変わりはない。一本切断するのにも相当な魔力量がいる」
その説明を聞いた来栖が、
「だから転校生をつれていくってことか」
と言う。それに対し俺は答えた。
「ご名答、奴を一匹狩るにはかなりの魔力を使うだろう。それに予期せぬ乱入にも備えられるようにだ」
そして一通りの確認を終えてブリーフィングは終了した。
~風飛市郊外・山~
第二部隊が奴に遭遇したのはこの山。街からは離れており、おまけに特級危険区域の大垣峰からそこまで遠くない。ようするにそれなりの強さの魔物が出やすい環境だ。これなら奴が出てきたのも頷ける。そして俺たちは今山を登っている理由は、
「この山は木が多く戦闘には少々不向きだが、山の中腹辺りに開けた場所がある。そこで戦闘を行う」
というエレンの指示だからだ。
十数分ぐらい登っているが、中々目的の場所につかない。軍人組と来栖はまだ平気そうだが、守谷はというと、
「もう無理、ツク歩けない...」
と泣き言を言っている。おいおい、これから戦闘があるってのに...仕方ない、あの手でいくか。
「エレン、移動時間の短縮と消耗体力の節約を同時にやる。言いたいことは分かるな?」
それを聞いたエレンとメアリーは少しニヤっとした。
「ああ、許可する。私も久しぶりに乗ってみたい」
「よおし!出番だぜ!ドラゴ!」
それを合図に俺はドラゴを魔物状態で呼び出した。
そのサイズは全高10メートル。
「グルルルルルルル...」
いまだに状況を理解していない守谷と我妻はポカンとしているが、なんとなく分かったのか来栖は落ち着いている。今から何をするのかというと...
「よし、お前ら!乗れ!」
こいつに乗って飛んでいくのだ。
続く
さて次回はいよいよ戦闘開始
零士の戦闘スタイルが明らかに!?
お楽しみに