〜クエストエリア・山・中腹〜
「はぁ、はぁ、いきなり何すんのよ!ツク高いところ苦手なのに!」
途中守屋が騒いでいたが(今も騒いでいる)無事に山の中腹に着地出来た。さて、本題はこれからだ。
「どうやって奴をここに誘い込むかだな...」
作戦段階ではこの場所に出現する前提だったが相手は魔物、思うようには動いてくれない。索敵をするのは合理的ではないとすると、大きな音で呼び寄せるという手もあるがそれでは他の魔物が来る可能性もある。待つしかないか...
そんな事を考えていると
「グルルルルルル...」
何者かの気配を感じたのか隣にいるドラゴが唸っている。そう、ドラゴは他の魔物、正しくは霧を感知する事に長けている。そのドラゴが唸っているということは、近くに魔物が潜んでいる。そいつが対象の魔物であるかまではわからないが、確かに魔物は近くにいるという事だ。そうと来れば、やる事は一つ。
俺はデバイスを取り出しもあっとで全員にメッセージを送った。
《総員、戦闘態勢を取れ、魔物が近くに潜んでる》
各員と距離が離れているため大声を出す方法も可能ではあるが、魔物が近くにいるとなるとそうもいかない。
するとメッセージが届いた各員は戦闘態勢を取り周囲を見渡している。それと同時に俺も戦闘態勢を取る。コートの内側から全長2m程の大剣を取り出す。何故こんな芸当が出来るのかというと俺のコートの内側には魔法により作られた4次元空間があり、そこに武器の類を収納しているからだ。
【対魔物用大剣】と名がついたこの剣は魔力伝導率が非常に高い特殊な金属を使用しており、命令式によって属性の付与も可能な逸品だ。
武器を構え、神経を集中させる。すると、
ガサガサ...
と音が聞こえる。方向は西。転校生と来栖がいる方向か。2人もその音に気づいたのか、その場から距離をとる。だがその瞬間、
パキッ
と乾いた音がした。どうやら木の枝が落ちていたらしい。
「クソッ!」と反射的に来栖が転校生を引っ張りその場から飛び退いた。それと同時に、
「ギャオオオオオオ!!!」
白い狼のような姿の魔物。【マザーウルフ】が飛び出してきた。
「こいつか、潜んでた奴の正体は!」
俺は大剣を担ぎそいつに向かって走り始めた。それを追うようにドラゴも走り始める。マザーウルフはそれほど厄介な魔物ではない。だが、今のこの状況でスコーピオンが来ると面倒な事になる。なるべく早く倒さなければならない。
「よーし、さっさと片付けんぞドラゴ!」
「グワァウ!」
こちらの接近に気づいたのかウルフが体をこちらに向け、距離を詰めて来る。お互いの距離が縮まり、先に仕掛けたのはウルフの方だ。
「ギャオ!」と叫び飛びかかってくる。だが、次の瞬間ドラゴの強烈な拳により地面に叩きつけられる。
「ギャン!」と短く悲鳴を上げたそいつに、俺らは容赦無く追撃を加える。
俺は風魔法により移動速度をあげ、速さを乗せた強烈な斬撃を連続で奴の全身に叩き込む。
ドラゴはその剛腕と強固な爪による攻撃を連続で奴に叩き込む。
「ギャオオオオオオ!!!」
奴は苦痛による叫びを上げることしか出来ない。何故なら奴の四肢は切断され、体には無数の傷、目と思われる器官も原型を止めないほどに潰され、体からは霧が漏れ出している。
それはもはや戦闘と呼べるものではなく、一方的な蹂躙でしか無かった。
「さーてそろそろ止めかな」
「グオオオオオオオ!!!」
ザシュッ!
ドゴォッ!
そう言い(叫び)俺らが止めを刺したのは同時だった。
オーバーキルにも程がある位の攻撃を叩き込まれたそいつは霧散し、ドラゴの体に吸収される。
そう、これがこいつのもう一つの能力。霧を吸収し自らの力に変える。魔物ならではの芸当だ。さてとこいつとの戦闘で上手いとこスコーピオンが釣れればいいんだが...と考えていたまさにその次の瞬間!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...
突如轟音が響き地面が揺れ始めたのだ。報告通りだ!間違いない!奴だ!
「「総員!地面からの攻撃に注意しろ!下からくるぞ!」」
それをいち早く察したエレンと俺の号令により、各員が警戒体制になる。そして...
ゴゴゴゴゴゴゴ...
全員に緊張が走る中、ついに奴が姿を表した。
黒光りした外骨格、強固な両鋏、大木のように太いがよくしなる尻尾、その先にある巨大な針、その体躯に見合わない高速移動を可能にする八本の足。
そう、こいつこそが【スコーピオン】なのだ。だが、俺はある違和感に気づいたのだ。通常のスコーピオンと比べ、所々が刺々しく変化しているのだ。これはつまり...奴は亜種ということだ!
やれやれとんだ誤算だ。まぁ敵は強い方が燃えるってもんよ!
続く
さて引っ張りましたがようやっとメインターゲットの魔物との戦闘です。今回の戦闘は彼らにとっては準備運動のようなものです。次回さらなる大暴れ!
お楽しみに