「いや、どっちがって……」
「「…………」」
唯と憂が、じぃっとこちらに視線を向けてくる。おい、ここは止めるところだろう。
ちなみに母親のほうはニコニコと俺達の様子を見つめている。
……これ、どうやって切り抜ければいいの?
「えっと……そういえば、明日は練習何時からだっけ?」
「「じぃ~……」」
「…………」
どうやら逃がす気はないらしい。君達、両親の前だという事を忘れてないかな?
いかん。どうにかして逃げる方法を……あ、そうだ。いや、これは……でも、逃げるにはこれしかない!
「俺、年上好きなんで……」
「あ~、そうか。なるほど、わかるよ。僕も君くらいの年頃には大人の女性に憧れたものさ」
「「…………」」
あれ?ものすごく冷たい視線を向けられてるんだけど……。
「あらあら、これは楽しそうね」
平沢母だけが、やたら面白そうに俺達を見比べていた。
食事中少し静かだったが、平沢母の手料理が美味しかったので、何とかやり過ごすことができた。
*******
「お邪魔しました」
「ああ、娘二人の事よろしく頼むよ」
「またいらっしゃい」
「「じ~……」」
帰る段階になり、家族総出で見送ってくれることになったのだが、唯と憂の機嫌はまだ直っていなかった。そんな効果音まで出さなくても……。
「ほら、唯、憂。そんな顔しないの。江崎さん困ってるじゃない」
「「む~」」
「もう、仕方ないわねえ」
平沢母は、二人に歩み寄り、ひそひそと何かを話し始めた。二人の視線がちらちらこっちに向くので、何を話しているのかが、すごく気になるんだけど……。
やがて、二人はぱあっと花が咲いたような笑顔になり、たたたっと、こちらに駆け寄ってきた。
「あ、あの、また来てよ江崎さん!」
「今度はまた私の手料理を食べてくださいね!」
「おう……」
ど、どうしたんだ、急に距離を詰めてきて……?
左右からふわりと甘い香りに挟まれ、どぎまぎしていると、急に平沢父が呻きながらうずくまった。
「くっ、娘二人が同時に……!母さん、これは来るべき時が来たということか……!」
「あらあら、そんなに落ち込まないで。今度行くオーストラリアで心を癒しましょう」
「ああ、そうだね。それじゃあ、江崎君。僕達がいない間、二人の事をよろしく頼むよ」
「あ、はい……」
つい頷いてしまったが、これどんな立場に立たされたんだ!?
こうして、平沢姉妹の両親との初対面は何とか無事に終えることができた。
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「明日から、江崎さん年下好き計画だよ、憂!!」
「もちろんだよっ。負けないからね、お姉ちゃん!!」