「すいません、いきなり付き合わせちゃって……」
「いや、いいよ。これぐらい」
俺は軽音部の買い出しに付き合わされていた。
もちろんさっきの「付き合ってください!」を誤解などしていない。まあこんなことだろうとは思っていた。
「ていうか、今日は何でこんなに買い出しがいるんだ?」
「今日はムギが休みなんですよ」
「な、なん……だと……」
ぶっちゃけかなりショックだ。今となっては楽しみの一つとなっている。この前のクッキーとか最高だったし。
表情に出すぎていたのか、澪がクスッと笑みを溢した。
「ふふっ、わかりやすく落ち込んでますね」
「そりゃあね……」
「江崎さん」
「何?」
「江崎さんって、唯か憂と付き合ってるんですか?」
「…………え?」
まさか、さっきさわ子さんに聞かれたようなことを再び聞かれるとは……一体今日はどうしたというのか……。
考えているうちに、澪の質問に答えていないことに気づいた。
「つ、付き合っていないけど……」
「あ、そうなんですね。すいません、勘違いしちゃって……」
「ああ、いや、別にいい……どうしてそう見えるかは不思議だけど」
「そうですか?一緒にいる時間が長いだけじゃなく、何かこう……一緒にいる時の空気感が自然というか……ごめんなさい。よくわからないですよね。どう表現すればいいかわからなくて……」
澪はやたら顔を赤くしていた。あまりこういう話をするのが慣れていないのがわかる。こっちも人の事は言えないけど。
「……何だかんだ、俺も恋愛のことはよくわからない」
「あはは……自分もです」
「あんな甘々な歌詞書くのに?」
「そ、それは言わないでください!あれはそういうのとは違くて……!」
「ごめんごめん。でも、あの歌詞があるから放課後ティータイムの良さが出てると思うよ。校内のライブだと皆口ずさんでるし」
「いきなりそんな誉められても、それはそれで恥ずかしいですね……」
「俺、作詞苦手だから」
「作詞もするんですね。江崎さんのオリジナル曲聴いてみたいです」
「……ああ。機会があれば」
「あ、もちろん皆がいる時にお願いします。私だけ先に聴いちゃったら……色々と後がこわいので」
「そ、そうなのか。よくわからんけど……」
「そうなんです。これに関しては断言できます」
断言する澪に素直に頷いてからは、たわいもない話をしながら歩いた。
そうしていると、距離の割には早めに学校に到着した気がした。
********
「出遅れちゃった……」
「むむむ……澪ちゃん、いいなあ」