魔法世界グルメ紀行   作:キノコ飼育委員

10 / 20
第九話・初めての原作キャラ捕食!

明るい昼下がり。

太陽が暖かい陽射しをさんさんと降らし、心地よい風が少女の頬をくすぐる前にスゴい速さで彼女は駆け抜ける。

街を文字通り飛び越し、森の中に飛び込んでまだ彼女は逃げ続ける。

ヘマをした。

吸血鬼と化して早九十余年。

たまに良心に従うとすぐこれだ。

まぁあのままだと確実に寝覚めの悪いことになっただろうから、もうそれはいい。

しかしそのせいでうっかり処刑されかけるとはな。

まぁ私は不死身なのだがな!ハッハッハッ!! ・・・・ハァ。

・・・・・いったいいつまで生きるつもりだろうな、私は。

吸血鬼と化して早九十余年。

ほぼ一世記。

知ってる町も知ってる国も知ってる人も全て無くなった。

今私を知るのは“正義”の魔法使い共のみ。

私を殺すために追ってくる。

今私を知らない奴も私を知れば手のひらを返す。

あの街がいい例だ。・・・あそこには五年もいたのに。

 

いや、いてしまった・・・か

 

足が止まる。

捕まった時もそうだ。

その気になればあの程度、いくらでも蹴散らせた。(やつらは白木の杭のつもりだったのだろうが、ククク、アレは色を塗っただけの偽物だ。)

そうしなかったのは・・恐らく『今度こそ死ねるかも』などと考えてしまったからだろう。

無意味な希望(・・)だ。

皮肉気な笑いがこぼれ、暖かい陽射しを目を細めて真っ向から見返す。

日の光すらもう私を焼けない。

ましてや魔力すら籠らぬただの焚き火に私が殺せるか。

こんなことになるのなら、あの時とっとと日の中に体を投げ出して、塵になっておけばよかった。

馬に乗った騎士どもに追い付かれた。

枯れ木のようになぎ倒す。詠唱の必要すらない。

派手にブッ飛ばしたがおそらく生きているだろう。

粉々になったが鎧も着ていたしな。

それにしても、私を殺そうとする者を殺さなくて済むようになったのはいつ頃からだったか・・・。

ガサガサッ!!

茂みが揺れる。

だが何がいるかはわかっている。

ぴょこんっ!と飛び出してきたのは茶色いモフモフの塊、ウサギだ。とても可愛らしいな。撫でてみたいな。

ちょっと近付いて撫でようとしてみると、私の足下を潜り抜けて駆けていく。

ちょうど街とは反対方向、つまり私が行こうとした方だ。

少し追いかけてみるか。

何の意味もない、強いて言うならちょっとしたイタズラ心で追いかけることにした。

おぉ!やはり野生の生き物は速いな!!一蹴りであんなに跳ぶなんて!

一蹴りで十メートルも跳んだウサギは、ちょうど茂みに入るところだ。

フフフ、かわい(ガサッバグシャ!!)・・・え?

『がぶっブチッグチュグチュブシッびちゃびちゃ』

暖かいものが顔にかかる。

頭が真っ白になる。

コレハナンダ?

カラスのような顔に奇妙な紋様、口の中にびっしり生えた牙は狼を鼻で笑える代物だ。闇を纏っているかのような長い毛皮は微かに蠢いている。例えるなら非常に凶悪な面の烏人間だ。

それはウサギが入ろうとした茂みからいきなり出てきて、あっという間に・・・

『グチッ!ングッ、ごっくん。ハァー・・・』

喰った。

私の混乱を他所にソレはゆっくりとコチラを向くと、

「クアアァァァァーーーーーーーー!!!!」

「ッッ!!」

耳が裂けるかと思った。私が人間なら今ので気絶していただろう。

どうやらコイツは私を喰うつもりのようだ。

ふっ、馬鹿なことを。

私を誰だと思っている?

不死のま(ガヴッ!!)

「ぐ、うあぁぁぁぁぁ!!?」

左肩に走る激痛。

いきなりだ。いきなり姿が消えたと思ったらもう後ろから噛みつかれていた!!

バカな!?反応すら(ギチ、ブチン!!)ッッ!!

「ぐうっ!」

左肩を丸ごと喰い千切られた!!

「ッこのぉ!!」

距離を取るために回し蹴りを繰り出すがアッサリと掴まれ片手で投げ飛ばされた。

体をコウモリに変えて離れたところで元に戻る。

いつもならここから反撃に出るのだが、今回は違った。

「な・・・に・・?」

腕がない。

いや、じわじわと回復はしている。

だがいつもならもうとっくに治っているはずだ。

吸血鬼になってから幾度となく私を助けたあの圧倒的な回復力が・・・ない!?

「クア!?ベッベッ!!」

 

ソイツの口の中で私の腕が灰になって消える。

普通は千切れた腕もすぐにコウモリになって戻ってくるはずなのだ。

コイツは何かおかしい。コイツに噛まれた所は回復が遅くなった。コイツに喰われた所は灰と化して消えた。

「ギィ・・」

忌々しげなソイツは、今、確かに私の心臓を見た。

コイツは吸血鬼を知っている!?

・・・私は真祖だ。

ニンニクも十字架も効かないし心臓をぶち抜かれても死なない。

白木の杭でも私の動きを封じるのが精一杯だ。

だがコイツは私の回復力をほぼ無くせる。

ならコイツに心臓を喰われたら・・・?

 

 

コイツか?

 

 

 

コイツが私の死神なのか?

 

 

 

私はやっと死ねるのか?

 

 

 

コイツに身を任せれば・・・私は解放されるのか?

 

 

なら私は・・・

 

 

 

 

 

 

 

・・・。

 

 

 

 

・・・・だ。

 

 

 

 

ボンヤリとした頭にポツリと、ある感情が浮かぶ。

 

 

 

 

・・・・嫌だ・・!

 

 

 

 

ゆっくりと近づいてくる烏人間。

 

その牙がびっしり生えた口は兎の血でぬらぬらと光っている。

 

 

 

・・・・・死にたくない・・・・・怖い!!!

 

 

 

 

そうだ。死にたいなんて嘘だ。

 

 

本当は生きていたい!

 

 

死にたいならあの時太陽に焼かれればよかった。

さっきだって逃げずにその場所にいればよかったのだ。

いやもっと簡単に私が自分を殺せばよかった。

 

 

それをしなかったのは死にたくなかったからだ!!

 

 

嫌だったから、怖かったからだ!!自分の存在が消えるというのがたまらなく恐ろしかったからだ!!!

 

 

 

 

 

私はもっと――――――――――――生きていたい!!!

 

 

 

 

 

「リク・ラク・ララック・ライラック、来たれ氷精、闇の精!!」

 

 

腕が治ると同時に後ろに跳び詠唱を行う。

 

私に撃てる魔法の中で最高の威力を持つ物の。

 

 

 

「クアアァァァァァ!!!!」

 

 

烏人間も跳びかかってくる。

 

地面がえぐれるような脚力だがこっちの詠唱のほうが早い!!

 

 

「闇を従え吹けよ、常夜の氷雪!『闇の吹雪』ッ!!!」

 

 

 

 

 

手の平に集まった闇と冷気を圧縮した高密度のエネルギーを、極太の光線として奴に放つ!!

 

余波で地面を削りながら進む光線は、

 

 

 

「カアアアアァァァァァァ!!!」

 

 

ガバリと開かれた烏の口の中に

 

 

「ングッングッングッ!!!」

 

飲み込まれていった!!

 

そして・・・・

 

 

 

「カアアアアアアアア!!!!」

 

 

ゴウゴウと全身からエネルギーを迸らせ見るからに色々ハツラツゥ!!な烏人間が!

 

 

 

 

バカなッ!!?

 

目の前で非常に非常識な光景が繰り広げられている。

 

相手に害をなす為の魔法を吸収しただと!?

 

 

 

烏人間はまじまじと自分の手を見つめると、ふいにニィと嗤い、

 

 

「クアァ!!」

 

 

右手からエネルギー弾を撃ってきた!!

 

 

「くっ!!」

 

それは普通にかわせたが着弾点を見て戦慄する。

 

エネルギー弾が当たったところは小さく氷の柱が生えてきたからだ。

 

 

私の魔法を吸収、発射してきている、魔法は効かんらしいな!!

 

ならば真祖の脚力に任せて振り切るのみ!!

 

 

背を向け、ドグォン!!とおよそ走る時に出すべきでない効果音を残し、逃走に入る!

 

 

「ぐあっ!!?」

 

足を何かに取られてすっ転んだ!!

 

 

戦いの場で転ぶというのはすぐに死に繋がる。

 

早く立ち――――なんだ?!!!

 

「う、うわあぁ!?」

 

何だこれは!!足が、なにかに引っ張られてるだと!?いやこれは――――――糸?

 

 

チラリと少女の視界にウサギの足跡が、否。

 

十メートルほど引きずられた(・・・・・・・・・・・・・)ウサギの跡が映った。

 

 

バカか私は!!ウサギが十メートルも跳べるか!!

 

ということはこいつはもうずっと前からこちらを窺っていたということか!

 

 

引きずられていく先には、グパァ・・・と大きな口が待ち構えていた。

 

指先に何かが掠る、とっさに掴んだのは先ほど吹き飛ばした騎士の剣。

 

 

魔法は無理でも剣(コレ)なら!!

 

 

腕の筋肉だけで跳び上がり、引きずられた勢いに乗せ空中から斬りかかる!!

 

 

キィンッ・・・・。

 

 

澄んだ音ともに剣が烏の手刀で真っ二つになった。

 

 

 

どこまでこいつはデタラメなんだ・・・。

 

今私はこいつに片手で首を掴まれている。

 

 

「ククッ・・・」

 

 

もはや笑うしかない。

 

突然私が笑ったのがおかしいのかヤツは首をかしげている。

 

その動作が妙に人間臭くてまた私は笑ってしまう。

 

いまから私は死ぬ。確証はないが何となくそんな気がする。

 

だがさっきのような焦りはない。むしろ清々しい気分だ。

 

 

吸血鬼と化して早九十余年。

 

ほぼ一世記。

 

このひと時ほど生を感じたことはない。

 

だからだろう。

 

ここまで心が穏やかなのは。

 

 

いや、そうだ。どうせもう死ぬなら、今まで使う機会のなかったセリフでも言っておこうか。

 

 

私は胸をそらし、大きく笑みを浮かべて言い放った。

 

 

 

 

 

 

「この・・・化け物め」

「いえ貴女に言われたくないですよ」

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・は?































殺すとは一言も言ってませんぜ?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。