魔法世界グルメ紀行   作:キノコ飼育委員

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第十七話・開始!!

 

リーガルマンモスの体内にもう1つ、『宝石肉』があるやも知れないという噂話が出た。

普通リーガルマンモス一匹につき『宝石肉』は1つ。

だがそれがもう1つある可能性が出てきたのだ。

普通なら一笑に伏す程度の話だが、グルメ研究所、それにマンサム所長も動き出しているとなれば話は別だ。

グルメ研究所の連中の監視網を掻い潜り、リーガルマンモスの体内へマンサムよりも早く侵入に成功したものの、突然謎の電磁波を受け、強制的にGTロボから接続を解除された

どうやら他の機体も同様だったらしい。

すわ罠だったかと考えたが、どうやらグルメ研究所の連中も、リーガルマンモスの所在を全く掴めなくなったらしい。

あんな巨大と言うのもおこがましい巨体がどこへ……

手掛かりは我々のGTロボのみ。

ジョージョー達による一週間に及ぶ復旧作業の甲斐あってか何とか再接続に成功した。

現在位置の確認のために一度外へ出るかとも思ったが、それはギドに任せ、まずは何より『宝石肉』を……と先程まで私は考えていた。

 

 

「バリアァーーーーー!!!!!」

カキィン!!

「…………(ポリポリ)」

痒くもないのに頬を掻いてしまう。

「……ナゼソンナコトガデキル」

いや、わかってる。

そんなこと言ってる場合ではないと。

だが考えてほしい。

先手必勝とビームを放ったのにそれをいきなり「バリアァーーーーーー」とか言われて反射されるなんて誰が予想する?

「生物40過ぎたら大抵のことはできるようになりますよ」

………うむ、ビックリし過ぎて逆に落ち着いた。

「意思ノ疎通ガ可能ナノカ」

「ええ、対話は可能ですよ。美食會の方」

……!!

こちらの正体にも気付くとは……いよいよ持って異常なまでに賢い個体だ。

「意思ノ疎通ガ可能ナラバ何故コチラヲ襲ウ? コノ体ハ機械ダ、喰エルトコロナド無イゾ」

「ええ、別に食べるために襲っている訳ではないのです」

「デハ何故」

「私はね」

……ッ!!

なんだこのプレッシャーは!!!

まるで物理的な壁のように私を押さえて込んでくる!!

料理長、いやそれ以上か!!

「貴殿方の考えには肯定的なのです」

「何……?」

「『この世の全ての食材を独占する』……でしたっけ? いいですねぇ、それ」

「ナ、ナラバ我々ト共ニ「ただし、」……!」

「『この世の全ての食材を私が(・・)独占』するんですよ」

烏みたいな面だがわかるぞ。

ヤツは今笑っている……!

「それでは名も知らぬ美食會の方、私はこれでも忙しいので」

途端、“直感”的に今すぐ攻撃せねばならぬと悟る!!

機体越しでも全身に鳥肌が立つ!!

「オオオオオォォォオオ!!!!!」

地を這うように低く、一歩でトップスピードになるよう駆け出す!!

自らを一本の剣のように鋭く疾らせミキサーパンチ、否!

「ハアッ!!」

手を槍のように尖らせドリルと化した腕を奴の目に突っ込む!!

いくらニトロが強靭であろうと鍛えられぬ所がある!

それは、目だ!!

機体の反応が遅い、遅すぎる!!

生身ならとっくに届いているであろう距離もこの機体では僅かにズレ(・・)がある。

例えるならスローモーションのゲームのコントロールを握っているような感覚。

いくら速くコマンドを入れても言うことをきかないもどかしさ。

そんなスローの世界で、

ゆっくりだが確実に腕が奴の目に向かっている世界で、

今まさに奴の眼球の目の前に指がある世界で、

奴の顔だけが普通の速さでニタリと笑い、

「ザ・ワールド、食事の時間ですよ」

高速の世界でこの言葉をはっきりと聞き、私は機体と接続を解かれた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

所変わってエヴァVSセドル会場

 

 

「まずは小手調べだ、奴の親戚なら何とかなるだろう?」

掌を上に向ければ昏き光弾が形成される。

ついでに同じものが数えるのもバカらしい程周りに一瞬で出現する。

無詠唱サギタ・マギカ数百発。

―――いいですかエヴァちゃん、真祖とは最強種、つまりは無茶苦茶なまでに、理不尽なまでに強くならねばなりません。

―――ですから大抵の魔法を無詠唱で使えるようになりなさい。

―――手始めに、サギタ・マギカ無詠唱で数千発撃てるようになりましょう!今からニトロバレット雨あられにぶっ放しますので全部撃ち落としてくださいね!!

 

「あれはトラウマになったぞおおおォォォ!!!」

「ナンノ話ダ!?」

光弾全部奴目掛けてぶん投げてやる!

魔法吸収の隙はやらん!全身くまなくボッコボコになれ!!!

ああ、八つ当たりさ八つ当たりだとも!!

「だが! 腹の虫が収まらんのだあああァァァ!!!」

「ギャアアアアアア!!」

 

何発かは口の中に入ったが他は狙い通り身体、特に足を重点的に攻撃できた。

「まだ終わらんぞォ!!」

両手の先に闇と吹雪逆巻く塊を出現させる。

「今の私は同時に二つが限度だ……」

もうもうと土煙が立ってはいるがアイツに鍛えられた私にもはや不可能はない!!

超強化された我が五感!

視覚は赤外線から紫外線(よくは知らん、ヤツがそう言ってただけだ)まで捉え、聴覚は山1つ越えた位置の人の話し声も聞こえるほど!!

故に!!

「丸見えだ!! 喰らえぇ!!!」

闇の吹雪!闇の吹雪!闇の吹雪!闇の吹雪!闇の吹雪!闇の吹雪!闇の吹雪!闇の吹雪!闇の吹雪!闇の吹雪!闇の吹雪!闇の吹雪!闇の吹雪!闇の吹雪!闇の吹雪!闇の吹雪ィ!!!!!

「連射できんとは一言も言ってはいないぞぉ!!」

「ガ、ギガ、デメェ!!」

撃ちすぎたかと思ったがやはり生きていたか!

だがそれでこそ新技実験の相手に相応しい!!

土煙の中から飛び出しこちらに突進してくる烏。

さすが奴の親戚だ、血が一滴も出ておらん(注釈・顔に当たらなかったせいで分かりにくいが毛皮の下は結構ボコボコ)。

ヤツから学んだ異世界知識。

必殺の凍気とは何か。

それすなわち絶対零度(・・・・)。

私の最も得意とする魔法。

そしてそれは必ずしも温度が下がれば凍結すると言うわけではない。

実は“気化する”というのも周りを凍らせる。

 

何故汗をかくと身体が冷えるのか、熱湯は何故水に戻るのか。

100年の月日の間に試してみた。

結果、魔力により物体から空気(・・)にされた存在は周りの温度を凄まじく下げた。

奴いわく『ソーテンイ』とか言うらしいが……

詳しい理論などどうでもいい、要は使えればいいのだ。

魔力によって事象を選択、形を固定。

手刀を形取った右手に沿わせるように、薄く鋭く、しかし長く。

耳に心地いい、真冬の氷のように澄み切った音を発する氷の剣。

その銘(な)も―――

 

 

 

「エターナル・フォース・ブリザード・ソオオォーーード!!!!!」

 

 

 

 

 

 

一瞬の交錯。

 

 

 

互いに背を見せ、時が止まったかのように佇む。

 

そして、ゆっくりと後ろでヤツが左右(・・)に倒れ、ガラスのように砕け散った。

 

静かに構えを解き、ゆっくりと勝利の哄笑をあげる。

 

 

 

 

 

「ふ、ふふふふ、フハハハハハハハハハハハハ!!!!! 行ける!! これは行けるぞ!! 今開発している術式と戦術、そしてこの剣があればいかな奴とて倒せる!!」

 

 

今行くぞライフゥ!!! 首を洗って待っていろ!!

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「……ナンダカ、危機ハ去ッタ気ガスルゼ」

 

安堵の溜め息をつくチャチャゼロ。

 

ちなみにかぶった相手を抹殺しに走り回ったため絶賛迷子中。

 

「…………ン? ココダケスゲェ明ルイ?」

 

 

非常に美しい通路、その先にある光放つ部屋に興味が惹かれ、チャチャゼロは進む。

 

 

「……コイツハ…………スゲェ……」

 

自分は人形。

 

血潮無き木でできた人形。

 

かりそめの魂を宿した人形。

 

 

だがこれは――――――この肉(・)は!!

 

 

血潮無き身体を、かりそめの魂を、確かに震わせている!!!

 

 

自分の目の前に鎮座する人より遥かに大きいそれは、確かに宝石としての輝きを放っている。

 

そこから漂う芳醇にして濃密な香りは今まで飲んだどんな酒よりも芳しい。

 

 

チャチャゼロは、日頃心の奥底に仕舞っていた『自分とは何なのか』という疑問に解を得た気がした。

 

身体の震えにも気付かず、フラフラと『宝石肉』へ近寄る。

 

服の下の亜空間に仕舞ってある特大のナイフを構え、ゆっくりと『宝石肉』に添える。

 

肉は軽くナイフを滑らせただけでするりと切れ、チャチャゼロの手の中に落ちてくる。

 

小さな口を開けると、ぱくり。

 

肉は口の中で柔らかく溶け、贅沢に肉汁を迸らせている。

 

それは、今まで酒ばかり飲んでいたチャチャゼロを持ってしても、今までで食べたこともないほどの美味だった。

 

 

「……うめぇ…………」

 

 

気付けばチャチャゼロは、

 

「…………うめぇ、な……」

 

 

涙を零していた。

 

 

間違いなく彼女は、今、『生まれ』たのだ。

 

 








更新がとまります。

詳しくは活動報告にて。
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